完璧なRPができる魔法使い系Vtuberになりたいです! ~え、実際に異世界攻略してこい? 無理ですってば!~ 作:しらほし
「はーい皆さんこんロローン。笹原ロロっすー。今日は後輩呼んで対決するっすよー」
私の隣で先輩が上体を揺らすと、配信画面の中でパンダモチーフの女の子が同期して揺れる。
笹原ロロちゃんは鎖骨に届くくらいの少しくすんだ銀髪で、頭の両側の髪をお団子にまとめ、それを黒いお団子カバーで包んでパンダっぽくしているのが特徴だ。顔立ちは可愛い系。上着の胸ポケットには笹を食べてるマスコットのパンダくんが居る。
「今日の相手は耐久配信のバケモノ疑惑がある新人!」
「はい、皆さんこんナイト~。ナイ・カテリーナです。バケモノではありませーん。お邪魔します~」
「邪魔するなら帰って~」
「わぁ! お決まりすぎる!」
〇新人コラボだ!
●予測不能な組み合わせ
〇なにやるんだ
●後輩いびりやめなーwww
〇ゲームお化けと耐久のバケモノ、勝つのはどちらだ
あの後も色々と雑談しながら出来上がった晩御飯をいただき、先輩が配信準備をしているのを横から見て勉強した(つもり)。
「今回後輩と遊ぶのは……そういやその前に呼び方決めてなかったっすね。何て呼べばいいっすか? アタシより年上っすよね?」
晩御飯までの会話で魂同士は先輩の方が一歳年上だと分かったけど、キャラクターとしてはロロ先輩が二十歳、ナイ・カテリーナが二十五歳と、後輩だとしてもちょっとタメ口が気になる歳の差だ。
「先輩の呼びやすいようにでいいですよ。ナイでもナイカテでもカテリーナでも」
「ならテリーナとかどう? 美味しそうっすよ」
「もしかしてテリーヌ思い浮かべてます?」
配信前の真面目で気遣い屋さんだった先輩とはうって変わって、和気あいあいと距離感近めで接してくれている。自然とこちらも笑顔になれる。
さっきまでの会話でも感じていたけど、私が先輩に勝てるかもしれないという前提のままチャットをしてしまったことに関しては、別に怒っていないのかもしれない。
「はい、本題に戻るっす! 今日の企画はこちら! ナイ・カテリーナ改めテリーナと本気勝負! 笹原ロロに勝てるまで耐久! よっ! パチパチパチパチ!」
「わ、わー!」
怒ってはいない様子……なんだけど、結構やばい企画なのでは……?
〇おいこら
●あかん
〇あっ・・・・・・
●おいおいおい〇んだわ新人
〇それロローンも勝ち続けたら終われないやん
そう。コメント欄でお気づきの方もいらっしゃるけど、これはロローン先輩のお身体も心配になる企画。私が永遠に勝てなければ、また十二時間配信になりかねない。
「対戦するゲームはこちら! 大決闘ブレイクウォーリアーズ! ステージは果ての断崖、アイテムなし、残機は三っす!」
「このゲームは有名だけど遊んだことありませんね。ガチ決闘仕様のルールと聞いたのですが、リスナーさんそうなんですか?」
〇そのとおり
●合ってる
〇あってる
●ガチガチにガチ
〇生きろ新人、そなたは美しい
●アイテムありなら運ゲーに持ちこめるかもなんだがな
「へぇ~、とりあえず頑張ってみますね!」
「最初に一通りの操作を説明して、早速決闘開始するっす。復習したくなったらまたいつでも説明するから安心してほしいっす!」
「ありがとうございます。えっと、まずはどのキャラクターを使うか決めるんですね」
「見た目で決めてもいいし、コメント欄のおすすめを見て勝ちにこだわってもいいっす」
「どうせなら魔法使いのキャラを選びたいですね。私は炎魔法が得意なのでそういうキャラがいたらいいな」
コメント欄を見ると、遠距離攻撃のある魔法キャラ自体はロロ先輩の得意な剣士キャラとの相性は悪くないらしい。けど、炎魔法は弾速が遅い、ともチラッと見えた気がした。
「決めました。コーデリアちゃんにしましょう! 炎と雷の魔法が使えて、茶髪ロングで紫のローブを着てるのが私に似てるし!」
「うし! んじゃ早速やるぞー!」
このゲームは簡単に言えば名前の通り決闘で勝てばいいだけだ。ただし、画面外に一定距離以上出てしまうと、決闘の場から逃げ出したという判定で一機失ってしまう。
一機分の体力を削りきることもできるけど、どちらかというと画面外に吹っ飛ばすという戦術が一般的らしい。ただし、大きく吹っ飛ばす技は隙も大きいので、それを狙うか小技で体力を減らすかの読みあいが発生する……とのこと。
