キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva 作:シロX
とうとうこの日がやってきた。はなみちタウンフェス当日。
会場はフェス専用にステージが設置されており、そのステージを観ようと大勢の人が集まっている。そしてその端の一角にある小さなテント。そこには、これから出番を控えているうた、なな、こころの3人が居た。
「皆、これ見て」
トイカメラを片手に持ち、うたは2人に呼び掛ける。そして、フェスの運営スタッフと準備をしていた田中も後ろからその様子を伺う。
うたはトイカメラを操作して、とある一本の動画を観せるのだった。
その内容は、プリルンとメロロンが一度キラキランドに帰るという内容。アイドルプリキュアのメンバーとして、そして何よりキュアアイドルの力になりたい、守りたいという決意。
「これは、どう言う事でしょうか?」
田中がそう溢してしまうのも無理もない。何せ、今のキラキランドの有様はとても酷いものだ。チョッキリ団の襲撃時はプリルンとメロロンもその場に居合わせている。2人が今の惨状をよく知るというのに、何故戻る必要があるのか。
田中はそう疑問に持つ。
ななやこころも一緒になって頭を悩ませるが、2人の意図が分からずじまい。
「信じて待とう」
折角の晴れ姿を見せられないのが残念だが、ここで心配してステージを暗くさせる訳にはいかない。うたはプリルンを信じて待つ事を迷わず選んだ。
「プリルンも頑張ってるんだから、わたし達もそれに負けないくらい頑張ろう!」
「そうだね!」
「はい!」
「じゃあ変身して──」
「うたちゃん、まもるくんは?」
アイドルプリキュアに変身しようとした矢先、この場に居ないまもるに気付いてななが言葉を発した。
「言われてみれば、確かに?」
「わたし今日はまだ見てないけど?」
うたもこころも、誰もその姿を見ていない。田中に一同視線を向けるも、首を横に振って主張している。
プリルンとメロロンに続いて、まもるまで行方不明に。
そんな時だった。
「お、お待たせ! 遅れた!」
「うぇ⁉︎ まもる君、どうしたのその大量の汗!」
息を荒げ、全身汗だくでまもるがテント内に入ってようやく合流した。けれど、その姿を見て一同は驚く。
「プリルンが頑張るって言ってたから、俺も俺なりに頑張ってて」
「まもるさん、何故貴方がプリルンの事を?」
「えっ、その様子だともう皆知っている?」
質問に質問で返してしまった。しかし、その一連の対応でお互いある程度の状況を察した。
「それなら話が早い。俺も、プリルンもアイドルプリキュアの為に奮闘してるって事だよ」
「そうなんだ。まもる君、ありがとうね」
「お礼を言われる事はまだしてないんだけど。それはそうと、そろそろ出番じゃないか? 皆待ってるよ」
「いよいよですね。張り切って変身を──」
「あっ、ちょっとだけ待って」
ズルッと3人は肩を落とす。2度目の待ったに、3人は薄目でまもるを見つめる。再々変身を止めてしまった事には申し訳ないと思う。
それでもまもるは、今伝えておかなければならない事があるのだ。
「皆、次カッティーが現れた時なんだけど。その時に──」
◯
うた達と別れたまもるは、いちファンとしてそのステージを見る為に会場の方へと移動していた。
キラキライトを両手に持ち、いつでもアイドルプリキュアを応援出来る体勢を整える。
(マネージャー見習いの俺だけど、それはあくまで皆と一緒に居る口実に過ぎない。俺はファンなんだ。ファンはファンらしく、此処で皆を応援)
一人、後方彼氏面をするまもる。丁度そのタイミングでステージから音楽が鳴り響いた。開演の時間だ。
舞台袖から出てくるはアイドルプリキュア3人。
「こーんにちはー!」
アイドルの挨拶で会場は更に盛り上がる。まもるはその様子見て、スマホを取り出してあるものも確認をする。
「うん、配信もちゃんと出来てる」
このはなみちタウンフェスは、リアルタイムで配信されている。この場に来れなかった人達にも、これならアイドルプリキュアと同じ時間と空間を共に共有出来る。
「相変わらず田中さんは凄いな。マネージャーだからこそ思い付くアイディアだ」
田中の仕事っぷりに感心して、スマホを仕舞い込んだ。わざわざ本物が目の前に居るのだ。配信も配信で良い空気が流れているが、生の姿を見逃す訳にはいかない。
まもるも他の人と一緒になって声を出そうとした、その時。
一瞬足が浮かんでしまうほどの衝撃と揺れが会場全体を襲った。その発生原因となったのは観客の後方。振り返ると、そこにはカッティンダーが居た。
