キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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第72話 うた、ズキューン沼にハマる!

 先日のはなみちタウンフェスでの騒動。騒ぎの原因を作ったカッティンダーで話題持ち切りかと思われていた。しかし、キュアズキューンとキュアキッスの話題がそれを遥かに上回り、全て掻っ攫っていった。その為、怪物騒動の件に関しては案外早くも落ち着きを取り戻している。

 

 季節ももう夏に移り変わろうとして、私服や普段着用している制服も衣替えの時期。それ以外の変わりようはない。なんて思っていたのだが。

 

「ズキューン……」

 

 うただけは、異常とも言える程いつもとは調子が全く異なっていた。それも今日1日中「ズキューン!」朝から学校、そして今に至るまでずっと口ずさんでばかり。授業は勿論、そうでない時も心ここに在らずと言った様子。

 

「参ったな。うたちゃん、完全にキュアズキューンの虜になっちゃってる」

 

 幼馴染のまもるでさえも、この様なうたの姿を目にするのは初めてだ。故に対処の仕方を全く思い付かない。

 

「まもるくん、呼んできたよ」

 

 困っているのはななも同じだった。その為、この対処を上手く出来るのはこころだけしか居ないと踏み、ななは此処2年生の教室に招き入れたのだった。

 

「ありがとうなな。こころもありがとうね、よしよし」

 

「会う度に頭を撫でないで下さいよ。それで、まもる先輩。うた先輩の様子は如何ですか?」

 

「こんな風」

 

 今のうたはずっと「ズキューン」としか言わない。そんな姿を早速こころに見せると、何か納得した感じで頷いていた。

 

「頭から離れないっていうか。まもるくんと相談して、アイドルプリキュア研究会をやってるこころちゃんに聞いてみようって」

 

「それなら簡単。診断完了です!」

 

「えっ、もう⁉︎」

 

「はい。わたしも絶賛そうですし、なんならまもる先輩も最初から分かってたんじゃないですか?」

 

 こころは、まもるに視線を向けた。こうなってしまった問題を説明出来るのに、何故わざわざ自分に頼ってきたのか。

 

「うたちゃんって、こういうの本当に初めてなんだよね。だから、良い機会だし一から説明して貰った方が話が早いかなって」

 

「2人はなんなのか知ってるのよね? 教えて欲しいな」

 

 早く教えて欲しいとせがむななに、こころは丁寧に説明を始める。

 

「これはズバリお熱です。つまり、うた先輩はキュアズキューンのファンになったんです!」

 

「ファン……!」

 

「ようこそキュアズキューン沼へ。そして、推し活の世界へ!」

 

「「なるほど。で、それって何?」」

 

 ななもそういった経験が無いらしく、2人が口を揃えてこころに問い掛けた。待っていましたと言わんばかりに、意気揚々にこころは簡単に詳しく話した。

 

「"推し活"っていうのはですね、自分が推している、つまり人にオススメしたいくらい好きなアイドルを色んな形で応援する活動のこと」

 

「色んな、形?」

 

「例えば?」

 

「人それぞれだけど。一般的にグッズを沢山買って貢献したり、コスプレしたり、色んな物を身に付けて推しが好きっていう気持ちを全面に出したりだとかな」

 

 こころの説明に、まもるがひっそりと補完してより分かりやすく整理させる。

 

「参考例として、目の前に居るこころだね。グッズを自作したりするのも推し活の一種ということ」

 

「はい! わたしを是非参考にして下さい!」

 

「あくまで参考であるから、ここまでする必要はないよ。参考であって、参考じゃないから」

 

「それどういう事ですか?」

 

 グッズを自作するまでの領域となると、正直推し活初心者にはあまり参考にならない。というより、出だしとしては少々ハードルが高過ぎる。

 一番は、マイペースで推し活する事が大事だ。

 

「続いて"沼"。キュアズキューンやアイドルプリキュアをどんどん好きになって、底無し沼みたいにハマって抜け出せなくなっちゃうよーっていうのが沼です」

 

「うたちゃんは今、その底無し沼にハマっている状態ってわけ」

 

 まもるとこころの説明に、2人はちゃんと理解してくれた。

 

「という事で、お三方をアイドルプリキュア研究会に入会させますね!」

 

「何が『という事で』なの⁉︎ うたちゃんはともかく、俺やななまで。強引な布教活動は、あまり褒められたもんじゃないよ?」

 

「気にしないで。わたしもわたしで面白そうだから」

 

 本人がそう言うのであれば、まもるからはこれ以上何も言わない。

 

「なら決まりですね。それで、まもる先輩は入会しないのですか?」

 

「俺は別にいいよ」

 

「まもる君、入らないの⁉︎」

 

「折角だから、まもるくんも入ってみたら? アイドルプリキュア研究会」

 

 ジリジリと迫る3人に気圧され、壁際まで追い込まれてしまった。この雰囲気、それに上目遣いまでされて否定的な言葉なんで出る筈も無く。

 

「……分かりました。入ります」

 

「「「やった!」」」

 

 潔く折れる事にした。

 

 

 ◯

 

 

 学校も終わり、いつもの様に喫茶グリッターで集まった面々。ようやく落ち着けるかと思いきや、推しというものに目覚めたうたにとってはそんな素振りはない。寧ろやる気に満ち溢れていた。

 

 喫茶店での仕事を積極的に行い、普段以上のタスクをこなしていた。こころ曰く「推しが出来た時あるある」らしい。

 

