未来の見えない南の勇者   作:リビングアーマー

10 / 12
記念すべき10話ですね。
なんとなくで始めましたが今はこの小説を読んでくれている皆様のために完結まで走り切ります。

ノリでメチャクチャに書くので頑張るのは未来の作者ですね。おやすみ。


応援する南の勇者

 

side南の勇者

 

「もう立てないのか」

 

———これはいつかの模擬戦で俺がゼーリエ師匠にボコボコにされている時。

 

「それにしてもお前の身体はどうなってるんだ。最初は効いていた“英雄殺し”の呪いも、“百蛇の剣”の毒も、“神喰らい”による神聖特攻も……今ではそのほとんどが効かなくなった」

 

「なぁ、一体お前の身体はどうなってるんだ?」

 

そう言うゼーリエ師匠はやはり酷く楽しそうである。

 

「そう言えば、最近お前から取ったサンプルを調べていたら、また一つ面白いことが分かってな」

 

ゼーリエ師匠が指をひと振りすると、空間がゆがみ、そこから試験管のような細長いガラス器具を取り出した。

管の中には、淡く光る粒子が蠢いている。

それはまるで意志を持つように、ゆらゆらと不規則に漂っていた。

 

「お前、魔力が残っているぞ」

 

探究者としての性なのか嬉しそうに俺に報告するゼーリエ師匠。

 

「いや、正確には魔力になる前の"残穢"と言った方がいいか」

 

「"成り損ない"の魔力がお前にもあったわけだ。良かったな。お前はギリギリ人間だったらしい」

 

「はぁ…」

 

———あの、ゼーリエ師匠。そんな小難しい話は後にして、この中途半端な吊るされ方をどうにかしてくれませんか。

 

俺は心の中でツッコミを入れるだけで、もちろん声には出さない。

 

声に出せば最後『何をそんな甘いことを言ってる。お前にはいっそのこと全ての"呪い"に耐性を付けてもらう予定なのに』などと言い出しかねないのがこの人だからだ。 

 

俺もこの時ばかりはこの修行が穏便に終わることを神に祈るしかなかった。

 

「お前にはいっそのこと全ての"呪い"に耐性を付けてもらうか」

 

どうやらとっくに神は死んでいたらしい。

 

 

 

 

side絶剣のファウスト

 

「早ェ…!」

 

南の勇者が狂戦士のようにがむしゃらに突っ込んでくる。

 

その顔は激情に染まっており、もはや正常な判断が出来ているのか定かではない。

しかしそれでも全身は無駄なくファウストを殺さんと動き続けている。

 

理性が飛んでいるのか、それとも——この暴走すら計算の内なのか。

 

その真意は読み取れない。ただ一つ確かなのは、その速度が以前よりも格段に増しているということだ。

 

「楽しくなってきたじゃねぇか!」

 

南の勇者の攻撃により発生した鋼鉄を軋ませるような突風の中、ファウストは身をひねり、かすめる刃を紙一重でかわす。

同時に反撃の剣閃を放つ。———いや、放ち続ける。

 

数十、数百と連なる斬撃の嵐が南の勇者を切り刻まんと殺到する。

 

だが。

 

刃がかすり、血しぶきが舞っても、それは肌の表面を掠める傷にしかならない。

致命傷どころか深手すら負わせることができない。

 

しかしファウストはそれも計算の内で攻撃を放っていた——はずだった。

 

「まさか“呪い”も”毒”もなにも効かねぇとはなァ!」

 

ファウストの指先が宙に踊るたび、手に持つ魔剣が一本、また一本と入れ替わる。

呪詛を刻んだ黒剣、浸食する毒刃、精神を抉る魔刃。

そのどれもが、まるで岩を前にした風のように効果をなさない。

 

まさに怪物。まさに英雄。

 

常識を覆す存在。

 

「じゃあ今度は力比べといこうかッ!」

 

ファウストが次に取り出したのは赤く煌く三節棍。

 

名を『游雲』

 

その赤は破壊の衝動が結晶となったような、業火の赤。

握った瞬間、空気が震えた。

 

———力が、流れ込んでくる。

 

使用者の力に応えて攻撃力を何倍にも押し上げる破壊の神器。

ファウストほどの男が使えばただ振るうだけで地が裂ける。

 

———振り下ろした一撃が南の勇者の武器とぶつかり合い、金属の悲鳴と共に轟音が大地を揺らす。

 

爆風。飛び散る地面。舞い上がる砂塵。

衝突の度に周囲の地形は瞬く間に変わり果て、まるで戦場そのものが二人の力に耐えられていないかのようだ。

 

「フハハハハッ!!!楽しいなァ!南の勇者ァ!」

 

