なんと、お気に入りが45件つきました。ありがとうございます。
バーもちょっと赤色に染まって…とてもいい気分です。応援してくれる方、感謝です。
しかし今回ボリュームは少なめだと思われます。ごめんなさい。
リンバスの小説、すごい人が一人いてなんか辟易しちゃいますね…負けないように頑張ります。
〈…あれが幻想体ってやつ?〉
肩で息をする囚人達を見回して、床に散らばった怪物の残骸を見る。どんな種類の動物の特徴にも当てはまらないだろう。そんな化け物との戦闘が先程まで行われていたのだ。
「私…初めて見ました、あんなのは…」
「………初めて?」
ユーリが呟いた言葉に、先程まで後方で私たちの戦闘を観察していたホプキンスの眉が吊り上がる。
「じゃあお前みたいなのを引っ張り出して、わざわざ道案内させようとしてたのがバカみたいじゃないか?」
鋭い棘のある言葉をユーリに向かって吐き捨てるホプキンスの顔は失望と悪意に満ちている。…まあ、気持ちはわからないでもない。だが、ホプキンスも言い過ぎだろう。圧し黙るユーリに、思わぬ場所から援護射撃が飛んでくる。
「少なくとも…幻想体?じゃないれす。ユゥリさんが知らんでも無理ないすよ」
皆一様に意外そうな顔をしてフワンの方を見た。フワンは化け物の死骸のそばにしゃがみこみ、それを観察している。また腹を立てたのか、ホプキンスが今度は声を荒げて怒鳴る。
「旧L社にいる化け物が幻想体じゃなかったらなんだ!?根拠もないのに喋るなよ、俺らの苦労も知らないガキ…!」
「根拠ぐらいありやす。……外で見たことあるんれすよね。あんまりそうやって早とちりするもんではありゃせんよ、ほぷきんすクン…」
ぬうっと顔を上げ、彼はホプキンスに向かって言い放つ。思わぬジャブ二発目にホプキンスがたじろぐが、それを無視して、フワンはファウストの方へ近寄った。そんな彼の顔は真っ青だ。
「で、パウストさん…あの怪物の正式名称って、ありやす?」
「…………ふむ。ダンテ、それにフワン氏、こちらへ」
言われた通りに壁際に寄ると、ホプキンスたちには聞こえない声でファウストは話し始める。
「あの怪物は、概して“大罪”と呼ばれています。様々な形態が存在し、先程退けた形態のものは特に“暴食大罪”と呼ばれる大罪です」
「……………暴食、たい、ざい」
〈なるほど、幻想体ではないんだね〉
「はい。ユーリさんが存じ上げなかったのも、それが後から出没した存在だからです。大罪は特に黄金の枝付近に多く出没する傾向が…」
つらつらと解説してくれるファウスト。私はそれを真面目に聞いていたが…ふと、フワンの方を見やれば、先程よりもさらに蒼白な顔で、目を震わせながらファウストの言葉を聞いていて…不意に口を開いた。
「大罪…そんな…罪………なんて…………」
額を掌で拭いながら、真っ青な顔で何やらぶつぶつ呟き続ける。ファウストが一瞬だけ彼の方を見たが、それも無視して説明を続ける。説明が終わると、フワンはぼそりとファウストにお礼を言ってから踵を返した。
〈フワン?〉
「………ちょっと、失礼しやす」
ゆらり、とその場を離れたフワンは、よた、よた、と一歩ずつ私たちから離れていく。私は、なんだかその理由が察せられて制止しなかった。他の囚人も同様だろう、なにせ
「おっと、どこに行くつもりだ?怖くなったのか、そうだろ?」
勝ち誇るような笑みを浮かべたホプキンスだった。顔面が嘲りと敵意に満ちている。腕を広げ、フワンの行手を阻む。
「ぁの…ごめんなさぃ、どいてくれゃすか…?」
「どくもんか。生意気な啖呵切ったくせに、情けないじゃないか、ええ?」
先程の恨みと言わんばかりに吐き捨てたホプキンスの顔をまっすぐ見上げて………フワンはゆっくりと口を開いた。
「げぼぉおおっ……………」
びしゃびしゃびしゃびしゃ、と、酸っぱい香りのする液体がホプキンスのズボンを汚していく。あちゃー、って感じでロージャが額をぴしゃりと叩き、イサンはホプキンスを気の毒そうな目で見ている。とめどなく流れる胃酸の滝に、ホプキンスは自らの行動が誤りだったことに気がつき…
