キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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第70話 オーバーソング

 劇的な反撃と復活にパッチリーネは驚愕している。アイドルプリキュアは、先程までの苦戦は演技だったのかと思える程カッティンダーを押し始めている。

 

「何をやっているの。早くアイドルプリキュアを潰しなさい!」

 

「カッティンダー‼︎」

 

 荒々しい声に呼応して、カッティンダーが吠えた。一段と早い攻撃を、アイドルは素早く見切り、最小限の動きのみで回避からのカウンターでやり返した。

 

「「やった!」」

 

 歓喜の声を上げるウインクとキュンキュン。その対極にパッチリーネは焦らずにはいられなかった。

 

「キュアウインクやキュアキュンキュンだけじゃない。キュアアイドルまで。何かがおかしい」

 

 このカラクリを探る為、まもるの事を要観察する。

 

「ディーヴァ・ステージは完全に封じ込めた。なのにどうして? 仮にそうだとしても、どうやって3人同時なんて……ちょっと待って、それ!」

 

 細部に多少なりと異なっているが、まもるはアイドルプリキュアと同じインカムをしている事に今更ながら気付いた。そして、そのインカムにはまもるが所有していたプリキュアリボンがセットされている。

 

「『ディーヴァハートインカム』。そんなところかな。さあ、もっともっと応援するよ」

 

 オーバーソングの力によって、戦局は大きくアイドルプリキュア側へと傾いた。

 

「まもる君、無理だけはダメだよ!」

 

「分かってる。うん、十分分かってるよ」

 

 カッティンダーに一撃を与える毎に、アイドルはわざわざまもるへと視線を向けていた。信頼はある、けれど心配もある。そんな眼差しで。勿論アイドルだけに限らず、ウインク、キュンキュンも同様。

 

(まもるくんの新しい応援の仕組みは簡単なもの)

 

 これまでのメロロンの言葉をヒントに、まもるはこの力の可能性を探っていた。

 オーバーソングは、通常のディーヴァ・ステージと違って主に二つ大きく変化した。

 

 一つは、ディーヴァハートインカムを介す事で範囲での制限を克服。これによって、以前よりもディーヴァ・ステージそのものの発動条件が緩和。

 

 二つ、従来のディーヴァ・ステージは対象が1人までに対し、オーバーソングは対象を同時に3人まで可能とさせている。横の展開が大きく広がり、最高のパフォーマンスでアイドルプリキュアの良さを活かせられる。

 

 これが、まもるの新しい応援の力。ディーヴァ・ステージ オーバーソング。

 

(ただ、まもるお兄ちゃんもその可能性とは違う、別のある事も懸念点も打ち明けてくれた)

 

 それは──。

 

「ふーん、観察してある程度分かってきた。紫雨まもるの新しい応援の仕組み。だけどそれって、単に自分達の首を絞めてるだけじゃないかしら?」

 

 ピクリとまもるの眉が動く。

 

「……何の事かな?」

 

「惚けないで。オーバーソングは、普段のディーヴァ・ステージの要領で三等分をしている。でもそれって、言い換えれば引き受けるダメージも分け与えるキラキラも、以前より3倍になったって事だよね?」

 

「……ッ」

 

「でも問題はそこじゃない。アナタ達が一番気にしているのは"その先"だよね?」

 

「参ったな。なんでもお見通しか」

 

 まもるやアイドルプリキュアが、最も恐れている事を的確に答えられた。

 

「オーバーソングは強力な反面、莫大なエネルギーを強いられる。例えるなら、常に全開で蛇口を捻っている状態。どんなものにも必ず底がある」

 

 つまり、パッチリーネが言っているのは。

 

「要は、体力が切れた瞬間アナタ達の負けなのよ。仮にオーバーソング無しでこの場を乗り切ったとしても、切り札を使ってカッティンダーを倒せない力はこの先どう足掻いたって通用しない」

 

「別に良いだろ、そんなの」

 