 そんな訳で、張り切るうたのお陰でいつもより一緒に過ごす時間が増えた。喫茶店の2階に場所を変えて、改めて4人はズキューンキッスのライブを見返していた。

 

「やっぱりズキューン良いなー!」

 

「熱冷め止まずって感じですね。ですが、その気持ち大いに理解出来ます!」

 

「まもる君もそう思うよね!」

 

「うん、キュアズキューンはアイドルプリキュアに持っていないものを持っている。でも俺は」

 

 歯切れの悪い言い草にななが尋ねた。

 

「何か気になるの?」

 

「気になるっていうか、まあ気にはなってるかな。キュアキッス」

 

 先日キュアキッスから言われた言葉。もう応援するな、という忠告がどうにも気掛かりだ。単に、気遣っている意味ならそれでいい。

 

 深く考えていると、まもるは今更ながらとある妖精2人の事を思い出した。

 

「そういえば、プリルンとメロロンはまだ帰って来てないね。大丈夫かな?」

 

「キラキランドに帰って、時間は経ってはいますしね」

 

「わたし心配だな」

 

 まもる、こころ、ななの順に2人が居ない事に心配の色を抱いている。

 

「きっと大丈夫! 待っててって言ってたから、プリルンを信じよう!」

 

 うただけは心の底から信頼している。いつもトラブルの中心のプリルンだが、それでも約束を破る様な子ではない。

 

「あの、すみません。美しくまとまったところで恐縮なんですが、私キラキランドに帰って様子を見てこようと思います」

 

 1階から顔を覗かせた田中の唐突な帰省発言。4人は目をまん丸にして、田中の話に耳を傾ける。

 

「ピカリーネ様からも連絡が来ませんから、ここは行ってみるしか。お2人の事は、私に任せて下さい」

 

「それは、心配ですね。そうなると、プリルンや田中さん抜きでアイドルプリキュアをやらないといけませんね」

 

「大丈夫だよこころ! 確かにわたし達だけじゃ少し心細いかも知れないけど、田中さんが直接プリルン達を迎えに行ってくれるのならわたし頑張れる!」

 

「うたちゃんらしいね」

 

「田中さんが居ない間は、その分俺がフォローするよ」

 

 うたもななも、そしてまもるも田中の案に賛成。じっとしてても何も始まらない。ならいっそ、こちらから出向いてみるのも一つの手だ。

 

「田中さん、お願いします!」

 

 全員が田中に頭を下げた直後、地響きとその衝撃で僅か数センチ程体が浮き上がった。

 何事かと思い、一同は窓から外の様子を伺い原因を突き止めた。

 

「「「「チョッキリ団!」」」」

 

 全員目を合わせて小さく頷く。

 

 急いでグリッターから飛び出して、アイドルハートブローチとプリキュアリボンを手に取る。

 

「「「プリキュア! ライトアップ!」」」

 

 プリキュアリボンをブローチにセットし、3回タッチした。

 

「「「キラキラ、ドレスチェンジ! YEAH!」」」

 

 ブローチのボタンを同時に押し、3人は掛け声と共に膨大なキラキラに覆い尽くされ変化を遂げる。

 

「キミと歌う、ハートのキラキラ! 笑顔ニッコリ、キュアアイドル!」

 

「キミと瞬く、ハートの勇気! お目目パッチン、キュアウインク!」

 

「キミと踊る、ハートのリズム! 心キュンキュン、キュアキュンキュン!」

 

「「「ウィアー! キミとアイドルプリキュア!」」」

 

 変身完了させた3人。意気込んで現場に急行しようとしたが、アイドルとウインクはまもるに一旦顔を向ける。

 

「ど、どうしたの?」

 

「まもる君を置いて行っちゃうから」

 

「また運んであげるね!」

 

「ありがとう。じゃあ頼んだよ、キュンキュン」

 

「この流れでわたしですか⁉︎」

 

 これまでの2人の行いから考えると、正直頼みたくないのがまもるの本音。まだキュンキュンには運ばれてはいないので、それならばとまもるは選択した。

 

「運んでいる時の2人結構雑だから……」

 

「大丈夫だよ! 落ちてもキャッチするから!」

 

「アイドルの言う通り。落ちてもわたしがバリアを張って助けるから!」

 

「だから、落とす前提で話すのやめて貰っていいですか⁉︎」

 

 まもるを運ぶか運ばないのか。その事で揉める事数分が経ち、痺れを切らしたキュンキュンが一つ提案をする。

 

「埒があきませんので3人、3人でまもるお兄ちゃんを運びましょう!」

 

「おぉ! キュンキュンナイスアイディア!」

 

「1+1+1=無限だもんね!」

 

「嫌な予感がするので、ものすごーく拒否したいです!」

 

「「「ダメ!」」」

 

「もう、なんでぇ⁉︎」

 

 ウインクとキュンキュンはまもると捕まえて、逃げられない様にガッチリ固定する。そしてアイドルは謎の自信でサムズアップ。

 

 アイドルを前にして、3人は手を繋ぎ、まもるの両足を持ち上げる。絵面としては、完全に運動会の騎馬戦の構えである。

 

「出発進行!」

 

「「おー!」」

 

 未だ恐怖の念は消えないが、流石に3人ならとたかを括ってアイドル達に身を任せるまもるであった。




ここまでの拝読ありがとうございました!
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