貞操逆転世界で悩む大学生の話   作:すこマロ

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デートの日から数日が経った。俺はまだ先輩とのあの出来事を思い返してしまうことがあったが、日常は変わらず続いていた。

 

この日、俺はいつもより少し早めに大学に来て、研究室へと足を運んでいた。まだ誰も来ていない静かな部屋の中、俺はパソコンを開き、例の件について改めて調べ始める。

 

(精子提供の義務を免除する方法…)

 

改めて制度の詳細を確認すると、想像以上に厳しい条件が課されていることがわかった。

1. 婚姻関係または交際関係にある異性がいることの証明および交際相手の身分証明書の提出

2. 直近の性交渉が確認できること(体液の調査が必要)

3. 免除申請は3か月ごとに更新が必要

 

(...こんなの、大学生にできるわけがないだろ)

 

特に2つ目の条件が厳しすぎる。体液の検査なんて実質的に性交渉の証拠を提出しろと言っているようなものだし、診断書の提出も容易ではない。

ため息をつきながら、俺は画面をスクロールする。

 

こんなことに先輩を巻き込もうと考えた自分に、嫌悪感を抱く。先輩は優しいし、相談すれば何かしら力になろうとしてくれるかもしれない。でも、こんな個人的な問題に先輩を巻き込むのは、あまりにも自己中心的だ。

 

「藤宮くん、早いね。何してるの?」

 

突然の声に、俺は慌てて画面を閉じようとした。その拍子にマウスが滑り、手元の書類を落としてしまう。

 

「わっ!」

 

先輩が覗き込もうとした瞬間、とっさに画面を隠そうとした俺の動きが重なり、バランスを崩す。次の瞬間、俺たちはもつれるように倒れ込んだ。

 

「っ!?」

 

気づけば、俺は床に仰向けに倒れ、先輩の柔らかい感触が胸元にのしかかっていた。

 

「いたた...ごめん、藤宮くん、大丈夫...?」

 

先輩がゆっくりと顔を上げた瞬間、俺は己の手の位置に気づく。

 

(...えっ?)

 

俺の手は、先輩の胸をしっかりと掴んでいた。

 

「っっっ!?」

 

急いで手を離し、飛び退くように身を起こす。

 

「す、すみません!!」

「い、いいよっ、事故だし!」

 

先輩は顔を赤くして胸元を押さえながら、気まずそうに目を逸らした。俺もまともに先輩の顔を見ることができない。

 

「本当に、すみません...」

「ううん...それより...その...」

 

先輩はもじもじしながら、小さな声で続ける。

 

「...私の方こそ、ごめんね。無駄に大きすぎるから...触れちゃったよね...」

「えっ...」

 

まさかの謝罪に、俺は言葉を失った。

 

「ち、違うんです! 俺が悪いんですから、そんな風に言わないでください!」

「で、でも...藤宮くん、困ってる顔してるし...」

 

確かに俺は今、妙に体が熱くて落ち着かない。先輩の体温が残っているのか、それとも違う理由なのか。

 

「そ、それじゃ、私はもう少ししてから戻るね...藤宮くんも、気をつけて」

 

先輩はぎこちなく立ち上がり、急ぎ足で研究室を出て行った。

俺はその場に座り込んだまま、先輩の背中を見送る。

 

(何やってるんだ...今日はもう帰ろう)

 

触れたときに感じた熱が、妙に体の奥に残っていた。

 

 

帰宅の道すがら、ずっと先輩のことが頭から離れなかった。

研究室での出来事を何度も反芻してしまう。先輩と倒れ込んだときの感触──柔らかくて、温かくて、思わず沈み込むような感触。瞬間的な出来事だったはずなのに、その記憶だけが妙に鮮明に焼き付いていた。

 

「...っ」

 

思い出しただけで、体の奥がじわりと熱を帯びるのを感じる。いつもの自分なら、こんなことを気にすることすらなかったはずなのに。

無意識に胸元を引っ張り、首筋に風を通そうとするが、焼けるような熱は収まらない。

 

(まずいな...)

 

自宅に戻るなり、荷物を置いてすぐに浴室へ向かった。シャワーを浴びれば、この変な感覚も流れてしまうかもしれない。

服を脱ぎ、浴びるようにシャワーを浴びる。熱い湯が肌を伝うが、それでも身体の火照りは収まらなかった。むしろ、湯気のせいでさらに熱がこもってしまうように感じる。

 

(なんでこんな...)

 

目を閉じると、先輩の驚いた表情が脳裏に浮かぶ。頬を赤らめ、少し戸惑ったようなその顔。

 

──『藤宮くん、意外と大胆なんだね』

 

その声が耳の奥で響いた瞬間、胸が強く締め付けられるような感覚に襲われた。

 

「...っ!」

 

慌てて頭を振り、シャワーの温度を少し下げる。冷たい水が熱を持った肌を打つと、一瞬だけ意識がはっきりする。それでも、内側からくすぶるような熱は消えてくれなかった。

先輩に触れた瞬間の感触、体温、香り──どれもが妙に鮮明に焼き付いていて、振り払おうとすればするほど、かえって深く沈み込んでいく。

 

(...ダメだ、考えるな)

 

何度も自分に言い聞かせながら、冷たい水を浴び続ける。

それでも、火照った感覚はなかなか消えてくれなかった。

体全体がじんじんと疼くようだ。

下腹部が特に、燃えるように熱い。

これ以上考えてはいけないと、俺は強く目を閉じた。けれど、どうしても消せない感覚がある。心の中で必死に否定しながらも、俺の手はゆっくりと下へと伸びていた。

 

(...だめだ)

 

自分自身の行為を止めようとするが、義務としての提供と、自分の衝動との間で頭がおかしくなりそうになる。先輩の柔らかさが後押しするように、体は反応してしまう。

 

「...っ」

 

理性と本能がぶつかり合い、どうすることもできず、俺はその場に座り込んだまま、ただ息を整えようと大きく深呼吸を繰り返した。

 

しばらくその状態で耐えていると、体の熱とシャワーの冷たさの中で、自身が

「悩み」にとらわれていることをようやく自覚させられた気分になっていた、このままではきっと何も解決しない、ずるずると先延ばしになるだけであろうこともわかる。

 

嫌悪感の正体と向き合わなければならない。

先輩への感情に答えを出さなければならない。

 

頭の中のスイッチを切り替えるように目を開く。

 

(まずは自分の置かれている状況、悩みの種が一体何なのかを、

もう一度確認しよう)

 

シャワー室を後にして、薄暗い自身の部屋を眺めると少し日差しが差し込んでいるような気がした。

 

 




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