仮面ライダー滅炎   作:熊澤しょーへい

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 平安京、特に内裏周りの描写が難しい今日この頃。




 京の片隅、秘密裏に作られた建物にて。

 

 男の叫び声が響き渡る。

 紫の炎に包まれて、焼死することなく自らの肉が焼ける苦しみを永遠と味わっている。

 

 祭壇の四隅には篝火が焚かれ、部屋を二十を超える陰陽師が囲んでいる。

 全員が白い装束を着、顔を布で隠し、途切れることなく呪文を唱えている。

 壁一面には破邪の札が張られており、万が一彼女が翻意したときはここに閉じ込める算段だ。

 

 祭壇には数多の文様が描かれ、その中心で男性が死の舞踊を踊っている。

 そしてそれを傾国の美女が退屈そうに肘をついて寝そべっている。

 

 ただの女、と甘く見るものはこの場に居ない。そんな実力差も見抜けないものは新人か死者だけだ。

 力の大半は失っているものの、元は日ノ本の名のある妖魔と同等かそれ以上の力を持っていた正真正銘の災厄。

 大陸からやってきた化け物なのだ。

 

 ほどなくして炎に包まれていた男がこと切れる。男の痕跡は灰すら残らず、文字通りこの世から消滅したのだ。

 

「これで九人、か・・・」

 

 部屋の上座に座る老齢の男が悲し気に呟いた。

 彼らも好んでこのような惨劇を起こしている訳ではない。

 

 平安の世はその始まりから幾度も危機に晒されてきた。

 長岡京にまつわる数多の死、早良親王の怨霊、菅原道真公の祟り―――数えればキリがない。

 

 そして近年では鬼と呼ばれる妖魔の大量発生。首魁である酒吞童子は源氏武士団によって打ち取られたが、茨木童子など名のある鬼の一部や生き残りは未だに逃走している。

 

 それでも上座に座す老人の結界によって都の平穏は保たれていたが、その老人の寿命は尽きようとしている。

 それによって発生するだろう被害を少しでも減らすべく、この儀式を行っているのだ。

 

「晴明、もういいじゃろう?このような詰まらん余興を見させられる余の身にもなってほしいものじゃがな」

「・・・まだだ。お前との約定は『私の指定する人物十名に妖力を分ける』というものだ。まだもう一人残っている」

 

 頑固ジジイが、そう悪態をついて美女は床に寝そべる。

 しかしこれも身から出た錆。大陸で半殺しにされた妲己は傷心のため噂で聞いていた島国にわたり、博打でぼろ儲けしていたところを市民に扮していた老人に見つかったのだ。

 

 彼女にも大妖としてのプライドもある。正面から晴明を血祭りにあげようとしたところ無残にも返り討ちにあったのだ。

 ちなみに晴明の戦いぶりは軽くトラウマになっており、一か月以上経った今でも偶に夢に出てくるほどだ。

 

 呆れたような視線を上座に座る老人に向けていると、一人の少女が祭壇に捧げられた。

 

「―――ほう」

 

 妲己は初めて生贄に選ばれた人間に興味を持つ。

 ボロボロの身なり、瘦せこけた体。過酷な生活をしていたのだろうが()()()()()()()()()()()()

 興味を引いたのは少女の目。日ノ本の民に見られるような黒色なのだが、そこには何の感情も映し出されていない。

 恐怖、不安、絶望、安堵。これまでの九人はそれぞれの感情を宿していたが、少女の瞳には何も映っていない。

 呼吸していなければ精巧に作られた像と勘違いしただろう。

 

「お主、名は何という?」

 

 妲己は戯れに聞いてみる。

 それはお願いではなく圧倒的上位者からの命令。弱体化してなお濃厚な妖気を放出し、少女に向けて放つ。

 生存本能を揺るがすほどの圧倒的なプレッシャー。それに充てられた陰陽師たちは冷や汗をかいて震えている。

 

「・・・?」

 

 少女は変わらず、何を言っているのかという風に首を傾げる。

 心では恐怖は感じているようだ。しかし()()()()()()()()()()()()()()()()()()ようで、疑問符を浮かべて首を傾げている。

 少女は空虚ではない。いやある意味では空っぽだと言えるだろうか。彼女は無知なだけだ。自らの抱く感情の意味すら知らないほどの。

 

 そうしている内に儀式が始まり、陰陽師たちの奇妙な詠唱が部屋いっぱいに木霊する。

 同時に妲己の身体から無名の少女の身体へと紫色の妖力が流れてゆく。

 