牙をむくように笑いながら、ファウストは戦闘によって起きた暴風の中で叫ぶ。

 

僅かな隙を見て南の勇者に游雲を叩き込む。

 

確かな手応え。骨を砕くような重さ。

 

だが——

 

南の勇者は倒れない。

骨が折れても、肉が裂けても、顔色一つ変えずに反撃してくる。

 

その姿はまるで死をも恐れぬ鬼神。

剣戟の火花が2人の戦いを彩る。

 

———永遠に続くかと思われた戦いは、しかし唐突に終わりを告げることとなる。

 

 

両者が同時にその場から跳び退く。

 

直後、彼らがいた地面からマグマが噴き上がる。

火柱が空に届き、大気が焦げる匂いが立ち込める。

 

「ねぇ、ファウスト。何やってるの?」

 

その声は、どこか夢の中のように柔らかい。

 

現れたのは、白い魔族の少女だった。

 

雪のように淡い髪、透き通る肌。

そして、まるで現実の隙間から零れ落ちたような、白く儚い存在感。

 

「なんだよ、今いいところなんだから、邪魔すんじゃねぇよ」

 

"白い魔族"——ヴェトラは、ファウストの言葉を無表情のまま聞き流し、淡々と言葉を継いだ。

 

「でも、シュラハトから伝言。『味見はもう十分だろ』って」

 

「ねぇ!私は無理やり連れてこられただけだからね! ファウスト! 私の魔法が効かなかったんだから、もうここにいる意味ないでしょ!」

 

空を滑るように飛びながら、ふくれっ面で大声を出すアウラ。

 

ファウストの表情に陰りが差す。

 

子供じみた、実際ファウストからすれば随分と歳下な2人の言葉に、戦いの熱が冷めていくのを感じる。

 

「はぁ……萎えちまったぜ」

 

ファウストは”游雲”を肩に担ぎ、静かに宙へと浮かび上がった。

 

しかしそれを黙って逃す南の勇者ではない。

逃げる獲物を追うように地を蹴りファウストに追撃を仕掛けようとする。

 

その瞬間、大地が呻くようにうねり出した。

 

地割れと共に、裂けた土から飛び出してきたのは——

巨大な木の根。

 

それは生き物のようにうねり、鞭のごとく南の勇者へ襲いかかる。

 

だが、南の勇者は軽々とそれを躱わし進み続ける。

 

「来ないで」

 

ヴェトラが無表情のまま、ぽつりと呟いた。

 

直後、地面が爆ぜ、炎が咆哮する。

南の勇者を包み込む、紅蓮の業火。

 

……が、それすらも通じない。

 

炎の海を突き破り、勇者は姿を現す。

 

「……すごい」

 

ヴェトラが小さく呟く。

その声には、驚愕と、わずかな賞賛が滲んでいた。

 

次の瞬間、彼女が手を掲げる。

空間が歪む。空気が震える。

 

———水が溢れ出す。

 

落ちてくるのではない。

圧倒的な質量を持った水の柱が、天から真っ直ぐ降り注ぎ、大地を貫く勢いで南の勇者へと襲いかかる。

 

だが、勇者は一歩も退かない。

 

抜いた剣を振るい——その魔法を、斬った。

 

轟音と共に水柱は真っ二つに裂かれ、道が開ける。

できた水の峡谷を、南の勇者が駆け抜ける。

 

———跳躍

 

南の勇者の剣が、空中のファウストへ、ついに届いた。

 

「じゃあな、今度は——殺すぜ」

 

空中で鍔迫り合う二人。

 

ファウストは口の端を吊り上げ、笑った。

 

そして、渾身の蹴りを叩き込む。

 

まるで隕石のように地上に衝突する南の勇者。その視線の先には、去っていく魔族たちの後ろ姿を見ることしか出来なかった。

 

 

side南の勇者

 

待ってくれアウラちゃん……! その子との関係、どういうこと!?

フリーレンとはどうなっちゃったの!?

でも、大丈夫。俺は誰とくっついても、アウラちゃんを応援するから!

……でも、ファウスト。

テメェはダメだ。

また女の子に挟まれやがって……絶対に許さねェ!!!

 

落下していく最中、俺の頭の中はいろんなことでいっぱいだった。

ただ一つ言えることはアウラちゃんにまた会いたい。あとファウストは必ず倒す。それだけだった。

 

 

「皆の者、すまない」

 

フリーレン達と合流した俺は第一に謝罪の言葉が出る。

 

———俺、ファウストを倒せなかったよ…!

