完璧なRPができる魔法使い系Vtuberになりたいです! ~え、実際に異世界攻略してこい? 無理ですってば!~ 作:しらほし
十二時間配信の四日後、笹原ロロ先輩と早速コラボをすることになった。誘い文句のバケモノ分からせコラボという言葉はちょっと意味が分からないけど、炎上とまではいかなくても。若干危うい動きをしている私を見るに見かねて誘ってくれたんだと思う。そうでなければあんな早朝に配信が終わったタイミングを狙いすましてメッセージを送ってこないはずだ。
『で、実際どうなん? 十二時間配信は余裕のバケモノキャラって定着させたい? それとも嫌? それによって方向性変わるけど』
お気遣いいただきありがたい。先輩のリスナーさんにも見てもらえるこのコラボは、私の今後のイメージを固める大きな転換点になるかもしれない。内容によっては私の可愛い一面に気づいてもらえるかもしれない。
『ありがとうございます。可愛く女の子らしいもののトークテーマで雑談とかしてもらえると助かります』
『え?』
『え?』
即レスで疑問符を投げ返してきたので反射的に私も返してしまった。失礼だったかな。
『バケモノ分からせコラボしたいんやけど、ダメ?』
改めて、といった感じで先輩が問いかける。気にしてなさそうな雰囲気の口調で安心したけど、出たぞ、真意を掴めていないワードが。読み取れなくて申し訳ないけど、相互理解を重視して、正直にそのワードだけでは分かしませんでしたって答えよう。
『あーーーーゴメン、説明不足。つまりアタシがナイを分からせてバケモノキャラ感を薄くするか、ナイに返り討ちにされてやっぱナイってバケモノやん! ってオチのコラボやりたいんやけど、どない?』
なるほど、そういう意図だったのね。たった一言に配信の企画の趣旨とオチの想定まで盛り込んでいたのかと気づくと先輩のすごさを実感する。
私がバケモノキャラを嫌がっているのなら、先輩が完膚なきまでに叩きのめしてくれるということだ。バケモノ感が薄れれば、まったりとした雑談や、お菓子作りなどの可愛い系の配信も徐々に受け入れてもらえるかもしれない。
逆に私が勝って先輩を返り討ちにしてしまったら、私のバケモノキャラがかなり固定化されてしまうかもしれない。もともとは鬼畜ゲームの配信時間が長くなっても平気そうにしているという意味合いで言われていたのが、別方向からキャラ固めされてしまうと逃げ場がなくなりそうだ。私よりもゲームが上手いであろう先輩に、そう簡単に勝てるとも思ってないけど。
けど……。
『すみません、まだオチに向かって配信を組み立てることができるか分からないので、本気で戦って結果次第であとは流れで。みたいなコラボにできないでしょうか?』
私も言葉足らずかな? と思い、フリックを続ける。
『私が負ける想定の台本だと、もし勝てそうなときがあっても、その瞬間不自然に手を抜いてしまいそうで』
理由を付け足すと先輩の返事が少し止まった。書き込み中の表示にもならない。配信の組み立ても出来ないようではコラボ自体を考え直されてしまったかな。もしそうなら出来るようになってまたお誘いいただけるように頑張ろう。あ、先輩が入力中になった。
『もしかしたらアタシに勝てるかもしれないって? まだ何のゲームか言ってないけど』
あれ、もしかして怒らせちゃった? 初配信のときと同じで余計な一言を言ったのかもしれない。
『ごめんんあさい! そういうつもりじゃなくてですんえ!』
慌ててめちゃくちゃミスタッチしてる。まずいまずいまずい。
『先輩からのお願いや。オフコラボにしよう。ラグがあったとかパソコンが弱いとか、つまらん言い訳の余地ナシで本気でやろう。ロクテンドースイ〇チは持ってる?』
『は、はい』
『ほな、住所と駅からのグー〇ルマップ案内図送っとくから、一緒に晩御飯食べてからコラボしよな』
そういうことで、Vtuber人生初のコラボは、オフコラボでタイマンコラボで、ガチバトルになりそうです。
「思ったより背ぇ高いな、アンタ」
「恐れ入ります……」
コラボ当日の夕方、通話をしながら道案内をしてもらい、先輩の住むマンションへ到着すると、開口一番そんなことを言われた。
私は平均身長より少し大きいくらいだけど、ロロ先輩は小柄でかわいらしい。
リビングに通してもらって、手土産のお菓子を渡したり、お茶を入れてもらうときに「おかまいなく」と言うありきたりな会話をする。自分以外のVtuberさんの家に入るのはもちろん初めてなのでドキドキする。
「晩御飯はカレーにするつもりなんやけど、嫌いな野菜あるか? なければ容赦なくゴロゴロ色んな野菜入れるよ」
お茶もそこそこに席を立った先輩がエプロンを着用しながら言った。
一般的なカレーに入れる野菜の他に、まだ季節には早いけどナスやトマト、オクラも見える。
「あっ、えっと、トマトが苦手なんですが、皮が残ってなくてカレーに溶け込んでるだけなら割と平気です!」
「そか。嫌いなもん少ないほうやな。待っててな」
「はい。あ、何かお手伝いできることはありますか?」
「大丈夫。キッチン広くないしまな板も一枚しかないから。それよりこのままお喋りしようや。まずは背中越しに話すほうが少し気楽やろ。今までも目ぇ合わせて話すとガチガチに緊張する人多かったし」
これも先輩なりの気遣いと、もしかしたら、お決まりのパターンなのかもしれない。
こっそり先輩のアーカイブ一覧でそれっぽいオフコラボがないか検証しようとしたけど、新人Vtuber全員がオフコラボをしているというわけではなかった。もしかしたら配信外での距離の詰め方なのかもしれない。
それから、私の好きなものや、今後遊びたいゲームタイトル、部活は中学生の頃バドミントン部に居たことなど、当たり障りのない会話をして、先輩がまた質問をくれた。
「カテリーナはどんなVtuberになるつもりなん? 初配信からめちゃくちゃキャラの世界観に入り込んでるように見えたけど」
問いかけられて、少し答えに詰まる。初配信の用意も個性もありきたりだった私は、せめて魔法使い系Vtuberとして、自分の理想とする『お話しできるアニメキャラみたいな存在』になりたいという気持ちから願ったから異世界に飛ばされたけど、それ以外で個性や方針が増えたというわけでもない。
「まだ、迷ってます。というより、見つけられてません」
「そっか。まだ始めたばかりだからな。憧れてた姿とのギャップもあるかもしれないな」
「憧れ…………」
考え込んでいる間、カレーを煮込む心地のいい音が聞こえる。
理想とはまた別で、最初に憧れたVtuberの姿は──
「まぁ、おいおい見つけられればええんちゃう? 今回は……」
いつの間にかテーブルに戻ってきたロロ先輩が、目の前に座って視線を合わせる。
「本気でぶつかるって条件の中で、アタシが面白いと思う企画にさせてもらうで」
先輩の表情は何と言えば正しく伝わるのだろう。好戦的というわけでも、威圧的というわけでもないけど、私と戦う気満々のいい笑顔だった。
なんとなく一つのクライマックスを迎えるまでは更新頻度を上げて一気に書き上げたいという気持ちと、月曜が近いよの気持ちのぶつかり稽古中