キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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第65話 はなみちタウンフェスに向けて

 お昼も過ぎた時間帯に、まもるはスマホで動画を観ながら歩いていた。

 クスリとはにかむ表情をしたり、今度は難しい表情をしたり。時には眉間に皺を寄せて呻き声を上げながらと、コロコロ表情を変えている。

 

 というのも、それも全て今観ている動画が原因だ。

 

 そこに映し出されている映像は、アイドルプリキュアの3人のステージ。こんなものをネットにアップした覚えはまもるには無い。当然、ステージに立っている3人も同様に。となると、消去法且つ前科のあるあの人物のせいだろうと考えた。

 

「これ絶対プリルンだよね?」

 

 何度もピカリーネからお仕置きをされているにも関わらず、この愚行。ある意味、メンタルだけは褒められるべきものだ。しかし見習いたくはない。

 

「でも、もしかしたらプリルンじゃないかも知れない。偏見だけで疑っちゃプリルンに失礼だし」

 

 独り言を呟いていると、目的地である喫茶グリッターの前に着いた。店内に入ろうとしてドアノブに手を掛けたタイミングでだった。

 

「あっ、まもるくん。こんにちは」

 

「なな……ッ」

 

 まもるは先日の告白の件を思い出して言葉を詰まらせた。加えて目を合わせられず背けた。

 

「……にちは」

 

「挨拶いつもより小さいね。もしかして、わたしを意識してなのかな?」

 

「そ、そんな事は違、くわはないです。ごめんなさい、前より意識してます」

 

 否定しようとしたが、すぐさまその言葉を呑み込んで肯定した。

 

「そう。なら告白して正解だ!」

 

「正解って……」

 

「だって、この前までは友達として見ていたけど、今はもうそんなんじゃないって。わたしの事をちゃんと見てくれてるんだって」

 

 彼女の小さな仕草にこそばゆい。ひとつひとつの仕草に目が行ってしまい、どうにも落ち着かない。顔は紅潮するばかりで、熱も収まらない。それどころか上がる一方だ。

 

「中に入ろうか」

 

「そうだな」

 

 今のやり取りだけでななは満足して、中に入ろうと促した。まもるも調子狂う今の雰囲気を抜け出したく、即答だった。

 

「「こんにちは」」

 

「あっ、なな先輩にまもるお兄ちゃん! 丁度良かったです。今から呼び出そうとしてたところなので」

 

 店内に入って早々、2人が目にしたのはこころの血相を変えた顔。何があったのかすぐに尋ねる。

 

「慌ててどうしたんだ?」

 

「聞いても驚かないで下さい。実はですね、わたし達アイドルプリキュアがはなみちタウンフェスに出場出来ちゃうんです!」

 

「本当なのこころちゃん⁉︎」

 

「そういえばこの時期だったね。フェスがあるのは」

 

「それだけじゃないんです。なんと、メインのステージまで任せられてるんですよ!」

 

 こころから聞かされたのは、はなみちタウンでも随一のお祭りイベント。楽しい事盛り沢山の中、1番の人気を博すのが、メインステージでの今話題になっているアーティストが歌うとされている。

 そんな栄えあるイベントにアイドルプリキュアが招待された。

 

「でも何で急に? ここ最近は確かに注目を集めているけど」

 

「それはですね……」

 

 こころは先程まもるが観ていた動画を見せた。そして、プリルンの方へ視線を向ける。

 モサモサとなったプリルン。その髪を整えようとするうたに、自分がやると言って聞かないメロロン。

 

 その光景だけで大体の経緯を察した。

 

「大方、あまりの拡散力に運営さんが目を付けたんでしょう。ま、アイドルプリキュアはトレンド上位にいつも食い込んでいますから遅かれ早かれって訳です」

 

 喜ばしい事なのだが、秘密にしないといけないアイドルプリキュアの存在がここまで公になっている事に心配の色を隠せない。

 ピカリーネからのお仕置きは、プリルンにしか向いていないから今の所は問題無いという認識できっといいのだろう。

 

「あっ、まもる君! それに、な、ななちゃんもこんにちは!」

 

 まもるとななの存在に気付いたうたが挨拶を交わしたが、妙に歯切れが悪かった。気不味そうな雰囲気を醸し出しており、いつものうたではないと思った。

 

「俺達の顔に何か付いてる?」

 

「ううん、大丈夫! 気にしないで! あは、あはは!」

 

「なら良いんだけど、ところで本当に人前で歌っていいの?」

 

「そこはまあ、問題は無いでしょう。折角の機会ですし、参加してみたら如何ですか?」

 

 カウンターに居る田中がそう告げた。まさか逆に参加の可否を訊かれる。大人の田中がそういうのなら、最終的な決定は自分達にある。

 

「じゃあ、張り切って参加しよう! おー!」

 

「皆頑張るプリー!」

 

「ありがとうプリルン。でもね、プリルンもだよ」

 

 応援するプリルンは、うたの言葉の意味をよく理解していなかった。何が自分もなのか。

 

「プリルンも一緒に頑張ろう。プリルンもアイドルプリキュアのメンバーなんだから」

 

「プリルンもアイドルプリキュアのメンバープリ?」

 

