隣の席の柚木原さんは表面上だけ完璧美少女   作:あるふぁせんとーり

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五言目:柚木原さんと同級生

「おはようございます」

「あっ、柚木原さんだ」

「おはよ〜」

 

 柚木原さんはクラスのみんなに一目置かれている。けれど、友達は全然多くない。その理由はもちろん単純。

 

「柚木原さんってめっちゃ美人だし何でも出来ちゃうけど……」

「なんか高嶺の花っていうか……高嶺の花子さんっていうか……」

「back number?」

 

 そう、柚木原さんのイメージ戦略のせいである。ちなみにこれが成功なのか失敗なのかは私は知らない。まあお絵描きしたりKindle持ち込んだりでだいぶエンジョイしてるしわりかし想定内なのかもしれない。

 

「っくしゅん」

 

 あ、くしゃみした。

 しかし世の中広いもので、探せばどんな人種でもいる。例えば……。

 

「柚木原ちゃん、おはーっ!!」

 

 オタクに優しいギャルだって。

 

「柚木原ちゃん柚木原ちゃん、何読んでるんそれ?」

「ああ、えっと、池井戸作品を少々。「アキラとあきら」というんですが……」

「あ、ウチそれ知ってる!映画なってたっしょ?見た見た、超面白かった!」

 

 彼女の名前は富士野馨子。赤毛のポニーテールと184cmという高身長が特徴のカースト上位女子。でも他人の悪口とかを言うような子じゃなくて、どっちかといえばオタクに優しい、というか人類に優しい感じのギャル。クラスLINEの発起人でもある。

 というか柚木原さんだって確か身体測定じゃ162とか3とかあったから女子の平均よりは普通に大きいのに、富士野さんが隣に並ぶと富士野さん側に感覚が引っ張られて、まるで小学生くらいに見える。いや、本当に富士野さんが大きすぎるだけなんだけど。……あ、ちなみに富士野さん、あっちの方は極小も極小。

 

「富士野さんも小説とかお好きなんですか?」

「うん、バリ読むよ!ウチ、パパが大学でせんせーやっててさ、家に本とか馬鹿ほどあんのよ。だから昔っから超絶活字っ子!」

「それは良いですね」

 

 わ、猫被ってるなぁ柚木原さん、なんて考えながらその様子を眺めていると、富士野さんは「あ、そうじゃん!」と何か思い出したように私の方を向いた。

 

「氷室ちゃん、前教えてもらった椎名林檎のやつ聞いたんだけどさ!」

「あ、ホント?あれだよね、「薄ら氷心中」」

「そうそれ!マジで良かった!アマプラのプレイリストぶっ込んだもん!他のも今めっちゃ聞いてる!」

 

 「いやー、時代はやっぱり純愛だわ」と胸の前で腕を組んで一人で頷いてる富士野さん。彼女は深刻な純愛至上主義者であり、本人曰く「最近の曲は援○とかS○X味ばっかで腹立つ」とのこと。だったら椎名林檎とか合うんじゃないかな、なんて思って勧めてみたら案の定ハマってくれたみたいで嬉しい。

 

「というか富士野さん、本当に純愛好きだね」

「そりゃそうでしょ、両思いの心中なんて男女の最高のハッピーエンドじゃん」

「過激派だった……」

 

 そんな話をしているうちにそろそろホームルームの時間。ガラガラっと扉が開いて、先生が入ってきた。

 

「ほら、ホームルーム始めるわよ、みんな座りなさい」

「はーい!やっぱ次の時代はあやさくだわな」

 

 ……待って富士野さん変なこと言ってない?

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