「うへあっ!………ぅごほん、えほんえほん…」
これ以上ズボンが汚れないように飛び退き、情けない声をごまかすような咳払いをするのであった。
ーーーーー
「こっ…こんなの、特異点レベルだよ!一体どんな翼が裏に…!?」
後悔を終えたホプキンスの声が響く。迫り来る大罪達との戦闘を終え、負傷した囚人達の蘇生・治療を行ったのだ。やはり巻き戻るように治っていくのはとても珍しいのか、ホプキンスが私の方を好奇の視線で………いや、なんだかあれは、少し、値踏みするような、皮算用というか…
「ダンテ、なんで頭を抑えてるの〜?」
〈な、なんでもないよ…はは…〉
「でも、確かにすごい技術ですよ。簡単に傷が治るなんて」
「…ラクですよね。注射とかしなくていいですし…でもなー、酔いが醒めるのがなあー…」
「それ、欠点なのか?」
シンクレアの言葉に応えた後、ヒースクリフの素直なツッコミを無視して、治療後の赤ら顔でなくなったフワンは懐から取り出したスキットルを垂直に傾ける。少年が酒をイッキするこの光景にもちょっと慣れた気がしてきた。
「ごっ、ごっ、ごっ…ぷひゃぁ。失礼しやした」
「…俺、あんな飲み方したらぶっ倒れる自信あるぞ」
「あ・の・た・み」
「…味わいたくて呑んでるんじゃない、酔いたい呑み方、ですか?」
「………いい通訳を手に入れた」
グレゴールが呟いた言葉に、煙草に火を付け直していた良秀が続く。それは解読困難な圧縮言語だったが…シンクレアはなぜかその内容を当ててしまったようだ。ほくそ笑む良秀に少し怯えている。
「あはは…確かにすごいよね。でも、お腹を貫かれたりしても死ねないって事でしょ?ちょっと怖いね〜」
ホプキンスの側で私たちを見ていたアヤも口を開く。彼女もフィクサー、そういう技術には興味があるようだったが…
「あ、でも、お腹ならいいのかな?数秒で死ねるらしいし…」
そう言って少しだけ先に歩き出したアヤは、何かに想いを馳せるように一歩踏み出し………
太く、鋭い何かが腹から飛び出した。…木の根のようなものが、アヤの腹を貫いたのだ。
「あ…」
「アヤさん!」
「え、へへ………言ったでしょ?」
ずる、とそれが引き抜かれ、ぽっかり空いた穴から血液をどはどばと垂れ流しながら…アヤはつぶやいた。
「わたしは…うんが、いいっ、て………」
血溜まりの中に水音を立てて倒れ伏すアヤに、囚人の何人かが駆け寄る。腹の傷や脈を確認し…
「……既に、息絶えぬ」
ゆっくりとそう報告したイサンが、アヤの腹を貫いた下手人の方を向く。通路の奥の方、大部屋に佇んでいたのは…化け物だった。
「一般的な攻撃姿勢は見られません。幻想体かと思われます」
ファウストが落ち着いた様子で私に伝える。…目の前のそれはがくがくと、まるできしむカラクリのように震えている。枯れた黒檀の木にドレスを着せ、林檎の頭を乗っけたような怪物がこちらを見ていた。
「、総員戦闘準備!」
〈それ私のセリフだよねウーティス?〉
「………はっ、申し訳ございません!」
昔の癖か何かが出たウーティスにやんわりと注意をし、私はPDAを操作する。
〈ふむ…じゃあ、ウーティスと…ドンキホーテ、良秀、イサン…フワンも〉
「拝命しました。人格はいかがなさいましょう」
〈実はね…シナジーのありそうな人格を揃えたんだ〉
人格牌を適用すると、戦闘メンバーの装いがガラリと変わる。紺色のシャツ、ズボンにジャケット…そして、お揃いのデザインのキャップを被っている。そして、皆一様に蒼く光る刀身を持つ武器を携帯していた。
「…W社の人格ですか」
ファウストが呟いた言葉と共に、ダンテは囚人達に向き直り…
〈総員、戦闘準備!〉
先程ウーティスに被せられた言葉を、今一度放つのであった。
ーーーーー
「っ、イサンは下がれ!ドンキホーテが代わる!」
「管理人や指示せぬ、ウーティスチーフ?」
〈いや、いい!私もそのつもりだ!〉
