専門用語いっぱい出るけどゆっくり教えるね
「はっ……はっ……はっ……!」
部下を率いて敵基地を駆ける。
飛び出した敵兵を撃ち、敵が展開した障壁ごと実弾で撃ち抜いた。
「隊長……! もう実弾が……!」
「ソフィア。マジック……いや、エアショットで牽制しろ。魔力も残しておいた方がいい」
そういいながらライフル型魔導銃で実弾を使用しないエアショットを撃ち、こちらに狙いを定めていた敵魔導銃兵を後退させる。障壁で殺傷能力どころか攻撃性すらないが消費魔力は低いし牽制する時には便利だ。
「ヴィルっ! 目標は!」
「あと少しのはずです!」
魔力感知が得意なヴィルに目標位置を確認させながら5人で目的地へ走る。
偵察兵のヴィルヘルム
衛生兵のソフィア
突撃兵のコジロウ
先ほど救出した捕虜のアレクシス
そして部隊長の俺
人数が多いと流石に潜入とはいかず即座に応戦することになったが捕虜を救えたのは幸いだった。おかげで問題も発生したが……それはいい。
建物内に侵入し後続が来ないよう封鎖しながら先へと進む。
道中の敵を実弾節約のためエアショットで牽制しながら最奥の部屋のパスコードをヴィルが解除し室内に入る。
「コジロウが戦えなかったがようやく到達できたな……」
「……す、すみません。俺のせいで」
「あまり喋るなアレクシス、傷に障る」
「いま治療します!」
コジロウがボロボロのアレクシスを下し、ソフィアが魔力を使い治療を行う。
それを確認した後俺とヴィルとコジロウは前に鎮座する建造物と見間違うほどの兵器を見上げる
「これが……」
「あぁ……ブリリス国が開発した大規模戦略魔導兵器『クラカチット』だ」
見た感じの印象は巨大な柱、だが巨大な砲台となっており国すらも崩壊させるほどの魔導弾を発射し広範囲を破壊する。
「俺の国に撃たれたら半分は消し飛びそうですね」
小国ながらかなりの軍事力を誇るヤマト出身のコジロウは苦笑する。今一番ヘイトを集めているのはヤマト国だろうしな……クラカチットが発射されるなら間違いなくそこだろう。
「私達が来たんだ、その可能性はなくなったさ」
「……ですが」
あぁ、そうだ。俺は疑問の声を上げるコジロウの声を聞きながら首にかけていた魔道具を手に取る。
帰還の魔導具、これ一個で5人は働かなくてもいいほどの金がかかるが例え敵地にいたとしても自陣へと帰還できる。
……だが、ここにあるのは4人分だ。
「ごほっ……パトリック隊長……助けてくださって感謝します……ですが、俺は置いていってください」
「……」
アレクシスの声にソフィアが苦虫を嚙み潰したような顔をする。ソフィアは犠牲を嫌う、この捕虜を助けることを提案したのもソフィアだ。後先考えていなかったとは言え人としては間違った行動をしたとは思えない。だからこそ、ここからの提案を心苦しく思う。
俺は帰還の魔導具を首から外し、少しだけ体調が良くなったアレクシスの首にかける。
「アレクシス、お前はみんなと帰るんだ」
「隊長!?」
ヴィルヘルムが声を荒げる。他の隊員もこちらへと詰め寄ってきた。
特にソフィアの取り乱しようは謙虚だ。
「俺ももう30を超えた、それに戦争もこれで終わる。このまま帰還して平和になったとしても俺に居場所なんてない。だがお前らはまだだ、俺と一緒に消える必要はない」
「ですが『英雄』になるはずのあなたが消えては……!」
「大丈夫だ……俺一人が消えたとしても世界は続く、多少の混乱は出るだろうかお前らならやれるはずだ」
そういいながら俺は帰還の魔導具を起動する。
外部からの攻撃を遮断するために筒状の障壁が彼らの周りに展開された。数秒後彼らは基地へと転送されるだろう。
「隊長!」
「イヤッ! 隊長っ!!」
「そんなっ……俺が……!」
「……!」
俺は四人に笑顔を向けて敬礼をする。
ただのスラムの孤児だった俺がここまで成り上がれたのはお前達のおかげだ。
「こんな隊長についてきてくれてありがとう」
4人が転送されると敬礼を解き、もう一つの魔導具を取り出した。
