生に恋を死に愛を   作:まえがみ

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生き方は決めた

参謀室から出た後、鏡夜はある場所に向かった。

 

 

 

 そこは、組の庭園でありながら地下にあるという変わった場所。その風景は墓石が並び、赤と青の彼岸花が咲き誇る、星空輝く夜の世界。だが、神秘的様相から淀んだ空気感は一切なく、澄んだ空気感を纏うある意味で異質な空間。その中を、鏡夜は静かに歩みを進め目的の場所を目指す。この墓場であり庭園には鏡夜が愛した者たちが眠っており、組のため、未来のため、己のため、に戦い散っていった愛すべき愚者の終点であり、その者たちの休息を願い創られた場所。

 

 

 

 それぞれの墓石の名前を見ながら鏡夜はその者との思い出を鮮明に思い出しては心に刻み、思いと才能を背負い、歩みをさらに進める。歩みを進めること数分が経った頃に目的の墓にたどり着く。ただこのお墓だけは他のものとは違和感がるほどの違いがあり、色が黒や白、青やピンクの四色で彩られていた。

 

 

 

 このお墓は鏡夜の父、母、姉、妹の四人が眠るお墓であり、最初に建てられたものであり、鏡夜はそのお墓の前に胡坐をかくような形で座り、語り掛ける。

 

「お久しぶりですね。

 

 私はまだまだ罪が残っているようでそちらには行けないようです。

 

 そちらでは楽しくやれていますか?

 

 みんな己が持って生まれた罪の清算が終わったのでしょう?

 

 幸せじゃないと私が困ります。

 

 こんなにも不幸が満ち満ちて、享受する幸せの数が極小な世界。

 

 その中の些細な幸せさえも無常に踏みにじられてしまう残酷な世界。

 

 その幸せを奪う世界。

 

 生きることだけでしんどい世界。

 

 この地獄送りの刑罰から解放されたのでしょう?

 

 だから、私も皆の後を何度も追いかけようとした。

 

 でも、出来なかった。

 

 まだ、思い刑罰(不幸)を背負う者たちを見過ごせなかった。

 

 だから、私がこの地獄の刑罰を受ける者たちのヴェールになる事を選んだ。

 

 『才能という大きな刑罰』を背負う者たちを、

 

 隠し、守り、生への快楽を享受できる道を選んだ」

 

 

 

鏡夜は本当の家族を失ったことで死生観に変化が生まれていた。

 

 

 

 それは、全ての欲望に支配されたこの世界は何らかの刑罰の上にあり、人間がよく口にする地獄である。ならば当然刑罰であれば、幸せも不幸も何もなく、生という刑期を終えるために行動をする。その結果、死は刑期の終わり、地獄に引かれたレールからの解放であると自身の生を解釈した。

 

 

 

 この時から鏡夜は生きとし生きるものすべての存在に対して、どのような刑罰を受けているのかを考えて接っするようになった。だからこそ、独自に設定した刑罰を相対する存在と当てはめその刑罰(性質)を見抜き、思考と行動を予想する特殊な観察眼を会得していたのだ。

 

 

 

 その中で、他者よりも優れた物を持つ者には、他の凡庸な人間には当て嵌められない不特定な刑罰があった。そういう者に限って妬み、裏切り、追放などの多数の者にバッシングされるケースが圧倒的に多かった。そこから、鏡夜が自身の家族が受けた物は才能という名の刑罰であり、そんな刑罰を受ける可能性を秘めた才覚者に救済の手を差し伸ばし、家族と同じ残酷な刑罰の執行を制御し、不幸を不幸(才能)で防ぐ、ヴェールに包まれた場所を創ろうと考えたのである。

 

 

 

こうして、鏡夜は才覚者(凶兆者)に強い慈しみの念を抱き、

 

才能(不幸)を愛するようになった。

 

 

 

 そんな鏡夜に救われた者は皆は自身に課された刑罰に抗うようになったことで自然と己を異端者と呼び、その刑罰を全うした者を愚か者と呼んだ。それは、己が異端者であることを誇りに思い、異端であり続けたことを誇りを思い散る己を愚か者だと皆が思っているからだ。だからこそ、散った者には労いと敬意が籠めており、そんな愚者が眠る庭園を愚者の終着点と組内で呼ばれ神聖化されている。

