「うっ、うぅっ!」
私は生み出したゴーレムに運ばれる形で速いスピードで移動していた。
理由なんて簡単だ。一刻も早くあの人から、ラキアから逃げたかったから。
私、ユノ・ペッティネはある事情から鉱山に立て籠もり、その鉱山の鉱石でメタルゴーレムをたくさん作って、身を守っていた。でもまさか、ラキアが、私の友達がメタルゴーレムを全部倒して私の前に現れるなんて、思いもしなかった。どうしてあの人がメタルゴーレムを倒してまで私の前に現れたのか、わからない。もしかしたらラキアがいる近くに、立て籠もってた鉱山を保有する領地があったのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。
でも、今の私は、そんなことも考えられない。だって、さっきラキアと顔を合わせたら、まるでラキアからオラディオン様のことで責められると、思ったから。
陛下が殺されたのに、お前は何をしていたんだって。
どうして私は、オラディオン様から居場所を貰ったのに、クーデターが起こった時、何も出来なかったんだろう。
「こ、ここまで来れば」
ゴーレムをしばらく走らせたあと、かなり距離が離れていたと思う。行き先なんて、考える暇なんてなかった。とにかくラキアから離れたかった。
とりあえず、近くの廃墟に入ろう。
ギィー…
軋む扉が開く、中は、あちこち傷んでいる。でも、壁に穴が空いているところはないみたい。
周囲を確認する。大丈夫……ここには誰もいない……。
「はぁ…」
辺りは散らかってるけど、とりあえず部屋の隅の物をどかして、私は膝を抱えて座り込んだ。
「はぁー…」
少し、深呼吸をする。しばらくすれば、少し落ち着いてきた。
「これからどうしよう……」
私があの鉱山にいたのは、アズガルドから逃げるためだ。オラディオン様が殺されてから、工房から逃げ遅れた私は、強制的にアズガルドの魔道具技師として、働かされることになった。しかも作るように言われたのが、人を殺す魔道具だった。私は、そんなことしたくない。でも、逆らったら殺される。実際に、わざと性能が低い魔道具を渡せば、工房に押し込められた上で、殴られ、蹴られた。痛くて、苦しかった。しかも、私には無理だと判断したからか、私のことを近い内に殺すという話を、聞いてしまった。
怖くて、死にたくなくて、でも人を殺す魔道具なんて、作りたくなかった。
だから私は、逃げ出したんだ。
逃げて、逃げて、逃げ続け、今に至る。
「…いつまでも、ここにはいられない」
私は今でも追われている。私という役立たずの魔道具技師を、殺すためだ。だから、逃げなくてはならない。
いつまた、アズガルドの追っ手に見つかるかわからない。正体がバレないようにしなきゃ。
ごそごそと、私は自分の懐に手を突っ込み、色んな道具の中から手に取った。柚子の見た目をした髪飾りだ。髪の左側の一房を掴み、通して固定する。それに意識を集中させ、なりたい自分をイメージする。
そうすることで髪飾りは反応し、私の姿が変わる。水色の髪は輝かしい金髪に変わり、眼鏡はなくなり、服も明るくて露出のあるものへと変わった。
鏡を見れば、ちゃんと私の姿が変わったのが分かる。私が思う、いかにも明るい雰囲気のある女の子だ。
私のこの髪飾りはミミックストーン。元々はラキアの魔石を使った擬態を元に作った魔道具だ。そして、これがきっかけで魔道具技師協会から、私は特級技師という称号が与えられ、ミミックストーンは魔道具技師試験での試験魔道具として重宝されるようになった。
「…よし、あとは」
私は自分の中でイメージをする。自分のような暗い性格とは真逆の、明るくて誰に対しても笑顔で、行く先々の人たちに愛されるイメージを作り上げる。
「すぅー…はぁー…」
私は自分の姿が変わったのを確認した後、深呼吸をして心を落ち着かせる。
自分の中でイメージを膨らませていく。普段の暗い性格とは真逆の明るい性格。誰に対しても笑顔で接する。そして色んな人たちから愛されるイメージ。そのイメージに合わせて言葉を紡ぎ出す。
「やっほー!私の名前はユノ!明るさが取り柄の旅人だよー!」