「か、カッティー⁉︎」
カッティンダーが突如出現した事で空模様が一転して暗闇に包まれ、会場は大騒ぎとなってしまいライブどころの話ではなくなった。
蜘蛛の子のように逃げ惑う観客。冷静に田中は避難誘導をし、まもるはステージ上に居るアイドル達の元へ駆け寄った。
「まさかライブ中に押し掛けるなんて、流石ファンだな」
「って、そんな呑気な事を言ってる場合じゃないですよ! それに見て下さい! 前より形変わって強そうですよ!」
キュンキュンの言うように、細部が前回とは違っている。何らかの影響で姿が変わったに違いない。
「"強そう"じゃないの。"強い"のよ」
ステージの建物の上、パッチリーネが傍観していた。
「少し細工を施したの。カッティーの心には、僅かにキラキラが残っていたからそれをぎゅっと握った」
「クッ、やっぱり避けられないんだね。カッティー」
「カッティンダー‼︎」
カッティンダーの咆哮が、まもるとアイドルプリキュアの鼓膜に届く。
ここまで来てしまった以上、互いに退けない。退く事なんて出来ない。
「3人共、最初から全力で応援するよ!」
「「ッ!」」
ウインクとキュンキュンが先行した。
「キュアアイドル! ディーヴァ・ステージ!」
まもるのキラキラを受け取り、淡く輝くアイドルが舞台を蹴る。
前回の反省点としてひとつ挙げるとしたら、それは長期戦に持ち込んでしまった事だ。いくらディーヴァ・ステージで身体能力を向上させたとしても、アイドルプリキュアの体力が落ちていてはその真価は発揮されない。
「様子を窺って後手に回ってしまうくらいなら、最初から飛ばせるだけ飛ばす!」
ウインクとキュンキュンが左右に散って、意識がアイドルから外れた。そこを突いて、すかさずアイドルは右拳を叩き込んだ。
その身で受けたカッティンダーだが、見た目だけじゃなく中身までパワーアップしているのか大したダメージが入っていない様子。
(完全にディーヴァ・ステージを上回っている。ダメージが入っていない訳じゃないけど。結構タフだ)
「でも大丈夫だから。まもる君は、安心してわたし達を応援して」
冷静な観察眼でまもるの顔から今の心情を読み取ったアイドルからの檄。本来ならまもるが檄を飛ばす側。改めて気を引き締める。
(そうだ。冷静に戦局を見極めて、それにあった応援をすれば良い)
今はアイドルを中心とした攻めの構え。このまま押し切っても問題は無いが、その場合全体の動きにやや単調さが見られる。いずれそこを突いてくる可能性もある。
時に熱く、冷たく、激しく、穏やかに。緩急をつけてテンポを狂わせる。
タイミングを見計らう。
「キュアキュンキュン! ディーヴァ・ステージ!」
アイドルの攻撃がヒットした直後、応援する推しをキュンキュンへと切り替える。
「アイドル! ウインク!」
キュンキュンを中心とさせた事で、全体の動きに変化が訪れる。決して無理はせず、攻める時は攻め、守る時は一度距離を置くヒット&アウェイの戦法。
常に自分達のリズムを崩さないように細心の注意を払う。
「いける、いけるよアイドルプリキュア!」
ウインクが右足を払い、膝がついた所にアイドルが背中に膝蹴り。四つん這いになったところへすかさずキュンキュンが後頭部に手の平で叩く。
うつ伏せで倒れるカッティンダーを見て、まもるはウインクに声援を送る。
「決めちゃえ! キュアウインク! ディーヴァ・ステージ!」
不規則に続くディーヴァ・ステージ。それをベストなタイミングでまもるが仕掛け、相手にペースを握らせないようにする。
(これが今出来る、最善の戦い方)
この調子で行けば必ず勝機は舞降りて来る。
「どうせ応援が力になるって、またおめでたい考えしてるんじゃないのかしら?」
傍観をしていたパッチリーネがとうとう建物から降りたきた。そして、パッチリーネはまもるへと近づいた。
「実際このままではカッティンダーは負ける。流石のワタシもそれだけは避けたい。凄いね、そのディーヴァ・ステージって」
しかし、前回と違ってその距離感が明らかに異常だった。
「でも、もうそれもお終い。だって」
まもるの正面から、大きな影が彼を覆った。まもるも、あまりの光景を前にして目を見開いて驚愕する。
本人含め、アイドルプリキュアの3人も「何故?」という思想が生まるほど。
「もう二度と、アナタはディーヴァ・ステージを使えないから」
アイドルでもなく、ウインクでもなく、キュンキュンでもない。パッチリーネはまもるの前に躍り出た。
