DD世界だと思ったらリリなの世界でした。いや両方の世界が混ざり合った世界でした!!   作:バター犬

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目撃者たちは何もできなかった

太郎side

 

 

空間がねじれ、僕の身体がその裂け目から押し出されるように飛び出した。

 

 

 

──ここは、海鳴市の上空。

 

 

 

広がるのは、まるで絵画のような青空と浮かぶ白雲。

その下には、整然と広がる都市の景観。けれど、それだけじゃなかった。

 

 

 

街の中心に、“異物”があった。

 

 

 

淡く光るドーム型の結界――

 

それはまるで、都市の一部を切り取るように存在していて、外からでも中でうごめく強烈な魔力の渦が感じ取れた。

 

 

 

一目見てわかる。“ただの結界”じゃない。

 

 

 

静寂の中に、ピリピリとした魔力の圧が漂っていた。まるで、ここが戦場であると主張するかのように。

 

 

 

 

「うわっ、眺めはいいけど……何、この空気の張り詰め方」

 

 

 

魔力が濃すぎる。まるで雷雲の中に放り込まれたかのような、ピリピリとした圧力が肌に刺さる。

 

 

 

そして──少し離れた位置に、すでに一人の男が浮かんでいた。

 

 

 

白銀の髪、鋭い眼差し、そして不敵な笑み。

 

 

 

「お、来たか。遅いぞ太郎」

 

 

 

ヴァーリ・ルシファーだった。

 

 

 

彼は僕に視線だけを寄越しながら、真下を見下ろしていた。

 

 

 

「面白いことがあるって言うから飛んできたけど……あれ?」

 

 

 

僕の視線も、自然とヴァーリの視線の先に向かう。

 

 

 

そこにあったのは、都市の一角を中心に張られた半球状の結界。その中から、明らかに異質な魔力が漏れ出ていた。いや、溢れていた。

 

 

 

「……結界、だよな? あれ」

 

 

 

「そうだ。だが、普通のとは格が違う。規模も、濃度も……それに、内側に何人も“動いてる”気配がある」

 

 

 

ヴァーリの声が少しだけ弾んでいた。まるで、子供が面白そうな玩具を見つけたかのように。

 

 

 

「たぶんアザゼルが言ってた“正体不明の魔力”ってのは、あれだろうな」

 

 

 

「なるほど、そりゃ面白いわけだ」

 

 

 

ヴァーリが片手を前に突き出し、軽く息を吐く。

 

 

 

「──バランスブレイク」

 

 

 

『Vanishing Dragon──Balance Breaker!!!!!!』

 

 

 

咆哮と共に、眩い白光が爆ぜる。

音すらも塗りつぶす閃光に包まれ、空間そのものが軋み、歪み始めた。

 

 

 

そして──

 

 

 

光が晴れた時、そこに立っていたのは、まるで神話から抜け出したかのような異形の戦士だった。

 

 

 

白銀の魔鎧に全身を包まれ、その表面には龍の意匠が脈打つように刻まれている。

背中には、圧縮された魔力の翼が形成され、仮面の奥の視線は、ただの“人間”には向けられないような、圧倒的な冷徹さを宿していた。

 

 

 

「……出たな、禁じ手」

 

 

 

その姿──Vanishing Dragon Balance Breakerは、まさしく“次元の壁”そのもの。

 

 

……相変わらず、バンク映えする男だ。

 

 

 

「じゃあ、俺はちょっと様子見てくる」

 

 

 

言葉すら終わらぬうちに、ヴァーリは光そのものとなって結界へと突貫した。

 

一瞬、音が遅れて鼓膜を叩いた。

 

次の瞬間には、白き残光だけを残して、その姿は結界の中心に突き刺さっていた。

 

 

 

 

──ドォン!

