キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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ようやくオリ回にひと段落つきました。ふぅ…


第77話 キミと奏でるハートソング

 土壇場でキッスは、まもるの応援を受けて本来以上の力を引き出している。黒く輝くキラキラをその身に纏って。初めて溢れ出る力に、キッスは戸惑いもしつつ実感もする。

 

 これが、紫雨まもるの力だというの。

 

「更にその上を行ったのね。でも、その力でどこまで抗えるかしら?」

 

「バッサリーネといい貴女といい。口だけはよく動く」

 

「それはこっちの台詞よ。大口叩けるのも今の内って事分からせてあげる!」

 

 2人の姿が消えるのと同時に、とてつもない衝撃波が巻き起こった。お互いが、目に見えない程の速さで地を蹴り、拳をぶつけ合っていたのだ。

 

「「ッ!」」

 

 弾かれ、お互いに距離が開くも僅か一瞬の刻で一気に縮め、何度も何度も衝突する。その度に大気が揺れ、地面に亀裂が走る。

 

「やっぱり、ディーヴァ・ステージの力は侮れないわね。ここまで這い上がってくるなんて、ちょっと舐めていた。でもまだまだね!」

 

 黒いエネルギーを手のひらにかき集め、それを収束させた光線を撃ち放った。

 キッスは両腕を使い防御の姿勢を作る。着弾し、土煙が舞い上がる。

 

「ワタシは精々4割の力よ!」

 

「わたしは2割よ」

 

 背後。あの刹那の間でライブの背中に瞬間的移動しており、足裏で背中を蹴り飛ばした。大の字に地面に叩き付けられるライブへ、追撃しようと拳を握る。

 

 だが、それを読んで両手で飛び起き上がるのと同時にカウンターで、キッスの腹部に蹴りを入れてやり返す。

 

「いっつ……!」

 

 キッスにダメージはない。それは全てまもるが担保している。だから反撃を受けても尚キッスは攻めの姿勢を崩さない。

 飛ばされる最中でも、空中で体勢を立て直しつつ頭の中でどう攻め立てるか考え、足が地に着くのと併せて前へ駆け出す。

 

「それならこれで!」

 

 無数の光弾を放つライブ。広範囲に渡らせているその攻撃を無傷もしくは躱すとなると至難の業。しかし凌ぐ事は出来る。

 

(恐らく、あの攻撃は囮。それか何か秘密があるとみて良いかな?)

 

 警戒をする。ライブが無闇に攻撃をする筈がない。何かしら伏線を張っているとまもるは推測する。実際、ライブもキッスの行動を制限する為に撒いた光弾。そこから先の動きを予測するまで思い描いていた。

 

「少し強引だけど、道は見えた」

 

 後方から第三者目線で見た限り、弾幕の中に微かな穴を見つけた。

 光弾の嵐の中を突き進むというのならば、慎重に道筋を示さなければならない。まもるがその事を告げようとしたのだが、直後、キッスは更にギアを一段上げて速度を早めた。光弾を全てその身で受けながら。

 

「「なっ⁉︎」」

 

 その行動にライブは冷や汗をかきながら戦慄した。わざわざ自ら地雷原に突っ込むなどと、普通はあり得ない選択をしたから。

 

 後方にいるまもるも同じ考えをしていた。キッスのその行動に何か意味があるんだと信じていた。

 

「別に意味なんてないわ。罠? それがどうしたっていうの? 罠なんて最初から知っていれば、それはもう罠じゃなくてただの障害よ」

 

 謎の理論を口にしながら、無理矢理光弾の嵐を突発した。その代償は全てまもるが肩代わりする羽目となったが。

 

 無茶とかいう範疇を超えて無謀の特攻を、キッスは力で捩じ伏せた。

 

「フフッ!」

 

 不気味に笑うキッス。

 

 下から突き上げる左拳が、ライブの顎の先端を直撃した。

 

「ぐぅ……ッ!」

 

 が、間一髪のところで両の拳で受け止めていた。それでも破壊力はご覧の通り。ガードの上からでも苦悶の表情へと変わる程のそれ。

 

 しかし、これで終わらないのがキッスだ。

 

「また来る!」

 

 振り抜いた左拳をすぐに引っ込め、膝を曲げ、力を込め、再度同じ攻撃を繰り出そうと構えていた。

 その事にいち早く気付いたライブは、歯を食いしばり、防御の姿勢を崩さないよう身構える。

 

 キッスは重心を前のめりに跳躍して拳を突き上げる。全体重を乗せた渾身の一撃。が、ライブの防御はかなり強固なもの。

 

 崩せる算段があるとも思っていないライブ。しかし──。

 

「──ッ⁉︎」

 

 キッスの左拳は、ライブのガードをすり抜けて顎を天高く跳ね上げた。強固な防御を破ってなどいない。

 