 他の人間とは異なり驚くほどスムーズに少女の身体に妖力が蓄積していく。

 多量の妖力は人間にとって毒だ。それを過剰に取り込んだものの末路は先ほどの人間が示している。精神が崩壊しかねないほどの痛みを味わっているはずなのに少女の無表情は崩れない。

 それどころか―――

 

「こやつ、どこまで―――」

 

 妲己の身体が崩壊してゆく。肉体を構成する妖力すら少女に取り込まれつつあるのだ。

 慌てて取り込まれている妖力との接続を切り譲渡を阻止しようとするが、まるで掃除機のように妖力が少女に吸い込まれるためその隙が全く見当たらない。

 

「―――ッ!」

 

 空の魂を満たすように妖力を取り込んでゆく。

 妲己の身体は完全に崩壊し、その全てが少女の血肉となった。

 

 12年前、1005年の夏。この世界の原初の仮面ライダーはこうして誕生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とっとと起きろ!!!」

 

 平安京、町尻小路と塩小路が交わる場所。その一角にある質素な建物の一室に青年の声が轟いた。

 日は既に頂上に届きつつある。

 

「・・・」

 

 (とお)は麻布から顔を出し、日光を確認するとモゾモゾと頭まで麻布を被った。

 今が朝だろうと昼だろうと関係ない。(とお)は眠い。ならば寝ないという選択肢があるだろうか?

 

「させるか!」

 

 図々しくも二度寝を決めようとした(とお)の麻布を無情にもめくる。

 温かい体に外気が襲い掛かる。

 冷たい視線が青年に突き刺さるが、この程度で怯むようでは(とお)の世話係などやっていけない。

 寝そべって抵抗する(とお)の襟首を掴んで寝所から引きずり出す。

 妖力を使ってでも抵抗する(とお)だったが、青年―――五郎は15歳とは思えぬ鍛えぬいた筋力で何とか起き上がらせる。

 

 コイツと暮らしていると嫌でも鍛えられる、とは先代の世話係の話。

 五郎は話半分に聞いていたが、現在それを身をもって痛感させられている。

 

「ほら、朝餉はとっくに出来てるから早く食え」

 

 手慣れた様子で(とお)の前に食事を置いてゆく。

 麦の雑穀にゆでた野菜、干物、海草の入った汁物。安っぽいが干物が出ているので他の庶民からすればごちそうだ。

 

「・・・」

 

 (とお)は寝間着のまま料理を口に運ぶ。モグモグと表情一つ動かさず口を動かしている。

 もちろん文句の一つも言わなければ感謝の言葉もない。それは五郎も承知だ。

 問題なのはもう一匹の方だ。

 

「まったく、いつもと変わらぬのか。偶には肉の一つでも持ってこい」

 

 妲己が外野から文句を飛ばす。

 この二人どうやら幾つかの感覚を共有しているようで、その一つが味覚だ。

 

「京をわざわざ護ってやっているというのに余に下賜する食事が庶民と同じものとは。陰陽師は何処までもひねくれた性格のようじゃ」 

 

 黙々と一定の感覚で箸を動かす(とお)とは正反対に、グチグチと文句を言い続ける妲己。

 ストレスを発散させることも出来ず、五郎のいら立ちは募るばかりだ。

 

「そんな高級品買えるか。そんなに言うならお前が狩ってこいよ」

 

 そうつい妲己に言ってしまう。

 妲己は怒るでもなく、きょとんとした表情―――火の玉なのでそんなものはないが―――言ってのけた。

 

「なぜ余がそんなことをせねばならぬのだ?」

 

 嫌味などではなく完全に素で言ってのける。

 

「というか貴様、余のことを『お前』と呼んだな!その不敬万死に値する、死にさらせぇ!」

 

 五郎が呆れて何も言えないでいると、火の玉が猛スピードで突進してきた。

 軽く手で弾いてやっても負けじと何度も続けてくる。

 いい加減鬱陶しく感じていると、ふと(とお)の箸の動きが止まった。

 

「うるさい」

 

 いつもと変わりない声だが、何となく冷たい雰囲気が含まれているように感じる。

 後悔したのも後の祭り。手慣れたように妲己を掴むと、部屋の隅に置いてある水桶に手を持って行った。

 

「待て待て!貴様を攻撃したわけでは無かろう?!」

 

 慌てて取り繕うが、その程度の命乞いが(とお)に通じるはずもない。

 妲己を掴む手が徐々に水面に近づいてゆく。

 

「うるさい」

「分かったから!大人しくするから水は止めよ!」

 