 

 

 

地響きのような衝撃と共に、結界の表面が一部砕ける。だが……破壊された箇所は、数秒と経たずに再生を始めた。

 

 

 

「うわ、再生型の結界……やっかいなやつだな」

 

 

 

『さあて太郎、オレ様の出番か? 準備運動は終わったんだろ? 派手にぶっ放してやろうぜぇ!』

 

 

 

僕の中で八尾──通称ぱっつぁんが、ノリノリで吠える。

 

相変わらずテンションが高い。けど、戦いの空気を読むのは抜群にうまい。

 

 

 

「了解。じゃあ……いくか!」

 

 

 

僕は背中に黒い翼を展開し、赤い衣を纏う。

 

そして、右手には“返り血を喰らい成長する真剣”――フルンティングを握った。

 

 

 

ぱっつぁん(八尾)とフルンティング。

心強い相棒と、頼れる相棒武器。両方を揃えて、僕は結界へと飛び込んだ。

 

 

 

 

「――太郎、出陣!」

 

 

 

そして僕も、ヴァーリの後を追って、結界へ突入した──!

 

 

結界の中は、すでに荒れ果てていた。

 

いや、正確には──

 

 

 

ヴァーリが突入した“その瞬間から”、荒れ果てたのだ。

 

 

 

爆風、魔力、閃光、そして無数の魔力弾。

ヴァーリは一切の遠慮なしに、結界の内部へ“白い雨”を降らせていた。

 

 

 

破壊の軌跡は空間そのものを焼き、魔力の衝突で空気が悲鳴を上げている。

地面は抉れ、建物は一棟また一棟と崩れ落ち、再生機能を持つはずの結界すら処理が追いつかずに、軋みを上げていた。

 

 

 

「……やりすぎだよ、ヴァーリ」

 

 

 

ただの“偵察”のはずが、もう完全に“侵略”の勢いだ。

 

まるで神の審判みたいに、無差別に放たれる魔力の嵐。

味方だろうが敵だろうが関係ない。そこに“立っていること”自体が、罪にされるような理不尽。

 

 

 

あれに巻き込まれたら……まともに立っていられるのは、僕ぐらいだろうな。

 

 

 

そして僕は、フルンティングを握り直して、ヴァーリの後を追った──。

 

 

 

僕は空中で旋回しながら、ヴァーリの姿を探した。

 

 

 

けれど、その姿は見つからない。

あまりにも速すぎる。軌跡すら目視で追えないほどに。

 

 

 

代わりに、視界の端にいくつかの魔力反応が引っかかる。

 

 

 

「……戦況、確認」

 

 

 

まず一つ目──

街路の中央、栗色の髪をした高町なのはが倒れていて、その身体を守るように少年が結界を張っている。

 

 

 

おそらくは少年はサポート型。だが、魔力量の密度が高い。

 

 

 

二つ目──

瓦礫の広場で、金髪ツインテールのフェイトが誰かと激突している。

一撃ごとに地面が爆ぜ、魔力が散る。

 

 

 

三つ目──

さらに奥で、赤い帽子の子供と、帝王院が交戦している。

 

あ、もう決着ついた。

帝王院が吹き飛ばされて地面に転がった。早かったな……。

 

 

 

勝利した赤帽子の子供は、即座に前線へと向かう。

ターゲットは──ツインテの少女。

 

 

 

(連携が自然すぎる。熟練のチーム……?)

 

 

 

そして、それら全ての背後──

白い閃光が走る。

 

 

 

建物の影をえぐり、瓦礫を吹き飛ばしながら、空を裂くように舞う残像。

 

あれが、ヴァーリの“バランスブレイク状態”。

 

 

 

今この瞬間も、戦場は“彼の行動”を中心にめまぐるしく変化している。

 

 

 

「……完全に、戦局を狂わせてるな。あのバケモノ」

 

 

 

僕は、今はまだ動かない。

フルンティングに手を添えたまま、ただ状況を観察する。

 

 

 

(……想像以上に、カオスだな)

 

 

 

瓦礫、魔力弾、炎上する建物、飛び交う鉄槌と閃光──

どこを見ても“普通の戦場”とは呼べない。

 

 

