隣の席の柚木原さんは表面上だけ完璧美少女   作:あるふぁせんとーり

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六言目:柚木原さんと授業

 授業中の柚木原さんは大人しい。当社比で大人しい。

 

「見て氷室ちゃん、昔のMMD」

「MMD文化そのものが昔だよ」

「えっそんな」

 

 お絵かきをしていたり

 

「「ぬるめの」……、いや、バカリと被るなぁ……氷室ちゃん、何か「ぬ」の付く単語とかない?」

「ぬ……あ、ヌクレオチドとか」

「採用で」

 

 パングラムしてたり

 

「……っと、完成完成」

「柚木原さん、なんでミニ龍安寺なんて作ってるの?」

「偉大なる先達に敬意を示そうと思って」

 

 枯山水作ってたり

 

「うーん、もうちょい駒削りたいなぁ……氷室ちゃん、どう思う?」

「こういうのあんま得意じゃないんだけど……ここの銀って必要なの?」

「あ、いらないや」

 

 詰将棋作ってたり

 大人しいは大人しいけど基本的には授業聞いてないし、ずっと趣味みたいなことに興じてるのが授業中の柚木原さん。大体ポテチとかコーラとか、そういうお供もついてくる。

 ちなみに当てられると、全部教科書の下と机の中に突っ込んで隠蔽するのが柚木原さんの手口。一回見たけど、ヤクザ脱ぎみたいなスピード感だった。

 

「ねえ、氷室ちゃんもやってみる?」

 

 柚木原さんからそんなお誘いがあったのは4月下旬、授業もそこそこ進んで少し先の中間考査の話が出てきた頃。

 授業についていくので精一杯……ってわけでは別になかった私は柚木原さんの甘い誘いに「一回だけ」と乗ってしまった。

 

「あーあ、これで氷室ちゃんも悪い子だ」

「柚木原さん、悪い子の自覚あったんだね」

「……あ、やっぱなしで」

「やっぱ良い子でいたいんだ」

 

 というわけで渡されたのは難易度高めのクロスワード。「出来たら教えてね、懸賞応募するから」と抜け目ないのがまさに柚木原さんといったところ。私は予習済みのローマ帝国史を聞き流しながら、机の下でパズルを埋め始めた。

 

「えっと……あ、これQuizKnockでやったところだ」

 

 手を止めて、考えて、埋めて、手を止めて、考えて、埋めて、手を止めて、考えて、埋めて……そんなことを繰り返して、全てのマスを埋め終わった私は顔を上げる。もう、チャイムの鳴る1分前だった。「終わったぁ」、というダブルミーニングな私の呟きが聞こてたらしい柚木原さんは「どう?どう?」と無邪気な笑みを浮かべながら私の肩を叩いた。

 

「あっという間でしょ?授業」

「うん、そうだった。っていうか、柚木原さんってもしかして、暇なの、嫌い?」

「大正解」

 

 柚木原さんはそう無邪気に笑い、「まだまだネタ残ってるよ」とビッチリと道具の詰まった鞄を見せた。

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