キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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第66話 幼馴染の距離感

 先日の砂浜での特訓から間もなくしてから、アイドルプリキュアは次のステップへ移行した。

 ある程度の基礎体力は付いたと思われ、今度はより実践に近い形での特訓だ。その為、今回の特訓場所はキラキランド出張所。

 

「「「ウィアー! キミとアイドルプリキュア!」」」

 

 軽い柔軟体操を終えて、早速3人はプリキュアに変身した。実践と同じやり方で練習を行う為、変身もするようにと田中の提案だ。

 

「それにしても、本当にこの出張所なんでもありますね」

 

 レッスンスタジオまで用意されているとは一同思っておらず、正直反応しづらい。この先、どんなものが用意されても驚かない自信が逆についてきた。

 

「あっ、始める前に。プリルン、メロロン、わたしからのプレゼントだよ」

 

 アイドルが2人に手渡したのは、いつもグリッターで歌う時に使っているスプーン。

 

「これでプリルンも、皆と一緒に歌えるプリ! ありがとう、うた!」

 

「メロロンは別に、こんなの要らないメロ。でも……」

 

 メロロンは、プリルンの様子を伺って少しだけ考えを改めた。

 

「ねえたまが喜ぶなら。貴女笑顔、一番星の煌めき。いつもわたしを導く道標」

 

 うっとりとした艶やかな表情に、潤ませる瞳。プリルンとのデートを終えてからというものの、メロロンのプリルン好きは以前より拍車が掛かっていた。

 

「よし、今度こそ始めようか!」

 

「あー、ちょっだけ良いかな?」

 

 張り切るまもるの隣で、またもアイドルがストップを掛けて水を差した。悪気がある訳じゃないが、こうも前に進まないとなると心配になる。

 

「今度は何かなアイドル?」

 

「まもる君、こっち来て!」

 

 アイドルは、まもるの腕を掴んで一度出張所の外へと出た。

 残された者達は、全員揃って首を傾げていた。ただ、キュンキュンだけはなんとも言えない表情をしている。まるで、キュンキュンだけがその意味を分かっているかのような。

 

 

 ◯

 

 

 普段、このような強引な行動を取らないアイドルにまもるは面を食らっており戸惑っていた。

 まさか、特訓について何か不満があったのか。「もしかしたら」というのに頭を悩ませていると。

 

「ね、ねぇまもる君。最近ウインクと距離が近くなったね。何かあったの?」

 

「そ、それは……」

 

「告白された」なんて事を口にして良いのだろうか。今のまもるは、その事についても相談したい状況。だが、皆今ははなみちタウンフェスを控えている身。変に頭を悩ませる事は避けたい。それに、自分を相手にするという時間に割きたくない。

 

 今が大事な時なんだから。

 

「そ、そりゃ少し仲良くなったよ。名前で呼び合うようになったし」

 

「そう、だよね。そうだよね。わたし、何言っちゃってるんだろう。当たり前な事なのに」

 

 お互い、無言の空間に戸惑う。まもるはアイドルが何をもって此処へ呼び出しのか。アイドルは、どうまもるに話し掛ければ良いのか。

 

「何も無いなら戻らないと」

 

「ま、待って!」

 

 出張所内に戻ろうとしたまもるの腕を、アイドルは掴んでこの場に留めさせた。あまりにも不自然な行動ばかりで、流石に肩をすくめる。

 

「ほんのちょっと、ほんのちょっとだけ2人で話したいの。ダメかな?」

 

「皆待ってるし後ででも──」

 

「今じゃなきゃやだ」

 

 我が儘を言うアイドルに目を見開いた。

 

 どこか緊張でもしているのか、アイドルの手は震えている。それに顔も紅潮しており、目も合わせたと思った途端すぐに背ける。

 

「分かった。少しだけだよ」

 

「ありがとう!」

 

 最近の中で一番の満開の笑顔を見せたアイドル。まもるはアイドルの手を引いて、近くの芝に並んで腰を掛けた。

 

「お話をするだけなのにそこまで喜ぶ?」

 

「うん。まもる君と話している時が一番安心するの。昔から」

 

「そっか」

 

 そよ風が吹き、アイドルの輝かしい髪が揺れ動く。アイドルは風の悪戯で乱れた髪を整える。耳にかき上げ、幼馴染にだけ見せる表情をする。

 

