キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva 作:シロX
なんの前触れもなく現れたパッチリーネを前に、ズキューンとキッスは大なり小なりと警戒をしている。
突然現れてはいきなり「お話しよう」などと口にする相手に、真面目に耳を傾けて良いものか。
「そんな警戒しなくても」
「するわよ」
「話って何?」
「お姉様⁉︎」
アンテナを張り巡らせているキッスだったが、ズキューンはその真逆。パッチリーネの話を聞く姿勢でいる。
勿論、なんの根拠も無くそういった選択をした訳ではない。今のパッチリーネには敵意が無い。その事を見抜いての選択だ。
「あの人にその気が無いのなら、少しは聞いたってバチは当たんないよ」
「ですが……はい」
他人に対して頑なに壁を隔てるキッスも、ズキューンの言葉にはかたなしだ。握る拳は緩めはするが、それでも警戒だけは怠らない。
「話って言うのは、お互い変化と進化をしている」
「変化と?」
「進化?」
「ええ。オーバーソングにズキューンキッス。カッティンダーにこのワタシ自身。どちらか一方が変化と進化を遂げれば、もう片方も同様に遂げる」
パッチリーネは目を伏せた。
(ま、プリルンとメロロンが居なくなったのもまた変化の内の一つだけど。今はいいわ)
「キッス、意味分かる?」
「お姉様、ワタシにもさっぱり。で、つまり何が言いたい訳?」
「意味なんてないわ。ただお互いに、更なる高みへと登り続けている。これって、
「わたしは貴女の事なんて眼中に無いわ。ですよね、お姉様」
キッスの言葉にズキューンは大きく頷いた。
「そうだね。皆のキラキラもキュアアイドルも、誰が相手だってわたしが全部守ってみせる!」
「そういうわけ。対話はこれで終わり。これ以上貴女と話す事なんて無いわ」
「勇ましいのね。でもね、この世には上には上が居るのよ?」
パッチリーネが一歩踏み出すと、物凄い重圧が2人に襲い掛かる。
「「ッ⁉︎」」
「そうね、確かに少しお喋りが過ぎたしそろそろ元に戻ろうか」
今までとは雰囲気がまるで違う。全身に重くのしかかるプレッシャー。ズキューンもキッスも初めて味わう体験。
「ここから敵同士。存分に歌い合いましょうか」
◯
唐突なスイッチの切り替えに虚をつかれた2人。硬直してしまったほんの数秒の刻をパッチリーネは見逃さず、一気に自分のペースまでもつれ込んだ。
そこからズルズルと巻き返す事が困難となり、ズキューンとキッスは防戦一方を強いられた。
そして──。
「がはッ……ォェ!」
「キッス……うぅ」
キッスは腹部を押さえ、今にも吐きそうな異物を必至に抑え込んでいる。ズキューンも地面に伏せて、キッスの心配をしていた。
「結構頑張った方じゃないかな?」
執拗に粘ってはみたが、勝負の内容としてはパッチリーネの圧勝で幕を閉じた。
特にキッスは執念深かったのが仇となり、ズキューンよりもかなり痛め付けられている。綺麗な髪は乱れ、彩っていた衣装は所々破け、完膚無きまで叩きのめされた証拠。
「でも、リハーサルにもならないけど」
パッチリーネはキッスの目の前まで歩き、視線を合わす為腰を落とした。
「これなら、まだアイドルプリキュアの方が歯応えあるよ。紫雨まもるありきの話だけど」
見下すパッチリーネに鋭い視線を送る。しかし、勝者にとってそんなものは犬の遠吠え程度にしか思わない。今の状態で何を言おうがしようが、所詮敗者の負け惜しみとしか取れない。
そんな敗北者であるキッスの頭を優しく撫でる。
「アイドルプリキュア……特に紫雨まもると仲良くしておくといいかも。じゃないと、まともな勝負にならないよ?」
「冗談じゃないわ! あの子達と仲良し子良し、手を繋ぐなんてごめん、よ!」
自分の力だけでなんとかしようとして立ち上がるも、足を滑らせて地面に這い蹲る。
「わたしは、まだ……」
その言葉を最後に、キッスは意識を落として深い眠りについた。
「キッス!」
「また近い内に会いに行く。その時まで、またね」
パッチリーネは去って行った。しかしズキューンは気を失ったキッスにしか目を向けていない。
「キッス、キッス!」
呼び掛けても起きない。それでも尚呼び掛ける。彼女の名を。
「キッス──
次回はアニメ19話からの内容ですが、前回でも言ってた通り「一方その頃…」の感じでうた達とは別行動(オリ回)でやって行きます。
ここまでの拝読ありがとうございました!