幻想体の攻撃と打ち合っていたイサンが下がり、次元の裂け目から飛び出してきたドンキホーテがそれに代わる。ウーティスはこの人格では彼らを纏めるチーフ役のようで、私に代わって指示を飛ばすことがあった。
「たぁあああっ!!」
W社の整理要員と呼ばれる職務に就く人々は、あのように“次元を裂く刃物”を所持しているようだ。それで空間に裂け目を作って攻撃を避けたり…ドンキホーテのように、ああやって幻想体をなます斬りにできるほど鋭利な刃物としても使えた。
「ちっ…枝が硬いでありまするな!」
しかし、それらすべては幻想体が身体の前に展開した枝に阻まれていた。怪物の出す枝らしく、現実離れした硬さを持ったそれが、武器あるいは防具として私たちに牙を剥く。
「近づかずは枝をいだすを止められねど、近づかむとすと枝に阻まる。さてもまあ難き仇ならむや」
イサンが床や天井からも襲う枝に対処しながらぼやく。良秀も次元を裂く刀で枝を切ってはいるようだが、次々と生えるのではキリがない。…瞬間火力が求められそうだ。どうするか…決めあぐねていた私のすぐ横から声がかかった。
「…………おれが行きましょう。考えがあります」
視線を下げると、そこにはフワンがいた。目の下に大きな隈を作って、眠たげな顔をして…口に咥えられた
「…フワン
「ウーティスチーフも協力してもらいます。……あいつはおれが斬るから」
長い息と共に煙を吐き出して、ウーティスにチーフ補佐と呼ばれたフワンが左手に握ったそれ…まるで巨大なアイススクープのような独特の形をした得物を構える。かちゃ、と手首を捻ると、次元を裂く雷光がそれに纏う。
〈わかった。じゃあ、総員はあの幻想体の気を引きつつフワンの行動を補佐!〉
「…わかりました管理人様。気に入らんが任せたぞフワン」
「仕事に気に入る気に入らないはない。ありがとうございます、管理人さん…ッ!」
人格を被る前とはまた違う、間延びしないぶっきらぼうな口調。フワンは私に礼を言うと、一息に踏み切り…走り出す!
「んー…ここと、ここだ」
迫り来る枝を、飛び上がった空中で身体を捻って避けたフワン。その流れで空間を抉り作り出した裂け目に流れるように身体を滑り込ませ、忽然と消える。先程までフワンのいた場所を何本もの枝が通過していくのと同時に別の場所に裂け目が現れ、そこから飛び出したフワンは猫ひねりを決めて着地し、紫煙と青い光の軌跡を残してまた駆ける。身体を震わせ、幻想体は枝をするりとフワンに伸ばしたが…
「イサン、ウーティスチーフ!」
「あいわかった」「…ッ!!」
独特の金属音と共に弾かれる。どこからともなくやってきたイサンとウーティスが枝を受け止めたのだ。イサンの次元短剣から繰り出される斬撃が枝を切り落としていき、ウーティスの次元切断によってフワンに“負荷”がかかる。大きく空いた枝の隙間に身体を捩じ込み、ガラ空きになった幻想体の身体へと迫る。が…相手もそこそこの危険度を持つ幻想体なのだろう。それに対応されないわけがない。
〈フワン、枝が!〉
「…………ああ」
自らの危機に反応したのだろう、今までのどの攻撃よりも素早く繰り出された枝は、フワンを一撃で貫通せしめるために、うねりを伴って心臓へと真っ直ぐに…!!!
「あぶなっ」
気の抜けた声と共に、ばちゅう、と、肉と骨が砕ける音が聞こえた。すわフワンがしくじったか、と思ってしまったが…それは違った。
「……
ぼそりと呟いた良秀の言葉通り…枝は心臓でなく、フワンの右腕を貫いていた。掌から入って膝から突き出るように、まっすぐに。アレは幻想体が狙ってやったのではなく…フワンが、自らの肉をもって軌道を乱暴に逸らしたのだ。
「全く…ダメになっちゃったじゃないか?」
異常な方法で攻撃を逸らしたのにも関わらず、まるで相手に責任を問うように。酷く落ち着いた声を上げ、左手に握った次元スクープをがちゃ、と捻り…持ち手に溜まっていた充電を解放する!
「次元…剔抉!」
一振りだ。たった一振りの、まるでアイスを掬い取るように振るわれたそれは…充電を消費したことにより、さらに威力が増していて。幻想体の胴体ごと、根本の部分を抉り取る!!
