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side:フリーレン
「其方がこの森にいる長く生きたエルフか」
ある日平穏に過ごしていたフリーレンの元に、不思議な男がやってきた。
カッチリとした髪に変なチョビ髭、真っ赤なマントが特徴の全く魔力を感じさせない人間。
「すごいね、君。魔力がまるで感じられない」
「はて、なぜだろうな」
フリーレンは初め、自分と同じで常日頃から魔力制御をしているのかと思った。
自身の予想が当たっていればこの男は魔法使いということになるが、男の顔を見るにどうやらそうではないようだ。
「吾輩は南の勇者。君を探していた」
フリーレンの疑問は続く男の発言に掻き消される。
「私を?どうして?」
フリーレンは疑問に思う。
自身がこの森に住んでから随分経つ、たまに近くの町に行くが自分を探していたとは何事だろうか。
「吾輩にとって、君に会うことが必要なことなのだ」
しかし、男は自身に会うことが目的だという。
その時フリーレンはふとこの男の名に聞き覚えがあることを思い出した。
ーーーなるほど、これが巷で噂の"南の勇者"か
数ヶ月前町に行った時にちょうど聞いたことがあった。
曰く、特徴的な容姿をしているがその姿はどこか浮世離れしており、今にも消えてなくなりそうである。
曰く、その剣は全ての魔を滅ぼし、魔王の首を落とすその時まで止まらない。
曰く、人類の希望。
曰く、魔族の絶望。
あまりにも誇張された噂の数々だったが、人が作る英雄譚とはこんなものだと思いその時は聞き流していた。
そこでフリーレンはもう一つ、まことしやかに囁かれている南の勇者にまつわる噂を思い出した。
"南の勇者は未来が見える"
という現実味のない噂だ。
「それは未来が見えたから?」
自身に会いに来たのは噂と何か関係があるのだろうか。
普通なら未来が見えるなんていう噂話を信じることはない。
しかしフリーレンはこの男はどこか普通とは違うと感じた。
だからひょっとしたら?と思いフリーレンは尋ねたのだ。
「そうだ、未来が見えたからだ」
そんな現実離れしたことを、さも当然であるかのように男は力強く肯定した。
「ふーん、やっぱりそうなんだ」
聞いておいてなんだが半信半疑だ。
しかし本人は至って真面目な顔をしている。
ーーーまぁどうだっていい
たった数十年しか生きない人間が嘘をついたところで自分には関係ない。
「それで?私に会うだけならもう目的は達成できたと思うけど」
「いや、まだ目的は達していない」
こんな風に人と関わることに意味を見出せないフリーレンはさっさと用事を済ませてほしかった。
「しかしその前に其方の名前を教えてくれないか?」
「私はフリーレン。この森で長く生きただけのエルフだよ」
「フリーレン。良い名前だ」
「そう、ありがとう」
しみじみとした顔で名前を褒める男にフリーレンは返事を返す。
「ではフリーレン。其方に1つ頼みがある」
「頼み?」
「そうだ、吾輩の心からの頼みだ」
「フリーレン、吾輩と一緒に来てはくれないか?」
なるほど、かの有名な人類の希望がどうしてこんなところにいるのかと思っていたが、どうやら南の勇者はパーティメンバーを探しているようだ。
ーーー魔族と戦って後衛が欲しくなった?
それならば納得できる。
「無理だよ」
しかしそれは自分では無い。
「………理由を聞いてもいいかな?」
「だって私は普通の女の子だから」
"目立たず生きろ"
自身の師匠から言われた言葉だ。
その言葉を理由にするなら、この男は些か目立ち過ぎている。
ーーーそれに
フリーレンは自身の体外に流れ出す魔力を見る。
不自然な揺らぎなどなく。
相当の実力者でなければフリーレンの魔力量を見誤るはずだ。
実際には魔力を制限した状態が自然になるほど長い間、魔力を制限しているだけだが。
さて。南の勇者は私が普通の女の子だからと言って誘いを断ったらどう答えるんだろう。
フリーレンはこの不思議な男を試してみたくなった。
「そうか」
反応なし。まさか本当に私の言葉を信じたのだろうか?
「やけにあっさり諦めるんだね」
「吾輩は其方を説得する言葉を持っていないからな」
まるで全てを見透かしたかのような口ぶりにフリーレンは
ーーーそれはやっぱり未来が見えているから?
