キミとアイドルプリキュア♪ Dream Diva   作:シロX

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やっとこさウインク初登場回です。


第9話 勇気の五線譜

 今日は待ちに待った歓迎会当日。今日この日を目標に、皆頑張って練習をしてきた。後はその成果を本番でぶつけるのみ。

 

「うし、新1年生を歓迎するのにうってつけの晴天だな!」

 

 元気良く玄関から出て来たまもるは、春の空気を肺いっぱいに吸い込んで一度しかない今日という日に心躍らせる。

 

「うたちゃんや蒼風さんに会えるかな? 学校に着く前にゆっくりまた話したいんだけど……ん?」

 

 空を見上げ、太陽の光を一心に受けていると不可解な曇り空がある事に気付いた。どす黒く、見ているだけでも気分を悪くする。そんな風な。

 今日の天気予報では雨どころか、曇り空すらない晴れの予報だった。それに、周囲の空を確認するも曇1つすらない青空。

 

 あの様な一ヶ所のみに、しかも夜並みの暗さの曇り空は何があったとしか思えない。

 

 考えられる事として頭の中に浮かび上がったのは。

 

「もしかして、マックランダーが現れたのかも!」

 

 彼処は自宅からかなり距離はあるが、まだ走って行ける。もしかしたら勘違いかも知れない。だけどそれが勘違いではなかったとしたら。

 きっとそこへアイドルプリキュアであるうたが居る筈。

 

「こうしちゃいられない!」

 

 まもるは急いで、暗雲が立ちこむ場所へと急行するのだった。

 

 

 ◯

 

 

 ようやく現場についたまもるは「やっぱりだ」の一言に尽きた。

 案の定、暗雲が広がる場所へと近付くにつれて街行く人々が悲鳴を上げながら逃走しており、周囲の地面等が被害にあっていた。

 

 その騒ぎの中心には、既にプリキュアに変身したアイドルがピアノの姿をしたマックランダーと交戦中だった。

 

 両者、押しては引いて一進一退の攻防を繰り広げている。

 

「近付く事すらままならない!」

 

 今回のマックランダーはかなり手強く、そう簡単に事が上手く運んでいない。

 

 ピアノのモチーフのマックランダーだけに、発せられる広範囲の音波攻撃。身体的なダメージは無いに等しいが、聴覚や精神的ダメージがアイドルを襲っている。

 加えて鍵盤を叩く事によってそれに伴った音符が実体化し、遠距離の攻撃を可能とさせている。

 

 この2種類の攻撃を巧みに使い分け、アイドルを翻弄している。

 

 一方でアイドルはアイドルで、攻撃方法が単調な接近戦のみ故近付かなければダメージを与えられない。

 俊敏な動きで攻撃を散らして懐に潜り込み、細かい一撃を与えてはいる。

 

 しかし、決定打に欠けている。

 

「アイドル!」

 

 まもるとはまた別の声を耳にした。その方向へ顔を向けると、なながそこに居た。

 

「あっ、蒼風さん危ない!」

 

 悪戦苦闘するアイドルを心配し、危険な前線など構わず彼女の元へと駆け寄って行く。

 それを離れた場所から見ていたまもるがその行動にいち早く勘付き、まもるもその後を追い掛ける様に走り出した。

 

「捕まえた!」

 

「紫雨君⁉︎」

 

 なんとかななの腕を掴んで、これ以上先に進ませる事を止めた。

 だが安心するのも束の間、外野の存在を認知したマックランダーの敵意が2人に向けられた。

 

「此処から一旦離れるよ」

 

「でも、アイドルが!」

 

 2人はマックランダーに気付いていない。じんわりとマックランダーの魔の手が迫って来ているというのに、この場に留まるか離れるかで揉めており2人の視界に入っていない。

 

「マックランダー!」

 

「2人共危ない!」

 

 攻撃が当たる直前、間一髪のところでアイドルが2人を抱えマックランダーから引き剥がして間に合った。しかしながら、その衝撃波がアイドルの背中に鞭打ち余計なダメージを負う羽目になってしまった。

 

