ただ気になるのは毎日のように更新をしている他作品…あれは何なんだ(戦慄)
side:南の勇者
ーーー死んじゃうヨォ!(ガチ)
「グボァ!?」
あれからどれくらい時間が経ったのだろう。
俺は現在もボロ雑巾も真っ青なぐらい分身にボコボコにされている。
実のところ何度か降参しようと声を上げたこともあった。しかし返ってきた分身ちゃんからの返事は追加の攻撃であった。
現実は非情である。
既に全身から垂れ流された血液によってマントだけではなく身に纏う衣類は真っ赤に染まってしまっている。
ズルリッ
先ほどの攻撃でめり込んだ身体が重力に従い壁から落ちる。
闘技場の壁は今まで俺が作ったクレーターで埋め尽くされ、所々に赤黒い血で紋様が刻まれている。
ーーー俺の血で闘技場に壁画が出来ちまうぜ
くだらないことを考える。
まだ頭の中は多少余裕があるとはいえ既に身体の方は限界を迎えていた。
ーーーゼーリエ師匠、最初の修行にしてはやけにハードじゃないですか?
このままいくと本当に逝ってしまう。
もっとゼーリエ師匠が手取り足取り教えてくれるタイプの修行に変えて欲しい。
というよりも修行と称したイチャイチャがしたい。
あんなことやこんなことまで隅々教えて欲しい。
俺の中に存在しない記憶の数々が蘇る。
しかし現状ゼーリエ師匠が止めにくる気配はない。
やはり現実は非情である。
何百度目かの"嫌な予感"
もうすぐ次の攻撃が来る。
既に避ける体力は残っていない。
例え体力が残っていたとしても避けることは出来ない。
この数日でそれを嫌というほど思い知らされた。
ガッ
ーーーあ、まずい
血を流した影響かついに意識が落ちはじめる。
ーーーそういえば俺の意識がなくなったら攻撃は止めてもらえるのかな?
ふとこのまま意識を失ったらどうなるかが頭を過ぎる。
ーーー止めてもらえなさそうだよなぁ
途中で気付いたが分身ちゃんはどうやら半オートで動いているようだ。
そこにゼーリエ師匠の意識は介在していない。
一定時間ごとに魔法を打ち出す機械のようなものだ。
そうなると俺の肉体はさらに壁にドリブルされ続ける訳で
………ミンチよりひでぇや!
まさか魔王にたどり着く前にヒロインにミンチにされるなんて誰が予想できただろうか。
ガッ
ーーーあぁダメだ、もう意識を保つのも限界だ
ガッ
徐々に意識が落ちていく。
ガッ
落ちる。
落ちる。
意識の深くまで落ちる。
底の底まで。
ーーーえ…?
気がつけば鏡の前に俺は立っていた。
ーーーここは…?
見渡す限りの白い空間にポツンと1人立っている。
鏡を見る。
そこには白い化け物がいた。
ーーーうわぁ!?
俺は咄嗟に飛び退く。
すると連動して飛び退く化け物。
距離を取って構える。
しかししばらくしても襲ってくる様子はない。
ーーーなんだ?
俺が奇妙に思い首を傾げれば同時に首を傾げる化け物。
もしやと思い手を上げる。
すると化け物も手を上げる。
ーーー………真似してる?
俺が動けば連動して動く鏡の中の化け物。
ーーー何がなにやら
全くもって理解できない状況に俺は困り果ててしまったが、今のところ化け物に実害はない。
ーーーなんか可愛いな。
なんとなく敵ではないと分かると不思議なことに化け物が可愛く見えてきた。
少しポージングしてみたり踊ってみたりすれば化け物も一緒にポージングしたり踊ったりしてくれる。
やはり可愛い。
ーーーふむふむ、よく見ると目から生えてる羽とかお尻に生えてる尻尾とか可愛い要素たっぷりじゃないか。
ガッ
ガッ
俺が化け物のチャーミングポイントを探していると、ふと化け物の頭の上の輪が回転しようとしていることに気付いた。
しかし輪には何かが絡まって上手く回れていない。
よくよく見ればそれは銀色の太い鎖であった。
ガッ
ガッ
ーーー邪魔そうだなぁ
なんだか不自由そうに見えるがどうやら化け物は自分で取るつもりはないらしい。
ガッ
ガッ
未だ回りたそうに輪は動き続けている。
ーーーよし、取ってやるか
少しだけ化け物に対し愛着が湧いてきていた俺は、邪魔そうな鎖を取ってあげることにした。
ーーーいいぞーその調子
俺が手を頭の方に動かせば、それと一緒に化け物も手を頭に近づける。
俺は慎重に化け物の両指を操り、化け物の指を頭の鎖へと誘導する。
鏡写しになっているため少々苦労したが少しして化け物を指を鎖に引っ掛けることに成功する。
準備が整ったと思った俺は躊躇なく指を引き抜いた。
ーーーよし!いくぞ!
