ハーメルンアウトサイダーズでの異世界ものの話を一緒に書きたいといういましたら、活動報告で募集してますのでぜひお願いします。
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『はぁ…っ、はぁ…っ!』
瓦礫が崩れ、燃える城の中を、俺は進む。足元が瓦礫で縺れ、何度も倒れながら突き進む。そうして傷つきながら進む理由は俺にはあった。
『へ、陛下…っ、お願いします!無事でいて下さい!!』
俺を拾い、面倒を見てくれた、この国の優しい魔王を探すためだ。気がつけばこの異形の姿でこの世界に来た俺を拾ってくれた、あの人だ。
『はぁ…っ、はぁ…っ!…っ!!陛下っ!!』
傷ついた体を引きずり、ようやくあの人を見つけた。瓦礫に背をつけて、倒れ込んでいた。
『陛下っ、ご無事ですか!?…陛下?』
近づき、気づいてしまった。陛下の胸に、大きな風穴が開けられ、いつも俺たちを見つめる優しい目は何も写さず、燃える虚空を見上げてるだけだった。生死の確認なんて、するまでもなかった。
『あっ…、あぁっ!!あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
燃える城の中、陛下の亡骸を抱き締め、慟哭するしかなかった。クーデターが起きて、俺たちを逃がしてくれた陛下が死んだ。俺が、もっと早く駆けつけていれば。そんな自責の念と、クーデターを起こしたあいつに対する憎しみが、俺の胸の中で渦巻いた。
「…」
俺ことラキアは目を覚ました。またあの夢だ。あれ以来、寝る度にあの日のことが悪夢となって蘇り、俺の心を苛む。
「…だっる」
とりあえず体を起こし、周りを見る。ここは城じゃない。逃げた先で拾ってくれた吸血鬼族の一族・ブラッドソード家の屋敷の一室だ。カーテンを開けば、空は暗いが日が昇り始めていた。
「…はっ、色々と準備するか」
気持ちとは裏腹に明るくなる空に舌打ちをして、俺は動きやすい服に着替え、波打つ金髪の毛先を弄りながら、朝食を作るために厨房に入る。
「おはようございます、ラキア」
「ライカンか、おはよう」
右目を眼帯で覆い、執事服を身に纏った大柄な人狼族・ライカンが出迎え、既に調理を始めていた。
「朝食はわたくしがやりますので、お嬢様を起こしに行ってください」
「あぁ、わかった」
ライカンに言われて、俺は自分のお嬢様を起こしに行く。ライカンはこのブラッドソード家の騎士団のリーダーにして、その当主の執事、更に言うならここの騎士団に所属する俺の上司にあたる。俺たちはある事情でここに流れ着き、ここに住む代わりに俺が騎士として雇われたんだ。
欠伸をしながら、俺はそのお嬢様がいる部屋のドアをノックする。
「イブキ、そろそろ起きろー」
返事がない、ぐっすり寝ているようだ。
「…はぁ、入るぞ?」
やれやれといった感じで中に入れば、可愛らしいぬいぐるみに囲まれて、すやすやと眠る少女がいた。この少女こそが、俺のお嬢様のイブキだ。
「おーいイブキ、そろそろ起きろー」
ベッドの端に腰掛け、ペチペチと頬を軽く叩く。
「んにゅぅ…」
「はぁ…」
仕方ないとばかりにため息をつき、耳元で囁いた。
「…お前のプリン、食っちまうぞ?」
「………っ!?ふぇっ!?だ、だめだめ!!イブキのプリン食べちゃだめぇっ!!」
ガバっと、イブキは跳ね起きた。
「嘘だよ。おはようイブキ」
「あっ、ラキアお兄ちゃんおはよう!」
イブキは満面の笑みを浮かべ、俺に抱きついてきた。
「はいはい。ほら、さっさと起きて着替えろ。ライカンが飯作ってくれてるんだからな」
「はーい!」
俺はしばらく部屋を出て、イブキが準備できるのを待つ。
イブキは、かつて俺が仕えていた先代の魔王の娘だ。力こそが全ての魔族では珍しく、人間と手を取り合うことを夢見ていた人の娘だ。それもあってか、イブキは魔族でありながらとても良い子だ。
「ラキアお兄ちゃん、準備できたよ!」
「よし。じゃあ行くか」
ぴょんぴょん跳ねるイブキを連れて、ライカンが待つ食堂に向かう。
「おはようございます、お嬢様。朝食の用意ができておりますので」
「おはようライカンおじちゃん!今日も美味しそう!」
椅子に飛び乗り、イブキは席に座る。俺もその隣に座った。
「……さて、ではいただきましょうか」
『いただきまーす!』
ライカンの号令で食事を始める。今日のメニューはライカン特製のパンケーキに、サラダだ。
「んーっ!!おいしーっ!」
「おいおい、そんなに頬張るなよ?喉詰めるぞ?」
「だって、すごくおいしいんだもん!」
イブキは満面の笑みを浮かべ、パンケーキを頬張る。
「ライカンの料理は美味しいからな。……ところでライカン」
「はい、なんでしょう?」
「…奴らの動向はどうだ?」
「ふむ」
ライカンは少しイブキを見て、ため息をつく。
「その話は、朝食を終えてからにしましょう」
「…ま、それもそうだな」
「なになに?二人とも何の話をしてるのー?」
「お嬢様がもっと大人になれば、わかりますよ」
ライカンはイブキにそう言って、パンケーキを切り分けた。
朝食を終えてから、イブキに部屋で勉強やお絵かきをさせてる間に、俺とライカンは執務室に入った。
「それで、奴らの動向はどうだ?」
「情報によりますと、近い内に、奴らがここに攻め入るところでしょう。遅くとも明日、早くとも…、今夜には」
「だりぃー…」
俺はため息をついて、頭を掻いた。
「ラキア、もしかしますと今回も1人で?」
「当たり前だろ、あいつらは俺が倒す。それが俺の役目だからな」
「…」
ライカンは少し黙り込む。
「ラキア、あなたの心中はお察しします。しかし、あの出来事については「ライカン」…はい」
「これは俺の復讐でもあるんだ。俺たちの魔王を、オラディオン陛下を殺したあいつを殺すためにもな。だから、これから先、あいつらのせいで傷つくのも、辛い思いをするのも、俺だけで十分だ」
だからな、と。俺は一区切りをつけてライカンを見つめる。
「ライカン、あんたはイブキを守ってくれ。そしてくれぐれも、イブキにあのことを言うなよ?絶対にな」
「…はぁ。立場上あなたはわたくしの部下ではありますが、そうなってしまわれたららテコでも動きませんね。わかりました。お嬢様はわたくしがお守りします。だから、あなたも必ず戻ってきて下さい。お嬢様を、悲しませないためにも」
「あぁ」
ライカンは席を外し、俺は一人となった。
懐から、あるものを取り出す。青と黄色が特徴のヴラスタムギアと、プリンの形をしたアイテムのどっプリンゴチゾウだ。
「…待ってろよ、アズガルド」
口にするのも忌々しい、あの魔王の名を呟く。クーデターを起こし、俺たちの魔王だったオラディオンを殺したあいつの名を。
それらを握り締め、奴に対する憎悪を滾らせる。
「いつか必ず、この手で殺してやる」
本作のラキアは、見た目はそっくりですが中身は別人です。