隣の席の柚木原さんは表面上だけ完璧美少女   作:あるふぁせんとーり

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九言目:柚木原さんと登校

「開催まで3ヶ月くらい待った気がする」

「やめなよ柚木原さん」

 

 冬ヶ丘高校の体育祭の朝はやたらと早い。

 流石に開成ほどじゃないけど、まあ集合時間が6時前になることもないし、大体の生徒が5時半くらいには揃う。

 家が遠いから近所の友だちの家に泊めてもらう、みたいな話は別に珍しいことでもない。

 私と柚木原さんも5時くらいに集合して、近くのコンビニで朝ごはんを買ってから学校へと向かっていた。

 

「ねえ咲……氷室ちゃん」

「良いよ、咲楽で。私は柚木原さんって呼ぶけど」

「あれ、名前呼びイベってもうちょい重要だと思ってたんだけどな」

「私に何期待してるのさ……」

 

 朝ごはんの蒟蒻ゼリーを吸いながら尋ねると、「適度な塩対応とか?」なんて言って笑う柚木原さん。

 顔がいいからあんまり目立ってない、というか許されてるだけで普通に柚木原さんはキモいことを言う。

 元日ハム監督くらいキモいことを言う。

 まあ一番「こいつやってるな」って思うのは柚木原さんが自分で見極めてる「私美少女だしこれくらいの発言でもギリ許されるでしょ」ってラインが本当に完璧なところだけど。

 

「そう言えば今年の応援合戦、青組はFateらしいよ。緑組はポケモンだったかな」

「えー、良いなー。私もホヨバとかでゴネれば良かったー。というか陛下コスでチアとかやりたかったー」

「柚木原さん、モルガンとかそういう系好きだよね」

「というよりは石川由依だね」

 

 そして朝からコンビニおにぎり3つとLチキをペロッと平らげた柚木原さんは歩きながら1.5Lの炭酸入りコーラを喇叭飲み。

 なんか2本買ってたし、多分人工甘味料ジャンキーなのかもしれない。

 本人に聞いてみると、「ドクターペッパーの普及率がこんなに低いのはおかしい」という愚痴が帰ってきた。

 

「にしても、やっぱみんな早いね」

「ね。5時とか夏休みだったら寝る時間だもん」

「それに同意を求められるのは困るかな」

「……あ、困るドンキーコング、ドンキー困窮」

「っ、結構好きかも、私」

「でしょ?自信さ──」

 

 言いかけた柚木原さんは突然言葉を止める。

 何かあったのかな、と彼女を見て、それから回りを見ると、目の前の交差点に富士野さんが立っていた。

 やっぱ184cmもあると目立つ。

 そして彼女も私達を見つけたのか、ブンブンとこちらの方へ手を振った。

 

「氷室ちゃん柚木原ちゃんおはーっ!!」

「おはようございます、富士野さん」

「やっぱり早いね、富士野さんも」

「そりゃそうだよ!今回はウチがチアリーダーリーダーなんだし!」

「ややこしいね」

「ふっふっふ、今回赤組女子のユニフォームは全員チアリーダーだかんね」

「そういえば、赤組青組緑組って光の三原色過ぎませんか?」

「あー、言われてみりゃそうかも」

「ちなみに由来、ポケモンの御三家らしいよ」

「それマ?私立ってマジ好き放題だわ。……ってか柚木原ちゃんもポケモンやってるん?」

「まあ、少しだけですけど。シャンデラとか好きですよ」

「やっぱかわいいもんね、シャンデラ。柚木原ちゃん似合うわー」

 

 違うよ、富士野さん。

 そいつシャンデラでちいさくなる連打した後にれんごく連打するのが好きなだけの極悪人だよ。

 そんなことは口に出さず、私は「ゼルネアスとか、好きかな」と答えた。

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