スローダンサーの奇妙な競走   作:アイソ

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何カ月も待たせて申し訳ないです。
ちょくちょく書いていたのですが切りどころとこの場面どう書こうが分からなくなったからですね、本当に申し訳ないです。
以前より少し長めに書きました。


トレセン学園編7

「あのォ~?今はフォームに慣れることが先だったのでは?」

 

僕はトレーナーの突拍子もない言葉に混乱した。

『やるかも』でもなく『やる?』でもない、

『デビュー戦をやる』と言ったのだ。

 

 

「いつですか?」

 

「5月末。」

 

「1カ月切っているじゃあないですか?!それでもやる理由ってなんですか!?」

 

「『東京レース場』で行われるからだ。」

 

「!!」

 

 

『5月末』『東京レース場』この2つといえば

 

 

 

 

「『日本ダービー』...!」

 

「さすがに気付くか。」

 

日本ダービーといえばルドルフ先輩も出るG1レース!

 

つまり

 

「今の自分とクラシック戦線との『距離』が分かるようになる。どうだ?」

 

「はい!やります!!」

 

皐月賞では選抜レースがあって観に行くことができなかったが今度こそ...

 

「ですが、まだフォームには調整が」

 

「問題ない、お前は『不十分』と感じるかもだがこっちから見ても『できている』と言える。本番でも通用すると思うぞ。」

 

六平トレーナーはこう言う通り、『フォーム』は今の自分にしっくりきている、今ならすぐにでも実行できるだろう。

 

「今日から他のチームメンバーと本番に近い状態で併走を行ってもらう。準備しとけ。」

 

こうして僕のデビュー戦に向けた練習がスタートした。

併走を行うとレースに近い状況と相まって『フォーム』の維持が難しくなる。

チームメンバーの先輩方も簡単には抜けさせないようなポジション取りやプレッシャーをかけてくる。

走っている間はまるでスプーンに乗せたゆで卵を落とさないように、気を抜けば速度が落ちる。

併走が終わってもレース研究。デビュー戦程度だろうと作戦を怠れば勝利できるものができなくなる。

 

(こ、これをあと1カ月?いやこれ以上を数年行うのか?)

 

レースは一筋縄ではいかない。

それを実感した1日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお!もうデビュー戦か!?」

 

寮へ帰り『デビュー戦』についてルドルフ先輩に伝えると驚きを見せた。

 

「とは言っても1カ月後ですが。」

 

「それでもデビュー戦に参加できることは君の資質と努力の結果だ。先輩としてとても嬉しい。」

 

「ありがとうございます。ルドルフ先輩もダービーもうすぐですよね?調子はどうなんですか?」

 

「ああ...。そうだね、体調は問題ない。このままいけば『無敗の二冠』も夢ではない。」

 

そう話すルドルフ先輩は自信の中にわずかながらの不安が混ざっているような気がした。

 

「ところでご両親には伝えたのかい?せっかくのデビュー戦だ、レースに招待したらどうかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、1カ月後、デビュー戦

 

 

 

 

 

 

控室でゼッケンを付け『その時』を待つ。

 

「どうだ、調子は?」

 

六平トレーナーは準備を済ませた僕に聞く。

 

「はい、いつでも行けます。」

 

「そうか、改めて言う必要はないと思うが今回のレースはお前にとって短いと感じるだろう。」

 

「だからスパートは早め、『常にタイミングを見計らって』ですよね?」

 

これまでのレース研究から口酸っぱく言われてきた言葉だ。

 

「そうだ、それを意識していれば今のお前なら勝ち切れるはずだ。だが油断するな。」

 

当然。ここで油断して『負けましたー』は洒落にならないじゃあないか。

完膚なきまで...とはいかなくても。まずはここで勝つ。

そしてようやく『スタートライン』に立つ『権利』を得られる。

 

「スローダンサーさん。出走準備お願いします。」

 

「わかりました。...では、行ってきます。」

 

「ああ、行ってこい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レースを始める前にパドックにて観客へ出場するウマ娘の紹介が行われる。

1番から始まり一緒に人気が発表される。

 

『3番4番人気スローダンサー』

 

僕の名前が呼ばれる。前へ出て注目を受ける。

特にポーズなどは決めていないので観客に向けて手を振る、その時だった。

 

父と母がいた、隣に六平トレーナーがいるからトレーナーに案内されて来たのだろう。

 

先月、ルドルフ先輩に言われた時デビュー戦について話しており、観に行くと言っていたが...。

クラブにいた頃は保護者という側面が強かったため『来てるのは知っている』という感覚だったが。

だからか何だろう実際『来てくれるか分からない時』に来てくれるととても嬉しいなぁ。

 

「これは、負けるわけにはいかないね。」

 

 

 

 

 

 

 

出走者全員がゲートへと入り始めて皆それぞれ自分の番まで待つ。

周りの空気が段々とヒリついていく。

 

「次3番スローダンサーさん」

 

係員から声がかかる。誘導に従いゲートに入る。

深呼吸をして集中を高めていく。

そして最後のウマ娘のゲートインが完了する。

 

 

 

 

ガシャン!

