スローダンサーの奇妙な競走   作:アイソ

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大変お待たせしました。

先日、初めて作品評価をいただきました。大変うれしいです。
この評価に見合うよう頑張らせていただきます。


トレセン学園編3

『選抜レース』

 

それは、レースに参加するための必須条件の1つである『トレーナー契約』を結ぶための方法、他にもトレーナーとの契約までの過程は多岐にわたるが『選抜レース』は最も『強さ』や『素質』を示しやすいという利点があると言える。

そのため、『選抜レース』は新人、中堅、ベテラン様々なトレーナーが次世代の原石を発掘する、すなわち『スカウト』をする場でもある。

 

 

 

 

 

 

「…で、あるため、ピッチ走法やスライド走法は個人によって違ってくるので教官やトレーナーからの指導で調整を行い、最適の『姿勢』を作り…」

 

先生が黒板にレースでの知識を教科書と共に書き込んでゆく。

僕はクラブで習ったことがあるため、話半分聞き、ノートにまとめつつ『選抜レース』に

ついて考えていた...。

適性検査で『中・長距離』の適性が高いことが分かっている。レースで言う『三冠路線』を目指せるかもしれない。しかし、他と渡り合うための『武器』が必要だ、僕の場合は『黄金長方形の回転』である、かもしれない。しかし、それは『未完成』、どころか何をもって『完成』とするかそれまでの道のりが分からない、何が足りないのか、どんなものなのか、それすら『不明』そんな状態、まさに『右も左もわからない』だ。

 

「…『回転数』により過ぎれば『距離が稼げず』、『距離』により過ぎれば『回転数が落ちる』、必要なのはバランスであり、それぞれは足し算というより掛け算に近いと言えるでしょう。」

 

しかし、僕は何としてでも『選抜レース』に勝ち、トレーナー契約をスカウトを受けなければならない、でなければ『先』はない。

 

『キーンコーンカーンコーン』

「...では授業はここまで、『選抜レース』に参加する場合は申請書の提出を忘れないようにー。」

 

授業も終わり、少し教室が騒がしくなる。ホームルームが行われるため帰りどうするか、新作のスイーツを食べるか、新しいトレーニング用具を買いに行くかなど、それぞれグループに分かれて相談し合っている。

 

「スローは『選抜レース』どうする?アタシは短距離向きだけど今回の選抜レース、短距離のレース少ないから参加者が多い気がするんだよね~。だから次回以降にしようかなーって。」

 

「私は今回『中距離』に参加するよ、トレーナーさんと契約して時間を作らないと!」

 

そう話す2人はそれぞれ『選抜レース』の予定を立てているようだ。

 

「僕も『中距離』に参加する予定、ライバルだね?」

 

「ま、負けないからね!?」

 

「いやいや、お二人さん、『中距離』レースは何個かあるから、気が早いから、ね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、グラウンドで選抜レース参加者向けの共同トレーニングが行われた。

そこで...。

 

「ハアッ...!ハア..!ハアー...ッ!」

 

僕は改めて『中央』の壁の高さを実感していた。中央の『レベル』は中学までいたクラブより高いことは知っていたし、自分はその上位に入れないことはわかっていた。

 

「は、8着...ッ!」

 

けど、こうして走りで見せつけられると体より『心』が折れそうになる。今までの『自信』ってヤツが砕かれそうになる。

ま、まずい。『選抜レース』はあくまでも『自身を魅せる』場、『勝ち負け』は重要じゃあない。でも上位に入らなければ、少なくとも他と拮抗できる勝負を見せなければそもそもスカウト以前の問題となってしまう。

 

「もっと、もっと力を付けなければ...!けど...それには...。」

 

やはり『黄金長方形』か?『黄金長方形の回転』を習得できなければ戦えないのだろうか?現状、今の僕は丸腰で戦っているのと同義だ。

選抜レースまで時間はある、それまでモノにしなければッ!