「良くないね。だいたい、アイドルプリキュアも同じよ。こんなの、ファン1人にこの先全ての責任を背負わせているのと同義」

 

 パッチリーネは髪をかきあげ、バツが悪そうな表情で笑った。

 

「全くイカれてるわ。こんなの、玉砕覚悟の特攻同然じゃない⁉︎」

 

「プリルンと約束したんだ。アイドルプリキュアは、キュアアイドルは俺が支えるって」

 

 まもるのキラキラが、更にアイドルプリキュアに送られる。それを得て、3人の動きはまた一段とキレを増す。

 ウインクとキュンキュンがカッティンダーの体勢を崩し、すかさずアイドルの拳三連撃が突き刺さる。

 

「ならもう止めないわ。好きになさい」

 

 壁となっていたパッチリーネだったが、どうやらまもる達の覚悟を察して身を引いた。まもるはその様子を尻目に横を通り過ぎる。

 

 これで邪魔をする者は居なくなった。

 

(こっからはもうお互いに殴り合いだ。全力で応援するんだ!)

 

 キラキラを通じてか、アイドル達の目付きが鋭くなる。

 

「ウインクバリア!」

 

 カッティンダーを囲うように、数十という膨大な数のバリアが一気に展開された。大きな身体に対しての物量。ひとつひとつの動作に支障をきたす。

 

「キュンキュンレーザー!」

 

 キュンキュンレーザーがウインクバリア目掛け放たれる。バリアからバリアへと乱反射して、途切れる事の無い攻撃にカッティンダーは全身を痛め付けられる。

 

 優位な状況でも、まもるは声を出すのを止めず、アイドルは駆け出している。

 

「アイドル! 頑張れー!」

 

 アイドルは跳躍し、無数に空中に展開されているウインクバリアを足場にして超高速で撹乱。その速さは、地上で走る時以上のもの。当然、ウインクバリアの阻害も相まってアイドルを捕まえる事が出来ない。

 

「アイドル──」

 

 カッティンダーの正面。ブローチをタッチする動作をカッティンダーは捉えた。手を伸ばし、捕まえようとしたが。

 

「ウインクバリア!」

 

「キュンキュンレーザー!」

 

 アイドルの足元にウインクバリアが出現し、それを台にして蹴り、瞬く間にその姿を消した。直後、キュンキュンレーザーがカッティンダーの顔面に直撃する。

 

「グータッチ!」

 

 姿を消したアイドルは、死角外からのアイドルグータッチで叩き付けた。

 

「カッティ……」

 

 超高速で行われた連携。オーバーソングあってのものだが、それでも神経を擦り減らしてやってのけた所業。立て続けにやるのはまず不可能。

 

「カッティンダー‼︎」

 

 これだけ手を尽くしても尚、カッティンダーが倒れない。

 

「いくらなんでも頑丈過ぎますよ」

 

「でもやらなくちゃ。もう一度やるよ、アイドル、キュンキュン!」

 

「はい!」

 

「……っ」

 

 ウインクの呼び掛けにアイドルだけ反応が薄い。

 

「アイドル大丈夫?」

 

「あっ、うん。大丈夫だよ。あともうちょっと、頑張ろう」

 

 今にも崩れ落ちそうな状態。無理もない。一撃貰うだけで、まもるに重度の負荷が掛かる。如何に攻撃を当たらず、こちらの攻撃を与えるかで精一杯。他人の声なんて聞いている暇なんて無い。つい、空返事になってしまうのも仕方がない。

 

 何をするにも3人はお互いを信頼して、全て直感で動いている。

 

 3人共、集中力が少しずつ落ち始めている。

 

「避けて!」

 

 まもるの呼び掛けで、3人は見上げた。既にカッティンダーは攻撃体勢に入っている。

 到底見てから避けるなんて無理だが、オーバーソングの状態なら問題はない。

 

「ディーヴァ・ステージ オーバーソング!」

 

