「ゴーレムの群れ?」
ライカンからそんな情報を聞いた俺は驚く。
「はい、近くの鉱山で、大量のゴーレムが出現しました。通常、ゴーレムとは土魔法で作られた人形。生物ではありません。もしかしたら、何者かがそこに住み着いているのかもしれません」
「なるほどな。それで、俺にどうしろと言うんだ?」
「ラキアには、現地を調査して、もし術者がいるのでしたら、説得して欲しいのです。応じるならこちらで働き口を用意することを約束します。しかし、そうでないのであれば」
「追い出すか、始末するかってことだな」
「はい、その通りです。いけますか?」
「はぁ…、だりぃけど、やってみるか」
気怠げになりながらも、俺は承諾し、例の鉱山へと向かった。
「しかし、ゴーレムの群れ、か」
通常、ゴーレムとは土魔法で生み出される存在だ。一度魔力で作り出してしまえば、あとは命令するだけで、込められた魔力だけで勝手に動いてくれるものだが、その作り出した時の材料によって使った魔力量が変わる。土や石でできたものなら作るのに消費する魔力量が少なく、逆に鉱石とかだとそれに比例して消費が大きい。それが胸を成すほどだ。かなり消耗するはずだ。
「まぁ何にせよ、警戒するに越したことはないか」
そうこうしているうちに、例の鉱山へと着いた。案の定、ゴーレムどもがそこかしこに屯している。しかも、鉱石でできた硬いゴーレム・メタルゴーレムだ。まるで奥にあるものを守るように。察するに、そこに術者がいるな。
「…と、気付かれたか」
さすがにここまで近付けばゴーレムどもも気付くか。しかも鈍重なはずのゴーレムどもが、走ってきた。
「ちっ、怠いことすんなよ!変身!」
《カップオン》
《プディング ヴラムシステム》
直ぐ様ヴラムに変身し、ゴーレムの鉱石でできた巨大な拳を受け止める。
「ぬぅっ!!」
どうということはないが、受け止めた途端俺が立ってる地面が凹み、亀裂が走り、クレーターができた。
「……なるほどな。確かにこりゃ、普通のゴーレムじゃねぇな」
俺はそのままゴーレムの拳を払い除ける。
「だが、所詮は土くれだ」
ゴーレムにアッパーを繰り出し、吹っ飛ばす。
「オラ、どうした」
ゴーレムどもは数に物を言わせて、俺を取り囲み、四方八方から攻撃してくる。
「だりぃ」
俺はその全てを受け流し、逆にカウンターでゴーレムどもを殴り飛ばし、蹴り飛ばした。
しかし、やはりというか何というか、メタルゴーレムなだけあってタフだな。あれだけブチのめしても、まだやってくんのか。
「はぁ〜…」
《カップ レディ》
ゴーレムどもが再び取り囲み、俺に襲い掛かる。それを見越してヴラスタムギアのレバーを上げて、拳に力を入れる。そして。
《プディングクラッシュ》
レバーを下げると同時に、強力な力が溜まった拳を、地面に叩きつけた。
凄まじい衝撃が周囲のゴーレムどもをバラバラに吹っ飛ばす。手足や胴体が千切れて、頭も砕けた。
「ふぅ」
俺は一息ついて、奴らが守ろうとしていた奥へと向かう。
この先に術者がいるんだろうが、あれだけのメタルゴーレムだ。いくら実力者であっても、消耗は激しいはずだ。
「…しよ、どうしよう…っ!」
奥の行き止まりから、誰かが嗚咽混じりで圧し殺したような、啜り泣く声が聞こえた。声の感じからして、二十歳にすらなってない少女のそれだ。だが、それには聞き覚えがあった。
「この声、まさか」
思えば、俺の友人にはゴーレムを作るのが得意なやつがいた。そいつは魔道具技師で、尚且つゴーレムの作成や改造、魔石の加工などを得意としてる奴だ。オラディオン陛下が殺されたあの日から行方不明がわからんかったが、まさか。
「…っ!」
変身を解除して、奥へと進んだ。その先で、俺にとっては見覚えのある少女が膝を抱えて蹲っていた。
「ひっ」
「お前、まさか」
水色の長い髪に、デコが丸出しで、メガネを掛けてるが怯えた様子の顔をした少女だ。
「ユノ、なのか?」
「ら、きあ…?」
ユノと呼んだ彼女は震える唇で俺の名前を呼ぶ。でもそれは、恐怖に染まり切っていた。明らかに精神的に不安定な状態だ。この世全てが怖くて堪らないといって感じだ。
「お前、何でここに「こ、来ないでっ!!」…っ」
「も、もう命を狙われたくないっ!!もう自分を偽りたくないっ!!だからもう来ないでっ!!もう許してっ!!人を傷つける魔道具なんて作りたくないっ!!!」
「おい、一体何の話をっ」
頭を抱え、長い髪を振り乱しながら逃げ出したユノ。そしてそのまま飛び降りたかと思うと。
「い、石よ集えっ、我を守護する手足と成れ!!『メタルゴーレム』!!!」
発狂したように、吠えるような、必死の詠唱による叫び声と共に、彼女の着地点からメタルゴーレムが出現し、飛び降りた彼女を優しく受け止め、そのまま素早く何処かへ走り去ってしまった。
「待てユノ!どこに行く気だ!ユノッ!!」
どこかに消えてしまったユノ。もう追うことは出来ない。
「お前、一体何があったんだ…?」
俺はただ立ち尽くすしかなかった。