プリンの騎士   作:ガンダムラザーニャ

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優しい魔道具

ユノがブラッドソード領の魔道具技師にしてからしばらく経った。あれからというもの、ユノは新しい魔道具を作ったりなどをして、活躍していた。特に、ぬいぐるみに極めて軽くなるように加工した魔石を仕込み、幼い子供の遊び相手になるように動くことができる魔道具、動くぬいぐるみは大人気だ。こういう玩具向けの魔道具は非常に珍しかったが、幼い子供や女の子には受けがよく、今ではブラッドソード領だけでなく、それ目当てでブラッドソード領と契約を結んでる商人もいるほどだ。

 

それで今、量産した動くぬいぐるみを外の街の商会に納品するために、ユノは馬車に乗る。俺はその護衛だ。

 

「ご、ごめんねラキアっ、こんなことに付き合わせちゃって…」

 

「お前の面倒を見るのも仕事だからな。それによくやってるだろ?」

 

馬車を引く馬を動かしながら、俺はユノと話をする。

 

「ただ、お前も自分を偽りたくないって、偽る度に罪悪感を抱いてたってのに、前と比べたら大分落ち着いてるよな?無理とかはしてないか?」

 

「だ、大丈夫、だよ!その、ラキアが一緒にいてくれるから…、擬態して演じてても、ラキアがいてくれるから、大丈夫!」

 

「そうか」

 

ユノの笑顔を見て俺は安心する。ユノは無理をしていないようだ。こうしてユノは納品するために乗ってるが、表向きは代理として、演技してる自分で人前に出るようになった。前みたいに、アズガルドから逃げ回るために、ミミックストーンによる擬態と演技をしてきたが、その時のような罪悪感は、今のユノにはない。やってることは変わらないが、それでも俺はユノのことが嬉しくなった。

 

「もし何かあったらすぐに言えよ?俺ができる範囲内なら、どうにかしてやるからな。そもそもお前、何かと放っておけないし」

 

「ラキア……、うん、ありがとう」

 

微笑みながら言うユノに、俺も笑みを返す。俺とユノはそんな他愛のない話をしながら、馬車で進んでいった。

 

それからしばらくして、街に入り商会の建物が見える。ユノは直ぐ様馬車の中に隠れミミックストーンでいつもの明るい金髪の女の子に擬態し、深呼吸する。

 

その後で、門番の制止により、馬車を止める。

 

「失礼、そちらの荷物は」

 

「ユネ・ペッティネの魔道具だ。商会に納品するために持ってきた。…ほら代理。あとはお前の出番だ」

 

「はーい♪」

 

擬態したユノが元気よく馬車から飛び出し、門番に話し掛ける。

 

「私はユノの代理だよ!魔道具の納品がしたいけど、代表とか他の人呼んでもらっていいかな?中身の確認とか荷下ろしとか、色々やることあるし!」

 

「はっ、かしこまりました。少々お待ちください」

 

門番が商会の人を呼びに行く間、俺は馬車から動くぬいぐるみが入った大きな木箱を馬車から降ろしてから蓋を外す。そのタイミングで商会の人が来た。

 

「お待たせしました!…えーと、ユノ殿の代理様、ですね?」

 

「うん!よろしくね♪」

 

商会の人から代理確認を受けたユノが元気よく返す。商会の人もにこにこと微笑みながら、納品の確認をする。

 

「はい、それでは魔道具の納品を確認させていただきます」

 

「はーい♪」

 

ユノが商会の人に魔石を使って動くぬいぐるみの入った木箱を見せたあと、納品確認をしてもらう。その間俺は外で警戒する。ユノは微笑みながら、木箱の中を見せる。

 

「はい!確かに受け取りました!」

 

「よかったー!それじゃあ、またね♪」

 

「あ、あの、その前に一つ、お聞きしても、よろしいですか?」

 

「ん?どうしたの?」

 

商会の人に呼び止められたユノは少し首を傾げる。

 

「その、どうしてユノ殿はいつも代理の方が来るのですか?」

 

「あー……」

 

商会の人から見ればユノに納品の確認は取れたが、ユノ本人が見当たらない。それにいつも代理に納品を頼んでるから、なぜなのかって気になるのだろうな。その本人が、擬態してるとはいえ、目の前にいることに気付かず。

 

「あの人は、さ…。臆病なんだよね。人見知りも激しくて、人前に出るのも、緊張するみたいだし。それに本人性格暗いから、だから私みたいな明るい人に代理をやらせるんだよね?ほら、そっちだって暗くて碌に話せない人よりも、私みたいな明るくて人当たりの良い人のほうが、適任だって、思うでしょ?」

 

「い、いえいえ、そういうわけでは!…ただ」

 