鏡を見ながら満面の笑顔を浮かべてみる。そしてそのまま鏡の自分に話しかける。
普段の自分からはありえないほど快活な性格を演じてみせる。
「……うん、これでいいはず」
自分に暗示をかけるように呟く。
「さあ行こう!新しい旅の始まりだ!」
笑顔を張り付けて大声で叫ぶ。今の私は自分自身が作り上げた偽りの私だ。これならば誰も私だと気づかない。
私はそのまま、廃墟を飛び出し外で待機させてたゴーレムを走らせる。外はまだ明るい、今のうちに人がいる街に向かおう。
人気のない土地にずっといたら見つかってしまう。人が多ければ多いほど紛れやすい。だからこそ私は人の多いところを目指している。
できればラキアと顔を合わせたくないけど、そこは行き先でいないことを祈るしかない。擬態して演技してるとはいえ、目立つことはしたくないから。そもそも、私はラキアのことを嫌いではないし、むしろ大事な友達と思ってる。ただ、今は落ち着いたとはいえ、さっきはラキアと顔を合わせた時に、オラディオン様を助けられなかったことで責められるんじゃないかって思って、今までの感情が爆発してしまった。ラキアのことは嫌いではないのに、今は顔を合わせづらい。もし会うなら、その時こそ偽りの私が完璧に成り代わっている時にしたい。本物の私で会うのは、もう少し落ち着いてから。
そんなことを考えているうちにゴーレムは人が集まる場所を見つけたようだ。
遠くからでも分かるほど賑やかにしている街がある。そこを目指そう。あとは街に入ったら情報を集めるためにまずは食事処を探してみる。食事処は情報が集まりやすいところだから。
ゴーレムに乗ったまま街の入り口まで来ていた私はゴーレムを停止させた。ここから先は目立つから自分で歩いていかなければならないが幸いにもここから街の入り口は近い。ゴーレムを鉱山まで歩かせて、そこで自壊するように命令し、私は街まで一人で歩く。周囲の人達にバレないように。街の門番は私の偽りの姿を疑う様子もなく通してくれた。それならいいかな。
「いらっしゃい!お客さん?」
入ってすぐ、私は食事処に入って情報収集を始める。もちろん偽りの私のまま。
「ねーねーおじさん!ここは何の街なの?」
「ここは吸血鬼族のブラッドソード領です。とても良いお方でして、吸血鬼族だから基本夜しか出てきませんが、うちのような人間も受け入れてくれくれるんですよ」
なるほど、ここは吸血鬼族の。確か吸血鬼族は基本的に皆善良だから、こうして余所者でもこうして受け入れてくれてくれるんだ。…と、ここは食事処だから、何か頼まないと。
「へぇそうなんだ!…あっ、じゃあこれとこれ!お願いしてもいいかな?」
「あいよ!ちょいと、待っててくださいね」
店主らしき男性は元気よく返事をして奥の方へと歩いていった。
その間に私は周囲の人の様子を伺う。皆楽しそうだ。特に怪しい人はいないように見える。よかった。これならしばらく滞在しても問題ないかな。しばらくして料理が運ばれてくる。私はそれを平らげると店主に話しかける。
「おじさん!ここは落ち着けるいいところだね!」
「そう言ってもらえると嬉しいですねぇ。うちはお客さんに満足してもらえるように、全力でやってますからねぇ」
「そうなんだ。…あ、そうそう!この街で良さそうな宿屋ってある?しばらくこの街を見ていこうかなぁって、思ってるんだけど」
「うん?お客さんもしかして旅人ですか?しばらくこの街にいるって言うんだしたら、あそこなんか良いと思いますよ?安くて美味い食事も出ますし、お客さんみたいな女の子一人でも安心して泊まれますよ」
「うん、そこに行けばいいんだね?ありがとうおじさん!」
「いえいえ!また来てくださいね!」
店主にお礼を言って、お金を払ってから外に出る。今度こそ大丈夫だろう。それではさっそくそこに向かおう。店主が紹介してくれた宿屋は少し離れているようだけどすぐに見つけることができた。外観は少し古そうだが中は綺麗で清潔感があり雰囲気も明るく落ち着いた感じで気に入った。とりあえず今日泊まる部屋を取っておこう。それから私は店主から聞いた通り宿屋へと入っていった。受付に行くと恰幅のいいおばちゃんが出迎えてくれた。彼女は笑顔で挨拶をしてくる。