 

 

そして――タイミング悪く(いや、良く?)場を荒らしまくっていたヴァーリ本人が、ニコニコしながら僕の隣に戻ってきた。

 

「おい太郎、下を見ろ」

 

 

ヴァーリの視線を追って僕も下を見ると、そこに映っていたのは――

 

 

 

赤い帽子の少女、鉄槌を振るうツインテ、そして西洋風の甲冑を身に纏った騎士っぽい女。

 

 

 

「……方向性バラバラすぎない?」

 

 

 

「しかも全員、ガチでやり合ってるな」

 

 

 

「ツインテに赤帽子って……ちょっと可愛い系かと思ったら、攻撃力えぐいし!?」

 

 

 

「いや、ツインテの一撃でビル砕けてたぞ。ギャップ怖すぎる」

 

 

 

そして次の瞬間――僕たちは同時に、口を開いた。

 

 

 

「「なんで全員コスプレ!!!」」

 

 

 

 

 

……どっちの世界の戦争なんだこれは!?

こっちは黒羽+赤衣+剣+ドラゴン、っていう直球ファンタジー系なのに!!

 

 

 

それなのにあっちは、魔法少女、鉄槌幼女、犬耳マッチョ、騎士お姉さん……!?

 

 

 

 

 

「なあ太郎、こいつら全員、コスプレイベントでもやってんのか?」

 

 

 

「いや、どう見てもガチの殺意ある魔力弾飛んでたぞ」

 

 

 

「マジかよ……最近の魔法少女って物騒なんだな」

 

 

 

「魔法少女かは知らんけどな!!」

 

 

 

 

 

そのときだった。

 

 

 

ピリッ、と空気が変わる。魔力ではない。殺気だ。

 

 

 

僕らの背後から、低く鋭い声が飛んできた。

 

 

 

「お前たちは……何者だ」

 

 

 

 

 

振り返る。そこにいたのは、筋骨隆々の男。

 

ただの筋肉ではない。しなやかさと重厚さを兼ね備えた“闘うための筋肉”だ。

 

 

 

そして――犬耳が付いていた。

 

 

 

 

 

「うわ、ケモノ枠まで来た……」

 

 

 

「方向性どうなってんだこの世界……」

 

 

 

黒い道着、落ち着いた表情、だが眼光は鋭い。

 

まさに“パワー系守護獣”って感じのビジュアル。

 

その佇まいは、明らかに僕らを警戒していた。

 

 

 

「……太郎、敵意あるな」

 

 

 

「うん。しかも言葉よりも拳の方が早いタイプっぽい」

 

 

 

ヴァーリはニヤリと笑いながら、白い魔力を右手に収束させ始める。

 

 

 

「なら――歓迎の挨拶でもしてやるか」

 

 

 

「やめとけやめとけやめとけ!! それ絶対ヤバいことになるやつ!!」

 

 

ヴァーリはニヤリと笑って、まるで遊びを始める子供のような顔で言った。

 

 

 

「説明は後でいい。まずは――実力テストだ」

 

 

 

その言葉と同時に、彼の右腕に“魔力”が収束し始める。

 

 

 

空気が震えた。

 

 

 

「──ッ!?」

 

 

 

一瞬にして、周囲の温度が変わる。

まるで時空そのものが警戒しているような、重たく、粘性のある魔力が空間に染み出していく。

 

 

 

右手に浮かぶのは、眩く輝く白い球体。

それはまるで高密度の星を無理やり一点に圧縮したかのような、異常な重圧を放っていた。

 

 

 

風が逆流する。

足元の瓦礫が浮かび上がり、魔力に引かれて舞い上がっていく。

 

 

 

地面が軋み、空間がわずかに歪んだ。

周囲にあった残響すら、ヴァーリの収束する魔力に吸い込まれていく。

 

 

 

「……おいおい、ちょっと待て。おま、本気で撃つ気か」

 

 

 

僕は思わず一歩引いた。

あの魔力、冗談抜きで都市一つを焼き払えるクラスだ。

 

 

 

けれど――ヴァーリはそのまま、にやりと笑ったまま言い放つ。

 

 

 

「避けられるか、試してみよう」

 

 

 

そして――

 

 

 

魔力弾は、一瞬で発射された。

 

 

 

白い閃光が走り――

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

ザフィーラはギリギリのタイミングで身を捻り、それを躱す。

 

だが、逃げ場を失った魔力弾は、そのまま背後にあったビルへ突き刺さった。

 

 

 

──次の瞬間。

 

 

 

ドオォォォォンッ!!!