 

 

 

 

 

スタートし一斉に駆け出す。今回はいつもより『早く』スパートを始めなければならない。

まずは100m、ポジション争い、自分のスパートを邪魔されないポジション。

 

(このあたりだね。)

 

やや外の位置でスパートのタイミングを計る。いや

 

(同じ考えの娘はいるよね。だったら...。)

 

まだ半分越えないタイミングでスパートをかける。

周りのウマ娘も少し遅れた形で前へ出る。

 

『!!』

 

僕がこのタイミングで前へ出ることが予想外だったか行かせまいと抜きにかかる。

先にスパートした僕に追いついたウマ娘達は勝ちの表情を浮かべる、しかし。

僕は知っている、というより『分からされている』。

 

『脱力』と『慢心』は違うことを

 

自分はまだチャンスを手中にあると信じてしまう。

いつの間にが指の間から消えていることに気づかずに

まるでドライアイスが液体になる間もなく霧散するように

そしてなにより

 

まだ僕の加速はまだ『上がる』。

 

(まだだ最大まで『回せ』...。)

 

差し返され、追いつけなくなる。

勝ちを確信した顔は敗北を悟る。

加速し続けついに先頭に立つ。

 

自己最大の『速度』の僕は後続を突き放す。

 

余裕を持って最後の直線を走り切り。

 

僕は

 

トレセン学園に来てから初めて

 

『1着』になった。

 

 

 

 

 

ゴールした直後観客席から歓声が上がる。

掲示板を確認するとそこには『3』の数字が『Ⅰ』の隣に表示される。

僕の番号は『3』つまり...。

 

「...!!『勝った』...のか?!」

 

息を整えているこのタイミングで『詰まりそうになる』。

まだデビュー戦に勝っただけ。

まだスタートラインに立てるようになっただけ

 

でも

 

久しぶりに得たこの『勝利の感覚』はいつでもどこでも

僕を満たしてくれる

 

 

 

 

 

 

「お疲れ。まずは1勝おめでとう。どうだ?勝った感想はあるか?」

 

控室に戻りウイニングライブの衣装へ着がえを終えたところ六平トレーナーが入ってきた。

 

「ありがとうございます。そうですね、『勝ってうれしい』のは当然としてこれからこれ以上の相手と競い続けなければならないと思うと不安もあります。」

 

今回は『勝利』という結果だった。しかし他のウマ娘には申し訳ないが『デビュー戦』は始まりに過ぎない。

これからそれより強いウマ娘と相対することもあるだろう、今後レースを続ければ『シリウス先輩』とぶつかる。

もしかしたら『ルドルフ先輩』とも、歴戦の猛者たちとも。

 

今後を思うと不安になる。

 

「そう思うのも無理は無いが深刻に考える必要はないと思うぞ。」

 

そう六平トレーナーが続けて

 

「おまえは『これ以上』に成長する可能性はある。やることは大して変わらねえ。

 これからも研鑽を積めばいずれ上の奴らにも手が届くようになるだろうよ。」

 

 

 

 

 

 

「お疲れスロー!」「1着おめでとう!」

 

ウイニングライブを終えた僕は両親と会った。

出会い頭に2人に挟まれてハグされた。

『途中追い抜かれてハラハラした。』とか『これからのレースの予定はある?』とか色々と言われた。

お互い約1カ月の再会、普通の家族であれば学園生活や友人の話があるが、生憎我が家はその型にハマらない。

両親がこの1カ月も色々なところを回っている。その話を僕の何倍もの会話量を話をしていると時間はあっという間に過ぎて帰寮しなければならなくなり両親とはそこで別れた。

 

 

 

 

 

「いやー、まさかもう勝っちゃうなんて思ってなかったなァ~。」

 

「それって期待していなかったってこと?」

 

「そんなことはないわよ。でもやっぱりクラブと全く違う『環境』でしょ?デビュー戦にも行けなくてトレセン学園を辞めちゃう娘もいるのからウチの子は大丈夫かなって。私レースに憧れるしかなかったから。」

 

「嫉妬した?」

 

「うーん?そうかもね。」

 

「意外とあっさりだね。」

 

「だってテレビの中の世界にスローがいて私がいなかった。そりゃー、ね?でもそれ以上にどこまで行ってくれるか楽しみでもあるのよ。」

 

「そうだな。これからも応援していきたいな。あと旅のプランを考え直さないと。」

 

自慢の娘への期待とわずかな不安を胸に抱き次の計画を立てる両親であった。

 

 

 

 

 

「ただいま戻りました。」

 

「やあ、おかえりスロー。デビュー戦はどうだったかい?」

 

「おかげさまで初勝利でした。」

 

「...!おめでとう、スロー。私も君の勇姿を見たかったが...。」

 

「『日本ダービー』がかかっているのですから、仕方ないですよ。それに私も選抜レースで『皐月賞』を見れなかったのでお互い様です。」

 

そう、来週は『日本ダービー』、ルドルフ先輩の二冠目を掛けたレース。

ここまで無敗、『無敗の二冠ウマ娘』の称号セットも掛けたレース。

 

「そう言ってもらえるとありがたい。疲れただろ?湯舟に浸かって汗を流しておくといい。」

 

「そうします。」

 

 

 

 

浴室にて汗で重くなった服を脱ぐと自身の身体にある『変化』が起きていることに気が付いた。

 

「ん?なんだろう、この『アザ』は?」

 

首元に『星形のアザ』が浮かんでいた。




ここまで読んでいただきありがとうございます。
次はいつになるか分かりませんが3か月に1度また思い出していただけると幸いです。


追伸
JOJO WOELD行きました。
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