 

 

 

 

 

 

 

「おかえり、スロー。随分遅くまで練習したね?選抜レースに向けて奮励努力するのは良いが、ここしばらくじゃないか。休養日を設けないと逆効果になるし、もしケガをしたら本末転倒だぞ?」

 

「...ご心配をおかけして...すみません...ルドルフ先輩。でも...このままじゃあダメなんです。強く、ならないと...『先』に...進めない...んです。皆より...。」

 

ここしばらく自主練を行った僕は門限前に帰ることが多くなった。寮長からも怒りづらい時間に帰るから叱りにくい、って言ってたっけ。

 

「焦る気持ちは分かる。だからこそ、体を休めるんだ。次なる成長のための『準備』をしなければ、勝てるものも勝てなくなるぞ。」

 

「...。」

 

「君は今『黄金長方形』の回転に囚われている。しかし、その『領域』に到達するまでの道筋が分からない以上、分かるまで今できることするしかない。できるかどうかわからないことを我武者羅に行うことは『無謀』としか言えない。」

 

「...無駄なことはやめろと?」

 

「違う、『妙な期待をするな』ということだ。」

 

「...。」

 

「スローはレースに『勝ちたい』か?」

 

「もちろんです。」

 

「君に『勝ちたい』という意思があるのならば、今あるもの、自分が使えるものすべて使って勝ちに行け。君にはすでに勝つためのピースを持っているのだから。」

 

「...わかるんですか?今の僕でも勝てるって。」

 

「君がどれだけ努力しているのか、これまで書き溜めたノートとその『足』が物語っている。それとも『私』の言葉は信用できないか?」

 

「...いえ、信じます。」

 

「ならばよし、早く風呂と食事を済ませるように。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

選抜レース前日

 

前日は体のコンディションを整えるのが一般的であるが、最後に1本だけ通しでやろう。

 

「...よし。」

 

周りの色と音は不要な情報として除外されていく。

見えるのはコースとハロン棒のみ。

 

「フー...。」

 

 

 

 

よーい...。

 

 

 

 

 

ド『そこでなにをしている!馬鹿野郎!』

 

「うお!?」

 

スタートを切ろうとしたところで怒鳴り声が聞こえた。

 

「明日選抜レースでこのコースが使われるから整備目的で早めに閉まるんだよ!聞いてなかったのか?それとも『わかってて』使おうとしたのか?」

 

「へ?」

 

聞いてないぞ?そんな大事な情報!?

 

「す、すみません...。は、初めて知りました...。明日の昼間じゃあないんですか?」

 

「ったく、よく告知を読んどけ。それはコースの芝やダートの整備だ。今からゴミや落鉄の掃除やゲートの整備、選抜レースの会場設営とかが行われるんだよ。最後に1本やりたい気持ちはわかるが、それは明日にとっておけ。」

 

「わ、わかりました。すぐ出ます!」

 

 

 

 

 

すぐにコースから出た僕は声を掛けてくれたお爺さんのところへ行った。バッチがある。

トレーナーだ。

 

「本当にすみませんでした...。」

 

「気にするな。こっちもすまねえ、さっきスタートを止めさせた時にぐらついたが、足は大丈夫か?」

 

「はい。特に捻ったとかはないので大丈夫です。それより...。」

 

「ん?なんだ?」

 

「さっき、なぜ『最後の1本』だってわかったんです?」

 

「そりゃあ『空気』だな、お前さんが『ここで決める』って空気が見えたからな。選抜レース前に見ようかなと思ったんだが、時間がなかったんでな。」

 

「なるほど、中央のトレーナーはそんな目を持っているんですね。」

 

「ちげーよ、ただの『勘』だ。長年やってるとそう感じるようになるんだ。」

 

「そうなんですか。」

 

「そんなもんだ。」

 

お爺さんと別れて寮へ帰路に就いた時、三女神像の前を通ることになった。

 

「...祈っておこうかな、レースの無事を。」

 

あくまでも『レースの無事』、『勝利』は望まない、

...いややっぱり『勝ち』もいれるか?けど勝つなら『自分の力』で勝ちたい。よし、『無事』にしよう、そうしよう。

 

 

 

 

 

 

寮に着いた時、僕は大事なことを忘れていたことに気づいた。

 

「あ、あのお爺さんの名前聞くの忘れた。」

 

まあ、明日会えるかもね。

 

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