 

 

 

ビルが“爆ぜた”。

 

 

 

崩れ落ちるとか、倒壊するとか、そういう次元じゃない。

魔力の暴発で内側から破壊され、建材の一つひとつが白熱しながら弾け飛んだ。

 

 

 

圧縮された光と熱が一帯を呑み込み、爆風が何重もの波紋となって街を駆け抜ける。

周囲の建物が、風圧だけで骨組みから崩壊していく。

 

 

 

吹き飛んだコンクリの破片が空を埋め尽くし、アスファルトが地鳴りとともに盛り上がる。

地面がめくれ上がり、地下配線が火花を撒きながら露出する。

 

 

 

まさに局地的な終末だった。

 

 

 

「っ……く!」

 

 

 

僕は即座に右手を前に突き出し、複数展開式の防御方陣を構築。

魔力を幾重にも重ねて展開した多重防壁が、突風と衝撃を真正面から受け止める。

 

 

 

周囲の空気が震え、骨まで響くような衝撃音が空間に満ちる中で、

僕はようやく一言、漏らした。

 

 

 

「……ねぇ、ヴァーリ。僕が近くにいるってわかってやってない?」

 

 

 

 

「問題ない。太郎なら死なないだろ?」

 

 

「そーいうことじゃねぇ!!!」

 

 

 

僕のツッコミが響いたその瞬間。

 

 

 

──ヴァーリの気配が、横から“すっと”消えた。

 

 

 

目で追う間もなかった。

空気が一瞬だけズレた感触。それだけが、彼が動いた証だった。

 

 

 

次の瞬間――

 

 

 

ドンッ!

 

 

 

爆風のような音が巻き起こり、犬耳の男――ザフィーラの前に、ヴァーリが出現していた。

 

 

 

文字通り、“瞬間移動”と錯覚するほどの加速。

 

 

 

「実力テスト、開始っと」

 

 

 

その呟きと同時に、白い軌跡が閃光のように走る!

 

 

 

ヴァーリの白銀の拳が、ザフィーラの肩口に直撃。

とっさにガードを上げた男の体ごと、地面へと叩きつけた!

 

 

 

ガガガガッ!!

 

 

 

ザフィーラは地面を削りながら吹き飛ばされ、瓦礫の山に突っ込む!

 

 

 

爆発と粉塵が舞い上がり、地面が深く抉れる。

 

 

 

その直後――

 

 

 

シュバッ!

 

 

 

ヴァーリは舞い上がり、空中からさらに斬撃を連続で叩き込む!

 

斬撃、魔力弾、蹴撃、踏み込みからの掌底ッ!!

 

 

 

ザフィーラは必死に防ぎ、魔力弾で反撃するが――

 

 

 

「遅い!」

 

 

 

ヴァーリはそのすべてを予測していたかのように、空中を縦横無尽に駆けながら攻撃をいなす。

 

 

 

光の軌跡が空に十字を描き、空間が“斬られて”いくような錯覚すら起きる。

 

 

 

「うわ……こりゃ、想像以上にひどいな」

 

 

 

僕はその様子を、呆れ半分、諦め半分で眺めていた。

 

 

 

ヴァーリが本気で“実力テスト”を始めると、こうなる。

 

 

 

戦場が“彼を中心にして”動き出すのだ。

 

 

 

「空気も読まねぇし、戦場も荒らすし……戦闘民族すぎるわ」

 

 

 

でも。

 

 

 

――この規格外の戦闘、対応できるやつは限られている。

 

 

 

僕は、右手にフルンティングを握り直しながら、空中で姿勢を整えた。

 

 

そろそろ――僕の相手も、来そうだった。

 

 

 

 

 

──ドオォォォォン!!

