生に恋を死に愛を   作:まえがみ

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夜会

2人から話を聞き、鏡華は顔を伏せて考え込んでおり、

 

その様子に二人は一言も声をかけなかった。

 

 

 

この話を聞くまでは鏡華が鏡夜に抱いたのは「異次元的な精神を身に着けた者」という印象であった。

 

鏡華の神生じんせいの中で、日本に流れ着き長きを過ごし様々な時代を見てきたが、鏡夜のような人間は存在しなかった。

 

それは、鏡夜のように鏡華という神格の存在と同様の「なにか」を会得した者がいなかったからだ。

 

だが、その過程を鏡華は知らなかった。

 

いや、知ろうとしなかった。

 

それは、ひとえに鏡夜の本心に近づき触れることで鏡夜の弧線に触れるのではないか?ということを恐れたからであり、鏡夜との幸せな時間を自ら失うことを避けていた。

 

そんな、愛する者に真摯に向き合うことを避けたことに対する苛立たしさや今回本人に直接聞くのではなく又聞きのようなことをしてしまったことを強く反省した。

 

なぜなら鏡華は知っていたのだ。

 

鏡夜のような神に匹敵する精神性を人間の身で得る唯一の方法を。

 

それは、

 

 

 

『強い絶望の中苛烈な憎悪を抱きし時、己を律すること。

 

 つまりは、憎悪を己の善性で押さえつけ、暴発しないようにする。』

 

 

 

言うは易し、出来る人間はそういない。

 

基本、復讐、泣き寝入り、後追い、この3パターン。

 

その中で、鏡夜は世界を俯瞰して見た。

 

自身すらも有用な駒として。

 

才能を保護し、愛する。という心に独自の世界の法則を定めた。

 

そんな小さな世界の法則でも確固たる意志は揺るがない。

 

そして、その思いこそが人間が言う神という存在への手掛かりとなる。

 

そこから鏡夜は自身の精神性を磨き、神の領域に達したのだということは鏡華も分かっていた。

 

だからこそ、聞けなかった。

 

 

 

鏡華も同じだったから…

 

 

 

鏡夜は完全に心を壊し、人間の尺度とは違う形で創り直した。

 

それは、自身で人間であることをやめたのであると同義。

 

これが鏡華にはできなかった。

 

 

 

そんな自身の過去と鏡夜の現在の姿の違いから鏡夜に対する誇らしさが高まった。

 

だからこそ、そんな鏡夜が足を止めることなく進み続けられるようにとサポートしたい気持ちが強まり、

 

(わたくしがより一層の愛情を持って寄り添い、心の休息を与えたい)

 

そんな気持ちであふれかえり、一つのことに気付く、

 

(だから、皆さん誰かを呼ぶときは必ず名前で呼んでいたのですか…)

 

そう。

 

朧組の幹部たちは鏡夜の不安定さに薄々気付いており、第二の家族になろうとしていたのだ。

 

ただ、そこには義務のような感情はなく皆、一人ひとりが鏡夜のことが大好きであり、本当の家族でありたいと願っているのだ。

 

(暖かい組なのですね)

 

この間、莉緒莉奈はじっと鏡華の様子をうかがっており何かを見極めるかのように見続けていた。

 

 

 

鏡華は考えがまとまったことで顔をあげると、莉緒莉奈が真剣な表情でガン見されていることに気付き小首かしげる。

 

「どうされたのですか?」

 

問いをかけると、二人が顔を見合わせると真剣な顔で一言。

 

「「合格」」

 

その意味が二人から新しい家族として認められたのだということが理解できた。

 

何か安心感のような思いから笑みがこぼれながら、

 

「それは良かったですわ」

 

そう返すと、二人もさっきとは打って変わって満面の笑みで、

 

「「いらっしゃい」」

 

そう答えた。

 

 

 

ここからは二人からの怒涛の質問攻めにあい、鏡華が困惑したのは言うまでもない。ただ、この感じも嫌いではなく心地よく感じてるのであった。

 

 

 

少し、質問もおさまったり、先程のようなシリアスな空気感は霧散した頃、

 

「鏡華ねぇって本当に綺麗な声だよね!」

 

