第二の戦場   作:ガチタン愛好者

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SEKIROトロコンし、書かずには居られなかった


第一話~成せぬ者同士~

日本の冬木と呼ばれる都市がある。見かけ上はどこにでもあるありふれた都市だ。だがそれは一般人に限った話。こと魔術師において冬木とは聖杯戦争と呼ばれる儀式の場であり、これから行われる戦争は最初から数えて四番目となる。

 

「さて、準備は良いかの?」

 

「あぁ…」

 

「カカカ、せっかくワシが苦労して手に入れた聖遺物、無駄にするでないぞ」

 

「…」

 

冬木にある屋敷の地下。間桐と呼ばれる一家の屋敷にて行われるは聖杯戦争に参加する上で欠かせない英霊召喚の儀式。魔方陣を描き、触媒となる聖遺物を用意し行うそれは聖杯戦争の勝敗を分ける重要な儀式

 

「素に銀と鉄…」

 

全てを決める詠唱。噛まないように、間違えないように慎重に行う

 

「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし…」

 

そして彼が付け加える一節。これにより理性と引き換えに常軌を逸した戦闘力を有する英霊を呼び寄せる

 

「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

スムーズに、間違えなく紡がれた詠唱。魔方陣は光輝き、召喚の儀式が正常に行われたことを示す。そして光が収まりそこに現れたのは…

 

「……」

 

一人の東洋風の男。禍々しい気配を纏った諸刃の刀を持ち、背中には漆塗りの大弓を背負う。鎧はなく、上裸

 

「誰じゃ?こいつは。少なくとも円卓の騎士ではない。苦労して手に入れた触媒、無駄にしてくれたな、雁夜」

 

付き添っていた老人が立ち去る

 

「まぁ落伍者の貴様に元々期待はしておらなんだ。どの道本命は次の聖杯戦争、桜の調教が終わるまでの場繋ぎよ。ではな」

 

と言い残して。だが残された男、雁夜は老人が出ていったのを見届けると笑みを浮かべた。

 

「まずは成功だ。これで桜ちゃんを…」

 

見開いた彼の目は赤く輝いていた。召喚された男と同じように

 

 

 

★★★

 

 

 

さて、この時点で既に正史と呼ばれる道筋からは逸脱してしまっている物語。ではどこでズレが生じたのかと言うと数年前に遡る

 

「ここが…」

 

間桐雁夜はその日、雪深い山間の廃墟を訪れていた。ジャーナリストである彼は歴史から忘れ去られたとある国の跡地を訪れていた。

 

「葦名の国……本当にあったとはな」

 

間桐桜と呼ばれる少女がいる。筆舌に尽くしがたい調教を受ける彼女を知り、聖杯戦争の存在を知り、彼は考えた

 

"聖杯の力で桜ちゃんを救おう"

 

救ってくれと頼まれたわけではない。ただの彼の自己満足、独善的な行動だ。かの老人より伝えられたのは

 

・次の聖杯戦争には間桐の者で出られるものがいない

・触媒は既に用意した。貴様がその気なら参加させても良い

・もし勝利することがあれば聖杯は好きに使わせてやろう

 

当然、魔術より逃げた落伍者に期待など微塵もなく、ゆえにこのような条件を出した。これを聞いた雁夜は考えた。かの老人がまともな親切をするはずなし。触媒は罠。だが自分には魔術の知識も能力も無し。このまま引き受けても待つのは破滅

 

そして偶然にも彼は長いジャーナリスト人生の中で聞いた風の噂を思い出す

 

"日本には歴史より消され、忘れ去られた国がある。そこは過酷な修羅の国。不死の伝説が濃く澱む地"

 

眉唾物として聞き流していたが溺れるものは藁をも掴む。ダメ元で言い伝えられている場所を訪れた。勿論道や案内者が居るわけもなく、かつての経験がなければ雪の中で物語を終わらせていただろう。ようやくの思いで辿り着いたそこにあったのは

 

「廃城と…川か」

 

廃城、かつての姿は消え失せ、僅かに残った石垣がその偉大さをかろうじて伝える

 

川、葦名の国は水があった。その水は飲んだ者に活力を与え、その水で育った果実を喰って育ったものは尋常ならざる肉体を得たとされる

 

「城はもう何も残っていない。川を調べるか」

 

荒れ果てた土地に唯一清らかに流れるのは川。下流へ、下流へと調べるうちに彼は気づく

 

「海へ流れ出るのではなく、地下へ?」

 

葦名の地は葦名で完結している。それゆえ内府に滅ぼされた後、忘れ去られた。

 

「?段々と川の水が…澱んできた…?」

 

