大江山
丹後国の北に位置し、加佐郡、与謝郡、天田群の三郡にまたがる連山である。
全体を大江山連峰と呼称するため実際に「大江山」という山が存在するわけではないが、三つの峰のうち千丈ヶ嶽は丹後地方最高峰を誇っている。
低品質ながら無尽蔵のニッケル鉱脈を有し、終戦直後まで採掘がなされたことで知られている。
―――とまあ、少しこの山について語ったが、最も重要なのはこれであろう。
「大江山の鬼退治伝説」である。
現在にまで残されている伝説は三つある。
一つは崇神天皇の弟、彦坐王による土蜘蛛の陸耳御笠を退治したという伝説。
二つは聖徳太子の弟、麻呂子親王が三匹の鬼を退治した伝説。
そして三つ目、源頼光率いる源氏武士団による、酒吞童子一派の退治伝説である。
彼らが悪鬼を討って20余年、大江山が四たび戦場になるときが来た。
千丈ヶ嶽付近に陣が設けられた。
空亡の位置を特定した源氏武士団の動きは早く、数日としないうちに刀を怪異らの喉元に突き立てた。
その中心で有力者たちが一堂に会している。
このような大規模な戦は久方ぶりで、誰もが興奮を隠しきれず、陣は俄かに騒がしい。
「殿の御成りにございます」
しかしその喧騒は小姓の一声で静まり返った。
姿勢を正して平伏し、自分たちの主を迎え入れる。
天幕が上がり、一人の男が陣に入る。
早すぎず、しかして遅すぎず。床几に座った男から声が掛けられる。
「面をあげよ」
源左衛門尉頼国
源頼光が嫡男にして、今現在源氏を纏め上げている男だ。
父頼光が筋肉質の大男であるのと比べて彼は中肉中背。特に目立つものは無い。
しかしこの場に彼を侮る者はいない。酒呑童子討伐戦にも同行し、茨木童子の居城であった鬼ヶ城を攻め落とす功績をあげている。
そして何よりも、彼の恐ろしさは政治手腕。
彼の位階は従五位下と決して高くない。しかし原則四位以上のものにのみ許される内昇殿を許され、時の権力者である藤原道長が催した漢詩の会に招かれるなど、官位以上の待遇を受けている。
それが源氏にもたらした利益は大きく、貴族からの侮蔑の目はかなり減った。そのため皆が彼こそが源氏の頭領たる器であると認めており、英雄源頼光が生存しているにも関わらずその影響力は影に隠れることはない。
「前置きは不要、皆に情報を共有しておきたい。四の姫殿」
「はっ」
呼ばれて四の姫が前に出る。
陰陽師らの代表として陣に詰めていたのだ。
「此度は馳走、感謝する」
「恐悦至極にございます。陰陽師100名、左衛門尉様の指揮下に加わりたく、馳せ参じました」
彼女を見る周囲の目はお世辞にも良いとは言えない。
女子供であるのに加え、先の陰陽寮の失態により関係が微妙なものとなったためだ。
だからこそ源氏の頭領たる彼に遜ることで、陰陽師への悪感情を少しでも抑えようとしているのだ。
(なんで私がこんなこと・・・)
勿論内心では不満だらけだ。
先の一件、四の姫は源氏に介入させるべきだと主張した、いわば非主流派だったのだ。
その意見を無碍にしたにもかかわらず、いざ失敗に終われば自分に負担を押し付ける。
「
「うむ。退魔を生業としている貴殿らが力を貸してくれるとは、とても心強い」
四の姫の考えは、左衛門尉も大まかに理解している。
そして今陰陽師との関係を表立って悪化させてはいけないことも。
今回の戦に勝利するためには武士と陰陽師、双方の力が必要である。
両者の考えは合致し、結果少しだけ四の姫への敵愾心が薄くなる。
それを見計らって四の姫が声をあげる。
「では、現在の状況を知らせたく思います」
彼女の言葉に少し緩まっていた空気が再び引き締まる。
陣の中央には大江山の地図が置かれている。現代のものには遠く及ばないが、先の討伐戦に加わった者達や地元民の協力によって作られており、今回の戦においても重要な役割を果たしている。
「我々は今、千丈ケ嶽から北に一里ほど離れた場所に布陣しております」
四の姫が現在地を大まかに指し示す。
「私が“視た”のは二つ。一つは首魁である空亡の位置です。あれは現在千丈ケ嶽の山頂部におります。もう一つは『陣』の場所です」
四の姫の言葉に、ほとんどの武士が「陣?」と首を傾げた。
それを見た左衛門尉が四の姫に「皆に分かるよう説明せよ」と命じた。