と、そんなことを言いかける。
しかし口をついて出そうになった言葉は、男の顔に浮かぶ言葉では言い表せないほどの悲哀の表情を見て押さえ込んだ。
男の顔は、未来が見えているからこそ常人には理解できない苦悩があることを如実にフリーレンに伝えていた。
暫しの沈黙の後、男は口を開いた。
「ではフリーレン。其方は他にエルフを知らないだろうか?」
「うーん」
少し悪いことをしたかな。
そんな気持ちもありフリーレンは少しだけ男に協力することにした。
「………難しいね。私もこの森から長い間出てないし。
そもそも、昔でさえエルフは少なかったから」
頭に浮かぶエルフは何人かいたが、皆どこにいるのか、生きているのかすら分からない。
ーーー魔王を倒すパーティを探しているんだから、出来るだけ強い、確実に生きているエルフの魔法使いとなると…
………あ。
「1人だけ…いる。ただ君の条件に合わないかもしれない」
彼女はきっとまだ自分が魔王を倒すことを想像できない。
魔法はイメージの世界だ。
自らの手で平和な時代を作ることがイメージできない彼女に魔王は倒せない。
「おぉ、本当か!ちなみにどんな人なんだ?」
しかし、明るくなった南の勇者の顔を見てフリーレンはその事実を伝えないことにした。
「彼女は私が知る限り最も強い魔法使いだよ」
「神代から生きる全知全能の女神様に最も近い存在とも呼ばれてる」
「名前はーーー」
「フリーレン、感謝する」
暫しの会話を終えた南の勇者は早速彼女に会いに行くようだ。
「うん、頑張ってね」
「あぁ、其方にも近いうちに良い男が現れるだろう」
「それはーーー」
"そういう未来?"
口を噤む。しかし男には伝わったのだろう。
「勇者の勘だ」
「………そっか、ありがとう。期待しておく」
フリーレンは男の勘が当たるのを楽しみに待つことにした。
しかしそれは案外近くの未来なのかもしれない。
side:ゼーリエ
「おい、どうした」
いつものように魔法の研究をしていたゼーリエは、慌てた表情で入ってきた弟子に声をかける。
「いえ、それが………」
直後、ゼーリエは数百年ぶりに驚愕することになった。
「たのもう!吾輩は南の勇者!ここにゼーリエというエルフの魔法使いがいると聞いて参上した!」
「お前!何度言ったら分かるんだ、ここはゼーリエ様の神聖なーーー」
「待て」
ゼーリエがその言葉を制止する。
「お前………なんだ?」
ゼーリエはいつ何時、どんな時どんな状況であったとしても魔力感知を疎かにするような初歩的なミスはしない。
当然今も魔力感知をしている。
ーーーはずなのだが
「お前一体どうなってるんだ」
"感知できない"
全知全能に近いゼーリエが全くと言っていいほど男の魔力を感じ取れない。
魔力を隠しているわけでもなく、少ないわけでもない。
"魔力がない"
それ即ち、この男はここに存在していないことを示す。
なのに"存在している"
ゼーリエは笑った。
おそらく史上初であろう魔力を全く持ない男。
その来訪に。
side:南の勇者
フラれた。
これ以上ないほどにフラれた。
自分がまだ運命のヒロインと会っていないことを気付いてからはや一週間程。
俺は中央諸国のとある森に長く生きたエルフが住んでいるという噂を聞きつけ、早速足を運ぶことにした。
北側の戦線から離れたその森は雄大な自然が広がるとてものどかな場所、そこには噂通りエルフの女性がいた。
………おっふ。
言葉が出ない。それほどまでの可愛いさ。
女神様ありがとう。俺魔王を倒します。
俺はこの世界に生まれ落ちたことを感謝し、心の底から世界を平和にすることを誓った。
さて、第一印象は肝心だ。
彼女に会って早々俺のヒロインになってくれ、なんて直球なことは言えない。
だからそれとなく彼女に伝えてみたんだ。
ーーー吾輩にとって、君に会うことが必要なことなのだ。
自分が何をしにここに来たのかを端的に言葉に表したつもりだ。
昨今の厳しいコンプライアンスの穴を掻い潜った素晴らしく紳士的な言葉だったと自負している。
するとどうだろうか!フリーレンも俺の意図をしっかりと汲み取ってくれたような返答を返してきたではないか。
ーーーそれは未来が見えたから?
正直自分でも伝わるか怪しかったが彼女には伝わった。
そう確信に足る言葉だった。
だから俺もしっかりと答えたんだ。
ーーーそうだ、(ヒロインがいない)未来が見えたからだ
と。
正直に言おう、俺は舞い上がっていた。
「フリーレン。吾輩と一緒に来てくれないか?」
「無理だよ」
即答するフリーレンに少し驚く。
考えてくれるぐらいはするかと思ったからだ。
「………理由を聞いてもいいかな?」
だから当然、理由ぐらいは聞きたくなった。
するとフリーレンはまるで何かを見定めるような目で俺に言ってきた。
「だって私は普通の女の子だよ?」
ーーーだって私は普通の女の子だよ?
カチッと何かが頭の中で嵌る音がする。
………俺は自分の姿を改めて見直した。
カッチリとした髪。チョビ髭。赤マント。
そうだ、"普通の女の子"はこんな男のどこに魅力を感じるというのだろう?