 そんな彼女の横顔に見惚れたまもるは、素直な言葉を送る。

 

「綺麗だね、アイドル」

 

「うぇ⁉︎ そ、そうかな?」

 

「うん。あっ、髪に葉っぱが付いてるよ」

 

「さっきの風かな? 取ってくれる?」

 

 これ以上髪を崩さぬように器用に髪に手を入れて、葉っぱを取ってあげる。その際、指先が僅かに接触してアイドルの頬が少し緩んだ。

 

「もーまもる君、くすぐったいよー!」

 

「ごめんごめん。ちょっとだけ我慢して貰えるとありがたいかな」

 

 必死になるまもるの顔を見て、アイドルは悪戯顔になる。

 

「隙ありー!」

 

「ちょっとアイドル⁉︎」

 

 急にまもるの脇下に手を入れては、お返しと言わんばかりにくすぐり始めた。そのまま傾れ込んでは2人一緒に笑いながら地面に寝転んだ。

 

「やり過ぎ」

 

「えー、まもる君が先じゃん!」

 

「葉っぱ取ろうとしたのに、その言い草は酷いな」

 

「わたしも、いきなりくすぐられてびっくりしたなー」

 

 ああ言えばこう言う。久し振りに、アイドルとなんの中身のない話をして心が温かくなった。

 

「ねえ、まもる君」

 

 アイドルは指を絡めながら手を握った。それもいつもとどこか感じが違う。ねっとりと指先でなぞりながら、それでいて優しく抱擁するように。

 

 この感覚、あの日の時と同じ。無意識に相手の事を見てしまい、無の根の高鳴りが鳴り止まない現象。

 ななが告白したあの日のシチュエーションと同じ。

 

「あのね、わたし──」

 

 その艶やかな唇から言葉を発しようとした時だった。

 

「あっ、アイドル此処に居たんですか? 探しましたよ」

 

 キュンキュンの声がして、悲鳴の声を上げながら2人は上体を起こした。

 

「皆が待ってますよ? 特にプリルンが早くアイドルと歌いと騒いでいます」

 

「ああ、ごめんごめん! 今から行くね!」

 

 アイドルはすぐさま立ち上がり、出張所へと戻って行った。

 

「俺はもう少し体を動かしてから戻るよ!」

 

「分かりました。田中さんにもそう伝えておきますね」

 

 今の状態のままで輪の中に戻る事は出来ない。

 

 アイドルやウインクに変化があるように、まもるにも変化の時が訪れようとしていた。

 

 

 ◯

 

 

「兄妹」という関係性にずっと甘えていたのかも知れない。付かず離れずの距離感に満足していて何もアクションをしてこなかった。

 

 でも、周りには隣が似合う女の子がいっぱい居て、小さなふれ合い積み重り、それはやがて別の感情へと変化もする。

 

 わたしはその些細な"変化"に気付き始めている。

 

(嗚呼、やっぱり……)

 

 外へ出てったきり中々帰って来ないまもるとアイドルを心配して、様子を見に行くと幼馴染特有の距離感で笑い、語り合い、触れ合っていた。

 

(いいな……)

 

 自分もあんな風に接しれば、まもるはもっと笑ってくれるだろうか。

 

 ジェラシー。

 

 そんな邪な気持ちが少し湧き出た。所詮、従兄妹同士。誰よりも近く、そして長い時間過ごしてきたつもりでいる。だけどそれはあくまで"従兄妹"。多分だが、異性として見てはくれてはいない。それは自分でもよく分かっている。

 

 引き換え、目の前にいるアイドルはどうだろうか。

 

「……やだな」

 

 呟く。

 

(やっぱり、しっくりきちゃうな。あの2人)

 

 普段のアイドルは好きだ。当然推しなのだから。でも、こと恋愛においてはまた別の話。

 

 だからちょっとだけ、意地悪したくなった。

 

「あっ、アイドル此処に居たんですか? 探しましたよ」

 

 アイドルが何か言い掛けた時を見計らって声を掛けた。

 

「皆が待ってますよ? 特にプリルンが早くアイドルと歌いと騒いでいます」

 

 この時キュンキュンは思った。「嗚呼、わたしってなんて嫌な女の子なんだろう」と。




戦闘の場面まで進めるつもりが、なんかアイドルと会話しているだけになった。


ここまでの拝読ありがとうございました。
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