TSという概念を知っているだろうか。
通称トランスセクシュアルと呼ばれる、創作物の中で登場人物の性別が反転してしまう現象を指す物だ。
例えば幼馴染の男友達が朝起きたら女になっててーなど、いわゆるそんな感じである。
俺はこの概念が大好きだった。
中学生の頃にこの概念を見つけてからというもの、間違いなく性癖が歪んだ確信がある。
まぁ全く後悔はしていないがね。
とにかくTSというのは創作物の中で一つの大きなジャンルを獲得してるわけだが。
…え?なんでこんな話をしてるのかって。
それはまぁ、やむにやまれぬ事情があるのさ。
こんな独り言を言ってしまうくらい錯乱する出来事がね。
…薄々気づいてるとは思うが一応言っておこうか。
俺の男友達の1人が…朝起きてたら女になってたらしい。
もうエイプリルフールは過ぎたって?
そうだな、嘘だったらよかったよ。
でもこれ、現実なんだよな、頬捻っても痛いし。
「まじでこいつが頭イカれただけとかそんなんじゃないのかなぁ…。」
そうして俺は携帯の画面の
『なんか朝起きたら女になってたたすけて』
というメッセージにどう返信するか頭を捻りはじめた。
とりあえず『お前頭おかしくなったんか』と送ったら『ころすぞ』と帰ってきた。
いつもと同じ反応が返ってきて俺は頭を抱えたくなる。
「冗談じゃねぇのかよ…。」
冗談であって欲しかったが、本当らしい。
一応念のため『酒とか飲んでないよな?』と送ると「やつざきにするぞおまえ』と返ってきた。
この凶猫な感じは間違いなく素面である。頭が痛い。
「このままじゃ埒があかんな。」
『とりあえずそっち行くわ』とだけ俺はメッセージを残し。
俺は外に行く準備を整え家を出るのだった。
チャリを走らせておよそ10分、男友達の家に到着した。
よく考えればあいつは実家暮らしだった。本当にTSしてたなら親とかにバレてないんだろうか。
そんな考えが頭をよぎりながら駐車場の端の方に寄せて自転車を置き、玄関へ向かう。
「さーて鬼が出るか蛇が出るか。」
そう言って玄関の呼び鈴を押そうとした直後だった。
バァン!!!!!!!
いきなりドアが開き、俺はそこから伸びた手に手首を掴まれた。
俺を掴むその手は白く細い手で、こんな状況でさえなければ綺麗だと思ったであろうが、この状況ではあまりにもホラーチックであり。
明らかに異常だった。
「うぉァンンーー!!!!???」
悲鳴を出す前に手で口を塞がれ、中に引きずられていく。
俺はこの体験を一生忘れないだろう。
……いやーまじで漏らすかと思った。
そうして引きずられ部屋に連れ込まれた俺はその犯人の顔を見る訳だが、俺は見る前から誰がこんな事をやったのか分かっていた。
冷静になればすぐにわかる事だ。
この強引さと溢れ出る凶暴性、つまりは
「随分可愛い顔になったんだな。これからは猫子とでも呼んだ方がいいのか?。」
「黙れ。」
俺の友達の1人にして今となっては元男となってしまった、鰹節猫白に他ならないのだから。