 数度のやり取りの後ようやく妲己は解放され、(とお)は何事もなかったように食べ物を再び口へと運んで行く。

 息も絶え絶えな妲己に、五郎は以前から抱いていた疑問を投げかけた。

 

「アンタ、水が弱点なのか?」

 

 彼女の現在の姿は紫色の火の玉だ。水をかけるだけで呆気なく消滅してしまいそうに見える。

 『アンタ』という言葉に一瞬反応したが、(とお)の視線を察知したのか先ほどのように騒ぎ出すことはなかった。ただし心のメモ帳にはしっかりと先ほどの所業を書き加えている。

 

「そんなもので余が消滅するわけなかろう?」

 

 そう、こう見えても妲己は大妖怪の一体。はるか昔に大陸で栄華を極めていた殷を滅ぼし、その後も各地で悪逆の限りを尽くした()()()()()存在。

 日本の元祖チーターの一人である安倍晴明には敗れたものの、彼が本気を出してなお討滅ではなく力の封印という手段を使わざるを得なかった存在なのだ。

 ならばなぜ水を恐れるのか。五郎の疑問が加速する。

 

「ただの、日ノ本に来るときに大嵐にあっての。危うく溺れ死ぬところだったのじゃ」

 

 なるほど、精神的苦痛(トラウマ)によるものらしい。

 五郎が納得していると、突然長屋の扉が開かれた。

 

(とお)ちゃん、妲己さん、五郎さん!私です、入りますよ!」

 

 そう言い終えたときには声の主は部屋に上がり込んでいた。

 天真爛漫をそのまま人の形にしたような少女は庶民が着るような小袖と褶を着ていたが、その身からあふれる高貴なオーラはどうしても隠しきれていない。

 

「四の姫様!?」

 

 五郎は慌てて平伏する。

 安倍晴明の子にして安部家現当主である安部陰陽助吉平の四人目の娘で、「四の姫」と呼ばれている少女だ。

 安部家は家格は従四位上といわゆる中流貴族なのだが、陰陽寮を率いる存在であり、当主も名のある陰陽師であるため貴族の中でも一目置かれる存在だ。

 四の姫も卓越した陰陽道の使い手であり、このまま成長すれば清明に匹敵する陰陽師になると噂されている。

 

「そんな堅苦しくしなくていいですよ、五郎さん!」

 

 四の姫はそういうが、五郎は未だに敬語を外すことは出来ない。

 武士団の男社会で育った五郎にとって貴族の、しかも女性というのは最近まで疎遠だった存在だ。どうしても肩に力が入ってしまう。

 ちなみに四の姫が五郎に対して敬語なのはいつまでたっても敬語を止めない彼への当てつけだったりする。

 

「ん」

 

 麦を口に含みながら(とお)が軽く手を振る。

 ちなみに身分や立場に関わらず彼女は一貫してこの態度だ。

 初見の四の姫に対しても不愛想な態度を貫き、隣にいた五郎が青ざめたのも今では昔のように感じる。

 

 変わらない(とお)の態度に、四の姫は自宅にいるような安心感を覚える。

 

「ほらほら、五郎さんも(とお)ちゃんを見習ってくださいよ!」

「そう言われましても・・・」

「「(じー)・・・」」

「・・・分かりま、分かった。これでいいか?」

 

 二つの視線―――主に(とお)の―――に耐え切れず、とうとう五郎は折れた。

 (とお)の無表情から繰り出される冷たい視線は、例えそのつもりはないと知っていても殺気を感じる。

 数えるほどしか実戦に出向いていない五郎にはとても耐えられない。

 

「あれ、妲己さんは?」

 

 四の姫が現れてからどこかに消えた妲己。

 しかし本体ともいえる(とお)から大きく離れることは出来ない。それを熟知している四の姫は妖気の痕跡を辿り・・・

 

「いました!」

「ヒッ!」

 

 膳の下に隠れていた妲己を見つけ出す。

 妲己は悲鳴のようなものを上げ、そそくさと(とお)の頭の後ろに隠れる。

 

「な、何の用じゃ晴明の孫!余を祓うつもりなら臣下であるこやつを倒してからにせよ!」

 

 さらりと(とお)を身代わりにする妲己。

 他の安部家の人達に対面してもこうはならず、四の姫のみを異様に恐れている。

 彼女曰く、「晴明の匂いに近すぎる」とのこと。どうやら彼にコテンパンにのされたことが今でも心に刻まれている様だ。

 

「違いますよ!父上から(とお)ちゃんへの『早急に陰陽寮に出向くように』という伝令を伝えに来ただけです!」

 