 

 

 

まさにその瞬間。

足元から猛烈な爆風が巻き上がった。

 

 

 

反射で跳躍。

直後、僕が立っていた空間に、“炎を纏った大剣”が振り下ろされた!

 

 

 

ズドォン!!

 

 

 

爆風と衝撃が空を切り裂き、熱風が僕の頬を焼く。

その場に留まっていたら、完全に両断されていた。

 

 

 

「今のを避けるとはな……」

 

 

 

声が聞こえた。女の声だが、剣士のそれだ。

 

 

 

目を向ける。

 

 

 

そこに現れたのは、紅の騎士服に身を包んだ女性。

切り揃えられた赤紫の髪、凛とした瞳、そして彼女の手には、灼熱をまとった大剣。

 

 

 

その姿は、まさに“炎の将”と呼ぶにふさわしい威圧感を放っていた。

 

 

 

「コスプレ騎士……?」

 

 

 

「私は、ヴォルケンリッターの将・シグナム。貴様に恨みはないが……我らが主に害をなす者と見れば、容赦はしない」

 

 

 

「うわ、まっすぐな人来た……!」

 

 

 

構えを取り、彼女の剣が再び燃え上がる。

 

 

 

魔力が熱となって空間を満たし、彼女を中心に空気が震える。

 

 

 

(完全に本気だ……)

 

 

 

僕は、フルンティングを構え直す。

 

 

 

 

剣を構える彼女の気配は、歴戦の戦士って感じで確かに本物だ。

 

 

けれど、それでも──

 

 

 

 

「なら、こっちも遠慮なくいかせてもらうよ!」

 

 

 

僕は一歩踏み込み、フルンティングを構えて切りかかる!

 

 

 

シグナムの大剣と激突!

 

 

 

ギィィィィン――!!

 

 

 

魔力を纏った金属同士が火花を散らす!

 

 

 

彼女の体勢の崩れを見計らって、すかさず蹴りを放つ!

 

 

 

だが──

 

 

 

(……読まれてた!?)

 

 

 

シグナムは紙一重でそれを回避。

 

すぐさま炎を纏った大剣を振り下ろしてくる!

 

 

 

「はっ!」

 

 

 

僕は即座に魔力を展開し、防御方陣を前面に二重で形成。

 

その瞬間──僕の視界が“紅”に染まる。

 

 

 

「──写輪眼ッ!」

 

 

 

視界の中、シグナムの筋肉の動き、魔力の流れ、そして剣の軌道がスローモーションのように見えた。

 

 

 

「そこだっ!」

 

 

 

僕は防御を利用して身を流し、剣の炎を回避。

 

そして、反撃の構えのまま跳び退る。

 

 

 

シグナムは距離を取りながら、口元を僅かに緩めた。

 

 

 

「……見たことのない魔方陣だ。それに、その剣──なかなか面白い」

 

 

「ありがとう。でもこの子、フルンティングちゃんはあげないよ?」

 

 

 

僕はそう言いながら、左手にも魔力を集中させる。

 

 

 

「だから代わりに……こっちはプレゼント」

 

 

 

──光の槍、展開!

 

 

 

魔力が収束し、光の刃が空中に形を成す。

 

 

 

僕は左手に光の槍、右手にフルンティング。

二つの異なる重さ、違う性質――。

 

 

瞳が紅に染まり、三つ巴がゆっくりと回転を始める。

 

視界が鮮明になる

シグナムの重心のズレ、魔力の流れ、次の動きが手に取るように見える。

 

 

 

「行くよ、コスプレ騎士さん!」

 

 

 

先に動いたのは僕だ!

 

 

 

フルンティングの斬撃を一閃、下から薙ぎ上げる!