それを聞いた私は、まずは小技での真っ向勝負を仕掛けてみた。結果、自分の遠距離魔法は当たらないのに、ロロ先輩の操る剣士はズンズン近づいてきて連続技を決めてきた。とりあえず色んな技を撃ってみたけど、カウンター技で跳ね返されたり回避されたり防がれたりと、ほとんど当たらなかった。一戦目はあえなく負け。
二戦目、遠距離攻撃で弾速が遅いものと速いものを使い分けながら逃げ回ってみる。いい感じに当たることもあったけど、結局三機とも画面端で吹き飛ばされて敗北。
その後も色々と工夫をしてみたけど、やっぱり初心者の思い付き程度では、これといった有効打を見つけられないままあっという間に十戦が終わっちゃった。何度か画面外に自滅しにいってしまったので、コーデリアちゃんを見失わないようにしよう。
「動きは良くなってるっす! アビスピ配信見てて思ったけど、この技にはこの対応! って自分で決めたら、成功率はすぐに上がってるっすよ。でも、相手は生きてる人間の対人戦っすから、決まりきった対応をされると分かったらそれに合わせて追撃されるっすよ」
「そうですよね、この技だからこう、ではなく、自分の立ち位置や状態に合わせて対応を変えていかないといけないんですね」
「そうそう! 休憩出来たらまた十戦いくっすよ!」
ダッシュ攻撃と若干後ろに下がりながらの空中攻撃で間合い調整作戦、操作が難しく後ろ向きになることが多くて失敗。距離感の調整に使えそうではあった。二十戦までの収穫はこのくらい。
ロロ先輩の一撃目を避けた後、同じ技で追撃してくることが多いのに気づいた。そこを狙って反撃してみるけど、さらにそれに合わせてカウンターされる。もっと振りの早い攻撃でリーチがあれば成功しそう。三十戦。
弾速の遅い炎魔法と一緒にダッシュ攻撃をしたりジャンプ攻撃で近づいてみる。間合いが上手くつかめていないみたいで当てられるタイミングを安定させられない。しゃがみ攻撃のリーチが意外と長いことに気づく。四十戦。
「ちょっと飲み物持ってくるっす。リーナちゃんは何がいいっすか?」
「呼び方リーナちゃんになった……? あ、さっきの紅茶の二番煎じとかで大丈夫ですよ」
「あはは! ちょっと遠慮しすぎっす! 後輩とはいえお客さんっすから、二番煎じなんて飲ませるわけにはいかないっすよ。紅茶新しいのいれてくるっすね」
開けたドアの向こう、コンロの火をつける音が聞こえる。長時間同じ部屋で配信していると若干でも二酸化炭素濃度が増えてしまうから、ドアは少しでも開けたままの方がいい。とはいえドアが開いていたら壁に敷き詰められた防音材の効果が減るので、マイクに近づいてこそこそリスナーに話しかけてみる。
「ねぇ、リスナーさん、どの技で攻めたら良さそうでした?」
〇わぁ! いきなり近づくな!
●ガチ恋距離助かる
〇近い
●ASMRだ
〇ダッシュと炎の組み合わせいい感じ
●安全圏から大魔法で牽制してみ
色々読んでみると、やはり魔法を使い分けながら間合いを調整して、ジャンプやダッシュの攻撃が当たったところから他の技に繋げると良いみたい。よし、色々やってみよう。
異世界の実践では色んな魔法を契約してみたものの、一つの魔法を一撃必殺級に特化させないと厳しいと学んだ。敵を中途半端に生き残らせると背後を狙われることがあったからだ。
結果的に選択肢がおのずと少なくなっていたけど、このゲームは一撃必殺は元々ない代わりに攻撃手段が色々ある。楽しい。
「おまたせっす~。お茶熱いから気を付けて」
「ありがとうございます」
よく冷ましてから一口いただく。うん、本当にまだまだ熱い。
「リーナちゃんどっすか? 初めてのゲームだと考えること多いっすけど、頭パンクしてないっすか?」
「はい、慣れてきた気がするけどまだまだ操作ミスも多いし、思った通りに動いてくれなかったりしたときに対応遅れちゃうけど、色んな技ができて楽しいですね。アビスピも実質使いものになってる魔法はまだ一種類だし、私自身の得意魔法も数少ないですから」
思った通りに答えると、ロロ先輩は嬉しそうに笑った。
「まだまだ余裕そうっすね。負けないと終われない企画だけど、負けないっすよ!」
早く、早く百合展開へ……戦闘シーンも……ゴブリンを滅ぼせ……
4/23 笹原ロロの見た目の描写を追加
ざっくりスマ〇ラっぽいゲームだと思ってもらえればと