第二の戦場   作:ガチタン愛好者

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これが一番書きたかった。これを書きたいがためにこれを執筆したといっても過言ではない。


第四話~決戦~

「ふん!」

 

キィン、キィン…

 

冷静に飛んでくる武具を弾く弦一郎。葦名において飛び道具を完璧に弾けぬ者などいない。少々軌道が変わったり、一度弾いても戻ってきたりしても同じこと。一方で

 

「ぐ!」

 

血を撒き散らすのは雁夜。いかに赤目となったとて、英雄の王には敵うはずもない。だが

 

「よし、掴んだ…ぞ」

 

持ち前の耐久と再生で持ちこたえ、打ち放たれたあと刺さっていた手頃な剣を手に取り、力任せに振り回す。仮にも宝具、赤目の力で振り回されれば武具は容易く弾く

 

「ほう、中々やるではないか。ではこれはどうだ?」

 

英雄王ギルガメッシュ。彼の本気ではないときに使用する宝具、王の財宝。その宝物庫には古今東西ありとあらゆる宝具が納められているという。それすなわち

 

「なに!?」

 

いつものように弾こうとするも飛んできた槍が軌道を不自然にねじ曲げる。

 

「さぁ、因果逆転の槍。当たったという結果が先に定義される一撃。どう凌ぐ?」

 

英雄王はありとあらゆる手札を持っていると言えるわけだ。弾かれるのなら弾けぬ逸話を持つ宝具を打ち放てばよい。本来の持ち主より威力は劣るが、劣ってなお強力無慈悲なのが宝具である。

 

「ぬがぁ!」

 

懸命に弾こうと刃を添わせるも生き物のようにねじ曲がり、触れられぬ。心臓を貫くという因果はどうしようもなかった。

 

トス…

 

やけに軽い音。だが深々と心臓を貫いた一撃は致命傷だ。

 

「ハッ、雑種は雑種だったか。他愛もない」

 

「ぐ…ぬぅ…」

 

確かに心臓を貫いた。はずだった。だが

 

「まだ俺の首は…落ちていない!」

 

葦名の地には、非常に優れた強者になれば一度首を落としただけでは死なぬ者があるという。そうでなくとも赤目であれば一度致命傷を負った程度で死ぬことはない

 

「ほう、心臓を貫かれてなお死なぬか。少しは楽しめそうだ。不死を殺す武具は掃いて捨てるほどあるぞ?」

 

死なず殺しの逸話は世界中でありふれた話だ。つまりそれは死なずを殺す宝具も彼の宝物庫に数多く収蔵されていることを意味する。しかしその瞬間

 

カァン!

 

英雄王の脳天への一撃。咄嗟に展開した武具が弾く

 

「俺を忘れたか?」

 

「ほう、見逃されていた分際でよく吠える。ならば望み通り処してやろう」

 

死なぬだけで有効打を持たぬマスターはいつでも殺せる。先に僅かでも攻撃を通らせる可能性のある弦一郎へと矛先を向ける英雄王

 

『あの雑種の攻撃は弓と刀、そして雷。弓と雷は我の鎧で効かぬがあの刀だけは悪い予感がする。喰らっては不味い』

 

さすがは英雄の王。聡明な知識と経験と勘が攻略法を導き出す。ひたすら相手の弱点を突くことこそが無限の手数を誇る英雄王の戦い方

 

「そら、受けてみせよ」

 

倒れ伏している雁夜を無視したことで今までは雁夜と半々であった攻撃が集中する。ちなみに慢心とも取れるこの行動だが、持っている宝具をある程度は把握している英雄王は、雁夜が奪った宝具には自らへ届くほどの力がないと知った上での行動である。

 

「ふん、効かぬ」

 

弾く。ひたすらに弾く。先ほど雁夜へ向けられた一撃必中の槍が飛ぶが

 

ガキィン!