 

 

 

つまりここは人生という刑罰の中、

 

己のやりたいようにやって好きに生きた愚かな者たちの人生の終点。

 

 

 

 だから、未練なく皆が散り、ここには怨嗟えんさも怨恨えんこんもなく静寂と神聖さに包まれている。そんな愚者を導くおかしな人間であり、特異点である鏡夜を組員は敬意を籠めて、

 

『享楽の異端者』

 

と呼んでいる。

 

 

 

そうして今日はその異端者たちが日の下に出ることに対する決意表明のためにここに訪れたのだが、やはり家族を前にすると気が緩むようで鏡夜も何かと口数が多くなる。

 

 

 

 

 

「父さん。

 

 父さんが変えたかった日本の姿とは少し異なる形に

 

 なるかもしれないけど大目に見て欲しい。

 

 公平もない、平等もない、理不尽なほどに才覚者が優遇される社会を目指すよ。

 

 正義なんて凡庸な人間が決めたルール。

 

 圧倒的な才能を持つ者には必要ないと証明するよ。

 

 

 

「姉さん、寄り添ってあげれなくてごめんなさい。

 

 一番つらい時に僕は隣にいてあげられなかった…

 

 それに、姉さんの凄さを今思い知ってるんだ。

 

 難しいね。

 

 みんなをまとめるのは..

 

 でもね。

 

 姉さんの口癖だった

 

 『愛すればみんな繋がる!』

 

 の意味が分かったよ」

 

 

 

「母さん。逢あい。

 

 あの日何を僕に何を作ろうとしてくれてたんだ?

 

 すごく楽しみだったんだよ…

 

 せっかく二人とも元気になってくれて、

 

 これからの生活に胸を躍らせてたんだ。

 

 違うな…

 

 ごめんなさい

 

 僕がもっと言葉の真意を読み取って偽りが

 

 今みたいにすぐに分かるだけの観察眼と思考が無かった僕が悪いんだ」

 

 

 

 決意と贖罪が入り混じに話す姿は、まるで鏡夜の本心の一部分が露出し、制御の利かない高校生であった。鏡夜の語り掛けは続く。

 

 

 

「今日ここに来たのはね。

 

 僕が私になるために来たんだ。

 

 これからは当分ここには来れないからね。

 

 だから父さん、母さん、姉さん、逢、最後に一つだけ。

 

 この残酷な刑罰の中、僕に愛を教えてくれてありがとう。

 

 僕は進むよ。

 

 新しい家族と一緒に。

 

 そして、僕の考えに賛同し、刑罰に抗いながらついてきてくれた皆もありがとう

 

 本当に数えきれないぐらい支えられたよ。ゆっくり休んでくれ。

 

 

 

 さようなら。

 

 

 

 また、僕の刑罰という名の生が終点にたどり着き解放された時に会いたいな

 

 そして、私の歩んだ道を語らして欲しい。

 

 みんなでバカ騒ぎしよう!

 

 その時ばかりは父さんに叱られるかもしれないけど、

 

 笑い合って何の変哲もなかったあの幸せだった頃みたいに、

 

 会話するのを楽しみにしてるよ。

 

 

 

 それじゃあ、ちょっと僕の我儘を私のエゴを世界に振り撒いて、

 

 面白おかしくこの刑期の中で異端者たちと楽しんでくるよ」

 

 

 

そういい立ち上がった鏡夜の顔の幼さが抜け、晴れやかに澄みわたっていた。

 

まるで、この庭園のように。

 

 

 

 庭園を後にするために来た道を戻り、庭園を出るための転移版に触れる瞬間、不意に声が届く。

 

『鏡夜の望む道を歩んでこい』

 

振り向くと、父さんがいた。

 

いや、父さんだけではない。

 

母さん、姉さん、逢、組員、この庭園にて眠りにつくすべての者が

 

そこには存在した。

 

そして、皆が笑顔で鏡夜に手を振っており、

 