 まもるとななは無事。アイドルの決死の想いはなんとか届いた。代償は少々高くついたが。

 

「何だ? また1人増えてるな?」

 

 細身の体型をした男性が上空からまもる達3人を見下ろしていた。

 マックランダーが居るからてっきり、またあのチョッキリ団のカッティーかと思われたが今回はまた別の人物。

 

「新手、誰なんだ?」

 

「オレはザックリーだ。覚えとかなくてもいいぜ。なんせ、今日で世界を真っ暗闇にしてやるからなぁ!」

 

「マックランダー‼︎」

 

 マックランダーは鍵盤を雑に叩き、不協和音を奏でながらシャープの形をした音楽記号を飛ばして来る。

 

 アイドルは2人を助けたばかりで未だ体勢が不十分で、プリキュアといえど反応し切れない。

 逆に守られているまもるが迫り来る音楽記号に反応した。

 

 とはいえだ。流石に、アイドルみたく2人を抱えての回避行動は男であっても力的に無理だ。

 まもるが選択出来る行動は限られている。

 

(自分だけ逃げる事も出来るけど、そんな事するくらいなら!)

 

 まもるはななを思いっきり突き飛ばした。

 

「蒼風さんを逃す以外の選択肢は無い! だから逃げて!」

 

 突然突き飛ばされた事に驚愕。残った2人を置いて行くわけにもいかないと、本能的にまもるに手を伸ばす。

 もう少し、あとほんの少し頑張って伸ばせば届く──その寸前でシャープの音楽記号が両者の間に割り込んだ。

 

 ななの手は届く事もなく握り締めたのは虚空。

 

「まもる君伏せて!」

 

 シャープの音楽記号は1つだけじゃない。更に3つ上空から降り注いでる事にいち早く気付いたアイドルは、まもるの上に覆い被さった。けれどそれは攻撃する為ではない。

 まもるとアイドルを囲い込むようにして地面に突き刺さる。

 

「どうしよう、囲まれた!」

 

「いや、まだだ……まだ上がある! 跳ぶんだアイドル!」

 

 今ならまだ間に合う。しかし、まもるを置いて行く事になってしまう。遅れて跳んだが、気遣いが刹那の間が仇となった。

 

 最後にといわんばかりに4つ目の音楽記号で、たった1つの抜け道に蓋をされてしまった。

 

 弾かれ、アイドルは地面に尻餅を突いて脱出は失敗に終わった。

 

 本来なら十分に間に合う筈だったものの、躊躇したのが原因で一歩出遅れ状況を悪くさせた。

 

 四方の壁、上も完全に塞がれ、地面を掘るにしたってあまりにも非現実的過ぎて考える気にもならない。

 

 青ざめる。

 

「ダメだ、開きそうにもない!」

 

「頑丈過ぎるよー!」

 

 内側からこじ開けようと試みるも、アイドルの力を持ってしても破る事は不可能だった。

 

 ここまで徹底して封じ込められては万事休す。

 

 この絶体絶命のピンチを間近で見ていたななは、意を決した表情で音楽記号の檻に手を掛けた。

 

「ななちゃん危ないよ、逃げて!」

 

「皆を置いて逃げられない!」

 

 ななは、どうにも出来ない2人の代わりにこの檻を壊そうと必死になっている。

 だけどそれはあまりにも。

 

「蒼風さん、勇気と無謀は違う」

 

「違くないよ」

 

「何でそう言い切れる?」

 

「それを教えてくれたのはうたちゃんとまもる君だから。だから逃げないし、無謀でもなんでもない」

 

 真っ直ぐで、どこまでも透き通るような瞳。その中に揺るぎない覚悟と信念をまもるは見た。

 

 お互い、何も言わず小さく頷く。言葉にしなくとも、それだけで通じ合い、お互いの気持ちを確かに受け取った。

 

「アイドルやろう!」

 

 強固な拘束を皆一丸となって破ろうと気合を入れる。

 

「無駄無駄。折角だから、お前を2号目のマックランダーにしてやるぜ!」

 

「アイドル!」

 

「分かってるってば!」

 