「そ、そうですか?」

 

「うん。鏡華姉様めっちゃ綺麗…」

 

2人があまりにも褒めちぎるので鏡華は少し恥ずかしくなり、たじろいでいるとある提案がされた。

 

「「一緒に配信してみない!?」」

 

息ぴったりに二人は言う。

 

実のところアバターを動かしてする配信は先の『千変万化』でもう必要なくなっていた。ただいくら変身できるといっても生身で配信すると違和感がとんでもないことになるので冬真が作った特殊空間で配信すると違和感なくノーマルカメラで撮ることが出来るのだ。そして、新しい発見として、莉緒莉奈が一緒に居る相手にもその効果を付与することが出来ることが分かった。

 

 

 

そんな突然の提案にも鏡華は興味津々の様子で答える。

 

「なんだかおもしろそうですね。

 

 やりたいです!」

 

「のりきだね~」

 

「いこ…」

 

そうして、双子が早速部屋にある瞬間転移式の板に触れる。

 

すると景色が変わり、真っ白く何もない空間が現れる。

 

流石に鏡華も慣れたのかびっくりはしなかった。

 

何とも適応能力の高い元神様である。

 

そうして、二人があれこれ操作盤をいじると、可愛らしい空間に様変わりした。

 

「え?」

 

当然のように部屋の内装が変わり、鏡華が驚きの声をあげるが双子は早く一緒に配信したいのか気付いておらず、状況に置いてけぼりにされるのであった。

 

一通りの準備が終わったことで、鏡華の下に二人が戻る。

 

「じゃあ、ちょっと説明するね!

 

 あたしが配信スタート始まるからそのつもりでね~」

 

なんとも大雑把な説明で鏡華は何一つ理解できていなかったが、

 

「鏡華姉様、取り敢えず私たちが配信に映るから私が合図するまで、

 

 その場で私たちの姿を見ててほしいの..

 

 それと、今回はメンバーシップっていう少数精鋭たちしかいないから

 

 安心して欲しい…」

 

などなど、いろいろと細かな説明を莉奈がしてくれたおかげで鏡華もなんとなくだが理解できた。

 

「それじゃあ始めるよ~

 

 配信スタート!!」

 

それと同時に莉緒莉奈の姿が変化した。

 

2人とも元々小柄で愛くるしい見た目なのだが、変化後は狼の擬人化フォルムで莉緒が白、莉奈が黒の和装を纏うことで、愛くるしさと神聖さが混ざり違う可愛さがあった。そして、前面には大きな映像が映し出され、そこに莉緒莉奈の変身後の姿が投影されており、その端には文章が高速で動いていた。

 

その文章を鏡華が興味深くみると、

 

【きちゃーーー】

 

【3D配信!?】

 

【ゲリラ配信助かる】

 

【かわいいよーーーー】

 

などが流れていることがわかり、リアルタイムでどこかの誰かが反応していることが分かり、なんとなく仕組みを理解することが出来た。

 

 

 

そんな中双子は挨拶をする。

 

「陽を喰らいあたしが皆の太陽になるよ~

 

 狼の『狼谷かみや 莉緒りお』だよ~ガウゥ」

 

「月を食べてちゃって私が皆を癒せる月になるよ~

 

 同じく狼の『狼谷かみや 莉奈りな』だよ~ガウゥ」

 

それぞれが挨拶をすると、文章の流れる速度が上がる。

 

そして、莉緒は普段とテンションとほとんど同じだが、莉奈はそんな莉緒に合わせるように普段とは全く異なったテンション間で話始めていた。

 

そんな双子を鏡華はじっと見て、高速で流れるのはコメントというものであること理解し、どんどん学びを深めていた。

 

莉緒莉奈の挨拶も終わったことで、少しコメントの速度も落ち着きだし、今回の内容についた質問もちらほら見えてきた。

 

 

 

「最初に一つだけ告知!!