「はっ。彼の者は大江山にて何やら儀式を行っている様で、四方に陣を敷いていることが判明しました」
四の姫の言葉に陣内がざわめくが、左衛門尉が「静まれ!」と一括する。
「術式の内容は?」
「異国の言葉で形成されているようで、詳しい内容は不明です。ですが一部には宋の言語が使われており、それによると何かを増幅し、集中させるものではないかと推測しております」
「術式が完成するのは?」
「早くて、今夜かと」
四の姫の言葉に、今度は陣内が静まり返った。
無言で互いを見つめ合う中、一人の武士が手をあげた。
「茨木童子ら、大妖怪の居場所は割れているのか?」
頼光四天王が一人、渡辺源次綱だ。
浦辺坂上季武と共に、今回の戦にも参加していたのだ。
彼の問いかけに、四の姫は首を横に振ることで答える。
「申し訳ございません。遠見の術は完璧ではなく、先の二つを視るのが限界でした」
彼女の言葉に、武士たちの表情が益々渋くなる。
不確定な要素が多く、脅威が非常に大きい。難しい戦いになることを予見できない者はこの場には居なかった。
勿論左衛門尉も例外ではなく、扇子で肩を数度叩くと、諸侯らを見渡した。
「目標を定める。第一に、陣を破壊し空亡の企みを阻止すること。第二に、空亡の討滅。第三に、茨木童子を始めとした大妖怪の討滅。なお第二、第三の達成が困難であると判明した場合、第一を達成した時点で撤退、態勢を整えた上で再度攻略する」
ざわつく武将たちを無視し、「意見のある者は遠慮なく申せ。これは軍議ぞ」と言い放つ。
その態度は正しく英雄そのものであった。
「四の姫殿、異存は?」
左衛門尉は問いかける。
安部家は芦屋道満の討伐に拘っていた。その姿勢は空亡が黒幕であると知った今でも変わっていない。
左衛門尉は言外に「空亡の討伐は優先しない」と言ったのだ。彼女の反応が気になるのも当然であった。
「ございません。父である陰陽頭も納得しております」
意外にも四の姫は即答した。
納得するというか、せざるを得ない状況なのだ。
先の失態によって現当主である陰陽頭吉昌の立場は揺らいだ。次に大きな失態を犯せば隠居させ、当主の交代という話も出てくるだろう。
彼女の言葉に左衛門尉は頷き、周囲の顔を見渡した。
「異存はないな?ではこれより軍を五つに分ける。西方を担当するのは―――」
大江山攻略に向けて着々と動き出す源氏武士団。
その動向は当然、山頂の妖怪たちにも伝わっている。
「隠居の左馬権頭に四天王の二人、加えて当主の左衛門尉まで出張ってやがる。
隠神刑部に偵察してきた狸の一匹が話しかける。
ここまでは予想通り。前回の襲撃を考えても、この展開の速さは考慮済みだ。
しかし彼の表情は晴れることはない。
「・・・」
「頭領?」
「分福、源氏の奴らが軍を分けてるってのは本当かい?」
分福と呼ばれた、どこか間の抜けた狸が答えた。
「そーだよー?一つは後ろに下がっててー、他の四つがこの山を囲んでるみたーい」
「その四隊の場所、詳しく教えてくれるかい?」
下がっている隊、これは本陣で左衛門尉がいるのだろう。それは良い。
問題は他の部隊だ。隠神刑部の推測が正しければ・・・
そうならないことを祈りながら、分福の答えを待つ。
「えーっとねー」
地面に地図を描きながら、四隊が布陣している場所を詳しく語る。
深追いしないように命令していたこともあって、数人を除いて、誰が属しているかなどの詳しい内容を知ることは出来なかったが、もたらされた情報は隠神刑部にある決断を下させるには充分だった。
「・・・全員、今すぐ山から下りな」
唐突な頭領の言葉にざわつく狸たち。
「どうして」「怖気づいたか」などと一瞬パニックが起きかけたが、隠神刑部の一括によってすぐさま静まり返った。
「オイラたちが情報を漏らしたのは空亡の奴の居場所だけ。なのにアイツらは空亡が展開した、よく分からない陣への最短距離上に布陣してる」
「・・・」
「この数日間、大江山に近づいた人間はいない。にも拘らず情報が洩れているということは、相手側には空亡並みの化け物がいると見て間違いない。頭領として、負け戦を押し付けるわけにはいかない」
うなだれている狸たち。だが隠神刑部にとってこれは決定事項だ。