彼女の目線の意味が分かった。
ーーーお前その格好なのにマジでそんなこと言ってるのか?
つまりはそういうことだ。
「そうか」
そうだよな。
「やけにあっさり諦めるんだね」
「吾輩は其方を説得する言葉を持っていないからな」
何を言ってもこの姿だ。
俺は影が薄い。
だからこそ奇抜な格好をしている。
この格好のおかげで沢山の人から認知されるようになった。
………いいんだ。これで。
後世にだってきっと語り継いでもらえる。
英雄譚にだってなりやすいはずだ。
例え女の子にモテなくても世界は救えるし、きっと勇者になれる。
………やっぱつれぇわ(涙声)
「………」
フリーレンはきっと俺の悲しみを察してくれたんだろう。
何かを言いかけたその言葉を飲み込んでくれた。
優しさが沁みる。
その後俺は同じ種族なら何か知っているかもしれないと思い、フリーレンに他のエルフの場所を聞いた。
すると彼女は悩んだ末に1人の魔法使いの名を出した。
話を聞くとどうやらその人はフリーレンが知る限り最も強い魔法使いで神代から生きているそうだ。
"俺のヒロインになってくれそうな子"という条件には合致しなさそうだと言われたが、そんなのは会ってみなければ分からない。
もしかしたら神代では俺のような男がモテたかもしれないしな。
ので俺は早速会いに行くことにしたのだった。
「フリーレン、感謝する」
「うん、頑張ってね」
「あぁ、其方にも近いうちに良い男が現れるだろう」
多分。きっと。勘だけど。こんなに可愛いんだから俺じゃない主人公の1人や2人来るだろう。
フリーレンにとっての主人公にはなれなかったが、俺は俺のヒロインを探しに行くだけだ。
目的は変わらない。
待っていろよ、俺のヒロイン…!!!
side:ゼーリエ
「それで?お前は一体何をしにここに来たんだ?」
ゼーリエは魔力を持たない男が魔道を探求するこの場に何をしに来たのか問う。
「当然」
「魔法を習いに来たのだ」
しかし男はよりにもよって魔法を習いに来たのだという。
「それは私の弟子になりに来たという認識で合っているか?」
「そうだ」
再度の確認にも男は肯定を返す。
ーーー話にならない
「無理だ、魔力のない者に使える魔法を私は知らない」
当然の話だが魔法は魔力が無いものには使えない。
おそらくこの男以外の誰もが程度はどうあれ魔法を使う資格ぐらいは持っている。
日々の鍛錬を怠らなければ極々小さな魔法は使えるだろう。
それこそ"銅像の錆を綺麗に取る魔法"や"甘い葡萄を酸っぱい葡萄に変える魔法"などの民間魔法が発展してきた由縁だ。
だがこの男にだけはその資格すら無い。
なぜなら魔力が無いから。
世界で最も魔法から離れた存在と言ってもいい
「しかし、あなたから学ぶことはあるはずだ」
その残酷な事実を突きつけてなお自分に教えを乞う男。
ゼーリエはふと考える。
ーーーそう言えば最近、魔族の戦線を破壊したという勇者が居たな。
ーーーそいつは確か"南の勇者"と呼ばれていたはずだ
ゼーリエは観察する。
ーーーこの男は私を全く恐れていない。それどころか強い好意すら感じる。
神代を生き、数多の経験を積んだエルフは自身の知識と経験、最後に長年の勘を交えて答えを出した。
「なるほど、つまりお前は私から魔法の対抗策を学びたいんだな」
「その通りだ」
まるでその答えを待っていたとばかりに首肯する男。
最初からそう言わなかったのには何かしらの意味があったのだろうか。
「なるほどな。それなら納得だ」
魔法ではなく"魔法への対抗策"を学びに来た。
それならば確かにゼーリエの元に来るのが最も適しているだろう。
納得したゼーリエは言葉を続ける。
「1つ条件付きでならその提案を飲んでやってもいい」
しかしタダでは教えられない。
数多の魔法使いが自分に師事を乞い、果ては命をかけてまで学ばせてほしいと懇願するのだ。
どこの馬の骨とも分からない男をおいそれと弟子には出来ない。
ーーーだからこの男にも命をかけてもらうおう
「有史以来お前のようなやつを私は初めて見た」
「血の一滴、髪の毛一本すら研究しがいがある」
「お前の一生を私に捧げるのなら考えてやっても良い」
寿命が続く限り肉体の全てを自分に明け渡せ。
骨の髄まで弄くり回され、魔道の糧になれ。
言外にそう言ったのだ。
常人ならまずこんな提案は飲まない。
「よろしくお願いする」
しかし、そんなことはお構いなく
即答で了承する
南の勇者(結婚…ってこと?)
今まで投稿していた話に謎の空白があったことを御指摘いただいたので修正しました。
本当にありがとうございます。