「ようこそお嬢ちゃん!見ない顔だけど、旅人ですよね?長旅でお疲れでしょう?今から案内するからそこでゆっくり休んでいってくださいな」
「ありがとう!私しばらくここに泊まっていくから!よろしくね!」
おばちゃんは快く対応してくれた。これでここに泊まることが決まった。それから私はお金を払ってから部屋に案内された。そこは一階の端に位置しており窓からは外を見ることができた。外は暗くなってきてる。もう夜だろう。
「…」
カーテンを締めてから、タンスに防音機能がある魔道具・サイレントストーンを置いて起動させる。これで外に音が漏れない。
髪を結ぶミミックストーンを外し、私は元の姿に戻る。さっきの明るい女の子じゃなくて、本来の暗くてウジウジしてる、臆病で自信のない、ただの人間の魔道具技師のユノ・ペッティネ。
「はぁー…」
小柄な体を、ベッドに放り投げる。さっきまで演技していたことを思い出しては、罪悪感と自己嫌悪に襲われる。
ミミックストーンは、表向きは魔族にしか使えない魔道具。知らない人からすれば、魔石でできたアクセサリーだ。でも、本当は違う。使い方を知ってるなら、魔族でも人間でも関係なく使える。誰にだって化けられる。その気になれば、他国のスパイとして潜り込むことだってできる。私もその危険性も知ってたし、だから魔道具技師協会はこれに掟を作った。魔道具技師と魔族以外はこの使い方を教えてはならないって。ミミックストーンは魔道具技師になるための試験にも使われるけど、これは作り方も使い方も、そしてその危険性をちゃんと理解するための試験しておかなくちゃいけないためなんだ。だから、そういう意味でもミミックストーンを作った私は、特級技師として認められたんだ。
でも、私だって、最初は使おうとは思わなかった。けど、あそこにいたら、殺されるかもしれなくて、怖くて、死にたくなくて、仕方なかった。だから私はとっさにミミックストーンを使って、ネズミに擬態して工房に開いた小さな穴から逃げ出して、その後は様々な街を転々とした。でも私がここにいるとアズガルドたちにバレたくなくて、ミミックストーンで明るい子に擬態して、自分とは間逆な明るい性格をした女の子として演技しないと、いけなかった。でも同時に、私が狙われないために周りの人たちを欺いて、利用してるということに、罪悪感を覚えて仕方なかった。
「あぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
私は枕に顔を埋めながら叫んだ。でも防音機能のおかげで音は外に聞こえない。
「何をやってるの、私は!?こんな演技までして!こんなことしてどうするつもりなの!?何の意味があるの!?私はどうしたいの!?分かんないよぉぉ!!」
私は泣き喚く。ただひたすらに。自分のしたことに涙を流す。
本当の私は明るくない。自分の身を守るためだけに、行く先々の人たちに明るく振る舞っておきながら、狙われたくない一心で演技して利用してる、卑怯者なんだ。
演技を続けて、これからも騙し続けるのか?いつまで、こんなことを続けるの?でも、本当の私でいたら、アズガルドに狙われて殺される。だから、演技をしなければならない。それが、今の私にできる、唯一の対抗手段だ。
「うわああああああああああん!!」
私は声にならない悲鳴をあげながら泣きじゃくる。アズガルドに狙われる恐怖心と、狙われないために演技し続けなきゃいけない罪悪感に、心が壊れそうになる。
「うぅ…っ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!」
私はこの場にいない人々に向けて謝罪を繰り返す。こんなことをしても、何の慰みにもならないけど、私には謝ることしかできない。
こうなるのが嫌で、一度メタルゴーレムを作ってまで鉱山に引きこもったけど、結局ラキアに見つかって、そこから逃げ出すことになった。
これからも私は演技し続けなければならないのか?どこかで、終わりは来るの?私はいつまで罪悪感と恐怖に怯えながら生きればいいの?
私はこのまま孤独に死んでいく運命なのか?それともどこかで終わることができるのか?
