キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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久しぶりの投稿です


第76話 あなたに捧げる投げキッス

「この状況、2人はどう思う?」

 

 パッチリーネが突如としてプリキュアに変身を遂げ、キュアライブとして3人の前に立ちはだかる。バッサリーネという前例がある以上、パッチリーネもこうなる事は薄々予想はしていた。予想はしていたが、いざ目の前でお出しされると驚きはする。

 

「どうも何も愚問だわ。ですよね、お姉様」

 

「わたし達を敵と認識しているのなら、やるしかないよ」

 

「しかないか。幸い、人気の居ない林の中に移動させてくれたのは俺達にとっても好都合」

 

 誰にも迷惑が掛からない林の中に移動させられたのには驚かされたが、周囲を気にする事なく全力が出せるという点を摘めばこれ以上のない舞台。

 

「まもる、応援宜しくね!」

 

「ズキューン、さっきも説明したけど今の俺では君達の力にはなれないよ」

 

「だったらそこで大人しくしてるのね。放って置きましょうお姉様」

 

 3人のやり取りに、ライブが少し拍子抜けたトーンで言葉を投げ掛ける。

 

「プリキュアに変身したのに、それでもまだ出し惜しみをするって事なのかしら?」

 

「いや、別にそんなつもりじゃ……」

 

 出来るならやっている。まもるだってズキューンとキッスの力になりたいと思っている。だけどまだ、何かが足りないのだ。それを見つける事さえ出来れば。

 

「期待したって何もないわ!」

 

 キッスが地面を蹴り、先手を仕掛けた。このような場面になっても生半可な返事しかしないまもるを当てにしても、判断能力を阻害させるだけだと見限り単身突っ込んだ。

 

 右膝から繰り出される蹴りを、キッスは容赦無くライブの顔面へ仕掛ける。鈍い音、そして肉や骨が軋む手応えを感じさせる。確実にヒットしたと、不敵に笑う。

 

「なっ……⁉︎」

 

 がしかし、直撃を食らっても尚ライブの表情が変わる事はない。ならばと、両手両足を存分に使って乱撃をかます。それもひとつひとつ丁寧に急所を捉えて。

 

「どうよ!」

 

 ライブは眉ひとつ変えていない。それでも尚、キッスの猛攻は止まらない。連打の嵐。この攻撃を早々止められる筈ないと高を括っていたが、その嵐の中にライブは手を伸ばしてキッスの喉元を掴んだ。

 

「ッ⁉︎」

 

「随分と威勢がいいけど、まだまだワタシには届かないわよ?」

 

 そのまま地面に叩き付け、肺にある空気が全て外へ吐き出される。悶絶するキッスに更に蹴りを加えて、まもるとズキューンの足元まで飛ばされた。

 

「まもる、キッスをお願い!」

 

 負傷したキッスをまもるに任せ、今度はズキューンが単身でライブに挑む。

 

「はぁっ!」

 

 キッスよりも速く、鋭い拳を繰り出したがその動きすらも見切られ、手首を掴まれて顔面寸前の所で止められる。

 

「単調ね」

 

「うん、だから少し荒っぽく考えたんだよ!」

 

 握る拳を緩め、ライブに手の平を見せる。手中から、高密度の音符のエネルギー弾が蓄えられていた。

 

「まさかッ⁉︎」

 

「ズキューンバズーカ!」

 

 もはや零に等しい超至近距離のズキューンバズーカが、ライブを呑み込んだ。

 クラヤミンダーですら、当たればひとたまりもない威力のものを無理矢理当てにいった。それも超火力で。彼女に加減というものが知らないのかと恐怖もする。

 

「これでどう?」

 

 手応えはあった。確実に仕留めたという確信もあった。あったのだが。

 

「流石に今のはヒヤッとしたわ」

 

 涼しい顔をして佇んでいる。ダメージが無いという訳ではない。それでも効いていないというだけ。

 

「応援が必要だ。絶対。ディーヴァ──」

 

 まもるが声を出そうとした直後、ズキューンの体がブレた。未だ掴まれたままのズキューンは、地面に叩き付けられては投げ飛ばされる。苦悶の表情を浮かべているが、体勢を整え、追撃だけは許さないよう上手く着地する。

 

「まもる、ディーヴァ・ステージ!」

 

「分かってるよ! キュアズキューン!」

 

 ズキューンにありったけのキラキラを流し込んだが、拒絶反応を起こして弾かれて尻餅を突いた。

 

「あいたた!」

 

「俺のキラキラがズキューンを拒んだの?」

 

 今まで失敗は何度もあった。しかし、この様なあからさまな失敗は初めて経験する。

 

「残念よ。ここまでお膳立てしても尚、盛り上がれないのならアナタ達2人に興味なんてない」

 

 歩み始めたライブ。まだ余力十分に対し、こちら深傷を負っている。切り札のディーヴァ・ステージは拒絶されて全くもって使い物にならない。

 こんな危機的状況の中でも、ズキューンの瞳はまだ死んでなどいない。

 

「まもる、キッスを連れて退いて」

 

「お、お姉様……?」

 

「2人でキュアアイドル達を呼んできて。わたしがそれまで頑張るから」

 

「が、頑張るって無茶だよ! そんな体で!」

 

 ズキューンの強さは間近で見ているからよく知っている。確かに強いが、それはあくまで万全での彼女だ。今の彼女では難しい。

 

「お姉様、わたしはまだやれます!」

 

「ううん、無理だよ。そんなんじゃ、かえって危険だよ」

 

「ですが……」

 

「任せて!」

 

