翌朝、目を覚ましたとき、昨夜の重苦しい気持ちは少し軽くなっていた。布団の中でぼんやりと天井を見上げる。
しばらく眠れていなかったせいか、少しの間、何も考えずにいられることが心地よかった。
掛け布団をはねのけて起き上がり、軽く伸びをする。窓から差し込む朝日が、部屋の隅を優しく照らしていた。
顔を洗い、居間に向かうと、祖母が朝食の準備をしていた。食卓には味噌汁の湯気が立ち、焼き魚の香ばしい香りが漂っている。
「おはよう、蓮。よく眠れたかい?」
「うん、眠ったらすっきりしたかも」
「そりゃあよかった。ほら、冷めないうちに食べな」
席につくと、先輩がすでに座っていた。彼女も昨夜よりは落ち着いた表情をしているように見える。
「おはよう、藤宮くん」
「おはようございます、先輩」
ぎこちないながらも互いに微笑み合い、朝食を口に運ぶ。しばらくして、祖母がふと思い出したように言った。
「そうそう、今朝、病院に連絡しておいたよ。お見舞いに行くって伝えたからね」
「ありがとう、ばあちゃん」
「向こうも快く受け入れてくれたよ。お父さん、蓮のことを気にしてたみたいだね」
それを聞いて、胸が少しざわついた。
(父さん...)
どんな顔をして、どんな言葉をかければいいのか。まだ自分の中で答えは出ていなかったが、それでも会いに行こうという決意は変わらなかった。
◇
「ばあちゃん、話を聞かせてくれてありがとう。
また今度の休暇に変えるよ。」
「わかったよ、休暇じゃなくたっていつでも戻ってきていいからね。」
「うん...ありがとう。」
「おばあさま、私もお話に同席させていただいてありがとうございます。」
「先輩さんもまた来てね...今度はお付き合いしましたの報告待ってるからね。」
「は、はい...」
先輩とばあちゃんが何か小声で話すのを横目に幼馴染の家を少し除く、
まだ帰っていないのか...挨拶位したかったけど大学が忙しいのかな...
祖母に見送られながら家を出る。先輩と並んで駅へと向かう道は、朝のひんやりとした空気が心地よかった。
昨日の雨で湿った道をゆっくりと歩く。まだ朝早いため、周囲は静かで、時折鳥のさえずりが聞こえるだけだった。
「先輩、本当にありがとうございました」
「ううん、私はただ一緒にいただけだし...」
先輩はそう言いながらも、どこか穏やかに微笑んでいた。どこか、昨夜の不安を吹き飛ばそうとしているような、そんな笑顔だった。
駅へ向かう道は、昨日とは打って変わって澄んだ空気に包まれていた。歩きながら、俺は心の奥底に溜めていた気持ちを、そっと口に出した。
「先輩...俺、先輩のことが好きです」
風が一瞬止まったような錯覚を覚えた。
隣を歩く先輩の足が、ほんのわずかに止まる。
「...え?」
先輩がゆっくりとこちらを見る。驚いた表情の奥には、戸惑いと、わずかに何かを期待するような感情が見えた。
「ずっと言おうとは思っていました。でも、俺自身がまだ答えを出せていないことがあって...」
先輩の視線を受け止めながら、胸の内をゆっくりと整理していく。
「今すぐ、付き合ってほしいわけじゃありません。まずは父さんに会って、それから...ちゃんと向き合った上で、もう一度きちんと伝えたいんです」
先輩は、しばらく何も言わなかった。
心臓の鼓動がやけに大きく聞こえる。
やがて、先輩の唇がわずかに震えながら、ゆっくりと開かれた。
「...そんなに真剣に言われたら、私、困っちゃうな...」
頬を赤らめながら、先輩は少しだけ目を伏せる。
言葉を紡ぐまでの一瞬が、やけに長く感じる。
そして先輩はふっと微笑んだ。その笑顔は、少しだけ涙を滲ませたような、どこか愛おしさを感じるものだった。
そのまま先輩は俺の腕を引き寄せ、そっと抱きしめた。
柔らかくて、温かい。先輩の鼓動がすぐそばにある。
「でも...うん。ちゃんと聞く。そのとき、私もちゃんと答える」
先輩の声が、静かに心に染み込んでくる。
「ありがとう、先輩」
小さく呟くと、先輩は少しだけ力を込めて俺を抱きしめた。
「楽しみにしてるね、そのときの告白」
静かに、二人は再び歩き始めた。
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