キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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第62話 キミの応援があるから

 まもるの声援も受けれない。プリキュアも維持が出来ない。こうして下を向く事だけしか出来ない。

 勇気のおまじないがあれば、何があっても大丈夫なのと心から思っていたけれど現実はそう甘くはなかった。

 

 自分でもこんな風になってしまった原因は判っている。きっと、まもるという存在が自分の中で大きくなってしまった事が起因だ。

 そのせいで心に揺らぎが生じ、自分自身を見失っている。

 

「なんとかしなきゃ、なんとしなきゃ」と強く思う度、小さな波紋は大きくなった。今ではもう取り返しのつかないところまできてしまっている。

 

 普段からの距離感に違和感をずっと抱きつつも、それに対して放置してどこか満足していた。だからだろう。うたやこころとは繋がれて、わたしには無理だった。それがダメだしだ。

 

 故に出来てしまった自分でも気付かない溝の完成。

 

「わたしをもっと見ていて欲しい」その様な欲にも溺れ、そこから溢れ出る不安と緊張のせいで張り詰めていた糸が完全に切れた。

 そして行き着いた果てなのが今に至る。

 

 中途半端な壁をいつの間にか隔ててしまい、この事態を招いた。

 

 私情が入り全てがしくじった。もう、勇気のおまじないのやり方すら分からなくなった。

 

 

 ◯

 

 

 状況は最悪と言っていいほど。ここから巻き返せれる力は無いとななは思っている。精神からくる不調で変身は解け、例え変身出来たとしても勝てる算段が見当たらない。

 

 実力も無く、声援を受けれる信頼も無い。そんな自己嫌悪とも言える感情が渦を巻いている。

 

「そこまで思い悩む必要ないと思うよ」

 

 僅かな光が差した。

 

「友達だから全部信頼してなんて言えないよ。そこまで人の心を縛るのってなんかちょっと違う気がする」

 

 顔を上げ、

 

「友達ってもっと気楽な関係でしょう? 当たり前のように側に居る。それが"友達"で、それが"信頼"なんじゃないかな?」

 

「当たり前のように、側に居る……」

 

「ディーヴァ・ステージの力が使えないからなんだ。そんなので友達だとか信頼だとかで決め付けられても、全然キラッキランランじゃない」

 

 まもるはななを立たせ、アイドルハートブローチを優しく握り直させる。

 

「一体何に不信感を抱かれてるのか分からないけど、俺は蒼風ななの事を全力で応援している。これだけは嘘偽りのない本音だよ」

 

「あっ……」

 

 自分は何を考えていたのだろうか。勝手な思想で描いて不信感を抱かせていたのは自分ではないか。

 まもるは何も変わっていない。出逢った時からそうだ。いつだって彼は誰かの為に応援してくれている。いつだって一番違い存在で居てくれる。いつだって隣を一緒に歩いてくれる。

 

 幼馴染だからなんだ。従兄妹だからどうした。そんなものはただの逃げる為の都合の良い口実にしかならない。

 恋心を言い訳にしていたに過ぎない。

 

 でも、それももうやめだ。

 

 目を伏せ、自分自身と向き合う。次にその瞼を開けた時、それはきっと──。

 

「ふふっ、変わんないね」

 

 自分の本音に蓋をして不調に陥るくらいなら、もういっそ開けてしまえば良い。

 

「──ありがとう、()()()()()

 

 いつも通り、ファンの人の為に歌って踊ればいい。

 

 浅く呼吸し、ななはディーヴァに目を向ける。

 

「この雰囲気……やらせるわけないでしょう‼︎」

 

「まもるくんは下がって!」

 

 今のななを覆う空気は、うたやこころの時と同じ。その匂いを感じ取ったディーヴァは、余裕の表情から切羽詰まったものへと一変。

 

「少し喋らせてあげたからって調子に乗り過ぎよ。キュアアイドルとキュアキュンキュン同様封じ込めたらそれで終わり!」

 

「プリキュア! ライトアップ!」

 

「間に合わないわ!」

 

 ディーヴァの手が触れた瞬間、紫色の爆発が起きて周囲のものを吹っ飛ばした。

 

「蒼風さん!」

 

 土煙を掻き分け、爆発の中心へ急ぐとなながアイドルハートブローチを握ったまま倒れていた。

 服は汚れ、力無くぐったりとしている。変身する直前にやられてしまったのが見て取れる。

 

「残るはアンタよ。紫雨まもる」

 

 邪魔をするものはいない。いるとしたら、そう、紫雨まもるのみ。

 

「蒼風さんなら──()()ならいける!」

 

 瞬間、ななは目を見開き、アイドルハートブローチを強く握って、飛び起き上がりながらキュアウインクへと変身した。

 

「案外しぶといね。だ・け・ど、アンタじゃアタシには勝てないって分かって……ッ⁉︎」

 

 ディーヴァはウインクの異変に気付き、即座に距離を取った。

 

 明らかにウインクの雰囲気が一変した。纏うキラキラ、呼吸も安定しており先程までとは違って感情をコントロール出来ている。

 なにより似ている。

 