 

 

 

それを受け止めたシグナムの剣に、すかさず左手の光槍を突き込む!

 

 

 

「っ!」

 

 

 

シグナムは咄嗟に後退するが、写輪眼はそれすら読んでいた。

 

 

 

空中で体をひねってフルンティングを逆手に構え、斬撃を回転させながら追撃!

 

 

 

魔剣の軌道は、爆ぜる魔力の軌跡を残しながら迫る。

 

 

 

一方の光の槍は牽制と撹乱に。突き、投擲、再生成――

射撃武器のように扱いながら、シグナムの動きを常に制限する!

 

 

 

だが――

 

 

 

「ぬうっ!」

 

 

 

シグナムは、その全てを捌いていた。

 

 

 

振るう剣は巨大でありながらも重さを感じさせない。

一閃で、突き出された光の槍を“柄元”で受け流し、

次の一瞬には投擲された槍を“剣の峰”で叩き落とす。

 

 

 

しかも、フルンティングの斬撃――血を食らいながら進化する魔剣の質量すら、

寸前で“角度を逸らすように”受けている!

 

 

 

(避けてるんじゃない……捌いてるな!?)

 

 

 

僕の写輪眼が捉えていた。

 

 

 

彼女は斬撃の“最短ルート”を即座に見切り、

反撃に転じられないギリギリの“間合い”で受け流している。

 

 

 

「……その眼と剣、確かに並の敵ではないな」

 

 

 

炎の将は、微動だにせずそう言った。

 

 

 

 

 

 

「だが──私は、我らが主の剣。そう簡単には折れん!」

 

 

 

その言葉と共に、炎が咆哮を上げた。

 

 

 

シグナムの大剣が再び紅蓮に包まれ、剣身から噴き上がる魔力が空気を焦がす。

周囲の温度が急上昇し、空間がわずかに歪む。

 

 

 

そして、彼女が踏み込んだ。

重厚にして洗練された一太刀。構えに無駄がなく、それでいて剛と柔を両立させた──まさに、歴戦の将の剣だった。

 

 

 

「ッ……!」

 

 

 

僕はその一撃を、フルンティングで受け止める。

 

 

 

ギィィィィン!!

 

 

 

剣と剣が激突した瞬間、衝撃波が空中を爆裂し、

爆風が球状に広がって周囲の瓦礫すら巻き上げる!

 

 

 

──が、そのまま引く気はない。

 

 

 

右手の魔剣・フルンティングは、“斬る”という一点に特化した異端の武器。

わずか3センチ幅の刀身に、殺意と破壊の理が詰め込まれている。

 

 

 

左手の光の槍は、魔力を凝縮した高速再生成型武器。

突き、投擲、連続展開。スピードと機動力を支えるもう一つの命。

 

 

 

この“相反する二本”を──

 

 

 

写輪眼が、繋ぐ。

 

 

 

「……見える」

 

 

 

シグナムの肩の沈み。肘の角度。重心のズレ。魔力の濃淡。

全ての情報が、写輪眼の中で組み上げられ、ひとつの未来図として収束する。

 

 

 

僕の手の中で、戦場そのものが「設計図」に変わる感覚。

 

 

 

(いい……すごく“合う”!)

 

 

 

僕は空中でひねりを加え、光の槍を投擲。

 

その軌道に合わせてフルンティングを回転させ、次の剣閃へと接続。

 

 

 

直後、シグナムがそれを読み切り、逆方向からのカウンターを叩き込んできた!

 

 

 

だが──

 

 

 

(見えてる!)

 

 

 

写輪眼の視界が、時間差の“軌道補正”をかけてくる。

剣の軌道が、ほんのわずかにズレて見える。

 

 

 

そこへ、フルンティングでの“受け流し”を敢行!

 

 

 

──ガァン!!

