感想がもらえたら2話目を書きます(感想乞食)
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side:南の勇者
オッス!オラ転生者!具体的な記憶はない!
生まれてこの方20年。
田舎も田舎。超ド田舎に生まれ落ちた俺はすくすくと育ち今や立派な農夫をやっています。
………転生者要素は?
最近の俺の悩みはそれだ。
たまーに来る魔物を倒したりはするんだが俺の人生はちっとも波乱万丈じゃない。
朝は畑に出て、お昼はごはんを食べて畑仕事して、夜は寝る。
たまに戦う。
そんな毎日だ。
畑の収穫期が今のところ人生のハイライト。
そんな生活を20年も送ってしまった。
もっと色々あってもいいと思うんだが、俺の住んでいるところが田舎過ぎて世の中のことなんてちっとも分からない。
「兄さーん!どこー!?」
「ここだよ」
「うわっ!」
妹のカッツェ。
いつもやたら元気。けど今日は一段と元気だ。
どうやら俺を呼びに来たらしいが一体なんだろう
「もー!兄さん影が薄い!」
「目の前にいたのになんで気が付かないんだよ!」
そもそも影が薄いってなんだよ。
視界に入っているのに認識されないのは影が薄いどうこうの問題なのか?
確かに俺は人から無視されたり忘れられたりすることが多いが…あれ…目から涙が…
俺が本当に影が薄すぎるだけってこと…?
「ねぇねぇ聞いてよ兄さん!事件!大事件なの!」
「事件…?そんなことより俺は今こころの傷を癒すのに必死なんだけど」
「あのね、昨日来た旅の人が教えてくれたんだけど北の方では人間と魔族が戦争してるんだって!」
「聞けよ!?………って戦争!?」
「そうなの!戦争!」
晴天の霹靂とはこのことか。
平和な南部とは違い北側は戦争をしていたなんて。
しかも魔族と…
何度か野良の魔族と戦ったが基本的に俺を虫を見るような目で見てから、すぐ殺そうとしてくるような頭のヤベェやつしかいなかった記憶しかない。
「あれ?でも魔族って群れないよな?」
「そうなの!そこが重要なの!」
魔族は群れない。
人類がここまで繁栄できたのは人類の天敵である魔族が基本的には群れないから。
これが人類の常識だ。
「魔王が魔族を束ねてるんだって」
「へぇ〜そんなことが………って魔王!?」
本日2度目の晴天の霹靂。
聞き流そうとしていた俺の脳は雷に撃たれたかのような衝撃を受けた。
ピピーンってやつだ。
俺の灰色の脳細胞がどんどん活性化してきている。
つまり…ついに来たってわけだ…!
分かるぞ…俺には分かる…
これだ!!!これこそが俺に足りなかった転生者要素!
ストーリーの始まりにして俺という勇者の物語の幕開け…!!
俺の頭の中で勇者になるためのシミュレートがされていく。
まず勇者といったらなんといってもインパクトだよな。
影の薄い勇者なんていない。
物語の主役を張るような男には華がないと。
よし!キャラ付けしよう。
忘れたくても忘れられないようなそんなキャラになろう。
真っ赤なマントに、紳士口調なんてどうだろう。
「それでね!今人類が大変「聞けィ!!!我が妹よ!!!!!」
青い空。白い雲。繁る畑。
苦節20年。畑を耕し続けた俺の肉体がついに日の目を浴びる時がきた。
ここが俺の物語の出発点。
《オリジン》ってやつか…
「吾輩がーーー魔王を倒す」
何かを話そうとした妹に高らかに宣言する。
「お兄ちゃん…何その喋り方…」
急に変わった俺の口調に妹はドン引きだ。
「歴史に名を残すのだ、多少はインパクトのある喋り方にしなければ」
心なしかキリッとした顔を作る。
このだらしないヒゲと髪もどうにかしなければ。
「それから妹よ、これから吾輩のことは、"勇者"と呼べ」
「お兄ちゃん、普通に喋ろうよ」
俺は結構形から入るタイプなのだ。
「妹よ、人類を救いに…いや、まずは髪とヒゲを整えに行くぞ!!!」
なにはともあれ時は来た!我が世の春!
人生のハイライトを作りに行くぞ!!!
side:カッツェ
そこにいるのかいないのか、気が付いたらどこかに行ってしまいそうな。
そんなお兄ちゃんだった。
8人兄弟の3番目のお兄ちゃん。
朝から晩まで働いて、1人で何十人分の仕事をこなしちゃうすごい人。
けど、みんなの話題に上がらないし、当人も普段から何を考えているのか分からない。
村のみんなから好かれているはずなのに、ほとんどの人は話したこともない。
話してみれば面白いし、普通のお兄ちゃんなのに、なぜか記憶に残りづらい。
そんな不思議な人だった。
それを本人は分かっていたのかな?