 キッスの放った一撃にはカラクリがあった。最初の拳は横にして打ったが、追撃となった二撃目の拳は縦向き。ガードにある僅かな隙間を掻い潜り、すり抜けて直撃したというものだ。

 

 手応えはあった。そう確信した一撃だったのだが、キッスの顔は険しいものとなっている。

 

(意識を完全に断ち切れなかった)

 

 天を仰ぐライブだが、視線だけはキッスから外していなかった。それは、見た目以上にダメージを与えられなかった証拠。

 

「少し溜めが長かったわね。それがなければ勝っていたのに」

 

 全ての力を込めた事が仇となった。溜めが大きい分、次の動作に移る時間を測られ、致命傷を避けたのだ。あの僅かな攻防の中で。

 

「今度はこっちの番!」

 

 ライブは左拳を作る。そのまま打ち抜くつもりだ。全身をバネにして放った大砲には、次の攻防に移る為の時間を捨てている。その為、このままライブが左拳を打てば、カウンターとなってキッスが放った倍の威力の拳が突き刺さる。

 

 そんな事は、キッスも頭の中では気付いている。だが、ここからではどうやっても体勢を立て直す事は不可能。耐える以外の術がない。

 

「しまっ──」

 

 鋭い一閃。ライブの拳がキッスの顔面に差し迫る時。

 

「ッ‼︎」

 

 背後から、白く輝く何者かの蹴りがライブの首目掛けて炸裂した。避けきれなかったのは予想だにしない方向からの攻撃に対し、対応が遅れてしまったのが原因だ。

 

 ライブは吹っ飛び、地面を転がっては這い蹲る。

 

「キッス大丈夫?」

 

「お、お姉様⁉︎」

 

 戦線復帰したズキューンは、色は違えどキッス同様に白色のキラキラをその身に纏いキッスの隣へと立ち並んだ。彼女もまた、まもるの応援を受けてパワーアップを果たしたのだ。

 

「独りで無茶しちゃダメだよ。わたし達は2人でズキューンキッスなんだから」

 

「ごめんなさい……」

 

「ううん。わたしの方こそごめんね。そもそも1人で戦おうとしたのはわたしだし。お互い様って事で」

 

「はい、お姉様!」

 

 ズキューンの手を借りてキッスは体を起こした。そして、倒すべき相手へ鋭い視線を浴びさせる。

 

「キュアズキューンもディーヴァ・ステージ。けど、何で今更発動出来たのかしら?」

 

 最初、試みたディーヴァ・ステージは拒絶された。それは、まだズキューンとの信頼関係を築けれていないのかと思っていたが、実は違っていた。原因はもっと簡単で、答えは目の前にあった。

 

「ズキューンとキッスは2人で1人のユニット。どちらが欠けてしまったら、それは本当の彼女達ではない。ズキューンとキッスは、どこまでいってもズキューンキッスなんだって思い知らされたよ」

 

 ズキューン自体の土台は既に出来上がっていた。しかし、片割れのキッスの心が開いていなかった為に起きた拒絶反応。ズキューンとキッスの2人で心を開いてこそ、その条件は満たされる。

 

 そして2人揃った今、その真価を発揮させる事が出来る。

 

「行くよ、キッス!」

 

「ええ、お姉様!」

 

 2人は指を絡ませながら手を握り合う。すると、キラキラが更に増幅し、今まで以上の輝きを放つ。まさに圧巻の一言に尽きる。

 

「ようやくアナタ達の本気が見れるというわけね。良いわ、特等席で味わってあげる」

 

 ズキューンとキッスは全ての力を解き放ち、2人だけの内包された世界であるステージを展開させる。その中心で、ディーヴァ・ステージの輝きを放ちながらスポットライトを浴びる。

 

「「ふたりの誓い、いま輝け!」」

 

 ライブを観客席に強制的に座らせ、ステージ全体が盛大に、そして眩い光で覆われる。

 キラキラショータイムマイクを持ち、専用のプリキュアリボン「プリキュアステージリボン」セットする。息を大きく吸い込み、その全てを曝け出す。

 

 白と黒のキラキラが描く、相入れない2色のコントラストから織りなす唯一無二の共演。彼女達の熱く、激しく、時には冷たく、穏和な歌声でステージを盛り上がらせる。彼女達にしか歌えない彩りを奏でて。

 

「「プリキュア! ズキューンキッスディスティニー!」」

 

 キラキラを一心に込めた浄化技がライブへと襲い掛かった。右手を突き出し、押し返そうと抵抗の意を示しているが。

 

「そう、それでいい!」

 

 浄化技を食らう直前でライブはその姿を消し、ズキューンキッスディスティニーは不発と終わってしまった。思わず、まもるは愚痴を溢した。

 

「逃したか。でも」

 

 それでも、凌ぎ切るどころか撤退させた。これには大きな意味がある。ズキューンもキッスもそれだけの力を手に入れた。まもるも2人に応援を届けさせれた。

 

 3人にとって、新たなステップアップとなったのだ。

 

