キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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第61話 なんで、どうして……ッ⁉︎

 なながまもるの家で過ごして翌日。2人は仲良く家から出て、全身に朝の陽射しを浴びて全身をほぐしていた。

 

「今日は晴れて良かったね。慣れない場所だったけだ、寝れた?」

 

「う、うん。十分休めれたよ」

 

 笑顔で返すななだが、内心冷や汗かいてそれどころではなかった。相変わらずまもるは、異性との距離感が異質過ぎて、ななは常に緊張を強いられている。

 就寝前もそうだったが、油断しているところにストレートな言葉を投げ掛ける。

 

 正直、自分の事をちゃんと1人の女の子として見ているのか少々疑わしい。

 

「家まで送るよ」

 

「そういえば」と、ふとななは考えた。普段の彼はうたにもこころにも同じ距離感で接している。もしかしたら、2人も自分と同じ様な感情を抱いている可能性がある。

 

「このまま晴れてくれればいいね」

 

 だとしたら、なんて思いふけこみ、歩もうとしていた足が止まる。

 

 その様子に気付いたまもるは振り返り、ななの様子を窺う。

 

「蒼風さん?」

 

「ねえ紫雨君。紫雨君はうたちゃんとこころちゃんの事どう思ってるの?」

 

「どうってそりゃ、幼馴染と従兄妹だけど」

 

「ならいいんだけど。紫雨君って、わたし達との距離感が物凄く近いから勘違いしちゃうかもって」

 

「自分の中では割と普通なんだけど。なんか、前にもこころに同じ事言われた」

 

 自覚無し。本当に無意識でここまで距離が近いとそう捉えられても仕方なくなる。

 

「今更距離を開けて他人行儀になるのも寂しくない?」

 

「でもわたし達、まだ苗字で呼び合っているけど」

 

「そういえばそうだった。これを機に名前で呼び合うのも悪くないかもね」

 

 談笑しながら角を曲がると、こころが丁度目の前を横切った。

 3人は突然人が飛び出した事に驚き、足を止める。

 

「あっ、おはようございます! 珍しいですね、朝から2人が一緒だなんて」

 

 軽装な見た目を察するに、こころはこれから日課であるダンスの朝練をするみたいだ。

 そして、まもるの私服はともかくななの制服姿。それに朝から2人での行動に、こころはアホ毛をアンテナの様に立てた。

 

「……朝帰り?」

 

「なし崩しにそうなって」

 

「ふーん」

 

 こころは何か疑わしい目付きでまもるの事をじっと見つめる。

 

「いいじゃないか朝帰り。楽しい夜だったよね?」

 

「えっ⁉︎」

 

「あー、そうやって逃げようとしてる。なな先輩が困ってますよ」

 

 急に振られ、慌てふためかせる。こころがフォローして、まもるにあれよこれよ注意をする。

 

 そんな2人のやりとりを見て、ななは少しだけ身を引いた。

 まもるとこころからしたら、あの関係性、あの距離感が2人にとっての"当たり前"なんだ。

 それはうたも同様。名前で呼び合う仲。ななとは違う感覚。

 

 自分とまもるとの間に壁を感じる。多分だが、その壁こそが一歩踏み出せれない原因だ。

 だからなのだろうか。好きな人に正直になれるメロロンの事を感心する目で見たり、うたやこころと接する彼の距離感を気にしてしまう。それに、ガラにもなく恋愛相談もどきみたいな話もしてしまう。

 

(そうだ、紫雨君のあの力も深い信頼関係だから出来ている。だけどわたしには……)

 

 考えれば考える程底無しの沼にハマっていく。

 

 彼にとって、わたしはどんな存在なのだろうか。どんな風に見えているのだろうか。友達、クラスメイト、仲間、知り合い。

 

「蒼風さん?」

 

 まもるが覗き込む様にしてななの顔を見ている。良くない考えをしていたせいか、いつの間にか自分は俯いていた。

 

「大丈夫? 顔色悪いけど?」

 

「ううん、気にしないで。ちょっと考え事してただけだから」

 

 心配してくれた。その矢先、ななの後ろへ吸い寄せられるようにまもるの視線が移り変わる。

 

「お、おはよー……」

 

「あっ、うたちゃん!」

 

 今度はイマイチ元気の無さがあるうたが歩いて来た。

 