 

 

『行ってらっしゃい!!』

 

 

 

そう声が聞こえた気がした。

 

 その瞬間、な・に・か・が心を満たし宿る感覚が鏡夜を支配し、その感覚に身をゆだねたのちに笑みがこぼれ、庭園を後にした。

 

 

 

この時、鏡夜は僕を殺・し・私になった。

 

 

 

自室に戻った後すぐに鏡華と莉緒莉奈が部屋を訪れ、

 

「鏡華ねぇを無事にお届けしましたよ!」

 

と元気よく莉緒が言ったのち、双子はそそくさと自室に帰って行った。

 

 

 

そうして、二人きりになった後は何やら気まずそうな面持ちの中、鏡華が、

 

「すみません!!」

 

いきなり誤ったことで何が何だか分からない鏡夜は「?」といった表情であった。

 

「鏡夜さんがいない状況で、勝手に莉緒さんと莉奈さんに過去を聞いてしまいまして…」

 

ようやく意味が理解できた鏡夜はこともなげに言う。

 

「大丈夫かい?

 

 あまり愉快な話ではなかっただろ?

 

 気分は悪くなってないか?」

 

 と自身の過去を知った鏡華の心配を即座にするほどに鏡夜は過去を過去として見ており、その過去の凄惨さを身に染みて実感している鏡夜にとっては鏡華自身の精神面での心配の方が強かったのである。そして、更に先程の件で余計に吹っ切れている節があることも相まっての返答であり、流石にその返答は予想できなかったようで、鏡華が次はぽかんとした表情をしており、たまらず鏡夜は笑ってしまった。

 

 

 

「もしかして、今まで私の過去に対する内容を意図的に避けていたのは、それを聞かれることを嫌がって神社に私が赴くことがなくなるのを嫌がったとかだったりするのかい?」

 

 完全な図星をつかれたことと、事も無げに話す姿に赤面した鏡華は抗議するようにポカポカと鏡夜の胸を叩く。

 

「心配したわたくしがバカみたいじゃないですか!?」

 

 と怒りつつも、ほっとした様子で鏡夜も満足していた。さらに、さっき抱いた感情と感覚に似た物を抱かせてくれる鏡華を大切にし、守ることを誓った。

 

「大丈夫だよ。

 

 私が鏡華に対して怒ることは絶対ないからね。

 

 安心してぶつかってくれ」

 

鏡華を抱きしめながらいうと、鏡華は満更でもない様子で嬉しように受け入れ、

 

「バカ」

 

一言だけ呟き、鏡夜の胸に顔を埋め、更にボソッと呟く。

 

「わたくしもです」

 

 

 

 数分間その状態で動かないでいるといきなり、鏡華が何かを思いついたような仕草をし、離れようとしたことで鏡夜は鏡華を離す。

 

「あ、あの、お風呂入ってもよろしいですか?

 

 人間の姿だと汗をかいたりするので…」

 

もじもじとこれまた恥ずかしそうに言うもので鏡夜はまた笑いながら

 

「いいよ。行っておいで、そこの部屋がお風呂だよ」

 

「むっ、またそうやって!

 

 では行ってきます!」

 

 そういい、お風呂に直行していった。鏡夜自身一緒に入りたい気持ちがなくもなかったが、まだ早いように感じたため何も言わずにいた。

 

 

 

 30分ほどで鏡華がお風呂を上がり、戻って来た時のその火照った様子とつややかな肌に合わせて、莉緒莉奈が渡したであろう可愛らしい寝間着に鏡夜は大ダメージを密かにくらったのは秘密である。

 

 その後、入れ違うように鏡夜もお風呂に入り、鏡華の半分ほどの時間で上った。その時、鏡華がまだ髪を乾かしてないようだったので乾かしてあげ、一緒に歯を磨き、一緒のベットに入り少しの会話を交わしたのちに目をつぶり、密度の濃い1日に別れを告げた。

 

 

 

 翌朝に新婚旅行中の二人が襲われたと連絡が入った。




ご拝読くださりありがとうございます
これにて一章完となります
次話から二章となります
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