 信じられなく、思わずオウム返しでプリルンは言葉を溢す。

 

「とってもとっても嬉しいプリ! プリルンもはなみちタウンフェスのステージを盛り上げるプリ!」

 

「そうだ、特訓もしようよ! アイドルプリキュアとしてのレベルを上げたいし!」

 

 うたの一言で、全員が更にやる気を出した。

 

「ねえたまがそんなにやる気なら、メロロンも応援するメロ」

 

 メロロンもプリルンがやるならばと、いつもの調子で便乗する。

 

「特訓は良いけど、どんな風にするんだ? 皆そこら辺の知識は素人だから、実りのある内容すら思い浮かばないと思うけど」

 

「それはだよ」

 

 うたが田中に視線を向けた。仕事中の田中はその視線に気付き、手を止めて眉を顰めた。

 

「私、ですか?」

 

「マネージャーだもんね。きっとアイドルプリキュアが、すっごくパワーアップしてくれる特訓を教えてくれるはず!」

 

「全部田中さん任せなんだね」

 

 実際のところそれしかない。自分達が考えてやるよりかは、アイドルプリキュアの事を知るマネージャーの田中に任せた方が遥かに良い。

 

 上目遣いで少女3人がお願いをする。

 

「分かりました。マネージャーの名に懸けて考えましょう。地獄の特訓メニューを」

 

 

 ◯

 

 

 あれから数日。田中に呼び出された一同は、体操服の姿で浜辺へ集合する事となった。

 そして、着いて早々にうた達3人は縄を通したタイヤを腰に巻いて走り出す準備を整えていた。勿論、プリルンもその中に潜ってうた達と特訓。

 プリルンは、特別に小さなソリにメロロンが乗っているのを引き摺ってのやり方。タイヤだと、体格的に一歩も動く事が出来ないための配慮だ。

 

 少し日差しが強くなってきているこの頃。パラソルの下でまもるは、体操座りで3人の行方を見守っている。

 

「先ずは基本の体力作りから! よーい──」

 

 特訓開始の笛が鳴り響いた。それが合図となって、4人は一斉に走り出す。

 

「タイヤを引きながら砂浜で、か。なんというか、漫画でよく見る光景ですね」

 

「ですが、体力の向上。そして、キレのあるダンスをする為に必要な足腰の強化。これ以上うってつけのメニューはありません」

 

「体を壊さなきゃいいけど」

 

「大丈夫です。ペース配分も考えたうえでメニューを組んでおりますので。それに、その為のまもるさんですよ?」

 

 アイドルプリキュアの特訓に直接的なまもるの出番は無い。しかし、間接的な意味でなら手伝える。ひとりひとりの体調管理、それに精神的な部分でのケア。ただ辛い特訓をしているだけでは、身も心も保たない。

 

 そこで駆り出されたのがまもるだった。

 

「俺に何が出来るか分かりませんが、精一杯頑張りますよ!」

 

「その意気です。これが終われが、次はファンサ1000本ノックです」

 

「ふぁ、ファンサだけでそんなに。ハードですね……」

 

「ええ、ですから言ったではありませんか。地獄の特訓メニューと」

 

 田中のしごきが終わる事なく、うた達全員が気合を入れながら黙々と特訓をこなしていく。

 ファンサ1000本ノック以外にも、腹筋や徒競走に発声練習といった筋力トレーニングを中心に続ける。

 

 基礎となる土台がしっかりしていれば、そこから応用にきかせることも可能。

 

 こうして今日1日中、彼女達は沢山の汗を砂浜で流した。

 

 

 ◯

 

 

「皆、タオルにドリンク」

 

「づがれ゙だー!」

 

 普段以上の体力消費に全員疲労困憊。プリルンに至ってた、シートの上横になった途端夢の中へと旅立った。

 

「うたちゃんすぐ横にならない。クールダウンもしっかりしてから休んでね」

 

「はーい」

 

 返事をしつつも足腰が震えており、すぐには行動に移せないでいる。

 

「誰か、助けて……」

 

「うた先輩はわたしに任せて下さい。先輩、ストレッチしますよー」

 

 こころがうたの相手をしてくれる事になった。人数的に、まもるはななのクールダウンに付き合う事となる。

 

「ん……」

 

 そんな2人を横目でうたは眺めていた。

 

「うた先輩? あの2人がどうかしたのですか?」

 

「あ、いや! な、なんでもないよ?」

 

「その割には目が泳いでいますけど?」

 

 無言の凝視でうたの事を追い詰める。迫りくる圧に耐え切れなかったうたは、観念して固い口を開けた。

 

「あのね、2人の事が少し気になってて」

 

「気になるですか? おかしなところなんて、あるようには見えませんけど?」

 

「そういうことじゃなくてね。何というか、2人が話しているところを見ると、こう、胸が苦しいって言うか。キュッてなっちゃって」

 

「先輩それって……」

 

「何でだろうね。仲良くしているのは良い事なんだけど」

 

 胸の中にあるモヤモヤのせいで、ずっと目で追ってしまう。

 

「ごめんね、変なのは分かってるから。忘れちゃって!」

 

 気にするなと、自分に言い聞かせてうたはクールダウンを続けるのだった。




ここまでの拝読ありがとうございましたー
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