 

 

 

空間が“鳴った”。

剣と剣がぶつかり、火花と爆風と共に、ふたりの距離が激しく離れる。

 

 

 

「どう? このスタイル、意外とハマってると思わない?」

 

 

 

僕が空中で槍を再生成しながら、笑いかける。

 

 

 

「……ああ。だが、まだ決着はついていない!」

 

 

 

再び燃え上がる炎の大剣!

 

 

 

シグナムが反転し、空中を切り裂いて一気に距離を詰める!

 

 

 

その瞬間、太郎の周囲に散った光の槍が、

「意図してばら撒かれていた」ことに気づく。

 

 

 

火花、斬撃、光槍、返し手、逆回転、再投擲――!

 

 

 

もはやその戦いは、空中戦術演舞。

剣戟は美しく、魔力の応酬は華やかで、だがどこまでも殺し合いだ。

 

 

 (写輪眼の情報処理が間に合ってる……なら──)

 

 

 

僕はフルンティングを逆手に構え直し、

左手では光の槍を再生成――そして即座に放った!

 

 

 

ギリギリでそれをシグナムが躱す――だが、その瞬間。

 

 

 

ふと、空気が変わった。

 

 

 

周囲に充満していた魔力の圧が、一拍だけ緩んだ気がした。

空間の緊張が、一箇所だけ“解けた”ような、そんな妙な静けさ。

 

 

 

「……もう、そろそろかな」

 

 

 

「──なにを!?」

 

 

 

シグナムが、目を見開いて食いついてきた。

 

 

 

声に鋭い棘があった。まるで、読みきれない相手の言動に、本能が警戒しているかのように。

 

 

 

「まさか……貴様、何かを隠しているのか?」

 

 

 

「え、いや別に。俺のことじゃなくて、ヴァーリの話」

 

 

 

軽く肩をすくめて返すと、シグナムは一瞬だけ沈黙し、眉をひそめた。

 

 

 

「貴様、あの白い鎧の男と……」

 

 

 

「まあね。アイツのことだから、そろそろ勝負ついてる頃かな~って」

 

 

 ──ドゴォォォォン!!!

 

 

 

爆発的に崩壊した建物の瓦礫をかき分けて、

白い光をまとった人影が現れる。

 

 

 

それは、ヴァーリ・ルシファーだった。

 

 

 

彼の全身を包んでいた白銀の鎧が、静かに音を立てて解けていく。

 

 

 

《キィン……シュゥゥ……》

 

 

 

肩から胸へ、腕から脚へ――魔力が蒸気のように立ち上り、

鎧のパーツが一つずつ“脱ぎ捨てるように”分解されていく。

 

 

 

そして現れたのは、白コートを翻す、素のヴァーリ。

 

 

 

「ふぅ……太郎、もうちょっと遊べると思ったけどさ」

 

 

 

そう言って彼は、両手に掴んでいた二人を“まるでゴミでも捨てるように”地面へ放った。

 

 

 

「肩慣らしにもなんなかった。帰るぞ」

 

 

 

ザフィーラはぐったりと地面に倒れ、

ヴィータも赤い帽子を落としながら無力に横たわる。

 

 

 

(雑ぅ……)

 

 

 

僕は苦笑しながら、空中で片手を挙げた。

 

 

「僕も、そろそろ帰りたいって思ってたところ!」

 

 

 

そう言って、軽く息を吐く。

 

 

 

そして――羽ばたくでもなく、ただ力を抜くように、ゆっくりと空からウァーリの元へと舞い降りた。

 

 

そのやり取りに、ついにシグナムの怒号が轟いた。

 

 

「ヴィータァァ!! ザフィーラァァ!! 貴様ッ、貴様らァァァ!!」

 

 

 

その声は、怒りと悲しみがない交ぜになった絶叫だった。

そして次の瞬間、感情の爆発がそのまま行動に変わる!

 

 

 

「ぬおおおおおッ!!」

 

 

 

シグナムは、大剣に再び炎を纏わせ、

剣先から放つように“爆裂する魔力斬撃”を飛ばした!