がたがたと震える幻想体の体勢が崩れた。枝が取り払われ、頭にくっついている林檎のような果実も無防備だ。次元スクープを握ったまま、人差し指を立ててそれを指差し、フワンは軽く言い放つ。
「じゃあみんな、あとはお願い」
〈よくやったフワン!総員、最大火力だ!〉
私の指示に合わせ、他の人員がフワンの背を追い越し、飛び出していく。攻撃を弾きながら貯めていた電力を一気に解放、崩れた幻想体に肉薄し…
「遍くを切り裂くこの刃を受けよ!」「次・魔・空・切…!」「…一息にて。」「空間を轢き潰す!!」
エネルギーの青や紫の軌跡を残し、空間すら裂く斬撃でバラバラにされていく幻想体。声にならない軋む音が悲鳴のようにも感じられる。そして、それは最後の一撃を喰らい…ぴたりと動きを止め、姿が萎み、縮み、丸い卵のような塊に変わってしまった。…どうやら、幻想体を鎮圧できたようだ。
「…戦闘終了です。お疲れ様でした、管理人」
〈な、なんとか勝てたみたい…!〉
待機人員だったファウストが状況を確認し、宣言した。つい気の抜けた声をあげてしまったが、意味が囚人達に伝わるだけで、それは時計の針の音に変換される。初めての幻想体戦は、なんとか勝利に終わったようだ。みな身体の何処かに傷はあるが、いずれも致命傷には至らない。…一人を除いては。
「フワンチィフ補佐、その怪我や大事や無き?」
幻想体の死体?卵?を見つめていたフワンが、イサンの声かけに気付いて振り返った。ベルトについたラッチに武器を懸架し、無事な左手で煙草を挟んでいる。一仕事終えた後の一服、というような雰囲気を感じさせる所作であった。…その右腕が、見るも無惨に捻じ曲がっていなければ。
「あ〜…管理人サンに時計を回してもらえばいいだろ?」
ぱちぱちぱち…と、煙草から音が聞こえた。ゆっくりと、さも何もないかのように、言葉と共に吐き出された紫煙が宙を漂っている。痛みに歪んでいてもいい彼の童顔は、ひどく冷たい空気を纏っていた。
「……………フワンチーフ補佐」
「なんだ、ウーティスチーフ?」
「その痛みは…管理人様も受けるのだぞ」
ウーティスが腕を組んで言い放った。そうだ。その傷の痛みを私がこれから受けなければならないとなると、少し憂鬱な気分になってくる。フワンに追って注意を入れようと、彼の方に一歩踏み出す。…でも、フワンが喋るのが先だった。
「心配ない。痛みなんて受けやしないさ」
〈…………え?〉
「試しに、今回してみるといいですよ、管理人サン」
にこ、と、ビジネススマイルを浮かべたフワンの瞳の奥は仄暗い。…彼が言うように、まずは時計を回すことにした。
星を追いかける。思い浮かべる。門を開けて…………身体に痛みが走り始めた。脇腹や脚などに彼らが受けた軽傷が塞がっていき、痛みがこちらに返ってくる。そして、目の前にいたフワンのぐちゃぐちゃになった右腕も治っていく。その痛みが走ることを覚悟して、ない目をぎゅっとつむり………………
痛みは、ついぞやってくる事はなかった。
〈…あれ?〉
気の抜けた声をまた出してしまった。それを聞いたのだろう、フワンは柔らかな笑みを浮かべ、私のない耳に耳打ちをした。
「ね?大丈夫だったでしょう」
煙草の香りが混ざった吐息が側頭部にかかった。確かに来るはずだった痛みが、どこかに行ってしまったような気がしている。戻った右手を曲げて伸ばしてを繰り返すフワンが、不意にこう言った。
「そろそろ人格を取っ払ってくれ、管理人サン」
〈………ああ、わかった〉
謎だけを残したまま、PDAを操作し、戦闘人員から人格を取り払った。囚人達と一言二言話して、再度先に進み始める。
小さな背中が纏っていた紫煙の香りは、すっかり酒香に変わっていた。
【To Be Continued…】
ーーーーー
【おまけ:W社 3級 チーフ補佐 フワン】
コト、コトと廊下のタイルを靴が打つ。制服にジャケットを着て、キャップは片手に持ったこの子供が向かっているのは、会社の一角にある場所だ。
彼が自動ドアの前に立ってそこについていたボタンを押すと、ドアがひとりでに開くと共に、中に充満していた煙草の香りが子供の顔を舐めたんだ。この子供の年齢なら辟易してもおかしくないけれど…迷わず足を踏み入れて、設置されていた椅子に座ったね。
