隣の席の柚木原さんは表面上だけ完璧美少女 作:あるふぁせんとーり
一年生、4月某日。私は柚木原さんとLINEを交換した。「そういえば交換してないじゃん」と柚木原さんに声を掛けると、彼女は「当方専らDiscord故完全に失念してたでござる」みたいな顔をしていた。
「LINE……って、どう交換するんだっけ?」
「QRコードじゃない?私出すよ」
「あ、ありがと、氷室ちゃん」
そして柚木原さんが私のスマホに表示されたQRコードを読み取ると、「これ、氷室ちゃん?」と初音ミクのアイコンを見せながら聞いてくる。それに私が頷くと「氷室ちゃんもこういうの好きなんだ〜」と何やら興味深そうに呟いた。
「まあミクちゃんが好きってのもそうなんだけど、ミクちゃんのツヤツヤサラサラロングな髪が好きっていうか……」
「……髪フェチ?」
「……多分。それで、これが柚木原さん?」
少しして、「知り合いかも?」に追加されたテトちゃんのレイヤーさんのアイコン。「これ、柚木原さん?」なんて問いかけつつ、テトちゃん美人さんだな〜と眺めていると、柚木原さんは「二重の意味で私」と頷いた。
「……えこれ柚木原さん?」
「そ。中学卒業するまでコスは駄目って母さんがね。だから春休みに晴れてUTAUテトでコスデビュー。似合ってる?」
「だいぶ似合ってる」
「……ふふっ、そっか」
そうしてLINEを交換し終えた私は「後でLINEするね」と、家の用事もあるため、図書館に寄るらしい柚木原さんとは別れて先に帰宅。しばらくしてお使いを済ませてから部屋に戻ると、私は柚木原さんにLINEを送った。
「ええっと、なんて書けば良いのかな……」
『1-B28番の氷室咲楽』
『ユキハラ・アヤカです』
『イガク?』
『愛想良いかも』
『まあ柚木原さんは良いよね』
『って冗談はさておき、氷室ちゃんって好きなボカロ曲ある?』
そんな質問が飛んできて、私は「何だろなぁ」と考えながらユーチューブのプレイリストをスクロールした。
『どうだろ、わりかし雑食だから』
『えー、じゃあ一つ決めてよ』
「一つだったら……あ」
『あれ好きだよ、ブリキノダンス』
『わかる』
『あと脳漿炸裂ガールとか』
『もしかして氷室ちゃん、人力じゃキツい曲好き?』
『あー、結構好きかも』
『だったら今度一緒にカラオケ行かない?私、そういう曲めちゃくちゃ歌えるよ』
『え、聞きたい聞きたい』
『氷室ちゃん明日暇?』
『うん、暇だよ』
『決まりだね。放課後駅前のラウワンで』
『了解。じゃ、お疲れ様〜』
『おつ』
そして最後に、柚木原さんは『逆バニーって第二象限と第四象限どっちなんだろうね』とだけ書き残して消えた。
◇◇◇
「あっしたは〜ひっむろちゃんとおでかけ〜」
「わ、あの実質コミュ障お姉ちゃんが……」
「なになに、や〜っと彩花もカレシ見つけたの?」
「違うと思うよママ」