東方強弱関係   作:パンプキン大佐

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あまりにも遅くなっている前半だけ上げさせていただきます。

後半は1週間後までには必ず……。


宣戦

「ここがお前達の家か」

 

「はい……」

 

目の前にある家は、他とは比べものにならない大きさを誇っていた。私自身、ここまで大きなものを見たのは初めてだ。確かに、ここであれば生き残りを全員住まわせることができるだろう。

 

この家、おそらく人間の管理をしやすくするために、妖怪達が建てたものだ。だが、そこからそいつらの実情も分かる。どうやら、質は低いようだ。人間と妖怪は違う。確かにこの仕組みは効率的だが、大物はこんなことをするはずがない。自尊心の強い奴が、格下である人間を頼る(強制的に子供を作らせてその数を増やす)わけがないのだ。我々鬼だって、人間を攫うのは勝負に勝ってからである。さらに、私達が領域内に入っているにも関わらず、全く動きがない。監視も付けない阿呆ということだ。まあ、人間だけならば必要ないかもしれないがな。

 

「ど、どうぞ」

 

玄関の扉は娘の手によって、ギィと喧しい音を立て、時折つっかえながら開かれた。建て付けも悪いか……これまでの状況からすれば当たり前だな。

 

私達が中に入ると、高齢の男性が近づいてきた。その顔は怒りに染まっている。私の風貌で、妖怪ということは気づいているはず。中々に頑固なようだ。

 

「何のようだ。今日の分はもう……! お前さんは!」

 

彼の注目は、後から入ってきた娘に一瞬で移った。それもそうだろう。生贄に差し出し、二度と帰らないはずの者が帰ってきたのだからな。

 

「そ、村長さん……私」

 

「何故戻ってきたんだ」

 

彼、もとい村長は、厳しい眼差しを向けている。村を治めるものとして、娘の行為は到底許せる事ではないのだろうな。小を切り、大を生かす。堅実な考えだと思うよ。素晴らしいとは思わないがね。もっとも、村長自身がそう思っているに違いないが。

 

「後ろの妖怪さん達が話を聞きたいって。あいつらとは関係ないよ」

 

「……どうぞ、上がってくだされ」

 

そう言って、村長は娘を連れて手前の店に入っていった。私は姿勢を低くし、手を後ろに回した。

 

「正邪様、どうぞ!」

 

「……何やってるんだお前は」

 

「このような場所に貴方を上げる訳にはいきません。どうぞ、乗ってください」

 

下等な妖怪が建てた小汚い家に正邪様が立つなど、許すわけにはいかない。私ごときに乗っていただくのも同様に許せないが、この際仕方がない。

 

「……先に行くぞ」

 

「え? あ! 待ってください正邪様!」

 

……流石は正邪様だ。同じ目線になるという事ですね。

 

 

 

 

 

予想していたが、中も酷い有様だ。何も無い。いや、染みと傷があるか。これなら家畜の方がまだ良い生活を送れているな。

 

「何か出したいところですが、生憎こちらにはなにもありませぬ。お許しくだされ」

 

そんな状況に置かれながら、よくそんなことを言えるものだ。感服する。

 

「ああ、別にいいよ。腹は減ってないからな。それで、どうしてこんなことになってるんだ?」

 

「……あれは、今から数ヶ月前です」

 

私達の目的を直球で述べた正邪様。村長はやや躊躇いながらも、その口を開いた。

 

「今の状況からは想像もできないでしょうが、奴等は初め、とても友好的に接してきました。怯える我々に、山で取れた食糧を与えてきましたな」

 

「ふぅん、確かに想像できないな」

 

正邪様は外を見ながらそう言った。無残にも破壊された家屋が点々と並んでいる光景は、村長の話を連想させることを頑なに拒んでいるように思える。

 

「私も時々、あれは幻ではなかったのかと思いましたよ。……その後もその奇妙な関係は続き、時が経つにつれそれは交流へと発展しました。私を含め、村の誰もが奴等を、信用していました……そして、一ヶ月前」

 

村長の目は途端に厳しくなった。それは、次の言葉を予測するには充分だ。

 

「奴等は別人のように襲い掛かってきたのです。そして、この有様。つまり、我々を騙していたということですな。あの振る舞いは全て嘘……私が気付いていればよかったのですが」

 

「っ!!」

 

『嘘』や『騙す』。それら単語が、私の脳裏に深く響いた。そして、突如として激しい怒りが芽生えてきた。これは種族による反射的なものであるが、奴等の行いに苛立ちを感じていたのは、紛れもない事実だ。とはいえ、この心境の変化の仕方には、彼らに少々申し訳なく思うが……。

 

「おい! 人間共!」「……っ!!」

 

屋外から男の声が聞こえてきた。おそらく妖怪だろう。そういえば、生贄予定の娘は私達が連れて行ったのだったな。ここの人間を脅すためだろう、中々威勢が良い。ただ、その声は私の額に青筋を立てさせたのだ。

 

「正邪様」

 

「……」

 

腰を上げた私に正邪様は何も言わない。つまり、許可を得たのだ。ならば遠慮はしない。やらせてもらおう。外に出れば声の主が堂々と立っていた。その表情は調子に乗った若者を思わせる。

 

「なんだぁ?」

 

見知らぬ女が出てきたんだ、それは驚くだろう。だが、答える義理も義務もない。早足で無言で近づき。

 

「ぐべぇっ!?」

 

殴り飛ばす。奴は吹っ飛び、地面に激突する。殺してはいない。我ながらよく手加減できたものだ。

 

「て、てめぇ! いきなり何をっ!?」

 

倒れた妖怪の顔を踏みつけ、その口を塞ぐ。最初は抵抗していたが、少し力を入れるとすぐに大人しくなった。それもそうだろう。鬼である私に力勝負を挑むなど、無謀にも程がある。

 

「反論を聞く気はない。まあ安心しろ。取って食おうというわけじゃない。すぐに離す。私が言うことをお前の大将に伝えるんだ……簡単だろう」

 

妖怪は小さく頷く。十数秒でよくもまあここまで素直になれるものだ。……私が言える立場ではないな。

妖怪に顔を近づける。それだけで、奴の顔は恐怖に歪んでいく。酷いな、これでもそこらの妖怪よりは愛らしい顔をしていると思うのだが……原因は違うか。

 

「それじゃあ言うぞ。聞き漏らさないでくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今から私がお前を殺す」

 

お前達へのお告げだ。必ず伝えてくれ。

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