 

弾く。弾けぬ筈のそれを弾けたのには理由がある。

 

「なんという技量か。その一点だけは褒めてやろう」

 

英霊の力には生前の言い伝えが過分に影響される。例えば一度も落城しなかった城を宝具とすれば、何をも通さぬ鉄壁の城となる。落城しない、そうあれかしとされているからだ。そして葦名の地においてはよほど体幹を崩されでもしない限り、飛び道具の類いを弾けぬ者はいない。そして聖杯戦争の地は日本。忘れられた僻地とはいえ葦名の地は確かに日本に存在する。故に知名度補正が僅かだが働く。一方でかの槍は海外の逸話であり、日本においての知名度は残念ながら無いに等しい。故にこの状況が生まれた。

 

『しかし、これでは埒が明かぬ』

 

英雄王は察する。どちらも決定打に欠け、千日手となっていることを。弾きに専念する弦一郎は距離を詰められず、英雄王も攻撃を通せない。かといってこの程度の相手に真の宝具を解き放つことはプライドが許さぬ。あれを抜くのは真に勇者と認めた者のみであるがゆえに

 

「このままでは埒が明かぬな。仕方がない。この我が直々に手を下してやろう」

 

宝具の打ち放ちをやめ、一度宝具を回収する宝具でもって打ち放った回収する。次に手に取ったのは一振の直剣。セイバーではないが英雄の王である彼は剣の腕もそこいらの英雄より優れている。そして握っていた者が剣豪であったがゆえに、逆説的に握った者を剣豪とする力を持つ剣と合わされば、下手なセイバーを越える剣技を使えるようになる。

 

「ゆくぞ」

 

「俺が葦名を生かす」

 

剣のみで戦ってきたわけではない者同士。人間に対する荒事の多さと戦闘経験は弦一郎が上回るが、元々のスペックと宝具による底上げによって両者の戦闘力はほぼ互角。

 

スッ…

 

静かに大上段に構える弦一郎。そして…

 

踏み込んだ。一般人から見ればワープのようにも見える強烈な踏み込み。それから放たれるは

 

「葦名流一文字!」

 

ドガァァァン!

 

「く!?」

 

「凌いだか…」

 

剣同士がぶつかったとは思えない爆発音。驚愕の色に染まる英雄王と悔しそうな表情の弦一郎。何ということは無い。葦名流に磨かれた単純極まりない一撃。だが侮るなかれ、未熟者相手なら剣や盾ごと両断する威力を持つのだ。英雄王が所見で受けきれたのも自らの高いスペックと優秀な宝具あってのこと。

 

「ならば…」

 

静かに仮初の鞘に刀を収め

 

「ハァ!」

 

「ぬぅ!」

 

居合。名前すら与えられぬその技は葦名流を嗜む者は誰でも使える。だが熟練者ともなれば

 

『この我でさえ、優れた目を持つアーチャーのクラスでさえ、見切れぬとは!』

 

英雄王でさえ見えたのは一瞬の輝きだけ。経験と勘で凌いだがマトモに喰らえばタダでは済まない。

 

『この雑種、雑種なりに中々やる…』

 

慢心は捨てない、捨てられないが評価を改める英雄王だった。

 

 

 

★★★

 

 

 

一方こちらは弦一郎。接近戦となれば有利であるかに思われたが、

 

『強い…』

 

効かぬ弓は使わず、不死斬りで攻め立てるが通らない。自慢の葦名流一文字も居合も凌がれた。この時点で自らの技量では相手に攻撃が届かぬことを察する。あるいは…

 

『いや、アレを使うわけにはいかない。使ってはいけない』

 

アレを使わねば勝てぬと薄々勘づいている自分もいる。だがアレを使いたくない。我が身可愛さではなく、純粋にかの人物に申し訳が立たないから

 

『だが…このままでは…ん!?』

 

弾き合う内に見えた一瞬の隙。弦一郎は一瞬迷い

 

「ここだ!」

 