 後ろに下がって回避しようと跳躍した時、それぞれ違和感を感じた。感じ取った直後、無防備にもカッティンダーが振り回した腕がヒットして3人は無様に吹っ飛んだ。

 

 地に伏せる3人だが、それぞれ自身の安否よりも後ろで応援しているまもるに不安が募る。倒れながらも、まもるの様子を窺った。

 

「ま、だ……いけるッ!」

 

 膝は折れているが、まもるの瞳にはまだ火が灯っている。だけど限界がそろそろ近付いている。

 先程3人が感じた違和感。ディーヴァ・ステージでなら余裕で避けれる場面だったがそれが出来なかった。

 

 答えは単純だ。ディーヴァ・ステージの効力が切れ掛かっている証拠だ。

 

「ウインク、キュンキュン……」

 

 僅かに意識はあるみたいだが返事をしない。

 

「こうなったら、一か八かやってみるしかない!」

 

 アイドルは考えた。アイドルグータッチっでカッティンダーが大きく怯んだところに、最後は自分の歌を届けさせる。もうこれしか無いと踏み、最後の力を振り絞って立ち上がる。

 

「まもる君、お願い!」

 

 一心不乱に地面を蹴って、ブローチをタッチした。まもるも残りのキラキラを全てアイドルに注ぎ込む。

 

「アイドルグータッチ!」

 

「ディーヴァ・ステージ オーバーソング!」

 

 渾身の一撃がカッティンダーに減り込んだ。しかし、アイドルグータッチをまともに食らった筈のカッティンダーは変わりなかった。怯んだ様子も無く、後ずさる素振りも無い。

 

 そこで完全に察した。

 

(もう、ダメなんだ。もう、まもる君の応援が聞こえなくなってる)

 

 技を放った直後に、まもるの体力は底を尽いた。

 

「案の定、ガス欠ね」

 

 こうなる事を最初から予想していたパッチリーネは、呆れながら呟いた。

 

「カッティン──ダー‼︎」

 

 反撃を貰ったアイドルは地面に叩き付けられ、背中を強打。更に追い打ちを掛けるように、カッティンダーは口から光線を放って全員を一掃する。

 

「よし、終わりっと」

 

 ステージを背後にして、4人はその場で瀕死寸前。切り札であるオーバーソングも最後まで保たず、万策尽きて呆気ない幕切れとなった。

 

「まもる、君……」

 

 アイドルは地面を這いずりながら、まもるの手を握る。

 

「あ、アイドル……」

 

「まもる君だけでも逃げ、て」

 

「嫌だ」

 

 まもるはその手を握り返して突っぱねた。

 

「絶対に逃げない!」

 

「このままじゃ、まもる君が……逃げて、逃げてよぉ」

 

 涙声になるアイドルの頬をそっと撫でる。

 

「俺は、最後まで応援する。途中で投げ出さない」

 

「だよね、まもる君はいつだってそうだもん。うん、分かった。なら、わたしの側に居て」

 

 抱き締める形でアイドルはまもるに寄り添い、瞳を閉じて、お互いの額を擦り付けた。

 

「はいはい、そういう変なお熱いムードはいいから。カッティンダー、頑張ったアナタがこのステージに華を咲かせなさい」

 

 4人の元へ、魔の手が差し迫る。

 

 その時だった。一筋の白い閃光がカッティンダーの眉間に直撃した。その後、更に黒い閃光の追撃でカッティンダーが派手に吹っ飛ばされた。

 

「何ッ⁉︎」

 

 思わぬ事態に、パッチリーネは目を見開いた。

 

「ふぅ!」

 

「んっ」

 

 突如として4人の窮地を救い、目の前に現れた白と黒の姿をした謎の2人組が現れた。

 

「誰?」

 

 弱々しくも、アイドルがそう尋ねる。

 

「キュアズキューン!」

 

「キュアキッス」

 

 全員の視線を釘付けにした白と黒の2人組は、そう名乗った。




ここまでの拝読ありがとうございました!
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