脅威度で言えば、圧倒的にアイドルプリキュアが上だ。逆にまもるはお世辞にも戦える力は無い。それでも彼を狙うという理由があるとすれば、やはり彼のキラキラ。
「使えないってどういう事だよ?」
「アナタのディーヴァ・ステージは幾つか弱点が存在してる。中にはアナタ自身も知らない弱点がね」
「だとしても、俺のする事は何も変わらない。ウインク……ッ⁉︎」
パッチリーネを避けて、いつも通りウインクを応援しようとすると追従してまもるの正面に立ってくる。
「まもるくん!」
ウインクをこの目で捉えられない。どうにかしてアイドルプリキュアの応援をしたいが、先程からパッチリーネが邪魔をして全然声が出せない。
「もう邪魔!」
フェイントで交えてかわそうと必死になるも、パッチリーネが壁となって妨害をするばかり。まもるに対して手を出していないだけマシだが、彼の立場からすると応援が出来ない方が余程ストレスになって苦しい。
「そろそろかな」
「まもるくん大変! まもるくんのキラキラを受け取れてない!」
「なんだって⁉︎」
改めてパッチリーネを見るとほくそ笑んでいた。その表情から察するに、この展開になる事を最初から狙っていたかにも思える。
「ディーヴァ・ステージはキラキラもそうだけど、集中力も要する。応援もそうだけど、誰に対して向けるのかもそれに該当する。だけど、それを遮るようにしつこく正面に立てば、いやでも意識せざる得ない」
「そんな単純な方法で俺の応援が──」
「アナタの応援も所詮はその程度だったようね。ふふっ、そのファンとしての熱量は褒めてあげるけど」
意識から外す、というだけの事で全てを崩された。拳を強く握り、自分の弱さを嘆く。
「まもる君の応援が……」
「お兄ちゃん……」
敵の雰囲気に呑まれ、アイドルやキュンキュンも意気消沈する状態。たった1人を除いて。
「そんなまやかしで、まもるくんが応援を止めるなんてないよ。だってまもるくんは、いつだって、どんな時だってわたし達を応援してくれたから!」
「それがどうしたっていうの? 感情論で乗り切れる程、カッティンダーは甘くないし、それでワタシが場の空気を読んで手加減するとでも?」
「だからまもるくん、わたし達にまもるくんの全部をちょうだい!」
この目で見えなくても、ウインクの言葉が心の奥底まで届いた。その熱いはまもるだけじゃなく、アイドルとキュンキュンにも伝わる。
4人は目付きを変えて、再び臨戦態勢を整えた。
「萎えるどころか、逆に滾らせた。これだけの圧倒的な差を見せつけられても、諦めないその心だけは感服する。だけど、どうやったってひっくり返す事は出来ないよ!」
アイドルプリキュアが動き出す。それに合わせてまもるもパッチリーネを振り払おうとするが、案の定ピッタリくっ付いて離れない。
「アイドル! ウインク! キュンキュン! テントで
「何をしようと無駄よ。アナタの応援は届かない!」
完全に壁となってまもるからでは、アイドル達の姿は影すら見えていない。ディーヴァ・ステージ封じは絶対。なのに、パッチリーネは妙な胸騒ぎを感じている。
「ッ⁉︎」
まもるのキラキラが更に増幅した。何を企んでいるのか知らないが決して油断はしない。念の為、パッチリーネは振り返ってアイドルプリキュアの様子を見た。
(変わった様子はない。所詮ハッタリ──)
「
ウインクとキュンキュンが地面を踏み締めた瞬間、両者同時にその姿をパッチリーネとカッティンダーの視界から消した。
「ウソッ⁉︎」
次の瞬間カッティンダーは、姿を現した2人の踵落としによって頭部を蹴られ地面に沈んだ。
「そんな、一体何が起きたっていうの?」
カッティンダーどころか、第三者の目線として見ていたパッチリーネでさえもその動きを目で捉える事が出来なかった。だけど、それでもはっきりとしたものは目にしている。
ウインクとキュンキュンは、ディーヴァ・ステージ特有のキラキラをその身に纏わせていた。
「あの動きと威力。それに2人が纏っているあのキラキラはもしかして、ディーヴァ・ステージ?」
「だがおかしい」とすぐさま疑念を抱く。
焦燥感に駆られているパッチリーネを見ているアイドルプリキュアは「上手く行った」の表情をしていた。
(やった! まもる君が話してくれた通り上手く行ってる!)
(この局面を絶対皆で乗り越えてみせる!)
(その為のまもるお兄ちゃんの新しい応援!)
そう、名付けて。
「「「ディーヴァ・ステージ オーバーソング!」」」
全員、
次回は1話分丸々使っての戦闘回(オリ回)です。
ここまでの拝読ありがとうございました!