強烈極まりない突きを叩き込んだ…

 

 

 

★★★

 

 

 

「ここだ!」

 

一瞬の隙を見て強烈な突きを放つ弦一郎。だったのだが

 

「かかったな、雑種」

 

見切られ、その刀身を強かに踏みつけられる、体幹を崩し、大きな隙を晒してしまう。当然そんな隙を見逃す筈もなく

 

ザシュ…

 

「がぁぁぁ!」

 

正面から剣の一撃、背後から王の財宝による投擲。そのとどめの差し方は情け容赦がなかった。それだけ余裕が無かったともいう。大量の武具が刺さった背中はまるでハリネズミの如し。幾ばくもしないうちに消滅するは必然。事実、金色の粒子が漂い始めていた。しかし、

 

「四の五の言っていられない…な。我が主!」

 

「!?」

 

「まだ打つ手はある。俺の真の宝具を使う。そのために…その強力な切り札を全て切ってくれ!」

 

「ああ!」

 

突然呼ばれた雁夜は驚くも即座に迷わず令呪を行使した。どの道このままでは負けてしまうのは明白

 

「令呪を全てもって命じる!宝具を使え!バーサーカー!」

 

「ふん…」

 

その一連の流れを静かに見守る英雄王。彼にとって聖杯戦争とは暇つぶしと自らの宝具の回収に他ならず、ゆえに面白そう、楽しめそうなことを邪魔するような野暮な真似はしない。

 

「おぉ、これならば…いける」

 

一つだけでも凄まじい力を持つ令呪を三つも一度に使ったのだ。消えかけていた弦一郎が持ちこたえる。それはまさに仮初の奇跡の行使

 

「俺は再び生を受けるも何も成せなかった、結局、頼るほかないのか…」

 

不死斬りを静かに自らの首に添え

 

「はぁ!」

 

一息にその首を斬った

 

 

 

★★★

 

 

 

「なんと…」

 

あの英雄王でさえ驚愕に染まる。先ほど首を斬った弦一郎は倒れることなく、首からおびただしい量の血を流しながら確かに立っている。だが明らかに既に意識は無い。

 

グチャ…

 

首の断面からナニカが生える。腕だろうか?皺の濃く刻まれたその腕は弦一郎が握っていた不死斬りを握り、受け取る。そのまま肩、頭、体と生えてくる。ヒトだ。ヒトが生えてきた。

 

「哀れな孫の…再びの願いじゃ」

 

すっかり全身が生えたヒトがしっかりと立つ。その風貌はまさに老人。だが気迫がそれを感じさせない。

 

「儂はあの葦名を、黄泉返らせなければならぬ。ゆえに…」

 

「聖杯とやらを勝ち取らねばならぬ。それが我が孫の願いじゃ」

 

すっかり背筋も伸びた老人。戦う準備は万全のようだ。

 

「名乗るのもいつぶりか…」

 

しっかりと英雄王を見据え、空気が、揺れた。

 

「我こそは!国盗り戦の葦名衆が一人!葦名一心!黄泉の国より黄泉帰ったぞ!」

 

高らかな名乗り。老いを感じさせないその姿はまさに全盛期の姿

 

「斬る前に、名を聞いてやる」

 

「名乗れいっ!」

 

その気迫に英雄王と言えど面食らう。そして

 

「フハハハ!この我に、名乗れと言うか!」

 

笑う。高らかに。それは相手を道化と笑ったのか、それとも…

 

「よかろう、今の我は面白いものを見られて気分が良い。故に貴様の望み通り名乗ってやろう」

 

「サーヴァントアーチャー、古代ウルクの王にして王の中の王。英雄王ギルガメッシュ!」

 

互いに名乗る。それはまさにかつて行われていた一騎討ちのそれ。令呪を使い果たした雁夜はただそれを傍観するのみ

 

「では行くぞ!英雄王!」

 

「来い!」

 

第2回戦の幕開けとなった




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