ここまで読んでいただきありがとうございます。
チームに来る気はないか?
第一声を聞いた僕のまず思ったこと、それは
なぜ?!
である。
危うくそんな言葉が喉から出そうなったじゃあないか!
しかし、一度飲み込み。
「...理由を聞いてもよろしいですか?」
なんとか、理由を聞くことができたが、
「オイオイ。質問に質問で答えるのは×だって小中で習わなかったか?」
黙って帰っても僕のせいにならないんじゃあないかな...。
本気でそう感じそうになりつつも。
「意図が分からない。と聞いているのです。白紙の文章を出して
『作者の意図を答えよ』
と聞かれるようなものじゃあないのでは?」
「...ククッ。すまんすまん。冗談だ。」
シリウスシンボリ先輩が小さく笑うと勧誘の理由を話してくれた。
単純な理由だった。
僕の『黄金長方形』に興味がある。とのことだった。
しかし、
「...『それ』についてはルドルフ先輩にも話した通りです。僕は..。」
「『未完成』なんだろ?しかもどうすれば到達できるかわからないでいる。違うか?」
「...はい。」
寮にて
「『黄金長方形』か...。それは『黄金比』と呼ばれるものでできた図形ということかい?」
流石はルドルフ先輩、理解の速さと考察は群を抜いているということか。
「はい、実を言うと私はこの『黄金長方形』については最近本やテレビで見つけたに過ぎません。」
「名だたる偉人たちが残した美術品や建築物には時代、地域に関わらず『黄金率』で作られている共通があるといわれている。それは自然が生み出した最も美しいとされる比率で作られた『長方形』。
すなわち『黄金の長方形』が使われている。そして『黄金長方形』による芸術作品は人々に『美しい』と評され後世へ受け継がれる。つまりスロー、君はこれをレース、走りに使えないかと考えた、そうだね?」
「はい。効率化された『黄金長方形』はきっと僕の足をさらなる段階へと引き上げてくれる。
そう思ったのです。」
「しかし、それをどうやって走りに反映させるつもりかい?『黄金長方形』、正確にいえばその性質である
中に正方形を作れば新たな長方形ができ、それを繰り返してできた図形の中心を結ぶことでできる
『黄金螺旋構図』のことだと思うが、私にはとても実現ができないと考えてしまう。」
「その通りだと思います。僕は最初これを思い浮かんだ時『できるわけがない」と思いました。」
「ならなぜ?」
「『忘れられなかった』からです。なぜそのようなものに熱中するのか自分でも分からなかった。
ただ『これが僕にとって大切なことだ』と『本能』、いや、よりもっと奥にある何かが
『これを完成させよ』と自分に課していると感じたからです。」
まさに『運命』が手招いているようだった。
いやもしくは『あの人』が...?
「私にようやくトレーナーと契約してな、来年からクラシックに参加する。
それまでの間に得られるものは得たい。そこで出てきたのはお前の『黄金長方形』だ。」
「...でしたらなおさら疑問です。トレーナーが就いたのなら『専門』の『より確実な』トレーニングができるはず。僕の『未完成』の『できるかわからない』ものまで取り入れてクラシックに参加する理由は?参加して何を成そうというのですか?」
「...『ヤツ』を『私』で塗りつぶすッ。記憶もッ記録もッ。そして、手に入れるのは『世界の頂』だ。
そしてオマエは『黄金長方形』について気のすむまで追求し続ければいい。
チームであれば『人』『物』『場所』などが優先的に使える、オマエにとっても悪くない話のはずだ、
特に自分の手の届く範囲では限界を感じている『今』は。」
「...。」
「...話が逸れたな、『理由』は言った。『利点』も提示した。選べ、私のチームに入る気はないか?」
「...お断りします。」
「...理由を聞かせろ。」
「『私をスカウトしたいわけではない』からです。」
話を聞いた限り、シリウスシンボリ先輩は『黄金長方形』の情報が欲しいのであって
『黄金長方形を使う僕』ではないということだ、オマケはあくまで『僕』...。
な~んかよォ?『納得』がいかねェよなァ?