 

 

 

真っ直ぐ、僕たちに向かって。

 

 

 

だが――

 

 

 

「……チッ、しつこいな」

 

 

 

ヴァーリは振り向きもしなかった。

ただ、片手をゆるく掲げ、指先で小さく弾いた。

 

 

 

《カチン……》

 

 

 

静かに展開された防除結界が、僕たちを覆うように広がる。

 

次の瞬間、シグナムの炎撃がそれに触れた途端――

 

 

 

《ボフッ……!》

 

 

 

まるで打ち上げられた花火が空中で“虚しく霧散する”ように、炎の斬撃はあっさりと霧散した。

 

 

 

熱も、衝撃も、届かない。

 

 

 

「……まるで風でも吹いたみたいだな」

 

 

 

僕がそう呟くと、ヴァーリはようやく振り返った。

 

しかし、その目に“怒れる敗者”への価値は宿っていなかった。

 

 

代わりに、ヴァーリは肩を軽く回しながら言った。

 

 

 

「ちょうどいい運動にはなったな。ま、これ以上やっても時間のムダだろ」

 

 

 

 

淡々と、それだけを言い残し――

 

 

白く輝く転移魔方陣が、静かに僕たちの足元に展開される。

 

魔力の光が円環を描き、空気の流れすら変えるその瞬間――

僕とヴァーリの周囲から、まるで“異物が排出される”かのように、世界の気配がひとつ後ろへ下がった。

 

 

 

シグナムはなおも怒りに震え、震える拳を握りしめていた。

だが、僕たちはその視線すら、まるで“風が吹いた”程度にしか気に留めず。

 

 

 

ただ立っているだけで、こちら側とあちら側の“格”が違う。

それを証明するように――

 

 

 

「じゃぁーね♪バイバイ♪」

 

 

 

僕の軽口が、最後に空気を揺らす。

 

 

 

白光が、静かに膨れ上がった。

 

 

 

そして僕たちは、

 

 

戦場の空気ごと、

踏み潰すように――この場所から姿を消した。

 

 

 

 

 

✨管理局視点:戦場分析モニター/オペレーターズルーム(戦闘記録再生)

 

 

──記録時刻、海鳴市、第二区域。

 

魔導情報局所属の戦術監視室には、

無数の映像モニターと魔力感知センサーのデータが瞬時に飛び交っていた。

 

 

 

「……っ、信じられない。あれ、本当にベルカ式を正面から受け止めて……?」

 

 

 

一人の若い魔導技官が、目を見開いたまま声を漏らす。

 

 

 

映像モニターには、闇の書の騎士と、黒翼の少年の交戦記録が映し出されていた。

二刀流。異質な魔力構成。未来予測じみた挙動。

 

 

 

そして、もう一人。

 

 

 

龍を思わせる白銀の鎧を纏った少年──。

 

魔力出力、破壊規模、動体性能、すべてが桁外れ。

 

闇の書の騎士2名、そして制圧障壁すら“数分で突破”。

 

 

 

「……ヴォルケンリッター2名の反応が途絶。魔力出力、急激に低下。昏倒か……?」

 

 

 

「いや、それ以前に“魔力構造が破壊されている”……通常の物理的ダメージじゃない。魔力そのものを潰してる……」

 

 

 

「待て、転移反応。二名、消失――!?」

 

 

 

──白く輝く転移魔方陣。

少年二人が何の障害もなくこの空間を離脱するのを、ただ記録するしかなかった。

 

 

 

「……この戦闘、記録していたのか?」

 

 

 

「もちろん……けど、信じられるか? あいつら……“本気じゃなかった”」

 

 

 

「……っ」

 

 

 

一瞬、空間が静まり返る。

 

 

 

誰もが直感していた。

映像に映る彼らは、あくまで“遊んでいた”。

 

 

 

そして今、戦闘終了の映像と共に、最後に映し出されたのは――

黒翼の少年が、振り返りもせずに片手を上げ、白い光の中へと消えていく姿だった。

 

 

 

 

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