キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva 作:シロX
プリルンとメロロンの後を追い掛けること数分で、とある駐車場の一角でその足を止めた。空は暗く不気味なまま。そして、プリルンとメロロンはその場で佇んでいる。
「この辺にクラヤミンダーが?」
「しっ! 黙ってるメロ」
周囲を見渡した限り、何処にもクラヤミンダーの姿は見えない。本当に此処で合っているのかどうか問いただすが、メロロンがまもるの口を閉じさせた。
同時に、プリルンは毛を逆立てて何か気配を察知した。
「……来るプリ」
すると、プリルンの読み通り空からカメラを模したクラヤミンダーが降って現れたのだ。事前に知っていたとはいえ、流石に空からの登場には度肝を抜いた。
「げっ、何でお前達が此処に居んだよ⁉︎」
クラヤミンダーの後に、遅れて来たザックリーがまもる達を目にして引いた。恐らく、パッチリーネが囮となっている間裏で動いていたのはザックリー。こんなにも駆け付けるのが早いとは少し計算違い。
「空からの登場だなんて驚いたよ」
「呑気な事言わずに、貴方も少しは気を張って欲しいメロ」
「そうだね。でも大丈夫? 連戦で2人だって疲れてるだろうに」
「大丈夫プリ!」
気を遣っての言葉は不要。寧ろ気合い十分。それはメロロンも同様で、2人のモチベーションは未だ高く維持されている。これならば、パフォーマンスにも影響は無いだろう。
そう思う矢先で、背後から聞き慣れた声がした。
「プリルン⁉︎」
「それにまもるくんも⁉︎」
「何でお兄ちゃんが2人と一緒に⁉︎」
振り返ればそこには、クラヤミンダーを追い掛けてなのかうた、なな、こころの3人が居た。
何故此処に彼女達が居るのか、目を見開いて驚くまもるとメロロン。
(参ったなぁ……)
プリルンとメロロンの正体はまもるにしか知られていない。今、彼女達の前で変身でもしたら、もう誤魔化しなんてものは効かない。現れたうた達に、2人がたじろいでいた時。
「行くプリ!」
お構いなしのプリルンの声が耳に届き、改めて現実に引き戻した。
「「プリキュア! ライトアップ!」」
キラキラショータイムマイクを手にし、白と黒のプリキュアリボンをセット。それから連続で3回タッチして、変身シークエンスへと移行する。
「「キラキラ、ショータイム! YEAH!」」
光に包まれるプリルンとメロロンの身体が急激に変化する。身長は大人にも等しい高さを得て、誰もが魅了してしまうほどの美貌の持ち主となる。そして何よりも驚きなのが、妖精から人間へと変わる事だ。
「ハートをプリっとロックオン! キミとズッキュン、キュアズキューン!」
「ハートをメロっとひとりじめ! キミと口づけ、キュアキッス!」
全てのシークエンスを終えた2人は、いつも目にしているズキューンキッスの姿となった。煌びやか且つ華やかなデザインの衣装に身に纏う2人の姿を見て、驚愕の声を上げる者が3人。
「キュアズキューンとキュアキッスって、プリルンとメロロンだったのー⁉︎」
「えぇー! 全然違うじゃないですか⁉︎ 大きさも、喋り方も! もふもふー感も!」
「いくら探しても見つからないのも納得だけど、これは……」
皆の反応は当然だ。勿論、プリルンとメロロンが変身してリアクションしたのはザックリーも同様だ。
「いやいやマジかよ⁉︎」
流石にここまでの話は一切聞かされておらず、面を食らうばかり。ザックリーからすれば、先回りされているは、正体不明だったズキューンキッスが妖精2人と都合の悪い出来事は起き過ぎている。
「……」
キッスは背後にいるうたを気にする素振りを見せている。その事に気付いたまもるが、彼女の肩に手を置いて一声掛けた。
「こうなった以上仕方ないよ。とにかく今は、クラヤミンダーをなんとかしよう」
「え、えぇ……」
「ズキューンもいいな」
「なんだか分かんないけど分かった!」
返事をするやいなや、ズキューンとキッスは同時に地を蹴って颯爽とクラヤミンダーへと駆け出す。
迎え討つべく、クラヤミンダーも攻撃の構えを取った。レンズに高出力のエネルギーを充填させ、それを一気に爆発させ、前方へと撃ち放つ。
ズキューンとまもる、2人の目が合う。お互いに小さく頷いて、相手の攻撃にどう対応するか一瞬でアイコンタクトで意思を交える。
「キュアズキューン! ディーヴァ・ステージ!」
まもるの体内にあるキラキラがズキューンに注ぎ込まれ、我が身の力へと変換させる。
そして、ズキューンは受け取ったキラキラを左手に収束させ、ひとつの球体へと形作る。
「ズキューンバズーカ!」
クラヤミンダーの攻撃に対し、まもる+ズキューンのズキューンバズーカが正面切って衝突する。
凄まじい衝撃波と音が辺り一体を埋め尽くす。互いの威力が計り知れないのがそれだけで読み取れる。
「でも、負けないけどね!」
クラヤミンダーの攻撃力に臆するどころか、ズキューンは逆に前へと足を踏み出して強引に押し返そうと全身に力を入れる。お陰か、ズキューンバズーカの方がじんわりとクラヤミンダーの砲撃を押し返し、潰そうとしている。
「ズキューン、今だ!」
「うん!」
まもるの合図と共に、ズキューンは拳を握った。すると、ズキューンバズーカが煌めく閃光と共に爆ぜる。その影響から、クラヤミンダーの砲撃も巻き添いを食らって弾けて、相殺される。