 ザックリーの目が、完全にななに向けられた。今すぐにでもこの拘束を解かなければ宣言通りなながマックランダーにされてしまう。

 それだけはなんとしてでも阻止しなければ。

 

「ななちゃん逃げて!」

 

 逃げるようアイドルが促すが、その切な願いとは裏腹の行動をななが取った。ななは、堂々とザックリーの前に立ったのだ。

 

「蒼風さんの気持ちは分かるけど、やっぱり逃げる事が大事だ!」

 

 投げ掛けられる言葉を背に、ななは僅かに口角を上げる。

 

「うたちゃんは勇気をくれたよ。はもりちゃんがピアノの弾く楽しさを思い出させてくれたよ。それに……」

 

 ななは振り返りまもるへ目を合わせる。

 

「いじけてたわたしに紫雨君は優しく最後まで寄り添ってくれた。そんな皆のように──わたしはなりたい! そして、はもりちゃんの為にピアノを弾きたい!」

 

「ザックリゴチャゴチャうるさい奴だな。行け、マックランダー!」

 

 何も出来ない少女の戯言にザックリーが機嫌を損ね、予定を変更した。

 耳障りなななを始末すべく、マックランダーに指示を飛ばした。

 

 マックランダーの容赦ない音符の弾丸が、無数にななへと降り注がれる。

 

「だからわたし──逃げない!」

 

 欠けていた、足りなかった最後の勇気を一歩踏み出した。その想いが最高潮に達したその時、奇跡のような出来事が起こる。

 

 ななの胸の内から眩い青の閃光が発せられ、降り注がれる音符を全て弾き飛ばした。

 光は収縮されながらその形を変え、アイドルが変身するのに使用しているアイテム・プリキュアリボンが手の中に収まる。

 

「プリ⁉︎」

 

 プリキュアリボンに呼応するように、今度はプリルンのポシェットから変身アイテム・アイドルハートブローチもななの元へと手に渡った。

 

 果たして、自分は本当に変身出来るのか不安もあったが。

 

「蒼風さんなら出来る」

 

 まもるの言葉、そしてアイドルのウインクでななの中にある不安と迷いが完全に消え去る。

 

 一呼吸置き、ななは2つの変身アイテムを使用する。

 

「プリキュア! ライトアップ!」

 

 プリキュアリボンをアイドルハートブローチにセット。2回、3回とリズムよくタッチし、両脇にある2つのボタンを同時に押す。

 

「キラキラ、ドレスチェンジ! YEAH!」

 

 瞬く間に私服姿からアイドル衣装へと変貌する。ななのイメージカラーをそのまま衣装に取り入れた基調とされた青。アイドルとはまた対照的に大人しめな装飾だが、それがよりななの麗しさとどことなく色気も滲み出させている。

 

「キミと瞬く、ハートの勇気! お目目パッチン、キュアウインク!」

 

 こうして今此処に、2人目のアイドルプリキュア・キュアウインクが誕生した。

 

「アイドルプリキュアが増えた⁉︎」

 

 キュアウインク誕生の事実に、ザックリーは現実を受け止めきられない衝撃を受ける。

 予想外の出来事に歯ぎしりをしながらも、目の前で増えた敵にも物怖じせずマックランダーに指示を飛ばす。

 

「マックランダー、ソイツも捕まえてしまえ!」

 

 命令を受けたマックランダーは、まもるとアイドルを閉じ込めたシャープの音楽記号を無数に撃ち放つ。

 

「逃げないよ、わたしはもう逃げない!」

 

 迫り来る攻撃を冷静に見極め、最小限の左右の動きのみで回避。

 

 それでも尚、マックランダーの攻撃は収まる事を知らない。

 

「だって、キュアアイドルと紫雨君がわたしに勇気をくれた。はもりちゃんが、わたしの演奏を楽しみにしてるんだから!」

 

 ウインクは右脚を後ろに、腰を落として迎撃の構えを取った。

 

「一歩踏み出す、ウインウインウインク‼︎」

 

 左の軸足を一切動かさず、回し蹴りを繰り出した。麗しくもあり、それでいて振り翳す右脚は、鎌の如く鋭い音楽記号を軽々と蹴り返した。

 