相手が武士団のみであるならば、彼も退却は選ばない。
狸たちの本領は山中での攪乱性。大江山には原生林のブナ林が広がっており、例え手練れの武士が相手だったとしても、十二分に戦うことができる。
だが、それ以前に、戦いが成立しないのであれば話は別。
前回の襲撃戦では、あの空亡相手に互角以上の闘いを繰り広げた者がいると聞く。
そんな相手では戦い自体が成立しない。むざむざと部下たちを無駄に殺させるわけにはいかない。
「太三郎」
「・・・へぇ」
隠神刑部の言葉に、一匹の狸が前に出る。
狸たちの中でも古株の一匹で、実質的にナンバー2の地位にある狸だ。
「君が皆を纏め上げて山を下りること」
「・・・恐れながら、頭領はどうしますので?」
「君たちが山を下りきるまで時間を稼ぐ。これでも君たちに頭領だし、そもそもこの窮地を生み出したのはオイラだからね」
部下たちを説得し終えたときには、既に太陽は傾きつつあった。
逃げるべきだと説得されたが、隠神刑部は既に顔が割れている。彼がいないことが分かると、死に物狂いで自分たちを追う可能性がある。
とは言っても、死ぬつもりは毛頭ない。先の戦場とは異なり、山中は化け狸である自分にとって庭同然。時間稼ぎに注力すれば、例の化け物と接敵したとしても勝算はある。
陣の動きから見て日の入りと共に攻めてくる。
そう見た隠神刑部は大江山の西側へとその四足を動かしていた。
「逃げるのですか?」
背後から声を掛けられたのは、そんな時だった。
「・・・
粛清に来たのか、と警戒したが、彼女には殺気の欠片も見当たらなかった。
むしろ、何やら憂慮するような表情だ。
「悪いが、先に約を破ったのはそっちだよ。『一緒に京の都を落とそう』って話だったのに、その実はオイラ達を捨て駒にすることだったんだからさ」
「・・・そうでしょうね」
茨木童子の態度に隠神刑部は眉をひそめる。
この口振りでは、彼女は空亡の策を最初から知っていたのではないか。
そう問い詰めたが、茨木童子は首を横に振った。
「
嘘は言っていないだろう。鬼は嘘を嫌悪している。
「頭領であれば、貴殿の選択は正しいでしょう。あの方も・・・いえ、なんでもありません」
彼女の目に、少しの間だけ懐旧の念が宿った。
そう、少しの間だけ。すぐさまそれを振り払った。
「で、オイラを殺すかい?」
「いえ、止めておきましょう。貴殿の生死を決める資格は、
茨木童子は優雅に一礼すると、背を向けた。
その背に向けて、隠神刑部は声を掛けた。
「アンタが御執心の子供、東側の陣にいるらしいね」
唐突にもたらされた情報に、茨木童子は足を止める。
二人の関係は険悪とは言わないが良好という程でもない。
彼女はその真意を測りかねている。
そんな心情を読み取ったのか、狸はその表情を歪めた。
「・・・オイラは人間とは違う。一時的とはいえ居場所を提供して貰った恩、それを返しきったまでさ」
そう言うなり、木々の枝に乗って姿をくらましてしまった。
礼を言う隙など、全くありはしなかった。
そうしているうちに、日は沈む。
怪異の時間、そしてそれを滅する者達の時間が幕を開ける。
大江山、西方
『“灯せ”』
暗闇が支配する大江山に向けて、霊力が込められた札が次々と投げ込まれる。
ある札は木の幹に張り付き、またある札はプカプカと空中に浮遊する。
「進めェーーーッ!!!」
穏やかに照らされた道を、
山中の戦いにおいて、不利であるのは下り側。
だからこそ罠を張って待ち伏せていたのだが、太陽が出ている間、怪異らは一向に攻めてくる予兆が無かった。
これ以上待っていては時間切れになる。よって彼らは日の入りと共に、奇襲という形で火蓋を切ったのだ。
それが功を奏したのか、何の障害もなく中腹辺りまで歩みを進めることができた。
しかし上手くいったのはそこまでだ。
「人間が!」
「死ね!」
「―――!」
だがその程度で武士は怯まない。物量は僅かに劣っているが、動揺することなく陣形を整える。
「敵が構築した陣を目指せ!」
「「「応ッ!」」」
「殲滅ではなく突破を第一とせよ!」
「「「応ッ!」」」
怪異軍団が僅かに気迫に押される。
陣形を一点に集中させ、怯んだ隙を容赦なく突破する。