「この感じ……ッ!」

 

 ディーヴァが口にするよりも早くウインクが地を蹴る。勢いに任せた右足がディーヴァの脇に炸裂。

 かと思いきや、紙一重でこれを両腕で防御した。今の一撃はかなりの速度だった。しかし、それを受け止めたディーヴァも大概。

 

「どれだけパワーアップしようと結局同じ! キュアキュンキュンならともかく、アンタ程度造作もないわ!」

 

 ニヤけるディーヴァだが、すぐさまその表情が歪んだ。

 

 ウインクは受け止められた脚を巧みに操り、両腕を弾き飛ばして回し蹴りで胸部に叩き込む。

 予想外の動きにディーヴァは何も反応出来ないでいた。ウインクは平然と、それでいて冷静でいる。それが余計ディーヴァの癇癪に触れる。

 

「だったらこれなどう? アイドルグータッチ!」

 

 痛みに耐えながら無理矢理アイドルの技を行使する。リズム、タイミング。全てにおいてバラバラで力任せの一撃だが、威力は本物。ウインクも体勢が不十分であろうと油断出来ないのは知っている。

 

 だが、全く動じる事なく右手を構えるだけ。

 

「余裕こいていられるのも今のうちよ‼︎」

 

 破壊の一撃が炸裂。その威力は衝撃で地面にクレーターが出来てしまう程のもの。まもるの力を受けて、自信過剰になったのが運の尽き。

 

「ううん、今のわたしに余裕なんてないよ」

 

「な……ッ⁉︎」

 

 よく見ると、ディーヴァの拳を完全に受け止めていた。それもただ受け止めた訳ではない。ウインクの手の平の中には、小さなウインクバリアが展開されている。

 

 仕組みは簡単な事だ。通常のウインクバリアよりも小さくさせる事で、エネルギーが凝縮し、強度を無理矢理高めていた。

 

「やっぱり、この感じはディーヴァ・ステージ」

 

「うん。まもるくんの声援のお陰でわたしは立っていられる。だから余裕なんて最初からないの。だから全力で!」

 

 ウインクはディーヴァの拳を押し除けた。

 

「ウインクいっけぇ!」

 

「頑張れプリー!」

 

「が、頑張れメロー!」

 

 ウインクは振り向き、応援してくれる3人にウインクしてその期待に応えようとする。

 

「こっちだってもう後がないのよ。だから全力で!」

 

「「歌う‼︎」」

 

 先にステージを展開させたのはディーヴァ。専用のステージが周囲を覆い、辺り一面緑の光に包まれる。

 

「クライマックスはアタシ! 震わせるよー!」

 

 ディーヴァの全力のステージを目の当たりにして、ウインクは少しだけ震えていた。まだこれ程の余力を残しているとは思いも寄らなかった。

 それでもウインクは引けない。最初からそのような選択肢は無い。

 

「プリキュア! ディーヴァセレブレーション!」

 

 アイドルハートブローチをタッチする。

 

「今更ウインクバリア程度!」

 

「大丈夫! だってわたしには、まもるくんが側に居てくれるから!」

 

 両手を前に突き出して、精一杯の力を振り絞る。

 

「ウインクバリア!」

 

 展開されるウインクバリアの数が10枚に増えている。ディーヴァ・ステージの力も影響もあってか、その強度も1枚1枚の質が高い。

 

 ディーヴァセレブレーションがバリアと衝突。その時点で既に勢いはせき止められている。が、それでも尚突き破るディーヴァの歌。やっとの思いでバリアの2枚、3枚目と到達するも。

 

「こんの……ッ!」

 

 3枚目のウインクバリアが砕けるのと同時にディーヴァセレブレーションも弾けた。防がれたのだ。たった3枚のバリアで。

 

「嘘、でしょう?」

 

 自慢の歌が通用しなかった光景を目にしたディーヴァは、今までギリギリのところで保たれていた心がポッキリと折れてしまう。

 キュアキュンキュンにダンスを見切られても、それでも歌は攻略されてなどいなかった。それが最後の砦だった。

 

「歌姫であるアタシが負けるなんて……」

 

 膝から崩れ落ち、絶望の淵に立たされる。

 

「クライマックスはわたし! 聴いてください!」

 

 ディーヴァのステージをウインクが塗り替えた。

 

 イントロが流れ始め、まばたきの五線譜の曲が奏でられる。ディーヴァもそれを耳にしている筈だが、完全に戦意を喪失してそれどころではなかった。

 

 その隙にウインクのステージは最高潮に達しており、浄化技を放てる準備が整われていた。

 

「プリキュア! ウインククレッシェンド!」

 

 ダイヤ型の青いエネルギー弾を無数に襲い掛からせる。当たればディーヴァでもひとたまりもないキラキラ。

 しかしながら、そんな危険が目の前に迫りつつあるというのにディーヴァは俯いているだけで避ける素振りも見せない。

 

「嫌だ、負けたくない。アタシはまだ、歌姫であり続けたい──」

 