 四の姫は慌てて弁明する。

 (とお)は名目は陰陽寮の管理下にある。呼び出すのは昨日倒した鬼の報告を聞くためだろう。

 

 四の姫はこれから仕事があるようで、名残惜しそうに去っていった。

 

「次こそ遊ぼうね!」

「ん」

 

 (とお)もどこか悲しそうにそれに答える。まあ無表情なのは相変わらずだったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食後、大内裏正面朱雀門前。

 

「いいか、いつも通りぜっっったいに口を開くなよ」

 

 五郎は二人に念を押していた。

 因みに長屋を出てからこれで七回目だ。

 無遠慮な(とお)に話させるのは論外。相手は朝廷内でも影響力を持ち、陰陽寮の支配者の一人なのだ。成人も済んでいない武家の首など簡単に跳ね飛ばされる。

 妲己は弁は立つが、如何せんここは妖魔と戦う陰陽師の巣窟であるのと同時に貴族たちが集まる場所。いつものように見下したような発言をしてしまえば、これも五郎の命はない。

 

「む」

 

「なぜじゃ。余はそこの小娘とは違うぞ」

 

 だからと言って二人にとって面白いことではない。

 不貞腐れた様子で猛抗議する。

 しかし五郎も譲れない。ここで引き下がったら源氏の名が廃るし、命の保証もない。

 

 そして刻一刻と時間も過ぎている。五郎は台所と財布を握るものとして最後の切り札を繰り出した。

 

「もし内裏のなかで口を開かなかったら、夜に出す干物を二枚、いや三枚にしてやる」

「「!!!」」

 

 五郎の言葉を聞いて、二人の目の色―――1人は無表情でもう一人は火の玉だが―――が変わる。

 そうして黙った二人を引き連れて五郎は応天門を潜る。

 

 武士見習い、身元がはっきりしない者、妖怪。この国の支配者たちが集う内裏にはおおよそ相応しくない存在。だが朝廷の中枢に切り込んでいる陰陽助の一人が呼び出したということもあり、驚くほどスムーズに中へと通された。

 

「あれが噂の―――」

「ええ。半妖になったとかいう―――」

「都どころか内裏まで化生の存在を許すとは―――」

 

 しかし人間というのは噂好きな生物。どこからか嘲笑するような声が聞こえる。

 漏れたのか、それともワザとなのか。耳を澄まさずともしっかりと届いた。

 五郎は慌てて(とお)を見る。いつも妲己にしているように貴族相手に無礼を働くことを恐れたのだ。

 

「・・・?」

 

 だが彼の心配は杞憂だった。

 唐突に振り返った五郎に、(とお)は無表情のまま首を傾げる。

 なぜ五郎がこちらを見たのか分からなかったようだ。

 一安心だが問題児はもう一匹いる。

 

「・・・ふん」

 

 五郎の視線を感じて鼻を―――火の玉なので無いが―――鳴らす。

 先ほどの約定が効いているのか、幾分か不満そうだが妲己も何かをしでかしそうな雰囲気はない。

 ホッと息を吐いているうちに中務省(なかつかさしょう)が見えてくる。

 

 最重要の省とされる中務省(なかつかさしょう)だが、その中に目的の陰陽寮がある。

 門の近くに居た役人に話しかけると少し嫌な顔をされながらも中に案内してくれた。

 

 案内されたのは片隅の小部屋。中に居たのは男が一人だけ。

 彼こそが安倍吉平。晴明亡き今、彼が間違いなく平安最強の陰陽師だ。

 

 上座に座っている吉平に対し、五郎は下座にて膝をつく。

 (とお)もそれに倣い、妲己は火の玉であることをいいことにふんぞり返った。

 曰く、晴明の息子に下げるような頭はないとのこと。

 

「陰陽助様、わざわざお呼び出し頂いたにも関わらず遅れましたこと、深くお詫び申し上げます」

 

 五郎の口からスラスラと敬語が出てくる。

 彼の生家は源氏ゆかりの家。彼は五男だったがこのご時世、戦や疫病で家を継いだり他の家に養子入りする可能性もある。それに備えて幼少期から礼儀作法を叩きこまれたのだ。

 

「良い。昨晩も都に蔓延る悪鬼を討滅したのであろう?遅滞に難癖つけるほど麿は狭量ではない」

 

 扇子で口元を隠してはいるが、如何やら機嫌を損ねている訳ではないらしい。

 「では報告を」と促され、五郎は頭を上げる。

 