「わからない……」
私はただベッドに寝転んでぼやくだけ。どうすればいいのか分からない。でも今は、眠って頭を整理しないと。
私はそのまま目を閉じる。何も考えずに。
「ううぅ……」
朝が来た。昨日の出来事を思い出して、目が覚めた途端に暗い気持ちに襲われる。でも、泣いたせいか気持ちはスッキリしてる。
今日はこの街を探索しよう。ここは吸血鬼族の街なんだから、その文化をもっと知りたい。鏡を見れば、酷い顔だ。ただでさえ暗いのは自覚してるけど、昨日泣いてそのまま寝てしまったから目は腫れてる。おまけに髪もボサボサ。でも今はこれでいい。
どうせ、外に出るにしても擬態しなきゃいけないから、本来の私がこんな風になってもミミックストーンで擬態すればそんなの関係ない。
「…はぁ」
昨日あんなことになったのに、また擬態して、自分を偽らなきゃいけないことに嫌気がさす。でも、仕方ない。これ以外に方法がない。本当の私でいるよりは、ずっとマシなんだ。私は髪を結ぶミミックストーンをつけて、昨日と同じ明るい金髪の女の子だ。乱れて手入れもしていないボサボサの水色の髪も、今は明るい金色に変わっている。眼鏡もないし服だって昨日と同じ露出度の高いやつだ。
鏡を見れば明らかに明るい子のそれだ。でも私の心情を表すように、目が死んでるし、表情なんか暗いままだ。
「……」
口元を指で上げて、笑ってみせる。
今の私は演技するしかない。演技してる間だけ、自分を殺せばいい。ミミックストーンは姿だけを変える魔道具だから、私は自分に言い聞かせる。今の私は、明るくて誰にでも優しいお人好しの旅人ユノ。そうなるように意識してる。それだけでいい。
「よし!」
気合いを入れるために声を出してみる。今は演技してる時だ。笑顔を浮かべてないと。そうしないと演技してる意味がない。ベッドから降りてから部屋を出る。そのまま受付に行って鍵を渡す。
「おはよう!今日は出かけてくるね!」
「あらおはよう!いってらっしゃい!」
受付のおばちゃんに笑顔で挨拶してから宿を出る。外はすでに明るい。吸血鬼族は夜行性だから基本みんな家の中に引きこもってる。今の時間は人間が多いみたい。人間用の施設が多いのもそうだけど、人間の商人なんかがこの街に来てるのもあるからだろう。
「さてと」
私は歩き出す。情報収拾するためにも、何かしらのアクションも考えないと。私は適当に歩いていると、何やら騒ぎあった。
「くそっ、もう開演前なのにゴーレムが壊れた!」
「どうするんだよ!?ゴーレム生み出して動かせる土魔法使えるのお前しかいないんだぞ!?」
「知らねぇよ!こっちは朝っぱらから徹夜明けなのに客のためにこんなゴーレム作ったんだぞ!?そしたらゴーレムが突然故障しちまったんだよ!なんでこんなことになったんだよ!?」
何やらゴーレムの劇場の裏でトラブルに遭っているらしい。声が聞こえる方に行けば、2人の男が足元で動かなくなったゴーレムのことで揉めてるようだ。
…あぁ、多分籠めた魔力以上の複雑な命令の設定をし過ぎて、内部の魔力が暴発しちゃったんだろうな。
「やっほー!どーしたの?」
「うわっ!?なんだよ突然!?」
突然声をかけられてびっくりする。そりゃそうだよね。私は笑顔でその2人の男性に話しかける。
「あのね、実は道に迷っちゃってさ、どこかいいところないかなって探してたらあなたたちがいたんだよ。何か困ってることでもあるの?よかったら助けてあげるよ?私、これでもゴーレムを生み出して動かす土魔法得意だし!」
私は笑顔でそう言うと2人の男性は戸惑った表情を浮かべる。まあ、当たり前だよね。女の子とはいえいきなり知らない子に話しかけられたら驚くもん。話しかけた私だって、演技で隠してるとはいえ、ついさっきまで怒鳴りあってた大の大人2人に話しかけて、内心ビクビクしてるし。
「いやぁ嬢ちゃん、気持ちは嬉しいんだが、これは俺たちの仕事でな。プロに任せないと。素人に任せる訳にはいかねぇよ」
「それに嬢ちゃんは見たところこのゴーレムの構造知らねぇだろ?そんな嬢ちゃんに任せられるわけねぇよ」
2人の男性はそう言って断ろうとする。でも私には分かる。この人達が困っていることを。それにこの人達は私を気遣っているのも。
だから私はわざとらしいくらい元気良く言った。
「大丈夫だって!私結構腕があるんだよ?だから任せちゃってよ!」
ポンと、自慢するように、ほぼないに等しい自分の胸を叩く。…別に、胸がないことなんて、気にしてないもん。擬態したらたまたまこんなだっただけだもん。
まぁそんなことはどうでもいい。
そして私はゴーレムに歩み寄る。