 その言葉を掻き消し、ウインククレッシェンドがディーヴァを呑み込んだ。

 蒼く輝く光の柱が雲を貫き天まで届く。弾けて、ディーヴァは変身が解除されてその場に倒れていた。

 

 動く気配がない。ようやくにしてキュアディーヴァことバッサリーネを倒したのだ。

 

 なのだが。

 

(なんだろうこの感じ。何か違和感を感じる)

 

 いつも浄化した手応えではなかった。

 

「ふぅ……今のは流石の()()()でも危なかったよ。危うく浄化されそうだった」

 

 何事もなかったかのような振る舞いで、バッサリーネは立ち上がった。体に付着した土を払い落とし、苦笑いをしながら咳き込んでいた。

 

「薄々こんなことになるんだろうなって思ってたけど、まさか途中で投げ出すなんて」

 

 直感とも言えるウインクの思い込みは間違ってはいなかった。浄化技を直撃したにも関わらず、涼しい表情をバッサリーネはしている。

 確かに両者の間にはかなりの実力差というものがある。しかし、それを差し引いたとしても無傷というのは些か不思議だ。

 

 それに、どことなく彼女に纏う空気も変わっている。それがなんなのかは、ウインクでさえも看破は出来ないでいる。

 

「アナタ達の実力を今一度改めるよ。そしてこれは、ワタシからのほんの挨拶代わり」

 

 バッサリーネは右手を銃のような形にして、指先をウインクへと向けた。指先に今まで感じた事のない重圧を感じ取る。ドス黒い闇のエネルギーが一点に凝縮されていく。狙いをよく定め、やんわりと笑みを浮かべた。

 

 そして一言呟いた。

 

「ワタシのファンサービス、受け取ってくれるよね?」

 

 直後、放たれるエネルギー弾。地面を抉りながら進行していく。

 威力はある。だが、速度はゆっくりとしており避けようと思えば容易く出来てしまう。しかし、その選択を取ると被害は大きくなる。故にウインクに避ける選択肢は万に一つも無い。

 

「ウインクバリア!」

 

 5つのバリアを展開させ、それを連結。花型のウインクバリアで凶悪な攻撃を凌ごうと力を入れた。

 

 そして衝突。重くのしかかる質量がウインクの足を沈ませる。衝撃波と凄まじい風圧が肌に突き刺さり、苦痛の表情を浮かべる。

 

 押し返そうと一歩踏み出すが、同時にウインクバリアにも亀裂が入る。このままだと、火力に押されて負けてしまう。

 

「ハァッ!」

 

 ならば、とウインクは軌道を変えさせる為に別の方向へ力を流させる。そんな策を講じた直後に、放たれたエネルギー弾が爆発した。

 

 ウインクバリアが砕け散り、地面を転がり仰向けで倒れた。

 

「ウインク⁉︎」

 

 爆発の影響で変身は解けてしまった。戦えない状況となってしまったが、バッサリーネの一撃だけはギリギリのところで相殺する事に成功した。

 

 だが、本日2回目の変身解除。ななの身体には相当な負荷が掛かっており、これ以上の変身は望めない。

 

「あぐぅ……ッ!」

 

 加えてディーヴァ・ステージの影響で、本来ならウインクが受ける筈だったダメージをまもるが背負う事に。全身の至る所に痛みが生じて、こちらも満身創痍。

 

「まもるくん……ッ⁉︎」

 

 ななが上体を起こすと、バッサリーネが目の前まで移動しておりこちらを見下ろしていた。

 とてもじゃないが、今の状況下で戦うのは不可能だ。

 

「そんなに怯えなくてもいいよ。さっきも言ったけど、あれは挨拶代わりのファンサだから敵意はないよ」

 

 少し前までの荒々しい雰囲気はどこへか。その言葉の真偽を勘繰ったが、どうやら本当に敵意は無いらしい。彼女の瞳がそう言っている。

 

「お互いボロボロ。それにワタシはようやく外に出たばかりで調子が上がらない。ここはお互い利になるものにしようよ」

 

 バッサリーネが指を鳴らすと、うたとこころを閉じ込めていた拘束を解いた。

 

「今日のところはアナタ達の勝ちで良いよ。誰がどう見たってそうだし。でも、次はこうも上手くいかないよ」

 

 バッサリーネの視線はななからメロロンへと移り変わった。

 

()()()()()、メロロン」

 

 突然名前を呼ばれたメロロンは驚いて全身が震えた。

 

「メロロン、知り合いプリ?」

 

「し、知らないメロ」

 

 バッサリーネは豆鉄砲でも食らったような顔をした後、静かに笑いを溢した。そして小さく一言呟く。

 

「知らない、か。ま、そうだよね」

 

 バッサリーネは背を向け、手を振った。

 

「じゃあまたね」

 

 別れ際の挨拶を残して、バッサリーネはこの場を去って行った。

 勝ちを譲って貰ったやり取りに、最後はどうにも締まらない結果で終わりを告げた。




ここまでの拝読ありがとうございました
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