こういう作品はたぶん初めて書くので実質初投稿
――神は留守だよ、休暇取ってベガスに行ってる。
どこかで聞いたそんなセリフを今の私は心底恨んでいる。
そんなことを学校からの帰り道で考えている私の名前は「
どこにでもいそうな普通の……そう、少し前まで
ごく一般的な両親との間に生まれ、
ごく一般的な幼稚園で育ち、
ごく一般的な小学校でそれなりに順風満帆な生活を送り、
ごく一般的な中学校で平々凡々な少女に落ち着いて、
ごく一般的な高校で普通の女子高校生に落ち着いていたのが、こうしてビクビクとやたら暗い帰り道を進んでいるこの私なのだ。
人気の少ないこの通り道を進みながら腕時計を確認すると、今の時間帯は午後6時は過ぎたあたりを指している。
冬場ほどではないにしろ、春先のこの時期は陽が沈むのが早く、特にこの一帯は最近知った
「うぅ……なんでこんなところ通ろうと思ったの私……早く帰らないと……
過去の自分の選択に文句を言いながら、何がいるか分からない暗がりに怯えつつ、主に帰った後のことを考えて歩みを
家までまだまだ距離はあるなら急ぐのは当然だろう。
それが特に、陽が完全に沈みかけている時間ならばなおさらだ。
だが、その歩みを踏み出そうとしたところで足が止まってしまった。
――瞬間、背筋が一斉に粟立つ。
それに合わせて周りの空気が一瞬にして重くなったのを感じる。
まるで水の中にいるかのように自身の動きだけが緩慢になり、足が動かなくなっていく。
だがそれだけじゃない、周りの音が……『世界』が遠ざかっていくのも感じられてしまったのだ。
(嘘……!? これって……!?)
『これ』には覚えがあった。
最近知り合った……というか
普通に生きていたら感じることがなかったはずのこの「殺意」は――
『ぅが、ぎぎぎ……』
「あ、うぅ……」
いる。
『ナニカ』がいる。
本能的な恐怖を引き出してくる『ナニカ』がそこにいる。
自身が向かっていた道の先にある十字路から、喉を潰されたかのようなくぐもった声を発する『ナニカ』が現れたのだ。
その『ナニカ』はずた袋を無理矢理人型にしたような姿をしており、一見すれば趣味の悪い人形、またはマネキンのようにも見える。
しかし、人形やマネキンというには「無機質さ」というものはそこまでなく、むしろズルズルと片足を引きずっているように動く様子はまるで生き物のようにも思えた。
だがその見た目は「呪いでもかけられた醜悪な物」のように感じられ、ホラー映画にでも出てきそうな「怪物」のようにも見えてしまったのだ。
そして、その醜悪さに見合うかのような錆びついている大きな鉈のようなものが、その『ナニカ』の右腕から生えていたのである。
これが、最近の私が見えるようになってしまった存在。
『あの人達』曰く、人の負の感情が集まって形を成してしまった『ナニカ』――
『ぐじゅ、ぎぎげ……』
――「怪異」だ。
「――――ッ!!」
そこまで考えて、やっと体が思考に追い付いてきた。
視界に入った存在が何者かを理解できた自身の頭は即座に「逃走」を選択する。
あれは私じゃどうにもできない。絶対にだ。
それに関しては、何度も「こういうこと」に遭遇してしまってきたため、否が応でも理解させられている。
だから走れ、走るんだ私。まだ死にたくないのなら――!!
