ミレニアムの探偵   作:kabisan

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その一
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尾刃カンナは、自分の机におかれた書類を見て小さくため息をついた。日はすっかり昇ってしまっている。肩がやけに痛かったので、これは怪我といえるのかな、とつまらないことを考えながらまた紙を手に取った。公安局長としてやらなくてはいけないとは分かっているし、別にさぼる気なんてさらさらないのだが、しかし、面倒くさいというのは事実である。口には出さないが。

その後しばらくして、20枚くらい終わらせた所だったか、そろそろ休もうかな、と思っていると電話がかかってきた。というか、気づいたという方が正しかったかもしれない。しばらく鳴り続けていたのだが、気づいていなかったのだ。悪かったなと思って名前をみると、〔合歓垣フブキ〕、となっている。

ふっ、と息を吐くと電話にでた。

「あっ…やっっと出てくれた…」

「どうした?こんな朝早くに。」

「ええと、もう10時なんだけど…まぁそれはいいとして、ちょっと来てくれないかな、って思って」

彼女の声には、いつもと違う妙な緊張が含まれていた。また、少し震えた声にも聞こえた。

「何か事件が?」

「うん…」

というと、彼女は深呼吸をして答えた。

 

「死体を見つけた」

 

カンナ、もといヴァルキューレの生徒たちが現場についたのは電話から20分ほど後だった。現場はとある小綺麗なアパートで、とある部屋の前に二人がへたと座り込んでいた。フブキと、同じく後輩の中務キリノだ。詳しくはわからないが、二人の様子から余程堪えるものだとは容易に想像出来る。

「あっ、局長…来てくれたんだ…」

着いて暫く──とはいっても一分程だが──すると、キリノと比べるとまだ幾らか元気そうなフブキがカンナ達に気づき、立ち上がって近づいてきた。

「ああ。しかし…ひどいにおいだな。」

実際、臭いは実物が見えないこの場所においてもかなりひどかった。生徒たちの中には吐きそうになっている生徒もいる。

「局長、見るなら臭いとか…その、血、とかが平気な人だけにした方がいいと思うよ。ほら、こうなるから」

「それはわかってるんだが、ええと、大丈夫か?二人共。」

「大丈夫なわけないよ、死んでるとこ見ちゃったし。」

「………」

キリノは明らかに堪えていて意気消沈、という感じを出しているし、フブキも余裕そうにはしているがもちろん辛いだろう。

…柄にあってないかもしれないが。

カンナはしゃがみこんで、二人を抱き寄せる。

「ど、どうしたのさ。」

「……!?」

驚く二人。

「もっと早く来ればよかった。すまなかった。」

「いや、そんな訳じゃあ…」

「代わりに、どうか。思いっきり泣いていいぞ。いや、泣いてくれ。」

少し言葉がおかしくなってしまったが、これでいい。

泣きたいだろう。

辛いだろう。

せめて、私で発散してほしい。

そう思っていた。

「本官はっ…私はっ…!」

「……っ…」

二人が落ち着くまでの30分程、カンナはずっと彼女らを抱き締めていた。

落ち着いた二人をヴァルキューレに返すと、カンナは死体があるという部屋の前に立った。生徒たちには周りの住民の待避を進めてもらっている。また、問題の部屋の隣、上下の部屋の住民にはフブキとキリノがすでに伝えていた。いい後輩を持ったと思いつつ、ドアを開けた。カンナが最初に感じたのは、血の臭い。その次に感じたのは、焦げたような臭いだった。臭いの強くなるに向かってゆっくりと進む。もし吐いたらカッコ付かないなと、いやな感覚を紛らわすように似合わない事を言いながら。そしてリビングにたどり着くと──

カンナが目にしたのは、腹の辺りに大きく穴が空き、そこから臓器なのかもよくわからない何かがはみだした、かつて人だった何かであった。

 

吐き気に耐え、待避等を終わらせると、カンナは一度自分の部屋へと戻った。上への報告をすぐにすませると、とある番号へ電話をかける。カンナはこれが憂鬱だった。5コールほどあとに、電話にでる音がした。

「はい、防衛室長です…あら、カンナさんでしたか。どうしたんですか?」

「はい…殺人事件が起きました。それで、調査の主導権を私にいただきたいのですが、宜しいでしょうか。その間の分の埋め合わせもするので。」

スマホの向こうで例の顔をしている室長が容易に想像できる。

「…理由は?」

「かなり奇妙な死に方をしていたので。また起こる可能性もありますし。」

舌打ちの音が聞こえた。

「はぁ…あなたは局長なんですよ?部下にでも任しておけばいいでしょう。」

「し、しかし…」

「あなたは自分の仕事だけやってたらいいんですよ。それ以上は必要ない、不要なんです。」

というと、電話は切られた。正直に言うと苛ついている。しかし、彼女の言葉も間違ってはいない。

それに、あの謎を解くことは出来ないだろう…解くことのできそうな友人もいないし。

 

 

いや…、いたじゃないか。

解くことの出来そうな友人が、いる。

カンナは再びスマホを持つと、モモトークを開いた。




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