私が旅人から聞いた魔王の話をした日。
お兄ちゃんが勇者になると決めた日からあの人は変わった。
カッチリとした髪型とチョビ髭。
口調もちょっと変になった。
あの後村に帰ったお兄ちゃんはすぐに村の人たちの前で自分が勇者になると宣言をした。
「吾輩は勇者になる!!!」
ってね。
私はちょっといきなり過ぎてついていけてなかったし。
当然村の人たちもびっくりしてた。
でもお兄ちゃんの人望は想像以上に厚かったみたい。
カッチリした見た目と変な口調でようやくお兄ちゃんと話せるようになった村の人たちは喜んでお兄ちゃんに協力した。
村中で村長の三男が勇者になるって話はあっという間に噂になって。
いつも裁縫してくれるおばさん達や、鍛冶屋や商人のおじちゃん達もみんなで協力して勇者道具一式を揃えて。
お父さんは村長権限でお祭りを開いた。
みんなでお兄ちゃんをお祝いして送り出す。
天気のいい朝。
「お兄ちゃん、もう行くんだね」
「あぁ我が妹よ。心配しなくてもいい。吾輩は必ず魔王を倒す」
あの日畑で話した時とは見違えるほど綺麗な身なりをしたお兄ちゃん。
本人曰く真っ赤なマントがトレードマークらしい。
「村の人たちは疑問に思ってなかったけど、その喋り方やっぱり変」
「何てことを言う、紳士的な口調だ」
「ねぇ、もう前みたいに話してくれないの?
ボサボサで陰の薄いお兄ちゃんも私は好きだったよ」
お兄ちゃんは少しだけ悲しげに笑った後、ピカピカの剣を抜いて頭上に掲げて私に笑いかけてくれた。
「約束しよう!」
「魔王を倒し、吾輩が帰ってきたあかつきには、そなたの"お兄ちゃん"に戻ると!!!」
そう言ってお兄ちゃんは旅立った。
風の噂では『南の勇者は未来が見える』なんて言われてるみたいだけど。
あんな行き当たりばったりで勇者になったお兄ちゃんに未来なんて見えるわけないよね。
side:一般兵
耐えろッ!!!
お互いがお互いを守り、隊列を乱さぬように亀のように耐える。
魔族の身体は鉄のように固く我々の剣で斬りかかろうとも傷一つ付かない。
人類と魔族の戦争の最前線は既に中央に食い込んでいる。
この戦線が落とされればまた一歩人類は滅亡に近づく。
ここを落とされるわけにはいかない。
命に変えてもここを守り抜く。
「グッ…!耐えろッ!
後ろの魔法使い達が強力な魔法を打ち込んでくれるまでの辛抱だ…!」
自身を鼓舞するように、味方に指示を飛ばす。
何人、何十人もの仲間がやられ、俺たちが必死になって稼いだ時間。
魔族達を俺たちが惹きつけている間に後衛の魔法使いが高火力の魔法で魔族を殺す。
魔族達が俺たちを舐めてるうちに不意打ちで殺せるはず。
そのはずだった。
「あら、それってこの人達のこと?」
後ろを向く。
そこには魔族の女が味方の首を持って空に浮いていた。
女が持っていたそれは俺たちが今の今まで頼みの綱にしていた魔法使いの首だった。
「おぉもう終わったのか」
「ふふふっ…人間ってほんとバカで弱いわよね、あれで魔法使いなんて笑っちゃうわよ」
楽しそうな声で笑うその顔は、俺たちの絶望した表情を心底楽しんでるようだった。
「た、助けッ…!」
心の折れた味方の一人が隊列を崩して逃げようとしたところに魔族の剛腕が振り下ろされる。
「一人も逃すわけないであろう?」
恐怖で膝が震える。
勝つ算段が見えない。
人類と魔族の圧倒的な差を見せつけられる。
たった十数人の魔族に数百人が束になっても勝てない。
「もうダメだ…」
誰の声だったかは分からないが、それはその場にいた皆の心の声だった。
「あら、最後まで楽しませてちょうだいよ?ここからが楽しいんだから」
これから起こる虐殺に誰もが抗う気力がなくなったその時。
「ーーーーー吾輩が来たァ!!!」
後に魔族の戦線のほとんどを壊滅させる"南の勇者"
人類の希望が、空から降ってきた。
(スタイリッシュ魅せプしなきゃ…!)