隣の席の柚木原さんは表面上だけ完璧美少女 作:あるふぁせんとーり
「良い?明日の体育祭に向けて今日は早く寝ること!夜ふかししてちゃあんま楽しめないわよ!」
「せんせーなんでそんな主張強いのー?!」
「後悔してるからよ!それじゃ、挨拶してもらえる?」
先生が声を掛けると、級長が「はい!」と勢いよく起立する。私も含めて、他の生徒もそれに釣られるようにばらばらと立ち上がり、全員が立ち上がるのを確認してから彼は声を掛けた。
「気を付け!礼!」
「「「ありがとうございましたー!」」」
「ありがとうございましたー」
「ありがとうございました〜」
◇◇◇
「ねえ氷室ちゃん、さっき家にめちゃくちゃ漫画あるって話したじゃん」
「部屋半分漫画って言ってたね」
「良かったら来る?今日親いないんだけど」
「誘い方ヤバいよ柚木原さん。行くけど」
「わーい」
というわけで帰り道、私は柚木原さんのお家に寄ることに。流石に手ぶらもアレだしということで、コンビニに寄ってお菓子なんかを買い込むことにした。
「そういえばさ」
「ん、何ー?」
スナック菓子の棚の前でしゃがんでいる柚木原さんに、私はアイスボックスをかごに入れながら、ふと思い立った話題を投げかける。
「柚木原さんのお母さんってあれだよね、元読モって噂の」
「そうそう。まあ私の方が美人だけどね」
「顔面自信ネキすぎる……じゃなくて、一個思ったことあるんだけどさ。柚木原さんのお母さん、スタレの鏡流に似てない?」
「……あほんとだ。バリ似てるじゃん。道理で既視感あったわけだ」
「鏡流に?」
「いや母さんに」
「時系列バグってるよ柚木原さん」
◇◇◇
「そういえば、柚木原さんの家ってどっちの方?」
コンビニで一通りの物資を買い終えた私達。国道沿いを歩きながら尋ねると、柚木原さんは「うーん」と首をひねった。考えるようなことなんだ……。
「……あっち?」
「あれ富士山だよ?」
「冗談冗談。そこの道から公園通って、それで右曲がったとこ」
「あ、あの綺麗な家。あそこ結構新しいよね?」
「そうそう、去年リフォームしたんだ……って、氷室ちゃんもこの辺なんだっけ」
「うん。私はもう少し国道寄りだけど」
「へー」
そして柚木原さんの案内に従ってしばらく歩いていくと、モデルハウスみたいな白い家が目に入る。少し小走りで先を行きつつ、「早く早く」と手招きする彼女の後を追いかけた先、チャリを漕いでいた女の子が柚木原さんの家の前で止まった。
「あ、お姉ちゃん。おかえり」
「ただいま一葉……って、何でいるの?」
「いや何でって、今日部活なかったからだけど……」
「
「これさ〜、要はあれでしょ?今日パパもママもいないから〜……ってことでしょ?」
「別にそういうのじゃなくて……!!……あ、紹介するね、氷室ちゃん。これ、妹の
「あ、柚木原一葉です。今は一中の軽音部でバンドやってます」
そうぺこりと頭を下げた彼女は、金髪にピンクのインナーカラー、キラキラのネイルにメイクと、富士野さんとはちょっと違った感じのギャルという感じ。富士野さんほどじゃないけど、柚木原さんより背も高いし、少し大人っぽいような印象を受ける。少し遅れて、私も「氷室咲楽です」と自己紹介した。
「っていうか、公立なのに髪染めて良いんだね」
「バンド活動に必要って言い張ってるんで〜。……っていうか、氷室……」
魚の小骨が喉に刺さったみたいな顔をしながら、首を傾げる一葉ちゃん。そして数秒の間を挟んで、彼女は「あ」と手を叩いた。
「咲楽さん、弟とかいたりします?」
「あ、うん。言い忘れてたけど、
「いや知ってるも何も有名人じゃないですか?サッカー部主将の氷室くんって。みんなキャーキャー言ってますよ」
「へー、樹基、恥ずかしがってそういう話してくれないから新鮮だなぁ」
そうしてしばらく二人で話に花を咲かせていると、少しふくれっ面の柚木原さんがたんたんと私の肩を叩いた。
「……ねえ、氷室ちゃん。漫画、読んでかないの?」
「あ、忘れかけてた。亜人読まないと亜人」
「好きなキャラとかいる?」
「穴熊」
そんな話をしながら、「お邪魔しまーす」と柚木原さん家に私は上がった。
「……あの恋は長そうだなぁ……」