「はっ。昨晩、監視網をすり抜けて都に侵入した悪鬼一匹を討滅。その後西京極大路付近にいた悪鬼九匹を討滅。損害はありません」

 

「ふむ、流石父上の最高傑作。この程度わけもないか」

 

 オホホホホ、と高笑いする吉平。

 (とお)を人間だと見ていないかのような発言が引っ掛かったが、五郎は表情に一切出さない。少しのミスで地位を追い落とされる貴族社会に生きる彼らにとって表情一つで思考を読むなど容易なことだ。

 

 これで用事は終わったはずだが、吉平は閉じた扇子で五郎を手招きする。

 

「遠慮はいらぬ。近う寄れ」

 

 そう言うと部屋に貼ってあった札の霊力を起動させる。

 刻まれていたのは音を遮断する結界。どうやら外には出せないことらしい。

 五郎は手招きに応じて二尺ほどまで近づいた。

 

 吉平は声を潜めて話し始める。

 

「茨木童子が都に侵入したという情報があった」

「―――ッ!」

 

 五郎は何とか声を抑え込む。

 なるほど、本題はこれか。

 

 茨木童子。

 かつて酒吞童子と共にバラバラの鬼族を纏め上げ、源頼光率いる武士団と長きにわたり激戦を繰り広げた最上位の鬼の一体。

 10年ほど前に起こった大江山の戦いでは頼光四天王の一人である渡辺(わたなべ)源次(げんじ)(つな)によって左腕を切り落とされたものの、打ち取るには一歩及ばず逃走を許してしまった鬼だ。

 上位の鬼が都に潜ったと知られば混乱は必至だ。とても表には出さない。

 

「本日より茨木童子の捜索、および討滅を第一の目標とせよ。以上、下がれ」

 

 その言葉に一礼して二人と一匹は外に出る。

 

「茨木童子って誰?」

 

「嘘、だろ・・・」

 

 (とお)が五郎に問いかけたのは朱雀門を出たときのことだ。

 彼女の無知さに大きなショックを受けた五郎は膝から崩れ落ちた。

 各地で乱暴狼藉を働いた彼女の名を知らない者はいない―――

 ―――というのは一般常識で、そんなものは(とお)には通じない。

 

「そこそこ強い鬼じゃ。ま、余にかかればそこらの木っ端妖怪と変わらぬがの」

「へー」

「違うからな!」

 

 妲己の言葉を鵜吞みにする(とお)に大慌てで修正する五郎。

 流石は自称大妖怪。隙を見せたらこうだ。

 

「いいか、茨木童子ってのは渡辺様と激闘を繰り広げた―――」

「呼んだか?」

「―――最上位の鬼・・・」

 

 二人の背後から声がかかる。

 聞き覚えのある声に五郎はゆっくりと振り向いた。

 

「・・・って渡辺様ぁ!?」

 

「うるさい」




無口系主人公
 名前の由来は数字の「(じゅう)番目の子」と「(ひろ)う」から
 魂が空っぽだったため妲己を完全に取り込むことが出来たが、そのせいで半妖のような状態になってしまい年を取らなくなってしまった。
 稀に見せる傍若無人っぷりは12年に及ぶ妲己の天才的()な教育の結果。
 市に偶に売られている干物が好物。





自称大妖怪な狐
 妖力を使ったイカサマで博徒たちから金を毟り取っていたところ、覆面調査していたチーターによって無一文にさせられ、物理で解決しようとすれば待ってましたとばかりにフルボッコにされ、挙句の果てには少女と一体化してしまった狐。
 全くの自業自得なので同情する必要は無い。
 ちなみに彼女が日本に渡る際に選んだルートは中国の泉州から鹿児島の坊津を繋ぐルート(鑑真が来日した際と同じ航路)なので命があっただけ幸運。
 気になっている謎は(とお)が一人でどうやって生きていたのか。





苦労人な侍見習い
 五男だから「五郎」。安直?昔の人の名前ってそんなもんよ。
 15歳だけど元服はしてない、ので嫁もまだ。
 先代の苦労を身をもって味わっている。
 最近料理スキルが上がってきて何か複雑。





天真爛漫なお姫様系陰陽師
 年齢は16。
 当時から見れば結婚しても可笑しくない年齢だが本人が断っている。上に姫が三人おり、本人の力も強大なため父親もそれを認めている。
 源氏物語に出てくるような恋をしてみるのが夢。
 紫式部の大ファン。





中ボスみたいな鬼の人
 この世界では羅生門ではなく大江山で腕をもぎ取られた。
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