 跳ね返した音楽記号は、逆にマックランダーを取り込んで動きを封じ込めさせる。

 

「2人共下がってて」

 

 ウインクは振り返り、掌底打ちでまもる達を取り囲む檻を粉砕した。脚だけではなく、手を使っての打撃も目を見張る程の威力。

 

「サンキュー!」

 

「助かった!」

 

 ウインクが2人を助けている間、マックランダーは自ら繰り出した檻を破壊して抜け出した。

 負けじと反撃をしてくるマックランダー。ウインクは2人の前に立ち、ブローチに手を添える。

 

「ウインクバリア!」

 

 巨大なダイヤ型のバリアが目の前に出現し、マックランダーの攻撃を受け止め、弾き返す。

 

 体勢を立て直し、今度は音楽記号での遠距離攻撃に切り替えようとしている。

 

「動くよ、アイドル!」

 

 マックランダーの予備動作で次の行動を察知したまもるは、アイドルを呼び掛け、目配せである事を指示した。

 

「よーし!」

 

 アイドルはウインクバリアへ跳び上がり、拳を作る。

 

「アイドルグータッチ!」

 

 本来なら敵から守る筈の技を、アイドルはあろう事かウインクバリアに拳を叩き込んだ。

 しかし、それもこれもまもるの指示。

 

「マック⁉︎」

 

 叩き込まれたウインクバリアはそのまま一直線にマックランダーへ飛び、ぶつけさせた。

 バリアとは思えぬ使い方にマックランダー含め、ザックリーも驚愕して対応が遅れている。

 

 まもるとアイドルはハイタッチを交わし、ウインクに目を合わせウインクする。

 

 一気に攻め込むなら今が好機。

 

「「ウインク、最後決めちゃって!」」

 

 ウインクが一歩足を踏み込んだ瞬間、周囲の風景が一変する。

 青いステージ、その中心にはピアノがあり、鍵盤に指置くウインクの姿がある。

 

「クライマックスはわたし! 聴いてください!」

 

 アイドル同様、ウインクはステージに流れる曲に合わせてピアノを演奏しながら歌を歌う。

 口から溢れ出る美声は、耳にするものの心を奪い、魅了させる。

 

 まもるとプリルンは観客席から応援グッズのキラキライトで黄色い声援を上げながら、ライトを一心不乱に振り続ける。

 途中気のせいか、一瞬だけウインクと目が合った気がした。

 

 その事を気にする暇もなく、ウインクの楽曲は最後のロングトーンに差し掛かっていた。

 

「プリキュア! ウインククレッシェンド!」

 

 ウインクのライブステージに魅了されている無防備なマックランダーに、無数のダイヤ型のエネルギー弾を撃ち放ち、容赦無く浄化技を叩き込んだ。

 

 ステージを楽しんでくれた観客の皆に笑顔のファンサを見せ、ウインクのライブステージは幕を閉じた。

 

「クッソォォォ‼︎」

 

 負け惜しみの言葉を吐き捨て、ザックリーは撤退せざるを得なかった。

 

 マックランダーが浄化された直後、空から1つのリボンがまもるの頭の上に落ちた。

 拾うと、アイドルやウインクが持っているプリキュアリボンと同じような見た目をしていた。

 

「それはキラルンリボンプリ。プリルン達は、このリボンを集めてるプリ!」

 

「そうなのか」

 

 そういう事なら、とまもるは手にしたキラルンリボンをプリルンに手渡したのだった。

 

 これで今回の騒動は解決。

 マックランダーにされたはもりも、気を失っているだけで外傷も無く無事でいた。

 

 アイドルプリキュアの完全勝利だ。

 

「蒼風さん」

 

 まもるはウインクに手を差し出した。

 

「勇気、踏み出せたね。最高だったよ」

 

 まもるがウインクした。差し出された手と顔を今一度見て、ウインクはまもると握手を交わし、煌びやかな笑顔とウインクで3人に感謝するのであった。

 

 その後の1年生歓迎会は何事も無く、大成功という最高な結果を残してウインクもといななは、調子を取り戻したのだった。




ここまでの拝読ありがとうございました
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