が、しかし、当然ながら怪異は強大。やがてその魔の手にかかる者も出てくる。
だが彼らの気迫は衰えない。死の寸前まで刃を振るい、誰一人として感傷に浸らない。
近年の研究によって鎌倉武士がバーサーカーであったことが判明したのは有名だ。
彼ら平安武士はその先祖。その勇猛さは推して知るべし、である。
死ぬ順番は既に決めてある。
陣の解除には陰陽師は必要不可欠。その数に限りがある以上、その守りを優先するのは当然だ。
だが彼らもただそれに甘んじている訳ではない。退魔の第一人者であるという自負がある。
術によって足止めをし、結界によって武士の身体を護る。
「“滅”!」
中でも目覚ましいのは四の姫の活躍。
安部晴明の再来というのは伊達ではなく、数の不利を感じさせない勢いで次々と怪異を滅していく。
「四の姫殿!無茶はせぬ様に!」
武士の一人によって諫められる。
彼女の力は強大であるが、人間である以上限界がある。
出来るだけ温存し、空亡戦に当てたいという思いもある。
「しかし・・・」
「そうそう、ここは俺達に任せてくれや」
かといって大人しくしていられるような性格ではない。逸る彼女を隣にいる友人が諫めた。
既に鎧は血で染まっている。それが誰のものであるか、判別はつかない。
彼らは順調に、ニ刻とかからないうちに陣の間近へと迫っていた。
だが、ここで異変が生じる。
「―――ッ!伏せろ!」
最初に
彼の叫びもあって大半の人間は反応できた。しかし反応できなかった人間には無情な最期が訪れる。
飛来した木の枝が彼らの頭に突き刺さる。
と同時に高速で回転を初め、頭蓋骨を容赦なく粉砕する。
脳漿と血液を派手にぶちまけながら大地に伏す。だが
死体が急速に膨らんでゆく。その結末を知っている五郎は隣の友人に声を掛ける。
「姫さん、結界を!」
「分かっています、“封”!」
結界が死体を保護すると同時に、死体がはじけ飛ぶ。
血液が槍の形へと変わり、周囲へと拡散する。
しかしそれは四の姫が構築した結界によって阻まれ、血の槍は結界を破らんと暴れまわるも、結界は微動だにしない。
「仕留めたのはたったの三人か・・・」
残念そうな声が樹上から響く。
その声に、五郎は聞き覚えがあった。
「オイラの流儀じゃないが、名乗ろう。我が名は隠神刑部!伊予国より来たりし、八百八の化け狸を率いる頭領である!この先に進みたくば、我を倒してからにするがよい!」
大江山 東方
この方面では四方の中でも特に怪異の数が多く、武士団は上手く攻められずにいた。
特に厄介なのが、そのほとんどが鬼で構成されている点。中には名のある鬼もおり、東方を請け負っている渡辺源次綱も動けずにいた。
「・・・」
「・・・」
しかしただ一人だけ、陣の間近へとたどり着いていた者がいた。
対するは一匹の鬼。
殺意すらなく、戦場であることを疑問視してしまうほど。彼女らの周囲だけ、異様な静寂を保っていた。
「もう一度申し上げましょう、
静寂を破ったのは、茨木童子であった。
穏やかに、そして丁寧に。
「どうか、
彼女が善意で言っていることは、流石の
だがしかし、彼女は首を動かさない。
「・・・いろんな人に、いろんな事を聞いた」
彼女はぽつぽつと語り始めた。
遠くで聞こえる剣戟も、何一つ耳に入らない。
「皆には戦う理由も、夢も、目標だってある。でも・・・私には何もなかった」
武士になりたての青年も、元気いっぱいの陰陽師も、鬱陶しくも愉快な狐も、・・・夢に出てくる、異界の戦友も。誰も彼も当たり前のように持っている。
でも、私には何もない。知ったのはそれだけだった。
「空っぽで、何もない。だからこそ、皆を見ていたいと思った」
そう、ただ隣で見ていたいのだ。
私には無いものをたくさん持っている、彼らの道を。
共に食べて、共に話して、共に戦う。そうして彼らと生きていたいと、そう思ったのだ。
「・・・貴女は、人間ではありません。親しい人間は貴女を置いていきます」
「偶には、その子供たちの顔を見に行ってもいい」
「貴女は、人間に疎まれるでしょう」
「じゃあ別の場所に行く。いろんな人の人生を、近くで見ていたい」
そう、もしかしたら、高望みかもしれないが。