 

 これからはゲーム配信以外は3Dで配信していくよ~」

 

【なんと!?】

 

【それは助かる!】

 

【最高過ぎる】

 

【てか、3D技術が凄すぎて本物に見える…】

 

そんな感じで、配信が始まり場が温まってきた頃に、

 

【今回はこれからの活動方針的な枠?】

 

と一つのコメントが流れてき、それを莉緒が広う。

 

「ん~~~。なんだとおもうぅ?」

 

意地悪っぽい表情としぐさで言う。

 

【なんだろ~】

 

【気になる】

 

【その表情最高ーー】

 

【ほんまに分からへん。

 

 早く教えて―――】

 

多種多様のコメントが流れる。

 

「ハハッ♪

 

 みんなバラバラだね~

 

 じゃあ早速発表しちゃうね!

 

 今回は新人ちゃんの発表だよ!!」

 

その瞬間コメントはおおいに盛り上がりを見せる

 

【マジか!?】

 

【どんな子か気になり過ぎる!】

 

【新メンバー加入か??】

 

【メン限で知れるとは…

 

 なんと役得なことか】

 

流石にメンバーになるだけあって皆莉緒の言うことに懐疑的な意見を飛ばす者はいなかった。それに、新メンバーかもしれないことにわくわくしている者も多く見られた。

 

そうして、莉奈が鏡華にアイコンタクトを送ると、鏡華も準備満タンといった表情で返す。

 

 

 

「じゃあ、紹介するよーーー

 

 見える、聞こえる、感じ取れる、ただし、触れることだけは出来ない高嶺の花のごとき美しさを放つ龍が今宵、皆を魅了するよ~~~」

 

その口上の後、莉緒が鏡華の登場を促し、変化をかけようとするがそれを制止する。

 

なぜなら、鏡華自身が姿を変えたからである。

 

それは、紫色の羽衣をまとったまるで天女のごとき風貌。

 

しかし、そこから垣間見る妖艶さである。

 

そのあまりに現実離れした美しき姿に莉緒莉奈は絶句しつつもカメラを合わせる。

 

すると、それを見たリスナーのコメントの動きも静止する中、鏡華が口を開く。

 

「皆さま、お初にお目にかかります。

 

 朧 鏡華でございます。

 

 どうぞよろしくお願いいたします。

 

 皆さまの幻想となり、魅了して差し上げますわ♪」

 

その美しき声に引き入られ、魅入られ、堕ちた者は少なくないであろう。

 

現に莉緒莉奈も堕ちていたのだから。

 

なぜなら、目がトロンとし、熱い瞳で鏡華を見つめており、自身が今何をしているのかすらも忘れているような表情であった。

 

そして、鏡華自身この日本において素性がないため本名でもばれないことは鏡華自身理解しており、なおかつ鏡夜にもらった名前を変えて名乗りを上げるつもりは毛頭なかった。

 

「「お姉さま」」

 

その2人の声を引き金にコメントのスピードがバグった様に流れる。

 

【おお、メシアはここにおられた…】

 

【あれ、俺死んだ?】

 

【泣くスタンプ】

 

【二人も堕ちてるやんwww

 

 俺も堕ちたけど】

 

【これで堕ちない奴は人間じゃねーー】

 

何とも愉快な状況に鏡華は悪戯したくなった。

 

「あらあら、莉緒さん、莉奈さんどうされたのですか?

 

 そんなだらしない顔では恥をかきますよ。

 

 本当に可愛らしいですね」

 

「「はわはわぁぁぁ」」

 

【これは落ちたな】

 

【駄目だこりゃ~】

 

【堕とされちまったな】

 

【これメンシ入ってない奴この世で最大の愚行だったな】

 

などと色々コメント欄が流れ、莉緒莉奈は鏡華の悪戯の所為で使い物にならなくなってしまい。

 

再起するまで時間を要したのは語るまでもない。

 

その間、鏡華は色々な話をリスナーたちと行い、結果お披露目は成功に終わり、復帰した莉緒莉奈がうまく占めて配信を終わらせた。

 

 

 

「鏡華ねぇ凄すぎいるよ!!」

 

「うんうん、凄かった…」

 

莉緒莉奈が絶賛し、完全に虜となってしまい。

 

キラキラした目で鏡華と部屋に戻り、鏡夜の部屋へ送り届けるまで続いた。




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