「………珍しいな、イサン
「うむ… たまのほかに煙草は吸はねど、けふは気が向けば」
先客の子供に声を掛けながら腰を落ち着けた彼は、ジャケットについていたポケットの一つから、青い缶を取り出して開けた。その中には何本かの煙草が入っていて、彼はそれを一本震える手でなんとか抜き取って、先を缶に向かって叩きつけ始めた。
「…………まだ、そんな重たいの吸っているのか」
「ん?…ああ、いたのか良秀
子供が声に気づいて喫煙室の片隅を見やれば、そこにはもう一人の子供が立っているね。半ばまで燃え殻になった煙草を灰皿の上まで持って行って、指でとんとん叩いている。
「ガキのくせして、タ・ニ・た*3…大人ぶるにしちゃ限度がある」
「すくよかに悪しきぞ」
「うるふぁいれすねえ…」
片方には背伸びする子供を揶揄するように、片方には純粋な心配を込めて言われた言葉。それに煙草を咥えたまま返した子供が、会社の支給品のライターにぶるぶる震える指をかけ、フリントを回した。子供が息を深く吸うと、高いタール数の煙草特有の、タバコの草がぱちぱち燃える音が狭い喫煙室の空気に溶けていく。ゆっくりと煙草を離して、重たい煙を吐き出したね。
「一応、おれはあんたらの上司なんだから…ウーティスチーフが後でうるさいですよ」
「ハッ、依怙贔屓でそこにいるくせに何を」
「…良秀嬢、それは…」
「………………………………好きに言えばいいさ」
目を伏せて子供が発したその言葉を最後に、子供達は無言のまま時間を過ごした。子供が煙草を吸い切ってしまって、2本目に手を出そうか迷っているあたりで…腕につけた時計からアラームが鳴ったね。
「ン、仕事の時間かな。行くぞ
「指図するな。言われんでも行くさ、おりゃあ」
「…………」
「心配するな、今日も
煙草の缶を懐にしまって、灰皿に吸い殻を投げ入れた子供達は足早に喫煙室を去った。………これから、彼らの仕事が始まるから。
ーーー
「ふぅむぅ、
「………なんだ、つまらん」
「良秀、うだうだ文句言うな。ちゃっちゃと終わらして定時退社だ!」
子供達を何人か引き連れたその子供が振るったスクープが、ぐちゃぐちゃに混ざり合った乗客達を確実に引き剥がしていくね。さっきは依怙贔屓だと言われていたけれど、この子供はちゃんと実力があった。………依怙贔屓されている、っていうのも否定はできないけれど。
この子供は入社試験の時に、年齢や履歴を偽っている。そんなの、巣の翼が認可するわけない…だけれど、上層部の一人がそれを認めたんだ。その人はフワンのことをたいそう気に入っていたみたい。
「めんどくさいな…早いとこ家に帰らなきゃ、
襲いかかってくる乗客だったもの達を抉り、くり抜き、バラバラにしながら言い放つ。他の子供達も順調に整理を進めていって…最後には、肉でできた祭壇の前にへたり込む、皮を引き延ばして司祭の格好のようにした男だけが残った。
『な、なんてことを……救いを求めるのがいけないというのか!神がこれを見ればお怒りになる!天罰が降るのだぞ!』
神。そう男が喚き散らしたのを聞いて、その子供の眉間の皺がいっそう深くなった。武器を捻って、思いっきりその男の頭に振り下ろして…
「すまんが、神は今ご不在だ。休暇をとってJ社に行ってる」
真っ暗な、光の無い目で男の残骸を見つめて、不機嫌そうに言い放ったんだ。
ーーーーー
HP:75〜210
防御レベル:人格レベル+1
速度範囲:4〜8
混乱区間:40%,20%
パニックタイプ:パニック
耐性: 斬撃-普通 貫通-耐性 打撃-脆弱
〈スキル1:剔抉〉打撃 怠惰 スキルレベル:人格レベル+3
マッチ威力:5〜11
基本威力:5 コイン枚数:1 コイン威力:+6 攻撃加重値:1
[使用時]充電回数が5以上ならコイン威力+2
Ⅰ[的中時]破裂1を付与、自分の充電回数が5増加。
〈スキル2:遠心跳躍〉打撃 暴食 スキルレベル:人格レベル+3
マッチ威力:4〜16
基本威力:4 コイン枚数:3 コイン威力:+4 攻撃加重値:1