圧倒的な強さと相当な自信が無ければ、このような大体には動けまい。それを可能とさせているのがディーヴァ・ステージ。彼のお陰で、以前よりも更に磨きの掛かったパフォーマンスを生み出しているのは確か。まさに応援に勝る力はない。
「うんうん! いいねいいね!」
随分と調子の良いズキューンの表情は、自然と笑みが溢れておりステージを盛り上げるには最高潮の姿を魅せつけている。
「行くよキッス! キラッキラのステージにしよう!」
「はい、お姉様」
ズキューンとキッス。キラキラショータイムマイクを手にし、指を絡めて手を握り合うと2人が歌う特設ステージが広がる。
「「ふたりの誓い、いま輝け!」」
プリキュアステージリボンをセットする事でステージ全体にイントロが流れ始める。2人は、指先や足先を使っていつでも歌えるようリズムを刻んでいく。そしてその口が開かれた。
美声から綴られるAwakening Harmonyの歌詞。優しさの中にも覚悟や信念といった強い想いが、肌にヒリヒリと伝わる。美しくもあり、儚げなふたつの歌声が交差し、それがひとつに重なり合ったメロディがクラヤミンダーを包み込む。
「「プリキュア! ズキューンキッスディスティニー!」」
強制的に席に座らせられたクラヤミンダーはそんな彼女らのステージに魅了され、その隙をつかれた所に浄化技が叩きつけられる。無防備に食らったクラヤミンダーは完全に浄化され消し去った。
最後に2人でファンサをして、このステージに幕を下ろすのだった。
「ひとまずは、目の前の問題は片付いたけれど……」
まもるはうた達の方へ振り返って頬を掻いて顔を引き攣らせる。
「一難去ってまた一難って感じだな」
◯
浄化が終わったかと思いきや、早々にクラヤミンダーに取り込まれていた記者の貴島つむぐという人物が、ズキューンとキッスの取材をしたいと迫っていた。断る理由もなく、取材を受け、終わった後立ち去って行った。嵐のような人だった。
そしてようやくこの場にいるのはプリキュアの関係者のみとなった。それを見計らってか、ようやくズキューンとキッスは変身を解除して元に戻る。
ズキューンとキッスがプリルンとメロロンという事を改めてその目で知ったうた達は、感嘆の言葉を口々に言う。
「本当にプリルンとメロロンだなんて」
「びっくりです」
その中でも1番の反応を示してくれていたのは、間違いなくうただった。
「プリルン、わたしすっごくキラッキランランだよ! だって、大好きなプリルンがキュアズキューンだったんだから!」
一番プリルンとの再会を心待ちにしていたうたは、喜びのあまり抱きしめて、プリルンの温もりをしっかりとその身で噛み締める。これは夢でもない。れっきとした現実。
「おかえり、プリルン」
そう、現実。これから突き付けられるのも。
「どうしてプリルンの事知ってるプリ? キミ、誰プリ?」
「──えっ?」
返ってきた言葉は、悪意のない無慈悲なものだった。いきなり鈍器にでも殴られたような感覚に陥るうたは、目を見開いて戸惑いを隠せなかった。
そして、事情を知っているまもるは静かに目を伏せる。メロロンも何も口にせず、ただ当たり前のように静観しているだけ。
「それ、本気じゃないよね? わたしのこと……」
「知らないプリ。初めましてプリ!」
「そんな……」
狼狽する彼女を見て居た堪れなくなったまもるは、口を挟まざる得なかった。
「プリルン、今日は疲れてる筈だ。メロロンと一緒に先に帰るといいよ。メロロン、お願い」
「メロ。ねえたま」
妖精2人が小さな手を繋いで空へ旅立とうとする直前、一度振り返りこう告げた。
「まもる、貴方の口から全部説明してあげるメロ。メロロンからは何も話す事ないメロ」
「いいのかい? 秘密にしてたんじゃ?」
「こうなってしまったら、遅かれ早かれ知る事になるメロ。貴方含め、これ以上メロロン達に関わらないで欲しいメロ」
「バイバイプリー!」
飛び立つ背中を追いかけようとして、うたが手を伸ばすも届く事は無かった。
「待って、待ってプリルン!」
見上げる空はとても赤い。それでいて、肌に突き刺さるこの感覚。3人の視線はまもるに集中されており、事情を説明して欲しいと言わんばかりだ。
「まもるくん、プリルンとメロロンと一緒にいたけど何か知ってるよね?」
「ああ、知ってる」
「それなら話して下さい!」
「それは……ッ」
ななとこころが問い詰める。メロロンはああ言っていたが、この真実を口にして突き付けていいものか。彼女達の気持ちに気遣って口篭っていると、その時ふと、うたと目が合った。
「まもる君、お願い!」
何に対してのお願いなのかは、もうはっきりとしている。
「うたちゃんにとって辛いものなるけど、それでも構わないのなら話すよ」
「うん」
「でも、今日はやめにしよう。もう夕方だ。この話は後日。それに、いきなりの事でまだ気持ちの整理がついていないだろ?」
なんて口にしているが、情けなくもまもる自身も先程知ったばかりの真実。彼女達を言い訳にしているのは重々承知しているつもりだ。
今日は疲れた。神経を擦り減らす出来事が一度に沢山起きたのだから。時には足を止めて、休息するのも必要な事だ。
ここまでの拝読ありがとうございましたー