と、動くぬいぐるみの1体を取り出す。

 

「こういう、お子さんが楽しめるような魔道具を作られた魔道具技師はそうそういなくて、きっとユノ殿は、とても子供好きで、優しいお方なのだなと、思っただけでして……」

 

「え…」

 

「あなた様が言うように、確かにユノ殿は人付き合いも苦手な方なのでしょう。私は会ったことはありませんが、それでもこの魔道具の良さはわかります。…うん、なるほど。お子さんの優しい遊び相手になってくれるように工夫されていて。ユノ殿の優しさを感じますね」

 

「…っ!」

 

ユノは顔を俯かせる。商会の人が言ったことは全て真実だ。元々動くぬいぐるみは、ユノがイブキのために作ったものだ。ぬいぐるみが大好きなイブキのために、ユノは極めて軽くなるように加工した魔石をぬいぐるみに仕込み、動くぬいぐるみを作ったのだ。

 

商会の人には本当のユノのことはわからない。今目の前にいる代理はユノがミミックストーンで偽った姿だから。

 

だがそれでも。それでも商会の人は本当のユノをわかってくれていた。ユノが人付き合いが苦手で、人前に出ることを好まないこと。だけど、とても優しいこと。今ユノの代理として目の前にいるユノは本当のユノではない。それなのに商会の人にはユノが見えていた。ユノが偽ってるからじゃない。商会の人はユノの作った動くぬいぐるみを通して、偽りのユノの向こうに本当のユノが見えていたのだ。

 

「……うん。そう。あの人はそういう人だよ。臆病だし、人付き合いも苦手だし……。だけど……っ…」

 

顔を上げたユノの眼からは涙が零れていた。ユノはその涙を拭う。

 

「……っ…だけど!とっても優しい人なんだよ!……ありがとう!あの人が作った魔道具を褒めてくれて!あなたみたいな人がいるから……!…あの人は頑張れるの!ユノのことをわかってくれてる人がいるから!……っ…だから……!ありがとう!」

 

「おっと……」

 

「ご、ごめんなさい…っ!私のことじゃないのに泣いちゃって…っ、あははっ……!変だよね、自分のことじゃないのに泣いちゃってさ。でもっ、でもねっ……。私嬉しいんだ。ユノのことをわかってくれた人がいたことが嬉しくて。きっとユノも喜ぶと思う!……ありがとう!本当にありがとう……!」

 

泣きながらユノは商会の人にお礼を言う。商会の人も目を丸くするが、その後で優しく微笑んだ。

 

「…ふふっ、ユノ殿もあなたみたいな方にそこまで思ってもらえて幸せ者ですね。それでは納品の確認もできたので、またどうぞよろしくお願いします」

 

「うんっ!またね!ユノにも、たまには人前に出るようにって、ちゃんと伝えとくからね!」

 

商会の人は微笑みながら建物へ戻っていった。

 

俺は商会の人を見送った後で、ユノを馬車に乗せて走らせた。ユノは馬車の中で擬態を解いてから俯いたままだった。そんなユノに俺は話し掛けた。

 

「…良い商人だったな」

 

「うん……」

 

目に涙を溜めてるが、嬉しそうに微笑んでいた。偽ってる自分だけど、それでも自分の心は理解されていて、それで嬉しかったのだろう。

 

「…いつかまた会う時、演じてなんかいない、素の自分で面と向かって話ができたらいいな」

 

「うん!そうだね……!」

 

ユノは笑顔で頷く。ユノは演技しながらも心を理解してもらえたことに喜んでいた。俺はそんなユノを見て嬉しくなり、今度機会があれば素の自分で話をさせようかと考える。

 

「そうだユノ、この近くに街があるからそこの売店で、何かデザートを食べようか」

 

「いいの?」

 

「どうせ帰るまでに距離があるからな。少しの間だけだ」

 

「うん!」

 

ユノはにっこりと微笑む。それからしばらく馬車を走らせてから売店に立ち寄り、プリンを買い、馬車の裏で待ってるユノに渡した。

 

「ほらよ」

 

「あ、ありがとう、ラキア!」

 

手のひらサイズの軽い瓶に入ったプリンを、木のスプーンで食べ始めたユノはプリンの美味しさに顔を綻ばせる。

 

「お、美味しいね、ラキア……」

 

「そうだな」

 

俺はユノの横で同じプリンを食べながら応える。俺もユノも売店で買ったプリンを美味しそうに食べる。その時だった。

 

「ユノ…?」

 

と、男がユノを呼ぶのが聞こえた。




今回はAIでユノのイラストを作りました。

ユノ・ペッティネ(擬態)

【挿絵表示】


ユノ・ペッティネ(本来の姿)

【挿絵表示】
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