パキッ
化け物の力により簡単に引きちぎれる鎖。
鎖による邪魔が無くなった輪は回転を始め。
ガコンッ
ついに天輪は回り出した。
「………ッ」
身体の痛みで覚醒する。
意識が飛んでいた。あれからどれくらい時間が経ったのだろうか。
随分と長い夢を見ていたような気がする。
しかし覚醒したばかりの頭は不思議なことに随分とスッキリしている。
まるで憑き物が落ちたかのようだ。
"嫌な予感"
身体が警報を鳴らしている。
ガコンッ
ーーー瞬間気付く。この状況への打開策。
「フハハハッ………!」
笑いを堪えきれない。
「どうして今まで気付かなかったのか」
はたから見れば死を前にして笑う俺は気が狂っているように見えるだろう。
いや、実際に狂ってるのかもしれない。
剣を支えに最後の力を振り絞って立ち上がる。
「そうか、当たり前のことであった」
気力で剣を握りこむ。
「回避不可能な攻撃なのであれば」
「"回避しなければいい"」
ガコンッ
「ずっとヒントはあった」
思えば身体はずっと俺に教えてくれていた。
俺の身体が感じ取っていた"嫌な予感"の正体。
ずっと第六感だと思っていたもの。
「これが"魔力"か」
分身から放たれる魔法。
それを今回ははっきりと"認識する"
ガコンッ
「本来吾輩が感じ取れないはずの魔力を、吾輩の感覚は捉えていた」
そう、俺の鋭すぎるほどの感覚は"見えないもの"すら感じ取っていた。
それをある種の警報として、身体は俺に伝えていたことを漸く"理解する"
今までどうして理解できなかったのか不思議なほど今はこの身体のことがよく分かる。
ーーーそして感じ取れるのなら"斬れる"
ガコンッ
感覚的にそれが出来ると分かる。
認識を書き換える。
そこにあることが感じ取れるのだから。
存在していることが分かっているのだから。
"当然斬れる"
ガコンッ
目で見るな、耳で聞くな。
そんなことをしなくても俺の身体は魔力を捉えている。
意識を研ぎ澄ませ。
感じ取れるまま身体に委ねろ。
ガコンッ
ーーー常識に捉われるな
頭を作り変えろ。
ガコンッ
ーーー自身が生み出す斬撃を
ガコンッ
"解釈し直せ"
目前に迫る魔法。しかし恐怖はない。
「イメージしろ、自由に」
「限界を超えた未来の自分を」
ガコンッ
「吾輩の剣は」
ガッコン
「魔法を"断つ"」
side:ゼーリエ
「そして吾輩はついにこの修行の意味を見つけたわけです」
「あぁ…そうか…」
ーーー頭が痛い
ボロボロの状態だった南の勇者を回復させ、説明を聞いたゼーリエは意味が分からなかった。
己の分身と戦わせたことでまさかこんなことになるとは。
「"しかし吾輩もこの修行には流石に死を覚悟しました"」
「………」
しかしゼーリエも自身が数日間すっかり忘れてたとは言い出しづらい。
「"死の淵で編み出した技が無ければ吾輩とて確実に死んでいたでしょう"」
戦い終わった後の南の勇者の状態を知っているからこそ、この言葉が比喩ではないことは分かっている。
一歩間違えればというよりも何故死んでいないのか分からないような状態であった。
「あぁそうだ。よく気付いたな」
のでゼーリエはこの勘違いを正さないでおくことにした。
「全てはゼーリエ師匠の掌の上でしたか」
やはりといった様子の南の勇者。
その顔には自らを高みに導いたゼーリエへの深い敬意が表れていた。
ーーーまぁ結果的には上手く行ったようだし別にいいだろう
永い時を生きたゼーリエは強かであった。
「経緯は分かった、まずはゆっくり休めと言いたいところだが」
説明を聞き終えたゼーリエは自身がここに来た目的を話す。
「まずはこれを見ろ」
ゼーリエは今の今まで後ろ手に抱えていた一本の剣を取り出す。
ーーーさて、どうなるかな
今から起きることが楽しみで仕方がない様子のゼーリエはニヤリと笑うのであった。
side:南の勇者
「それは…」
突然目の前に剣を突き出された俺は困惑していた。
「お前用に色々と武器を作ったのだがなかなか上手くいかなくてな」
しかし困惑する俺をよそに嬉々として話を進めるゼーリエ師匠。
「ふと随分と昔に助けてやったドワーフが礼としてこの剣を献上してきたことを思い出してな」
ニヤリと笑うゼーリエ師匠に俺は何か嫌な予感を覚える。
「そのようなものを吾輩にどうして」
既に剣を一本持っている俺はゼーリエ師匠かどうして俺にそんな貴重なものをくれるのかと疑問を口にする。
しかしゼーリエ師匠はなんでもないことのように言った。
「私は剣など使わないからな」
ーーーまぁ確かに分身ですらあの強さのゼーリエ師匠には剣はいらないか
