貞操逆転世界で悩む大学生の話   作:すこマロ

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先輩と合流してから、まず向かったのはショッピングモール内の服屋だった。

 

「藤宮くん、普段あんまり服買わないでしょ?」

「...まあ、最低限で済ませてますね」

「やっぱり。じゃあ、せっかくだし似合いそうなの選んでみよっか」

 

そう言うと、先輩は俺の腕を引いて店内を歩き始めた。俺のために服を選ぶのが楽しいのか、先輩は目を輝かせながらあれこれと品定めしている。

 

「これとかどう?」

 

先輩が手に取ったのは、シンプルだけど洗練されたデザインのシャツだった。俺がそれを眺めていると、先輩が少し不満げな顔をする。

 

「んーやっぱり、もうちょっとオシャレな方がいいかな」

「そんなに派手なのは似合わないと思いますけど」

「いやいや、藤宮くんは素材がいいんだから、もっと自信持って!」

 

先輩はさらに何着か選び、試着を勧めてきた。仕方なく試着室に入り、先輩の選んだ服を着てみる。

カーテンを開けると、先輩はじっと俺を見つめ、満足げに頷いた。

 

「うん、やっぱり似合う!...でも、ちょっと心配かも」

「何がです?」

「藤宮くんがあんまりオシャレになっちゃうと、他の女の人に目をつけられちゃいそうで...」

 

先輩は冗談めかして言ったが、その目は少しだけ真剣に見えた。俺はなんとなく気恥ずかしくなりながらも、軽く笑ってごまかした。

 

「そんなことないですよ」

「ふーん...」

 

先輩は少し拗ねたような顔をしながらも、結局その服を買うように勧めてきた。

 

服を買った後、俺たちはゲームセンターへ向かった。

 

「わあ、懐かしい! 藤宮くん、こういうとこ来たことある?」

「昔、地本の幼馴染と少しだけ...先輩はよく来てたんですか?」

「うん、大学に入る前は友達とよく来てたよ。こういうのって、カップルで遊ぶのも定番じゃない?」

 

カップル。俺たちはそういう関係ではないが、こうして一緒に服を選び、ゲームセンターに来て...傍から見れば、やっぱりそう思われるんだろうか。

 

(カップルって、こういうものなのかな...)

 

そんなことを考えていると、先輩がクレーンゲームの前で目をキラキラさせながら立ち止まった。

 

「ねえ、あれ取ってみたい!」

 

先輩が指差したのは、小さなぬいぐるみだった。試しに挑戦してみたものの、なかなか上手くいかない。

 

「もうちょっと右かな...」

 

先輩が隣で覗き込むようにしてアドバイスをくれる。その時、ふいに先輩の肩が俺の腕に軽く触れた。

 

「...っ!」

 

先輩の動きがぴたりと止まる。俺も驚いたが、それ以上に先輩が明らかに動揺していた。

 

「ご、ごめんね...!」

「いえ、大丈夫です」

 

かすかに伝わる温かさに、妙に意識してしまう。先輩は顔を少し赤くしながらも、無理に気にしないふりをしているようだった。

 

「...も、もう一回、頑張ろっか!」

 

先輩が明るく言うので、俺も気を取り直してゲームを再開した。

 

しばらく遊んだ後、休憩がてらベンチに座った。先輩は満足げに手にしたぬいぐるみを撫でている。

 

「なんか、すごく楽しかったですね」

「でしょ? こういう時間も大事だよ!」

 

先輩が笑う。その楽しそうな姿を見ていると、不思議と俺まで楽しい気分になってくる。

 

(先輩が楽しそうなら、俺も楽しい...こういうのって、普通なのかな)

 

そんなことを考えていた時、ふと、頭の片隅にある義務のことが浮かんだ。

 

(そういえば...精子の提供義務が免除される条件って...)

 

確か、配偶者、もしくは交際中の女性がいる場合はある程度免除される...そんな制度があったような気がする。でも、細かいことまではよく覚えていない。

先輩の横顔を見ながら、なんとも言えない気持ちが胸に広がっていく。

 

(もし、このまま先輩と...いや、親切にしてもらっている先輩に対してこんなことを考えるのは失礼だ)

 

俺は自分の考えを振り払うように、そっと首を振った。先輩を義務の免除のために利用しようなんて、そんなことを考えるべきじゃない。

 

「藤宮くん?、ぼーっとしてたけど、疲れた?」

「えっ?」

「あ、いえちょっと考え事を」

「そっか。じゃあ、そろそろ行こっか?」

「はい」

 

俺は先輩の後ろを歩きながら、自身の中にある「悩み」がまた形を変え始めているような、そんな感覚を味わっていた。




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