「珍しいね。朝のお散歩?」

 

「いやー、メロロンに起こされて」

 

「朝の日光はとても気持ち良いメロ。ねえたまと2人きりが良かったのに」

 

「プリルンはうたとも一緒にお散歩したいプリ!」

 

 熟睡していたところにメロロンに叩き起こされたのを容易に想像出来る。メロロンもメロロンで、プリルンの事を想って嫌々ながら起こしたのだろう。

 

「結局全員集まりましたね」

 

「折角だから、皆でこころのダンスでも見学しようか」

 

「おっ、いいね!」

 

「急ですね。ちょっと恥ずかしい気はしますが、見られるのもひとつの練習にもなりますし」

 

「プリルンも踊りたいプリ!」

 

「ねえたま⁉︎」

 

 2人だけの時間はとうに過ぎ去った。完全に輪からはみ出てしまったなな。自分も会話に入ろうとした時、まもるが手を差し伸べる。

 

「行こう、蒼風さん!」

 

 なながゆっくり手を取ろうとする。

 

 その時だった。

 

「──見つけた。アイドルプリキュア」

 

 声のする上空へ全員が顔を向けると、こちらを見下すバッサリーネの姿があった。

 まるで階段で降りるかのような足取りで地に足をついて、まもる達の前に現れた。

 

「プリルン、いつものブルってきてないの?」

 

「感じなかったプリ」

 

「という事は、まだクラヤミンダーは現れていない。じゃあ何で今、このタイミングで俺達の前に姿を晒したんだ?」

 

 一体どういう意図で、単独で目の前に現れたのかの考察をまもるは必死にする。

 けれど、意外にもその理由が判明するのは早かった。

 

 バッサリーネはうた、なな、こころに指をさした。

 

「邪魔されるのなら、先に倒せばいい。ただ、それだけの事よ」

 

「相手も考えてきたって事か。でも、今回だってうたちゃん達が勝つ!」

 

「「うん!」」

 

 うたとこころは気合い十分。しかし、ななだけはそうでもなかった。1人だけ、全身の筋肉を強張らせて硬くなっている。

 

「蒼風さんちょっと──」

 

「2人共行くよ!」

 

 まもるがななに話し掛けようとしたタイミングで、うたが変身を促すように声を上げた。

 

「「「プリキュア! ライトアップ!」」」

 

 いつも通り、3人はアイドルハートブローチとプリキュアリボンを併用しての変身を開始する。

 その途中、なな1人だけが何か不穏な気配を察知した。

 

(あの人、笑ってる?)

 

 前までのバッサリーネの雰囲気が違うと、ななは直感的に感じ取った。口元は口角を上げて笑みを浮かべているが、その瞳は全く笑っていない。焦っているようにも思えるし、タイミングを測っているにも見える。

 

(狙ってる? 何を?)

 

「「キラキラ、ドレスチェンジ! YEAH!」」

 

「あっ! キ、ラキラ! ドレスチェンジ! YEAH!」

 

 変身の最中だというのに集中力を欠いた。ななだけが僅かにワンテンポ遅れた。

 それを見据えてなのか、それとも偶然が重なったのか定かではないが、そのタイミングでバッサリーネが地を蹴った。

 

「プリ⁉︎」

 

「変身中に来るメロ!」

 

「油断した!」

 

 前線には出ないまもる、プリルン、メロロンがいち早くバッサリーネの動きに反応した。

 まもるは変身中だろうと構わず、手を伸ばして肩を掴もうとする。

 

(少しでも身を引かせて直撃を避けたい)

 

 と思い、まもるとななが同時に動き出した。

 

 まもるはななの肩を掴んで自分の元へ引き寄せる。ななもまもるに身を流れのままに委ねた。

 

「「ッ!」」

 

 間一髪でななだけはバッサリーネの間合いから逃れた。しかし、取り残されたうたとこころはだけは。

 

「「きゃっ⁉︎」」

 

 お腹を触れられ、吹き飛ばされながら紫色の球体に閉じ込められてしまう。

 それでも重い身体を起き上がらせ、再度変身を試みる。プリキュアリボンをブローチにセット。そこで彼女達は気付いた。

 

「悪いけど、その中じゃアンタ達お得意のプリキュアの力は使えない」

 

「プリキュアの力を封じ込めたのか⁉︎」

 