 

 ◯

 

 

「ありがとねー! お陰で助かっちゃった!」

 

 背中を何度も叩くズキューンに、まもるは少し痛みを覚える顔をする。けれど、助かったのは寧ろまもるの方だ。

 家に訪問するという事態に面を食らった。あの場にズキューンとキッスが居なければ、自分がどうなっていたか容易に想像がつく。

 

「お礼を言うのは俺の方だ。ありがとうな」

 

「ほらほら、キッスも!」

 

「え、あ、お姉様⁉︎」

 

 ズキューンに背中を押され、キッスはまもると対面する。そして、毛先を指で弄りながら顔を背け、頬を赤く染め上げならボソリと呟いた。

 

「一応、ありがと」

 

 これでひと段落。かと思いきや、不自然な風が吹き荒れ、林の中で女性の声が木霊する。

 

『今回はあくまでアナタ達2人の力を引き出す為の引き立て役に過ぎない。アナタ達が輝けば輝くほど、ワタシは更にもっと高みへと誘われる』

 

「この声、ライブ!」

 

 キッスは目の色を変え、周囲を警戒する。

 

『言ったでしょ。これ以上ステージに上がる理由はない。今日のところはこれで閉幕。それに、脇役であるワタシの役目も終えたところだし』

 

「役目?」

 

「ブルっときた!」

 

 まもるが疑問を抱いていると、ズキューンから何かしら察知する反応が見受けられた。

 

「な、何だ?」

 

「まさか、貴女の狙いって」

 

 ライブの本当の狙いを察したキッスは眉を顰めた。

 

『邪魔なアナタ達3人をアイドルプリキュアから引き剥がすこと。今頃何処かで、クラヤミンダーが暴れてるでしょうね』

 

「何だと⁉︎」

 

『さぁて、応援してくれるファンも居なければズキューンとキッスの援護も無い。一体どうなるのか楽しみだね』

 

 それを最後にライブの声が消え、聴こえなくなった。

 

「最初から分断する事が目的だったなんて」

 

 やられたとしか言いようがない。まもるは奥歯を噛んだ。助けを求める視線をキッスに向けた。

 彼女は仕方のない表情で溜め息を吐きつつも、無言でそれを了承した。

 

 一方でズキューンはというと。

 

「ごめんキッス! もう限界……プリッ!」

 

 ポンっと軽快な音を立てるのと同時に、ズキューンは煙に包まれた。

 何が起きたのかさっぱりのまもるに対し、キッスは青ざめた表情のまま硬直していた。

 

 もくもくと煙立つものが風で吹かれると、姿を現したのはまもるやうた達皆が必死になって探していた小さな女の子。

 

「プリ?」

 

 小さく、白くてふわふわとした彼女の姿を見て唖然とする。

 

「ぷ、プリルン⁉︎」

 

「お姉様!」

 

「お姉様⁉︎」

 

「あっ、メロロン!」

 

「メロロン⁉︎」

 

 頭の整理が追い付かない。次々と発せられる言葉に驚きを隠せず、思わずオウム返しするばかり。

 ズキューンが探していたプリルンとなり、そのプリルンをキッスはお姉様と呼んでは、更にキッスをプリルンがメロロンと名を呼んだ。

 

「……これ以上隠し通せないようね」

 

 キッスは観念したのか、初めて誰かいる目の前で変身を解いた。すると、キッスはメロロンの姿をして元に戻った。

 

「ほ、本当にメロロンだ……」

 

 許容量を超え頭を抱える。目の前で起こっている光景を直視出来ないのだ。こうもいきなり情報が流れ込んでくると、どういった反応をすれば逆に困る。

 

「これは一体どういうことだよ!」

 

 なんとも言い表せない感情に、まもるは2人に問いただす。しかしメロロンは口を開こうとはせず、プリルンも能天気にこちらを見つめるばかり。

 

「メロロン、クラヤミンダーが出たプリ。急いで行くプリ!」

 

「ねえたま。はい、ねえたま」

 

 口を開けたかと思えば、こちらに対しての質問なぞ完全に無視ときた。2人はふわり浮かび上がって、先程プリルンが反応を示した所へ向かおうとした。

 

「ま、待って!」

 

 呼び止めた。流石に動きを止めたメロロンは、背を向けたまま先程の質問に対しての答えを口にした。

 

「ねえたまのお願いが先メロ。お話なら、道すがら全部話すメロ」

 

 哀愁漂うその背中を見て、まもるは唾を飲み込んだ。同時に、彼女達にもやはり何かしらの理由があったのだと察する。これ以上の無理な追究は辞めた方がいい。出来れば、彼女達の口から聞きたい。

 

「貴方も来るメロ?」

 

「ああ、知りたいから」

 

「なら、静かに付いてくるメロ」

 

 言われた通り、その背中を黙って追い掛けた。




次回からアニメ本編と合流します。

ここまでの拝読ありがとうございました!
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