生に恋を死に愛を   作:まえがみ

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狼煙

「うん?ここは?わたくしは消えたはず」

 

「おっ、目が覚めたか?何か体に異常はないか?」

 

 鏡夜に膝枕されるような形で横になりながら、少し虚ろな目をぱちくりとさせている。

 

「え?あ、はい。大丈夫です」

 

「そうか。ならよかった」

 

 まだ、状況が理解できていないようでいろんなところを見ている。

 

「あの、説明をお願いしても?って、ひゃっ」

 

「どうした?」

 

「え、え、いや、今わたくしもしかして膝枕されてませんか?」

 

「されてるね」

 

「え、ええ、」ぼしゅ

 

 顔を真っ赤にし、少し手で顔を隠している姿にいたずらがしたくなった鏡夜は耳元で、

 

「驚きながらも、退かないんだな」

 

「言わないでください!居心地が良くて退けないわけじゃありません!」

 

「全部言ってるじゃないか。はは」

 

「わざとです!」

 

「わざとか」

 

 なんだかこの掛け合いも心地よく感じ、久々に自信の緊張の糸が緩んでいるのを鏡夜は感じていたが、今はそれに委ねていた。

 

「というよりも鏡夜さんが悪いんですよ。ずっと、頭をなでるから、」

 

 指摘されたことで、手を離すと「あっ」と残念そうな声が聞こえたのは言うまでもない。

 

「そろそろ、話していただけないですか?」

 

「この状態でいいのか」

 

 少し悩んだような表情を浮かべつつも、体を起こし私の前に座り向き合う状態になったことで私は話した。

 

 

 

「なるほど、それで今もわたくしが存在できるのですね。でもなぜわたくしに?」

 

私は迷うことなく、

 

「私の人生の伴侶としてこれから先もともに在って欲しい。それが理由だよ」

 

 鏡夜は今抱えている思いの丈をすべてぶつけ、こんなにもすっと自身から言葉が出たことに少々、鏡夜自身も驚きつつも喜びを感じていた。

 

「な、な、な何を言うのですか!?」

 

 顔を真っ赤にしながら大きな声での問いではあったもののそこに「不快」という感情は一つもないことが分かったので、少しほっとしたのは内緒だ。

 

「私が今までこの神社であなたと会話をする中で徐々に惹かれていたんだが、今回、あなたが消えてしまうことを知った時に言いようのない孤独感を感じた時に私自身があなたを好いているのだと気づいたよ。でも、いきなりのことだから返事はすぐじゃな」

 

「いえ!わたくしからもお願いいたします!!」

 

 私が言い切るまでに肯定的な返事で驚きつつも答える。

 

「いいのかい?」

 

「なぜ、あなたが戸惑うのですか?ふふ

 

 もちろんですとも、わたくしもあなたのことは非常に好いておりますよ。

 

 まぁ、でも私の方が先にお慕いしておりましたよ。間違いなく」

 

 何か含みがあるような言い方であり、とても興味が沸いたものの気持ちがつながっていることの嬉しさと驚き、動揺で頭がフリーズしたようで鏡夜は黙り込んでしまった。

 

「・・・」

 

「なぜ黙り込むのですか?」

 

「なんというか、自分自身でも驚くほどの感情が渦巻いてしまって、戸惑ってしまった」

 

「ふふ、何ですか、それは」

 

「なんなんだろうな。クハハ」

 

 そうして、二人は笑い合い何とも甘酸っぱい空気感になったのは言うまでもない。

 

 

 

 少しの間談笑をした後、

 

「よし、それじゃあ。これから私の家に案内するよ」

 

 鏡夜が住む場所へ誘いを出した。

 

「あ、」

 

「どうした?」

 

(この神社から出られないとかあるのか?

 

 いや、一回神としての存在が消失しているのなら、今は…)

 

「あの!」

 

「む」

 

(少し、深く考え込んでしまったらしい。)

 

「何か勘違いされているようですが、

 

 別にわたくしはこの神社から離れられないわけではありません」

 

「じゃあ?」

 

「そ、それは…」

 

 物凄く顔を赤くし、恥ずかしそうに康明を見上げながら、

 

「わたくしに『名』を頂けにですか?