「厳密にはキラキラをだけど。本当は対ディーヴァ・ステージ用でアタシが編み出した力。ま、結果としては上々」

 

 プリキュアに変身出来なければただの無垢な女の子。うたとこころは、球体の中で声を出して訴えているが何も聴こえない。

 

 変身も声も全て外部とシャッタアウトされている。

 

 ななは不安に駆られる。

 

「プリキュア! ダークアップ!」

 

 事態の整理が追いつかない。2人の助力無しで、自分が一体どこまでやれるのか。

 

「クラクラ、ステージオン! YEAH!」

 

 まだななは変身していない。今先に変身されたら、今度こそ全滅する恐れがある。それだけはなんとしても避けなければならない。

 

「キミと瞬く、ハートの勇気! お目目パッチン、キュアウインク!」

 

「キミと輝く、ハートのステージ! 煌めきステップ、キュアディーヴァ!」

 

 両者プリキュアに変身を完了させる。しかしここからどうすれば良いのか。

 互いに手を伸ばせば届く距離であるが、不用意に手を出せばすぐ後ろに居るまもるやプリルン、メロロンが守れなくなる。

 

「後ろばかり気にしてたらアタシは倒せないよ!」

 

 ディーヴァは仕掛ける。ウインクは反射的に後ろへ下がり、3人を抱えて一旦離れる選択をした。

 

「チッ!」

 

「紫雨君は安全な所に避難してて! ここはわたし1人でなんとかするから!」

 

「待ってウインク! 1人じゃ危険だよ!」

 

 ウインクは振り返らない。どちらにしろ、今この状況下で戦えるのはウインクだけ。自分がなんとかしなけれどばならない。

 

 ウインクが右脚での蹴りを打ち込むが、容易く片腕で防御された。

 ウインクを跳ね除け、腹部に拳を一発叩き込む。

 

「ッ⁉︎」

 

 体勢が崩れ、膝が落ちたところに脊髄に肘打ちの追撃。衝撃が全身に響き渡り、痺れが襲い掛かる。

 

「ウインク頑張れ!」

 

 一方的なウインクに声援を投げかける事しか出来ない。ならば、それを全力でやるのみ。まもるは声を出す。出し続ける。

 

「くるか」

 

 まもるから溢れ出るキラキラを見て、ディーヴァは身構える。

 

「ディーヴァ・ステージ!」

 

 まもるのキラキラがウインクの体を包み込むんだ。

 

 しかし、何も起こらなかった。

 

「な……ッ⁉︎」

 

「そんな……」

 

 ディーヴァ・ステージの失敗はこれが初めて。予想もしなかった事態にウインクは動揺を隠せずにいる。

 

「ふーん、興醒めね」

 

 ディーヴァ・ステージの恩恵を受ける条件はそう難しいものでは無い。単純な話、お互いの信頼関係が深ければそれで良いのだ。

 だが、失敗したという事は今の2人はなんらかの距離があるという証拠。

 

 それが余計ウインクを焦らせる。

 

「紫雨君……ッ!」

 

 ウインクはまもるの元へ走った。先程まで負傷したとは思えない。どうしてその身体で動けるのか。疑問に思う事だが、ディーヴァはそれを察している。

 

「勝負あった」

 

 ディーヴァは勝利を確信した。これ以上ない程の。

 

「ウインク……」

 

 ウインクは、なだれ込むようにしてまもるの胸の中に飛び込んだ。

 

「紫雨君、わたしは……」

 

「大丈夫だ。ウインクならいけるって信じてる」

 

 彼の声が聞こえる。とても勇気を貰えるのに。だけど、それは風のように全て通り抜けていく。

 自分でも分かっている。負った傷よりも精神がそれに追い付いていない。

 

「ウインク──」

 

「わたしが、わたしが紫雨君の邪魔をしている……」

 

 その声援に応えられるか不安で、彼の声が今はとても怖い。

 

「わたし、紫雨君と深く繋がれてない」

 

「そんなことはないよ」

 

「何で、どうして……何で繋がれないの?」

 

 ウインクの悲痛な叫びがまもるにもヒシヒシと伝わる。

 

 精神的に限界を感じ、変身が解けてしまった。

 ウインクは、ただの無垢な少女に戻ってしまった。




ぼちぼち頑張ります。

ここまでの拝読ありがとうございました。
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