地下へ地下へと進むうち、川の水が澱んできたことに気づく。そして偶然にも彼は喉の乾きを覚えた。過酷な道中で水は使い果たしていた。

 

「あんな綺麗な川の水だ。上流へ戻るのも面倒だし…ええい、ままよ」

 

澱んだ水を汲み、飲んだ。乾きを癒すため、がぶがぶと。そしてそれは偶然にも秘匿された行為であった。

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

効果はすぐに現れた。あまりの苦しみにのたうち回る。当然経験豊富な彼は飲む前に匂いを嗅ぎ、腕に滴し、軽く舐めて安全を確認したはずだった。だがかの水。変若水(おちみず)は見分けられず、意識は沈んだ。

 

 

 

「ん?」

 

意識を取り戻した彼が感じたのは

 

「体が軽い?」

 

若返ったような体の軽さ。そして

 

「桜ちゃんを…救う。何をしてでも…」

 

訳もなく湧き続ける「桜ちゃんを救う」という意志。彼は知るはずもないが変若水を飲み、適合したものは不老不死に近い体と獣のごとき力、そして強い野望を手にする。野望は人によって異なり、ある者はかの者への復讐、ある者は葦名を守るという意志、そして彼は…

 

「桜ちゃんを…救う…」

 

幽閉された少女を救うという一点であった。ふらふらと立ち上がり、地上へ戻る。だが尋常ならざる力を得た彼は跳躍一つで地上へ降り立った。

 

「何か…無いか…?」

 

跡地を巡る。様々な廃墟と呼ぶのも憚られる瓦礫を抜けて出会ったのは

 

「墓?」

 

これまた墓と言うにはみすぼらしいが、明らかに誰かが埋葬されたらしき石を見つけた。野望に囚われた彼は躊躇なく掘り起こす。だがそこにあったのは骨ではなく

 

「これは…何かの破片か?」

 

漆が塗られた小さな木片。元の姿も分からぬそれは明らかに人工物だった。

 

「他には何も無いか」

 

木片を拾い、それ以上収穫がないことを悟った彼は尋常ならざる走力でもって冬木へ向かう。そしてこの木片こそが此度の触媒となった。澱んだ変若水、葦名の地で変若水の澱と呼ばれたそれを飲み、適合し、かの武将の武器の破片を手にすることで、かの召喚は成された

 

 

 

★★★

 

 

 

そして時間は戻り冬木は間桐邸。老人が退出し、残されたのは二人の赤い目をした男

 

「俺は…桜ちゃんを救う…」

 

「俺が…葦名を生かす…」

 

「「どんな手を使ってでも!」」

 

求めるものに差はあれど、意志は合致した。ここに第四次聖杯戦争の、バーサーカー陣営が誕生した。

 

 

 

★★★

 

 

 

「さて、まずはどうしようか」

 

召喚時の興奮も落ち着き、召喚された英霊と対峙する。召喚主、マスターとして雁夜は少なくとも目の前の男より反抗心を抱かれていないことを悟る

 

「俺は…この戦争を勝利し、かつての葦名を取り戻す。そのためにここにいる」

 

「少なくとも会話はできそうだな」

 

「ああ、聖杯より様々な知識も得ている。例えば目の前のお前が今の私の主であること。そして…」

 

パリパリッ

 

「かつての力を十二分に振るえるということ」

 

「巴の…雷か」

 

「然り」

 

バーサーカーは全て理性を失う代わりに力を得る。だが稀に、理性を残した、会話が成り立つバーサーカーも存在する。その場合は得られる力も少ないのが普通だ。最も

 

「今の俺なら、かの狼にも…」

 

卓越した武術を持つものには無関係である。そして偶然にもその瞬間

 

「「!」」

 

「気付いたか?我が主」

 

「あぁ、港の方だ」

 

「向かうか?」

 

「あぁ」

 

戦いの気配。何処かで英霊、サーヴァント同士が戦っている。そしてこの戦争は生き残ったただ一人が聖杯を勝ち取る一種の儀式。故に

 

「サーヴァントバーサーカー、葦名弦一郎。参る」

 

かの武将の出陣である




召喚された弦一郎はゲームプレイ済みの方へ向けて言うなれば通常ルートのラスボスとして出てくる弦一郎です。その後のためにノーダメージで速攻で倒される哀れな存在ではありますが、あれは既にプレイヤーが天守の戦闘で弦一郎との戦闘に慣れているからであり、弦一郎自身の戦闘力は中々のものです。当然使ってきませんでしたが巴の雷は使えますし、遠距離の弓、近距離の刀、そしてもう一振の不死斬り、弱いはずがない。狼が強すぎただけなんです。
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