『ぎぎぎっ……』
「ハァッ……! ハァッ……!」
私の足音に反応したのか、ずた袋の『怪異』が右腕の鉈を引きずりながら追いかけてくる。
その動きは非常に遅く、運動部に所属していない私でも振り切れそうな速度だった。
このまま距離を開き続けることができれば、「あの人達」に連絡をすることができる。
餅は餅屋、蛇の道は蛇、そういうものにはそういうものをぶつけるのだ。
「っ……! なんでこういう時に限って……!」
こういう時に限って革靴で帰ろうとしていたことに腹が立った。
あまりにも急に走ったせいで足に痛みが生じ、無駄に体力を使ってしまったからなのか息も上がる。
だがしかし、そうだとしてもここまで急に体力がなくなるなんて……そう思っていた時だった。
『ぎゅぎ、げぎゃぎゃ……!』
「……!? もうこんなに近くに……!?」
体力が急速になくなっていく私とは逆に、『怪異』の動きが早くなっていく。
先程まで歩いても振り切れそうな速度だったはずの『怪異』は、小走り程度の速度にまで上がっていっていた。
なんで、さっきまで遅かったはずなのに……そう思ったところで思い至る。
「も、もしかして、私の体力がとられてる……!?」
私の体力がいつも以上にすぐ無くなって、怪異の動きがその分早くなった。
減ったものがどこかに行っているなら、つまりそういうことだろう。
『げぎゃぎゃがぎゃぎゃ……!』
「ひっ……!」
動けなくなった私に追いついた『怪異』が、その鉈のような右腕を振り上げる。
このまま振り下ろされれば、両断とまではいかなくとも想像するのも恐ろしい痛みと共に、「死」が近づいてくるだろう。
防御できるわけがない、所詮はただの人でしかない私にはその動きに抵抗する術を持っていなかった。
(――あぁ神様、私は何か悪いことをしたでしょうか――)
今際の際で思うのは、先程も考えていた神のことだ。
私は熱心な信仰者という訳ではないが、ちょっとしたことで神頼みをする程度の人間ではある。
と言ってもそれは冗談交じりで、叶うことがないと半ば諦めているからこそ、結構気安く神頼みをしていた。
だが、死にかけている今になって思うことは幾つもある。
もっとやりたいこと、それこそ立派な大人になって好きになった人と結婚する夢だってある。
両親にまだちゃんとした恩返しができていない後悔もある。
もっと人生楽しめたはずなのに……そう思っているとふつふつとある感情が湧いてきた。
(――私、なんで諦めてるんだろ?)
そうだ、私はまだ死んじゃいない。
正確には死ぬまで秒読みのところにいるから、死ぬかもしれないことには変わらない。
だけど、だけれどだ。
まだ私は生きている。
――ならば『可能性』は残っているんだ。
だからこそ――
「助けて――」
「――ヒトガミ様――!!」
――私は叫ぶんだ。
そして、
『間に合ったぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!』
『ヒーローパァアアアアアアアアアアアンチッ!!!!!』
――その願いは聞き届けられた。
『ぎゅぶぁ!!??』
鉈を振り下ろそうとした『怪異』が、空を文字通り『
その勢いはすさまじく、まるでハリウッド映画にあるような車が吹き飛ぶシーンのように錐揉み回転をしながら、地面を転がっていった。
その衝撃が致命傷となったのか、『怪異』はぴくぴくと痙攣した後、煙のように消えてしまった。
『怪異』が文字通り消滅したことを認識した私は、先程までの倦怠感に包まれていた体を起こし、怪異を吹き飛ばした2人を見る。
一人はボロボロの外套とマフラーをたなびかせる青年で、もう一人はアメコミチックなヒーロースーツに身を纏う少女。
一見すれば繋がりが無いように見える2人だが、私はこの2人を知っている。
彼等こそが、私が拾った『あの人達』の中の2人であり、こうして助けに来てくれた存在。
思わず、安堵のため息と共に彼らに声をかけようとして……
「うぉおおおおおおおおおおおお!!?? 大丈夫か九十九ちゃん!!?? 怪我してないか!!?? 生きてるか!!??」
「ハリーアップ『ジャーニー』!! こういう時はスーパーでキューティーな『レディ』にお任せ!! ベリークイックで『ライブラ』のところに連れて行くから!!!」
「よし任せた『レディ』!!」
「あ、あの……そんな怪我してないんですけど……ただすごく疲れただけで……」
「レェッツ!! ゴー!!!」
「ちょっと話を――あばばばばばばばばば!!??」
声をかける前に私を担ぎ上げた『ジャーニー』と呼ばれた青年と、『レディ』と呼ばれた少女がスポーツカーも真っ青な速度で駆け出した。
そのあまりの速度に思いっきり振り回されながらも私はしがみつくしかない。
まぁこのままなら家に直行してくれるので特に文句はないのだ。
あ、いきなりだが、彼らについての説明をしておこう。
彼らはこの世界とはまた違う世界のどこかで誕生し、あることから存在としての『格』を逸脱してしまった存在――
――『ヒトガミ』。
世界の法則を鼻で笑い、理不尽なまでの「力」を一人で所有する『上位者』達だ。
そんな人(?)達を、なんでか過去の私が拾ってしまい、なんだかんだで居候させることになった結果、こうしていろんな出来事に巻き込まれたりして、その度に助けられているのである。
「うぉおおおおおおおおお!!! もうすぐ家だぞ九十九ちゃん!!!」
「元気出してツクモ!!! 今日のご飯はステーキだよ!!!!」
「アッ、ハイ……」
それはそれとしてここまで過保護なのはどうにかしてもらいたいなぁ……と思う私であった。
これからも頑張っていき……たいと思っています(自信無し)