完璧なRPができる魔法使い系Vtuberになりたいです! ~え、実際に異世界攻略してこい? 無理ですってば!~   作:しらほし

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初配信をしました! くっころ魔法使いと呼ばれました! こんなはずでは……!

 

 

走ったり歩いたりを繰り返して半日、ゴブリンの巣が見えるところまで戻ってきた。あの巣には何度か潜入している。見張りのゴブリンをチマチマ減らしたり、奥まで入り込んでみたりして、ある程度は構造を把握しているつもりだ。

 

 

そして、少し前(一機前)の私が自爆しながら倒した五匹は偵察隊と見張りを兼ねているようだった。

 

 

偵察の目が減っている今のうちに、強硬策をとろう。

 

 

死んだあとに馬小屋がある村ではなく、ここで目覚めるようにしてしまえば、いわゆるゾンビアタック戦法ができるはず。やられても何度でもすぐに目覚めて、ゴブリンを殲滅するんだ。

 

 

ちょうどよく隠れられそうな木陰を見つけ、無理やり昼寝を試みる。最初こそ見つかってしまうかもしれないとドキドキしていたが、ダメだったらまた別の場所を試せばいいと思ったら気楽になれた。ここまで駆けてきた疲れもあり、少し時間はかかったけど何とか眠りについた。

 

 

そして、私はゴブリンの巣を隅々まで焼き尽くした。横穴から背後を狙ってきたゴブリンも、上空につながる空気穴から飛び掛かってきたゴブリンも、村から奪った農具で私を突き刺したり、耕したりしたゴブリンたちも、奥の小部屋に居たお腹の中のゴブリンも、持ち帰ることができるある程度の貴重品は回収したけど、それ以外は、全部焼いた。下手に何かを残すと、盗賊や次のゴブリンが住み着くかもしれないからだ。

 

 

母体にされていた女性たちは、丁寧に葬った。助けられなくてごめんなさい。私がもっと早くこの世界で覚悟を決めて、早く強くなって、この依頼が出ていることに早く気づいて上げられたら、一人でも多く救えたはずなのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──というわけで、神様の加護のヨミガエリを利用して、ゴブリンを焼いては自爆し焼いては自爆し、無事に巣を壊滅させたのでした! 奥の部屋の宝物を回収しようとしたんですが、ゴブリンの宝だから大したことないだろう~と思って、軽率に赤い不思議な石に触れたら、こちらの世界に来てしまったんですよ~」

 

 

〇やば

●なるほどね

〇警戒心が足りない。さてはポンだな

●死に戻りしたとはいえゴブリン一人で全滅させたんか。

〇やってることだいぶイカついな

●自爆ってやっぱり死ぬほど痛かった?

 

 

そして、思った通りゴブリン退治を完了させたら戻ってくることができたので、無事に初配信をしている。明るく振舞っているけど、救えなかった人の表情がまだチラつく。

 

 

配信上ではダンジョンの奥にあった赤い石に触れたら、と言ったけど、Vtuberナイ・カテリーナがそういう設定というだけであって、本当は村に依頼達成の報告と確認の付き添いまで済ませて、依頼を受けたギルドに帰って、ギルドのある町の馬小屋で眠って、目が覚めたら戻ってきていた。

 

 

戻ってきた日時は神に祈った直後。何にも変わらない現実世界に、逆に現実感が湧かなかった。全部が夢だったみたいに。

それでも、体感では久しぶりの温かいお風呂と柔らかい布団がありがたく、お風呂に入った後、ぐっすりと眠った。

つい先日まで野宿と馬小屋で寝ていたから、現代の寝具やお風呂のありがたみが身に染みる。染みすぎた。これも『こっちの世界に来てよかったこと』という切り口でトークできるからいつか話そう。

 

 

そう思い返しながら話していると、ふと、あるコメントが目についた。

 

 

〇……………………………………………

●……………………………………………

〇でも、ゴブリンも生きるのに必死だったんじゃない?

●……………………………………………

〇いいゴブリンもいただろうに

●……………………………………………

 

 

瞬間、奴らにやられた数々の所業を、さらわれた女性たちの姿を、自らの死を望む言葉を思い出して──

 

 

「いいゴブリンがいるなんてっ、んなわけねぇだろ!!! ゴブリンはなぁ! 人のことなんかエサ抱えたオモチャくらいにしか思ってねぇんだからな! それに私が何回奴らに無理やり……!」

 

──ブチ切れてしまった。けど、あやういところで踏みとどまった。初配信からブチ切れてしまったこともまずいけど、死なない程度に縛り付けられて奴らの子を産まされたことがあるなんて言えるわけがない。

デビューしたばかりの女性Vtuberが処女じゃないどころかゴブリンに無理やりされたことがあるなんてイメージ、付いていいわけがない。

 

 

〇無理矢理……!?

●えっ

〇おいバカやめろ

●エッ……!!

〇迫真すぎる

●まさかくっころ????

〇実感こもりすぎて草

●大人向け()イラストタグ決める?

 

 

あかーん。伝わってるよ。いや、まだ言い切ってないからセーフ。

話題を変えるぞ。と伝わるように分かりやすく咳払いをして──

 

 

「……蘇って別の体が生成されてるからね」

 

 

──汚されたままの体だと思われたくなくて、つい余計な訂正を入れてしまった。

 

 

〇それもどうなの

●だからなんだよwwww

〇黄泉帰りしたらセーフ理論

●某お兄様みたいだな

 

 

「はい! この話は終わり! タグ決めとかこの世界の美味しいものを教えてもらうコーナーとか色々話したいんですから!」

 

 

〇自爆系魔法使い

●この沸点低さ、今後も何かやらかしそうだな

〇燃えそう

●炎魔法得意そう()

〇期待の新人だ

●炎上するなよ?

 

 

「そうですよー、炎魔法は得意ですから、変なこと言うとあなたたちも……へぇっ!?」

 

 

言いながら冗談で手をかざしてみたら、何度も使った覚えのある力が右手にみなぎっていることに気づいた。()()()。この感覚、あちらの世界で何度も使ったから間違いない。試しに人差し指から火を出してみる。……点いてしまった。

 

 

〇どした?

●何何

〇Gが出たか

●事故ったか

〇なんかポッって言ったな

●ミュート?

 

 

「あ、ごめんなさい。ちょっと運営さんから連絡が来て驚いてました」

 

 

〇早速怒られたたかwww

●草

〇初手これは問題児だったか

●放送事故

 

 

咄嗟にありえそうなことを言って誤魔化したけど、これはもしかしたら身バレよりもやばい秘密かもしれない。

 

 

結局この後のトークでインパクトのあることが言えなくて、初配信が終わったばかりで〝くっころ魔法使い〟という不名誉な呼び名が浸透してしまった。他にも〝炎(自爆)系魔法使い〟だとか〝ゴブリン絶対許さないネキ〟だとか……。

異世界トークがリアルなロールプレイつよつよ魔法使いになりたいとは思っていたけど、こんなつもりではなかったのに……!







4/20 結構重要な加筆

こういう描写ってどこまでがセーフなんでしょうね。
直接的なことは書かないよう気を付けます。
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