 その自信は何処からやってくるのか。ズキューンは駆け出し、独り果敢にライブへと立ち向かって行ってしまった。キッスは届く事のない手を伸ばし、無力な自分に打ちしがれてとうとう下を向いてしまう。

 

「キッス……ッ!」

 

 自身を支える手に、強く握り返す。キッスは体を震わす程悔しさのあまり涙を流していた。

 

「これじゃあ、何の為にプリキュアになったのか分からない。お姉様の為に、お姉様の望みを叶える為にこの運命(さだめ)を受け入れたのに。なのにわたしは、いつもお姉様の背中を追い掛ける事しか出来ない……」

 

 何も出来ず、打ちしがれた彼女に言葉を掛けたい。けれど、それを彼女は受け入れてくれるだろうか。いや、そうではない。まもるが、そういう思想を誰かに向けてしまうのだけは絶対にしてはいけない。

 

 誰にも心を開かせようとしない彼女に、例えこれ以上関係性を壊す形になったとしても。それでも紫雨まもるは、手を差し伸べる。

 

「ズキューンはああ言ったけど、俺はまだキッスはやれると思ってる。キッスだってそれを望んでるんだろ?」

 

「それは、そうだけど……お姉様がああ言うなら、わたしは潔く引き下がるのが」

 

「本当にそれで良いと思ってるの?」

 

 胸に突き刺さる。それでも、お姉様と慕うズキューンには嫌われたくはない。だから言う通りにしている。それが彼女の望みだから。

 

「俺にはそうは思えない。君は、いつも隠し事をしている。心からの本音を言えていない」

 

「……りなさい」

 

「そうやって、これからもズキューンを言い訳にして自分の気持ちを押し殺すつもりなの? 君だって本当は──」

 

「黙りなさい‼︎」

 

 まもるの肩を掴んでは、そのまま押し倒した。怒りに満ちたその表情。鋭く、敵意のある瞳には、鏡のようにまもるの姿を映し出していた。

 

「わたし達の……わたしの気持ちも知らないで勝手な事言わないで! 貴方に何が分かるって言うの⁉︎」

 

「そんなの分かる訳ないだろ! 俺達は話し合いたいのに、君達が……君が俺達を避けているから話したくても話せない! 知りたくても知れない! 分かりたいのに分からないままなんだよ!」

 

 今度はまもるがキッスを押し倒し、誰にも見せた事のない感情を表に出して言い放った。それは怒号とも取れる勢い。まもるは今、人生で初めて誰かに対して怒っている。

 

「何も分からないから、こうやって知ろうとしているのに。自分でも何を言ってるのか……もう頭がどうにかなりそうだよ」

 

 ぽたりと、キッスの頬に一粒の雫が落ちる。

 

「何で、どうしてそこまでして貴方はわたしに構おうとするの?」

 

「似てるからだよ」

 

「えっ?」

 

「君はメロロンって子に似てるんだ」

 

 メロロンの名を口にすると、キッスは息を呑んだ。

 

「言葉や態度に棘があってプリルンの事をおねたまと慕う姿。その裏には、どこか儚げなところが見えた」

 

 目を逸らし、これ以上聞きたくない素振りを見せているがまもるの言葉はまだ綴られる。

 

「でも優しいんだよ。君もそうだ」

 

「わたしは優しくした覚えはないわ」

 

「初めて会った時も、家で話していた時もそうだよ。俺の事を心配して、力を使わないよう注意してくれてたじゃないか」

 

 思い出せばいつだってそうだ。含みのある言い方にも、少しばかりの心配をしている優しさの温もりがあった。まもるは、その僅かな心情を読み取っていたのだ。

 

「ほんのちょっとだけど、こうして腹を割って話せたんだ。今の俺とキッスなら助けたい人を助け、望むものが掴める筈だ」

 

「……その根拠は?」

 

「キッスの優しさ。それだけで十分だよ」

 

 2人は立ち上がる。その時、ズキューンの悲痛な叫びが聞こえた。吹っ飛ばされ、その場に崩れ落ちて倒れ込んだ。その姿はボロボロで、どれだけ時間を稼いだか一目瞭然だた。

 

「お姉様!」

 

「そろそろ舞台の幕引きといこうか。アナタ達じゃ、このステージの上に立つ資格なんて無かったのよ!」

 

 手のひらから放たれた高密度のエネルギー弾。地面を抉りながら、まもるとキッスへと迫って来る。

 

「だから俺は、例え拒絶されようとも何度だって応援するよ。君達のファンだから!」

 

 次の瞬間、2人はエネルギー弾に呑み込まれていった。直撃した事で爆発し、その威力は爆風だけで周囲の木々すら薙ぎ倒していくほど。

 

 ライブは不敵に笑い、ズキューンは絶句した。

 

「これで後は」

 

「──残念だけど、まだ舞台から降りる訳にはいかないの」

 

 ライブの背後。そこには、片膝を突いてまもるをお姫様抱っこしているキッスの姿があった。アイドルプリキュアと同様のキラキラをその身に纏いながら。

 

「全く、こんな風に思うのは初めて。今回限りだけよ。お姉様以外に、誰かの為に何かしようと思ったのは。折角だからその期待に応えてあげる」

 

 交わした言葉は数少ない。信頼もあるのかどうかと問われれば無に等しい。けれども、何も感じないという訳ではない。確かな繋がりを得た。

 

「ファンサービスよ。受け取りなさい」

 

 応援を受け取った黒き歌姫は、たった1人のファンの為に特別な投げキッスを捧げる。




 思ってたより長引きましたので次回に投げます

ここまでの拝読ありがとうございました!
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