 

考えてみれば魔族を逃すなんて初めてだ。

 

俺が後悔の念に駆られているとハイターが声をかけてくる。

 

「いえ、何を言いますか。貴方のおかげで私たちは助かったのです。傷付いた貴方にも女神様の魔法をかけましょう」

 

そう言うハイターは俺の元に来て女神様の魔法で傷を治そうとする。

 

ハイターが膝をつき、そっと俺の体に手を当てる。

光がゆるやかに広がり、肌の上を這っていくように感じた。

 

———随分と血塗れになっちゃったな

元々服が赤いからそこまで目立ってはいないけどどこまでが血で、どこまでが服の色なのかわかんないや

 

すると、ハイターがふと目を見開いた。

 

「……傷が、塞がってる?」

 

驚愕と、その奥に宿る微かな疑念。

ハイターの目が、俺の体を見て、ありえないものを見たかのように揺れていた。

 

 

———そりゃ塞がるだろ、女神様の魔法なんだから。

 

 

俺はハイターがついにゲシュタルト崩壊を起こしたのかと心配になってしまった。

 

 

side 三人称

 

魔王城の一角。漆黒の石で築かれた部屋には、異様な雰囲気が漂っていた。

 

最初に口を開いたのは、黒髪の魔族——

 

"絶剣のファウスト"

「――で、なんで俺を呼び戻した?」

 

筋肉質なその身体には、異形の魔物が絡みついている。

それに応じたのは、フードで顔を隠した魔族だった。

 

"全知のシュラハト"

「千年後の魔族のためだ」

 

フードの奥から覗く片目が、静かに、冷たく光る。

声には抑揚が乏しいが、その言葉には理屈を超えた"確信"が宿っていた。

それは、未来を見通す者だけが持つ断言だった。

 

紫髪の女魔族が、苛立ちを隠さず声を上げる。

 

"断頭台のアウラ"

「勝手に連れて行かれたこっちの身にもなりなさいよ!」

 

ファウストによって拉致同然に戦場に引き摺り出されたアウラの愚痴が部屋に響く。

 

黄金の杯を弄びながら1人の魔族が呟く。

 

"黄金卿のマハト"

「魔族が一人死んだところで、俺たちに人間のような哀しみは芽生えまい」

 

人形のように整った顔立ちに、感情の色はない。

ただ淡々と、魔族という種の本質を口にする。

 

一方、沈黙を貫く魔族もいる。

 

"不死なるベーゼ"

「………」

 

巨大な仮面がその表情と感情を覆い、声を発することすらない。

 

"奇跡のグラオザーム"

「まぁ、生きているんですから、いいじゃないですか」

 

肩をすくめて微笑む青年のような魔族。その笑みは穏やかでありながら、どこか底知れぬものを感じさせる。

 

"天嶺のヴェトラ"

「わたし、えらい」

 

見た目は幼い少女のよう。

肌も髪も雪のように白く、眩しいほどの透明感を放つ。

その無垢な声が、かえってこの場の異質さを際立たせていた。

 

"幽胎のベスティア"

「私のベイビー、役に立ったかしらぁ?」

 

床に届くほどの長い銀髪が、妖艶に揺れる。

目を布で覆い、黒い服に身を包んだ貴婦人。

艶やかな笑みの奥に潜む底知れぬ狡猾さを、誰もがよく知っていた。

 

——七崩賢。

そのすべてが、いまここに揃った。

 

「私が連れ戻さなければ、お前は確実に死んでいた。未来が見えるというのは———そういうことだ」

 

"全知のシュラハト"が、"絶剣のファウスト"に断言する。

 

「そんなもんか?お前が俺を呼び戻す未来が見えてたのかも知れねぇだろ」

 

納得のいかない様子のファウストはそう言い返す。

 

「………ふっ、そうだな。だが私のやることは変わらない」

 

シュラハトはわずかに笑う。しかし言葉とは裏腹にその瞳は氷のように冷たい。

 

「計画は全て順調だ」

 

「南の勇者には"最低の未来"と"最悪の未来"、どちらかを選んでもらおう」

 

 

———南の勇者がどちらを選んだとしても、待っているのは終わりに等しい結末。

 

———しかし確実に、着実に。その時は近づいていた。

 




主人公に微再生力付与。物語的に使うところはないです。
若干耐久が上がった程度に考えてください。


オリジナル七崩賢

"天嶺のヴェトラ"
白い幼女。可愛い。
能力:花御と漏瑚と陀艮を足して3で割らない感じ

"幽胎のベスティア"
黒服銀髪の目隠し貴婦人。美しい。
能力:???

オリジナルだけど嫌いにならないで…!
容姿は完全に性癖に従いました。

これで全ての七崩賢が出揃いましたね(白目)
あとは野となれ山となれ。
走りきりたい。

南の勇者の魂が今どうなってるかはいつか説明した方がいいかな…?と思ったり思わなかったり。

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