―――その旅の果てに、空っぽの私にも、何か見つけられるかもしれないから。
「そう、ですか―――」
説得は、不可能。それを十分に知ったのか、茨木童子の意識が切り替わる。
話し合いから、戦闘へと。それと同時にあたりに濃密な妖気が漂い始める。
「妲己、一緒に来てくれる?」
それに応えるように、彼女の隣に紫色の火の玉が出現した。
「ふん。高が小娘一人の命、余が気にも留めるほどではない、が―――」
顔がないはずなのに、何故か彼女が笑ったような気がした。
「―――まあ、一人旅も飽きたからのう。特別、特別に!余に侍る権利をやろうぞ!」
心底上機嫌、と言う風に火の玉が
そんな彼女の様子に、
「―――ありがと」
風に吹かれれば容易く消し飛んでしまいそうな、か細い声。
しかし狐は聞き逃さなかったようで、一瞬空中でピタリと止まると、
「ん~~~?聞こえんかったのう?もう一度、お・お・き・な声で言ってほしいものじゃ―――ブヘッ」
「うるさい」
その有様はまるでハエたたきで撃墜させられたハエのよう。
戯れながらも、茨木童子への警戒も絶やさない。
双方の緊張は極限まで高まる。二色の妖気が、二人の対立を表すように激しくぶつかり合っている。
「―――いいでしょう。ならば貴女を源氏の一団として、ここで始末させていただきます」
結膜が、真っ赤に染まる。
古来より怪物の象徴。瞳孔が開き、獲物を見定める。
「変容」
呟くと共に、彼女の身体が変化する。
あたりに振り撒かれていた妖気が一身に凝縮し、突風を引き起こすほどの衝撃波を生み出す。
土が巻き上がり、木々が騒然とする。何事かと、眠っていた鳥たちが次々と羽ばたく。
視界が晴れたとき、そこにいたのは一匹の鬼。
黒い岩のような皮膚に全身を犯され、二本の角が天に向かって聳え立つ。
真っ黒な体の中、赤い目が妖しく光る。
怪異:茨木童子
京の都で乱暴狼藉を繰り返し、その悪名を轟かした者。
令和の世まで語り継がれる悪鬼が、再びその本性を露わにした。
「妲己」
「全く・・・少しは丁重に扱わんか!」
妲己の文句を一切合切無視し、
やれやれと妲己は調伏之具の中心、硝子玉の中にスルリと入る。
透明な玉が紫色へ染まり、それを合図に
大金剛輪印、外獅子印、内獅子印、外縛印、内縛印、智拳印、日輪印、宝瓶印―――除災戦勝を祈る印は、彼女に悪なる妖気を制御する力を与える。
「変身」
漏れ出た紫色の妖気は、まるで巨大な狐のよう。
妖気は彼女を慈しむように、小さな体を抱きしめた。
《急急如律令紫炎退魔!滅炎!》
一見すると、怪異の一派。
しかし実のところは怪異の狩人。
怪異の力を以て怪異を滅する者、それが彼女だ。
怪異:茨木童子は張り裂けんばかりの声を上げる。
「我が名は茨木童子!偉大なる首領、酒呑童子様が配下にして、酒呑童子様の第一の妻!我に正面から立ち向かわんとする者よ!貴殿の名を伺おう!」
茨木童子の名乗りを受け、ただ「滅炎」と名乗ろうとして、ふと止まる。
―――あの時は、名乗れなかった。でも今なら、今なら胸を張ってこの名前を名乗れるはず。
「―――仮面ライダー、滅炎」
誰かの為に、戦う
彼のように清廉な理由じゃないけれども、それでもいいなら、どうか名乗るのを許して欲しい。
斯くして、この世界で初めて「仮面ライダー」が生まれた。
決戦の火蓋は、切って落とされたのだ。
答えを見つけたような気がする主人公
持たざる者は持つ者に憧れるという。だから、彼女は憧れたのかもしれない。
別の世界で戦った褒美として、少しだけ記憶を持ち出すことを許された。
彼女が「仮面ライダー」と名乗ったことは、別の時代に大きな影響を与える―――かもしれない。
彼女の別世界での活躍は↓をチェック(宣伝)
https://syosetu.org/novel/376710/
共に歩むことを決めた狐
結構
内心では超嬉しい。
姫と武士
中ボス戦
超キョウリョクプレーで、クリアしてやるぜ!
中ボスな狸
責任を取って覚悟を決めた。
死ぬつもりは毛頭なく、何なら皆殺しにする予定。
―――予定。予定は未定、って言葉もあるよネ!
中ボスの鬼
主人公ちゃんに素っ気なく振られた。悲しいね。
別世界の友人
さて、誰のことでしょう?(しらばっくれ)