「ほらほら!やってみるから見てて!」
私はゴーレムに手をかざして魔力を流し込む。そしてゴーレムの内部の構造を解析する。
……やっぱり思った通りだ。内部の核に罅が入って、動かなくなってるんだ。
「……なるほどね。分かったよ。私が直してあげる」
私はそう言うと男達は驚いたような表情になる。そりゃそうだよね。ゴーレムは内部が複雑すぎて直すのは大変なのに、それをいきなり来た女の子が簡単に直すって言ってんだから。
でも私は別に驚いていない。だって私は知っているから。小さい時からゴーレムを作ってきたし、ゴーレムの構造を解析することは私にとっては朝飯前だし、ゴーレムの構造を把握すれば簡単に修理することができるのだ。
私はゴーレムの内部にある核に魔力を集中させる。
「…核の位置の確認、解析、修復、強化」
そして私はゴーレムの核の修復を完了させると同時に魔力を注ぎ込む。
…うん、命令系統が壊れてなくて良かった。ここも壊れてたら、きっとこの人たちの思った通りに動かせなかったし、修正するのも時間が掛かったと思うから。それより魔力暴発が起こらないように核と全体の強化もしておこう。そうすればきっともう壊れることはないはず。
「よし、できたよ!」
私はゴーレムから手を離すとゴーレムはゆっくりと立ち上がる。それを見て私は笑顔で2人の男に言う。
「これで動くようになったよ!」
2人の男性は驚いたような表情のまま固まっている。まあそれはそうだよね。こんな簡単にゴーレムを直せるなんて誰も思わないだろうし。
「なっ……お、お嬢ちゃん、あんた一体何者なんだよ?」
「ゴーレムの中はかなり複雑だから、俺たちは分解して修復したり調整したりしてんのに、分解せずに、触れただけで、魔力だけで直しちまうなんて…!?」
驚きを隠せない2人の男性の問いに私は笑顔で答える。
「いやー私の得意な魔法だしね!ゴーレムはよく作るからゴーレムに関しては結構詳しいんだよ!だから直すのは楽勝だったよ!それに壊れた原因の魔力暴発が起こらないように強化もしたからね!もう壊れる心配ないよ!」
そう言うと2人の男性は顔を見合わせる。そして私の方に向き直ると頭を下げた。
「すまんお嬢ちゃん!助かったぜ!」
「本当だぜ!お嬢ちゃんがいなかったらどうしようかと思ったよ!ありがとな!」
「え?あ、うん」
私は突然のことに驚きつつも頷く。すると男性は笑顔を浮かべて続ける。
「お嬢ちゃんは俺たちの恩人だ!良かったらこのあとの公演に、参加してくれねぇか!?」
「え?公演?」
「おうよ!俺たちはこのゴーレム劇団の演出担当でな!今日は開幕記念公演をする予定なんだが、お前さんがそれだけの腕前なんだ、もし良かったらゴーレムを動かしてみてはくれないか?きっと、俺たち何かよりも上手く動かして、素晴らしい公演になるはずだ!」
「えーっと……」
私は困ったように頬を掻く。ゴーレムの劇団なんて聞いたことない。しかもゴーレムを動かすのがメインだなんて。しかも開幕記念公演?どうしよう?やりたいけどやるべきかどうか。私が悩んでいると2人の男性は慌てて手を振る。
「あぁいや無理にとは言わんよ!嬢ちゃんはゴーレムの修理で手伝ってくれただけで十分だし、もし気が向いたらまた手伝ってくれよ!」
「そうだな!嬢ちゃんに迷惑をかけるわけにはいかないからな!」
……うーん。困ったな。私はどうするべきか。私がそう考えているとふとある考えが頭をよぎる。それはいい考えな気がする。私がここで断ったら多分この人たち悲しむだろうな。それに、私はこの街のことをもっと知りたい。これはチャンスかもしれない。
よし!決めた!
「わかった!それじゃあやってみようかな!」
私がそう言うと2人の男性は嬉しそうな表情をする。
「よっしゃ!じゃあよろしく頼むぜ!」
「金もちゃんと弾むからな!ところで嬢ちゃん、名前何ていうんだ?さっきのゴーレムを直した腕前、かなり名のある魔法使いじゃねぇのか?」
「えっ、名前?」
どう応えようか悩む。別にフルネームを言う必要はないから、明るく答えよう。
「私はユノ!ちょっとゴーレムに詳しい、明るいだけが取り柄のただの旅人のユノだよ!よろしくね!」
そう言って笑顔を向けると2人の男性は嬉しそうに頷く。
「おう!よろしく頼むぜユノちゃん!」
「よろしくな!」
そうして、私はゴーレムの劇団のお手伝いを続けることにした。私はそれを快く受け入れて、手伝う。この笑顔の仮面で隠した壊れそうな心に、鞭を打って。
けどこのあと、まさかまたラキアと会うことになろうとは、今の私には思いもしなかった。