 

 まだ、わたくしには『名』がなく、いつか大切な方が出来た時、

 

 その方に着けてもらうのが夢でして...」

 

(なんと可愛らしいお願いだろうか?)

 

 その問いに対する鏡夜の答えはもちろん

 

「分かった」

 

肯定である

 

「そうだなぁ。私はあなたを『鏡華きょうか』と呼びたい」

 

「『鏡華』ですか・・・」

 

と言うと、ほろほろと涙を流し始めた。

 

「どうしたんだ!?」

 

「い、いえ、何でもないのです。ただ、ただ、名前を頂けたことが嬉しくて」

 

鏡夜は何も聞かず、黙って聞いていた。

 

「あなた、いや、鏡華さんの声を初めて聴いたその時から、なんて美しくきれいなんだと荒んだ私の心を激しく打ち震えた。そして、今回の鏡華の姿をみて私は言葉を失ったんだ。『美しすぎる』と、それは『鏡』にも映せないほどの幻想的な『花』みたいだと。そして、私と二人ならどれだけ美しく、儚く、幻想的な花であっても絶対に霞むことが無いようにと私の『鏡夜』から一文字とって『鏡華』とこれからは呼びたいと思ったよ」

 

 

 

一息の静寂の後

 

「嬉しすぎますよ…」

 

鏡華は小さく言った。

 

その瞬間、鏡夜は鏡華を抱き寄せ、その腕の中で鏡華は泣き続けた。

 

 

 

少し時間が経ちようやく鏡華が泣き止み、顔を上げた。

 

「大丈夫かい?」

 

「はい。もう大丈夫です」

 

「そうか。じゃあ、そろそろ私の家に案内しよう。そして、私の大切な家族を鏡華に紹介しよう」

 

「ありがとうございます!楽しみです」

 

 元気そうに言う鏡華の顔にはもう影はなく晴れ晴れとしており、安堵する鏡夜であったが、それと同時に夜が随分と更けていることに気が付いた。

 

(あぁ、早く帰らないと...)

 

そう思い鏡夜は、

 

「ちょっと、失礼するよ」

 

というといきなり鏡華をお姫様抱っこをした。

 

「きゃっ!?いきなり何をするのです!?」

 

そう慌てて顔を赤らめ恥ずかしそうに鏡夜へ鏡華が聞いた。

 

「いや、ちょっと時間が遅くなり過ぎたから、早く帰らないと私の家族が少しね、じゃあ行くよ」

 

「ひゃっ!?」

 

 そういうと、一気に境内を飛び出し、階段を駆け降りるというより飛び降りるようなあまりの速度に鏡華は絶叫するのであった。

 

 ちなみにこれは『種』によるものではなく純粋な鏡夜の力である。

 

 

 

 鏡夜が目覚める少し前から組(家)ではもう行動が起きていた。なぜなら、鏡夜たちがいる神社は組から少ししか離れておらず、普段ならもう帰宅していて当然の時間であり、時間に厳格な鏡夜は毎度同じ時間に帰ってきていたことでさらに不安をあおったのである。さらに、連絡もないとなれば幹部が動くのは当然であり、鏡夜もそれは分かっていたのだが事態が事態であり、そのことを失念していた。そうして、今緊急で極秘の幹部会議が開始されることとなった。

 

 

 

「全員集まる必要あった?うちら配信したいんだけど」

 

「そうですよ。莉緒りおちゃんが言う通りです。心配は心配だけど鏡夜君めちゃ強いじゃん」

 

「あっ、やっぱり?莉奈りなもそう思ったの?」

 

「当り前じゃん!鏡夜君が負ける所創造つかないよ。でももし、傷一つでもあったら…」

 

「「相手は絶対ぶち殺す」」

 

この二人は双子の「御影みかげ 莉緒りお」と「御影みかげ 莉奈りな」で、

 