このクラカチットなら破壊出来るほどの爆破用魔導具。素材を見る限り破壊すれば同じ物を作ることは難しいだろう。そもそも撃ち出すのにどれだけ魔力を消費するか分からないが。
封鎖していた扉にヒビが入る、打撃音は先ほどから聞こえていたが精密魔導具があるから無理やり破壊して魔導具が傷つくことを恐れたのだろう。
俺は爆破魔導具を設置起動し、一息つく。
俺はずっと持っていた魔導銃を撫でた。
「お前にも無理させてしまったな……」
義父から授かった魔導銃を背負い直し、スキットルを取り出し煽った。今ではほとんど取得できない砂糖が多く入った甘いジュースを一息に飲み干す。死ぬ前にこれだけは飲むと決めていたものだ。飲み干すと同時にスキットルをそこらへんに放り投げる。
その瞬間扉を破りブリリス兵が雪崩れ込んできたがもう遅い。魔道具は起動した。
「我らがツィードに……平和な世界に栄光あれ」
爆発音とともに視界がすべて白く染まった。
「……う……ぁ……?」
意識が覚醒する。ここがヴァルハラか……?
白んでいた視界が少し戻る。土……? 横に見えるのは石壁……?
いや……生きているのか……? 俺は……?
手を伸ばそうとしたが以上に短い、着ている服は先ほどまで着ていた軍服だが腕が袖から出せてなく足も同じようになっている。爆破で両手両足が吹き飛んだか……? 生きているだけで儲けものだが……すると俺の横に愛銃があることに気づく。
「お前……は……いて……くれたか……」
俺は愛銃を杖代わりに上半身を起こす、喉がカラカラだし視界も未だに霞んでいる。
多少回るようになった意識で俺は疑問に気づいた。俺が愛銃を握れていることに。
指がある……? 四肢を欠損したというよりもまるで身体が縮んだような……。
くらっ……
だめだ、何故だか知らないが魔力が枯渇している。精神疲労により意識が持たない……。
俺はそのまま意識を失い、先ほどとは対照的に暗闇へと落ちた。
「……っ!」
再度意識が覚醒する。先ほどとは違い魔力は僅かながらも行動不能にならないほどはあった。
俺は即座に起き上がり近くに立てかけられていた愛銃を手に取り構える。残弾は1マガジンほど。
周囲の警戒、どこかの家のようでいままで寝たこともない柔らかいベッドに驚く。
荒廃の様子もなく室内もまるで掃除したばかりのように綺麗だ。警戒する必要はないかと構えを解く。
むしろここはもしかして貴族の家か……? いつの間にか着替えさせられている服もやたらと仕立てが……。
「おや、起きたのかい」
するとドアが開けられた。眼鏡をかけた優しそうな男性だ。読書が趣味のような顔をしている。
「ここは……?」
「ここは僕の家だよ、地名を聞きたいならフルハンクだ」
フルハンク……!? リーンベルとクルメブクレンと同じように8割は荒廃していたはずなのに……。
窓の外を見てみると戦争の後などなく町の人々が幸せそうに歩いている。
「…………」
「っ!? どうしたんだい……!?」
男性の言葉を聞き流しながらもぽたりと涙が落ちる。
ずっと願っていた平和な世界。大人も子供も笑顔で街中を歩く、ばったりと会った近所の人と世間話をしたり町に響く露店の呼び込みの声。
俺達がいた世界とも違う平和な世界に涙が止まらなかった。
ある程度泣き続けたのち。ふと、窓ガラスに映る自分の顔に気づいた。
青みがかった白髪に大きくぱっちりとした目。体は細身ではあるが程よく成長しているようで13~5歳ほどだろうか……。思わず頭が痛くなる。無くなったと思った手足は女性らしい細身な腕になっていた。
俺は突然泣き出したと思えば頭を抱えていた姿に困惑していた男性の方を振り向く。
「……荒唐無稽な話になるかもしれないが……私の話を聞いてもらえるかい?」
男性は不思議そうに頷いた。そのまま先ほどまで男性がいたらしいリビングに通され椅子に座らされる。
調度品も綺麗で家はそこまで大きくない感じがするが本当に貴族ではないのだろうか?