俺は分身の強さを思い出し身震いする。
無限サンドバッグになった経験は未だ色濃く俺の記憶に焼きついている。
「神代のドワーフが打った名剣だぞ?ありがたく受け取れ」
軽くトラウマに怯える俺をよそにゼーリエ師匠は言葉を続けた。
「持ってきたドワーフたちによれば、その剣は"使用者の魂"を写し出すらしい」
俺はふとこの世界には"勇者の剣"があることを思い出した。
いつか抜きに行きたいと思っていたがこれはそれとは別口なのだろうか。
「まぁ、そういうことでしたらありがたく」
差し出された剣をしっかりと握る。
少ない装飾だが洗練されたデザイン。吸い込まれそうな美しい剣身。
なるほどこれが名剣と呼ばれるものかと頷く。
「………なんともないか?」
ゼーリエ師匠が下から覗き込んでくる。
可愛い。
「はい、なんとも」
しかし今のところ何の変化も見られない。
「そうか…」
がっがりするゼーリエ師匠にそういえば俺は師匠の実験動物のような立場だったことを思い出す。
悲しいね。
俺が少しだけ自らの立場に悲しみを覚えていると、剣に写る自身の姿に奇妙な違和感を覚え始める。
「………?」
俺はそれをよく見ようと目を凝らす。
飲み込まれそうなほど美しい剣身。
そこに写る像が少しずつ変化しているかのような錯覚を覚える。
俺の脳に浮かぶ知らない言葉。
ーーー布瑠部由良由良
「ふるべ………ゆらゆら?」
ーーー魔虚羅
「魔虚羅」
言葉が口から溢れ出す。
剣に写る像はいつの間にか"見たこともない"化け物に変化していた。
瞬間。剣が形を変えていく。
根本から先にかけて細くなり、細長い三角形のような剣身になる。
形の変化だけではない。
剣そのものから溢れんばかりの魔力を感じる。
「これは」
俺が絶句しているとゼーリエ師匠の嬉しそうな声が聞こえる。
「ほぅ………変わったな。つまりあのドワーフの話は本当だったわけだ」
声が弾んでいるゼーリエ師匠。
可愛い。
「良かったな」
そう声をかけてきたゼーリエ師匠に俺は咄嗟にこう思う。
ーーーいや良くない
だってなんか変な化け物見えたし、頭の中に直接知らない言葉が聞こえたし。
この剣は明らかに呪われている。
ーーーまぁでも可愛いからいいか
しかしそんなデメリットを補って余りあるヒロイン(ゼーリエ師匠)からの初めての贈り物という付加価値。
「大切にさせていただきます」
俺は言いたいことを沢山飲み込んでありがたく剣を受け取ることにした。
side:ゼーリエ
まさか本当に変化するとは。
自身が手に取った時は何も変化がなかった剣。
ーーーやはり魔法使いの私では"使用者"の対象にはならないのか
あるいはこの男が特殊なのか。
「おい、少し見せろ」
しかもなんだこの剣は、とんでもない魔力によってなんらかの魔法。いや、"呪い"が付与されている。
ゼーリエは剣をマジマジと見つめる。
「見たこともない魔法だ。しかし術の効果はおおよそ解読できる」
「"魔族を殺す魔法"」
「それがこの剣にかけられた魔法の効果だろう」
「おそらく魔族であれば掠っただけで消し飛ぶ」
ーーーどれほどの魔族への殺意があればこんな魔法が発現するというのか
「名をつけるなら」
「"対魔の剣"と言ったところか」
ーーーしかし見ていて飽きない
ゼーリエは思う。
出会ってからまだ数日しか経っていないが、ゼーリエの中での南の勇者の評価はここ数千年でもっとも面白い男という認識で既に固まっていた。
南の勇者は魔法が斬れるようになった!
南の勇者は対魔の剣を手に入れた!
主人公なんて強ければ強いだけエエデスカラネェ!
前回やり過ぎたかなと思ったので今回も大盛りにしておきました。
今後は原作にいない七崩賢でパワーバランスを保っていきます。
原作にいないってことはいくら盛ってもいいからね!
次回はゼーリエ師匠ちゃんとのイチャイチャ()です。
side作者
お待たせ、待った?(血涙)
ちょっと色々準備(前回ノリで追加した摩虚羅関連の知識、今後の展開、思いついた設定の整理)に時間かかっちゃった。
早めに来るって言ったのにごめんね…。
あんまりジロジロ見ないでよね!(処女作)
それより私‥可愛い?(そう言えば皆さんは「ここ好き」というハーメルンの機能をご存知でしょうか?皆さんがいつも文章をコピーする時に文を選択するようにハーメルン上でも文を選択すると「ここ好き」という文に対してのいいね機能があるんですよね。私は皆さんのそれを見るのも大好きなんです)
ど こ が 可 愛 い か 教 え て ?