[使用時]充電回数が10以上ならコイン威力+1
Ⅰ[的中時] 自分の充電回数が5増加
Ⅱ[的中時] 次のターンに充電力場2を得る
Ⅲ[表面的中時] 自分の充電回数が5増加
〈スキル3:次元剔抉〉打撃 憂鬱 スキルレベル:人格レベル+5
マッチ威力:8〜18
基本威力:8 コイン枚数:1 コイン威力:+10 攻撃加重値:1(+2)
[使用時]充電回数が10以上20未満なら
-充電回数10を消耗してコイン威力+5、攻撃加重値+1
[使用時]充電回数が20なら
-充電回数を20消耗してコイン威力+10、攻撃加重値+2
Ⅰ[的中時] 破裂5を付与、破裂回数を2増加
〈守備スキル:神はご不在だ〉憂鬱 防御 スキルレベル:人格レベル+3
基本威力:4 コイン枚数:1 コイン威力:+8
[使用時]自分の充電回数が10以上なら、コイン威力+2/4
[使用時]自分の充電回数が3増加(1ターンにつき1/2回)
〈バトルパッシブ:早く終えれば定時退社だ〉
必要資源:憂鬱×5 保有
スキル効果で充電回数を消耗した際、充電威力/回数を獲得・消耗するスキルを所持する人格がいれば、自分以外の該当人格全員に充電回数5を付与
〈サポートパッシブ:体調管理も仕事のうちだぞ〉
必要資源:憂鬱×3 保有
戦闘人員に充電威力/回数を獲得・消耗するスキルを所持する人格がいれば、該当人格に毎ターン充電力場を1付与
【台詞】
〈人格獲得〉
ぷはー…なんだその目は。あげないぞ、これはおれの煙草!
〈同期化進行〉
おとなしく整理されてくれよ。早く帰ってあげなきゃならんし。
〈朝の挨拶〉
おはようございます、管理人さん。………おれ?おれはもちろん、ウチの班では一番乗りの出社です。
〈昼の挨拶〉
昼飯は弁当を持たされてます。…家に、家族がいるんで。
〈夜の挨拶〉
こんばんは。おれは今から書類だけ書いて…イサンの書類も手伝ってから帰ります。定時退社って、素晴らしい響きだと思いませんか?
〈対話1〉
会社勤めに不安もありましたが…なんとかやれています。おれにあれこれ言う人ももう少ない……上に…おれを気に入ってる人がいるんで。
〈対話2〉
チーフは口うるさいが文句なし、イサンさんは仕事を引き受けがちで手がかかる、良秀は…良秀で。キホーテはうるさいが頑張り屋さんだ。実に過ごしやすい職場だとは思いますよ。
〈対話3〉
……………今日は、飲みに行きます。…件のおれを気に入ってる人とです。………………行きたく、ないなぁ…。
〈同期化後対話1〉
煙草は香りが強くていい。あの子は嫌がるけど………しょうがないじゃん。血生臭いよりよっぽどいいさ。
〈同期化後対話2〉
このスクープ?……………例の上層部の人がおれに、と。厳密には私物になるのかな。………使わないと、あの人怒るんです。
〈放置〉
用がないなら行ってもいいです?仕事は定時までに終わらせたいんでね。
〈人格編成〉
行くぞお前ら、テキパキやろう。
〈入場〉
…あれぐらいなら定時までに片付くか。
〈戦闘中人格選択〉
伝達事項か?手短に頼むぞ。
〈攻撃開始〉
大人しく整理されてよ…!
〈敵混乱時〉
よし、大人しくしてなよ?
〈混乱時〉
げっ…すまん、カバー頼みます!
〈敵討伐〉
はい次。
〈味方死亡〉
あいつがやられたか…カバーに入る!
〈本人死亡〉
……………ああ、やっと逃れられ………。
〈選択肢成功〉
上手くいきましたよ管理人サン。
〈選択肢失敗〉
…ミスした。まずいな、定時に間に合うか…?
〈戦闘勝利〉
ふむ……まだ時間があるかぁ。明日の書類も捌いちゃうか。
〈EX勝利〉
ピッタリ定時退社だ!家に帰ればあの子が待ってる!寂しがってないといいけど…。
〈戦闘敗北〉
リカバリーに時間食うぞこれ…残業か…………あの人に頭下げりゃ、皆んなにも残業代が下りるか?……いやだなあ…。
W社フワン:コネ・書類偽造入社。W社上層部のとある人物に大層気に入られている。…本人は、それを快く思っていない。
ーーーーー
いかがでしたか?
よろしければ感想・評価などしていただけると助かります。
ではまた次回。バ〜イ。