「……さて、君の話も聞きたいがまずは自己紹介をしよう。僕はジークフリート・トルネンブラ、ジークでいいよ」
「そうだな……私はパトリック。パトリック・ヴォルヴァドスだ」
「……え?」
私が名を告げると驚いた顔をされる。男の名前だったからか?
男性……ジークは少し考えこむと言葉を紡ぐ。
「……その名前は本当に君の名かい?」
「……? 詳細に関してはのちに説明する予定だが本名か? という質問に回答するならその通りだ」
この体の本名と問われると否かもしれないが俺自身の本名はその通りだ。
ジークはまた少し考えると席を立ちそばにある本棚へ向かって一冊の本を取り出す。
「文字は読めるかい?」
「……? ツィード語と共通語なら、話すだけならヤマト語とタリィア語も」
「それは凄いね」
そういいながらジークは俺の前に一冊の本を置いた。その本は共通語で書かれており多少の文法の違いはあるが問題なく読むことは出来た。だが……
「……これは何の冗談だ?」
「冗談ではないね、だから僕も困惑しているんだ」
その本には『英雄 パトリック・ヴォルヴァドスの歴史』と書かれていた。
ページをめくると生まれから。『ツィード国のレジューシェンのコーラツヴァルダウンで生まれた』あっている。
決定的に変わるのは13歳、『魔物に襲われ~』あぁ、待ってくれ。情報が多い。
俺は額を抑えてタイムをするかのようにジークに向かって手のひらを向ける。
「……情報量が多い」
「……だろうね、このままだと説明ばっかりになってしまいそうだ。ゆっくりと話をしていこう。ともかくその名前が特別なものだというものが分かったと思う。とりあえずは仮の名前が必要だね」
俺は再度ジークに顔を向ける。この男、人が好過ぎないか?
現状俺の状況を客観的に羅列されると武装していて英雄……の名を騙る路地裏で倒れていた謎の女だぞ?
下手をすれば襲われる可能性もあるのにもはや恐怖すら覚える。
「……何故私にそこまでしてくれる? 放り出そうと思わないのか?」
俺なら即座に追い出している。それぐらい今の俺の現状は危険物と変わりない。
するとジークは少し笑いながらこちらを見た。
「あぁ、そうだね。本来なら僕もそういう行動を取るのかもしれない。だけども何だろうね……ご都合主義のようだけど、君にはそういう感情は湧かないんだ」
「……私は」
その瞬間、俺の腹から空腹を告げる音が鳴り響いた。
思わず隠そうと腹部を抑える。真面目な話をしていたのにこれは少し恥ずかしい。
「ふふっ。まずは食事にしようか。長い話になりそうだしね」
俺はその言葉、顔が熱くなるのを感じながら頷いた。
『主人公の持っている愛銃』
形状はM1ガーランド、マガジン式でスプリングフィールドM14のようにリロードする。
『説明されないかもしれない用語』
・エアショット
空気を僅かな魔力で固めて発射する、非殺傷弾ではあるがそこそこの衝撃はあるため軽い怪我はする。
・マジックバレット
魔力の塊を発射する殺傷弾。威力によっては人体なら貫通するほどの威力がある。
・実弾
弾丸を魔力で発射し相手の障壁(バリア)に到達した瞬間。火薬が炸裂、弾頭を発射し。障壁を破壊しながら相手を貫く、威力が高いが上二つと違いリロードが必要。
なお発射した時はミリオタ発狂弾になる。