ある事情から戦闘はピカ1。さらに互いの連携が途轍もなくスムーズで相手にすると大変厄介な相手である。が、それは裏の姿である。表では双子のVTuberとして世間で大きな注目を集めている。なぜ、VTuberなのかはシンプルに極道が顔バレしているのはとてもまずいからである。

 

「だから、そうならないために会議してんだよ!もっと頭を回せ」

 

 この人物はこの朧組の若で「城戸きど 賢史けんし」で全体指揮を任されているが、最近ではほとんど雑用ばかりの苦労人である。

 

「「あっ、たしかに!!」」

 

「それでわかぁ、どうするんだぁ?」

 

 この人物は、組きっての戦闘狂の「轟とどろき 白夜びゃくや」で戦闘のセンスがとんでもないが、戦いが好きすぎるあまりによく鏡夜に戦闘をけしかけている。

 

 だが、一度も勝利したことがない。

 

「どうするも何も結局、俺も動かなくてもいいとおもっているがな」

 

「まぁそうだなぁ」

 

「だが、もしものことがあるからな。俺としては白夜に迎えに行ってもらいたい」

 

「ぃやだよ。参拝の時だけは近づいちゃいけねぇんだよ。覚えてるだろ?随分前だが、参拝時に戦闘をけしかけたら、生死を彷徨うレベルでボコられたんだからよぉ」

 

 本当にいやそうな顔で白夜は言う。

 

「それは、てめぇが戦いを挑むからだろ?自業自得だ」

 

「若、白夜の言葉も一理あるかと…」

 

 そう言うのは組の策士の「霧島きりしま 冴姫さき」であった。冴姫は非常に頭がキレ、物事の分析、判断、が素晴らしく、それを生かした作戦の立案をもっとも得意としている。

 

「なんでだ?」

 

「参拝の意味は分かりませんが、若も何か特別なことを邪魔されると腹立ちますよね?」

 

「それは、わいも思っとったで」

 

そう言うのは、組の研究を主にする秤はかり 冬真とうまである。

 

彼は、自分が気になっていることを証明し、機械として生み出すことを生きがいとしている。

 

「なるほどな。じゃあ、どう…」

 

「今、僕がこの街全体の監視カメラをハッキングして冬真にぃが開発した動物型機械をばらまいたから問題ないよー」

 

この男は、この組のハッカーの「一条いちじょう 朔さく」である。

 

彼は、非常に高い数学脳をもっといるため、冬真と一緒にいることが多い。

 

「あ、あぁ。仕事が早くて助かるよ。じゃあ、解散!後は、俺と朔で考えるよ」

 

「かしこりました」

 

「え~、結局うちらいらなかったじゃん!」

 

「そうですよ!」

 

「意味はあった。莉緒莉奈をこの場に呼ばなかったら勝手に行ってただろ?」

 

「「ぎくっ!」」

 

「はぁ~」

 

「「はい!じゃあ、配信してくる!!」」

 

そそくさと会議室から出て言った。

 

「あぁ、がんばれよ~」

 

「じゃあー、俺もいらねぇーな。模擬戦に戻るわぁ」

 

「おう、いってら。がんばれよ~」

 

「じゃあ、妾も失礼するわね」

 

「ありがとうな~」

 

「じゃあ、僕も研究に」

 

「おう」

 

 こうして、会議はこじれることなく無事綺麗な着地を見せた。なんだかんだ、賢史は皆を刺激することなく最適解に導くことができる。そして、朔の展開したドローンで山の麓に誰かを抱えた鏡夜が走っているのを見つけた。

 

(まぁ鏡夜はやっぱり無事だったな)

 

「じゃあ、俺たちも解散するか。俺は玄関まで迎えに行ってくるよ」

 

「はーい。ってあ!!」

 

「どうした!?」

 

「あのビルから不自然な筒を持っている人間がいる」

 

「あ、やべっ!」

 

 

 

その瞬間には鏡夜に向けて放たれていた。

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