『ニンジンハンバーグ食いに来たけど、ハンバーグしか食べる気がありません』と言われたような感じがしてよォ~?ちなみにハンバーグは『黄金長方形』、ニンジンは『僕』
「...ククッ。ハハッ!」
「?」
「流石に目の前に『人参をぶら下げる』は無理があったか!」
「た...試してたんですか!?」
「いや、まあ、勧誘自体は本気だったんだがな?」
「『黄金長方形』については?」
「さっきオマエも言ったように、『勝つ』だけなら当然トレーナーが考えるトレーニングがいい。
しかし、『世界の頂』に行くにはそれだけでは足りなさすぎる。それを埋めるものとして『黄金長方形』を
利用しようとしているオマエの話を聞いてな、興味があったから勧誘してみたが断られたんじゃ仕方ないな。ただ受け入れたら『アイツ』の嫌がらせにも使えると思ったんだがな。」
「...最後のは置いといて、案外すんなりと引き下がるんですね?」
「お前が『選択』したんだろ?なら私がこれ以上引きとどめることはオマエの『選択』を侮辱することになる。
そんなことは私はしない。」
「...。」
「邪魔した。引き下がると言ったが気が変わったらいつでも来い。歓迎する。あとこれからはシリウスでいい。」
そう言うシリウス先輩は席を立ち、去って行った。
「ふ~。」
緊張から解放されたか、ため息が出る。
「スローダンサーちゃん!」
クラスメイトが声をかけてきた。
「ん?どうかしたの?」
「どうしたもこうしたもないよ~!シリウスシンボリ先輩がスローダンサーちゃんに絡んでるって噂になってたから見に行ったらホントに絡まれてるし~、大丈夫?怖くなかった?」
「いや?チームに勧誘されただけだから、特に何もされてないよ?」
「勧誘ー!?」
「断ったけど。」
「断ったー!!?」
カフェテリアでクラスメイトの声が木霊した。
「いやー、いい声が出てたじゃんね~。廊下まで響いてたよ~?」
「うう、恥ずかしい...。」
「その...色々ごめん、主に心配と驚かせた方に...。」
「本当だよー!だってあのシリウス先輩のチームでしょ!?色々な施設を占拠して度々騒動になってるって他の先輩から聞いてるんだよー?しかも、ルドルフ先輩に絡んでるし。勧誘でもびっくりなのにそれを断るスローちゃんにもびっくりだよ。」
「...ちなみに断った理由を聞いてもいいかな?」
2人が興味を持って顔を近づける。2人だけじゃない、クラスメイトの何人かが聞き耳を立てているようだ。
しかし、これ以上話題に上がるのは面倒だ、適当に流しておこう。
「なんでもルドルフ先輩への嫌がらせのためみたいだよ?それ以外にも目的はあるみたいだけど、そんな理由でスカウトされたら断りたくもなるじゃあないか。」
「それもそうだね~。」
「ルドルフ先輩から目を付けられるのはいやかな。」
2人は納得したようだ。
「まあ、いきなり入ってくれるわけもねえしな。」
シリウスシンボリはカフェテリアから教室へ戻る。道中の際に思い出すのは...。
『シリウス、聞いてくれ。昨日新しく入ったルームメイトなんだがこれは非常に興味深い話を聞いたんだ...。』
『彼女、スローは我々が見たこともないことをするかもしれない...。」
『それでスローはな...。』
「チッ!」
シリウスシンボリは悪態をつく、破天荒でも聡明な彼女であるがこの胸の奥で感じる『彼女と彼女の目に映る人物』に対する『薄黒い』感情を説明できずにいるからだ。
廊下には『学校案内』『生徒会からのお知らせ』『注意書き』そして『選抜レース』
案内が張り出されているがシリウスシンボリはこれを風のように通りすぎて行った。
キャラを増やせば会話が分かりにくくなり、キャラが少ないと盛り上がらない。
悩む。