ゴミ箱のような場所に捨てられ、
体のあちこちに強い衝撃を受けた暗殺者は当然のように目が覚めていた。
(なんだ?滑り落ちてる?)
そうして、取り敢えず止まろうと壁に手を当てるが、
不思議と摩擦が一切なく一向に止まる兆しがない。
そして、1分ほど滑るといきなりおちた。
「あぁ!?」ドボン
全面ガラス張りで謎の液体で満たされた筒に落ちたことは分かるが、
脱出のしようがなく死を悟った暗殺者だが、ふと気づいた。
(呼吸ができるだと?)
そんな魔訶不可思議な状況に置かれ、恐怖心が沸き上がって来る。
(なんなんだよ!ここは!?俺は何を殺そうとした?あの依頼者は)
そう、この男はただの雇われの暗殺者だった。
(金払いがいいからって乗るんじゃなかった。あの、くそ極道が!死んで枕元に出てやる『砂上さじょう 六郎ろくろう』!!)
その名前を思い浮かべた瞬間にそこの蓋が開き、また暗殺者は落ちた。
(今度はなんだよ!?あっ)
その瞬間男は死を悟り、目をつぶった。
その後、暗殺者は誰にも聞かれない大きな絶叫を上げ、狂死した。
あの液体には人間の発する電気信号と強い親和性を持ち、データ化を可能とするため暗殺者の考えていることはすべて文字として組のパソコン内部に保存される。ちなみに呼吸を可能とするのは液体であって液体ではない。それは、人間の纏い構成する電子を液体並みに圧縮した電気でんきであるため多少の辛さはあるものの呼吸は可能となる。
その頃、鏡夜たちは組員と晩御飯をとっており、
その食卓には一人ひとり和食が用意されており、
食欲を誘る香りが鼻孔を擽り、暖かそうな湯気はさらなるスパイスとなっていた。
「とてもおいしそうですね!」
鏡華が目を輝かせながら料理の数々に視線を配っていた。
そうして、皆が席に座るのを確認した鏡夜が手を合わせると、
「「「いただきます!!!」」」
皆が一斉に合掌をし、晩餐会が始まった。
待ってました!と言わんばかりに料理に手を伸ばす鏡夜だが、その姿は表現するには難しいほどの美しき所作であり、皆が少しの間見とれていた。
「鏡夜にぃ、早く教えてよ~」
莉緒が率先して質問を投げた。
「そうだな。こちら今日から私の嫁となってくれた、鏡華だ」
「やっぱり!これからもよろしくね!鏡華ねぇ」
「よろしくです。鏡花姉様」
本当に適応能力が早い双子である。
「はい。こちらこそよろしくお願いいたします」
そして、他の組員も同じような反応を取っており、あまり驚いた様子がなかった。
「驚かないのか?」
「そりゃ、帰って来た時はおどろいたよ~でも、二人を見てたら分かった!ね、莉奈」
「はい。莉緒の言う通り分かっていました」
「そうだったのか」
「そんなに分かりやすかったのですか?」
鏡華は自身が分かりやすかったと言われ、照れているようで、
「鏡華ねぇかわいい!!あとで、いっぱいお話ししよ!」
「は、はい!お願いします」
「ぶぅ、莉緒だけずるい、私も一緒がいい」
「いいよいいよ~」
「鏡華ねぇもいいでしょ?」
「もちろんです!」
「早速仲良くなったようで何よりだ」
早々にこの家に馴染めそうで良かったと思いつつ、
珍しく一言もしゃべらない白夜に目を向けると、
「なんだぁ?ぼす」
「いや、珍しくしゃべらないと思ってな」
「お気になさらずに、ただ緊張してるだけですよ」
「おい!冴姫勝手なこというなぁ」
「事実じゃないですか?さっきから表情が硬いですよ」
図星をつかれたようで黙り込んでしまった白夜だったが少しして口を開いた。
「ただぁ、ぼすに嫁さんができるのわぁ良いことだがふぬけちまってねぇかしんぱいでよぉ」
その一言に場が凍った。
「ねぇ、白夜それどういういみかなぁ?」
「場合によっては殺すよ」
莉緒莉奈が怒気を籠めていい、他の者も無言で怒気を向けていた。
ただ、鏡華だけは少し戸惑いを見せていた。
「落ち着け。ご飯中だぞ。」
「「ごめんなさい」」
「いいよ。みんなも気になるだろうしな。
白夜、君には言葉を並べるよりもこれの方がいいだろ」
その瞬間、鏡夜が殺気を放つ。
「あぁ、やべぇ。これはぐもんだったらしいぃなぁ。すまなかった」
しっかりと謝罪したことで鏡夜は殺気を落ち着けた。
「分かってくれたようで何より。それじゃあ、食事を再開しよう。
もう一つ言いたいことがあるから食べながら話すよ」
「おう」
「はい」
そうして、さっきあったこと話した。
話し終わると皆が皆様々な表情を浮かべており、
少しの沈黙が広がった。
「そんなことがあったのか、鏡夜」
最初に言葉を発したのは若であった。
「ああ」
「じゃあ、始めるのか?」
「ああ、これで一番の懸念点が解消された。
新年の幕開けと同時に行動を起こす」
「そりゃまたハデだなぁ!ぼす」
「「やっちゃうよ~」」
各々賛同の声をあげる。
「鏡華、質問なんだが」
「なんでしょう」
「鏡華がくれたものを次の闘いに利用してもいいか?」
「もちろんですよ。わたくしは鏡夜さんの行動を支持しますわ」
「ありがとう。これで気兼ねなく使えるよ」
そうこうしている間に全員食べ終わり、
「「「「ごちそうさまでした」」」」
ご飯も食べ終わり、
鏡夜が皆に今回得た不思議な力の説明の後、
「今から『福音』で才能を覚醒、能力化させる。異論はあるか?」
『ない!!』
全員曇りのない眼差しで鏡夜をしっかりと見る。
「そして、私に命を預けてくれ!」
『もちろん!』
「みんな、鏡夜に救われなければ生きていない者ばかりだ。
そんな俺たちが鏡夜に命を預けられないわけないだろ!そうだよな!?」
『おー!!』
「本当にありがとう。
最高な家族を持って嬉しいよ。」
その時、それぞれの頭上に淡い光が舞い降りた。
「おお、凄いな。『統括』によって、任意で声を脳に直接届けることが出来るのか」
若は『統括』の能力に昇格、
「『高速演算』でいつも以上に思考が進むよ!ちょっと付き合って冬真!」
「ええよ!むしろこっちからお願いしたいぐらいやわ。なんやねんこれ、『観察眼』で見るもの全てから可能性を感じる!!」
この朔と冬真は意気揚々と肩を組んで、居間から出ていった。
「『闘気』かおれにぴったりだぜ。早速、使ってみるか」
白夜がいつもの訓練場へと歩いて行った。
「莉奈凄いよ!『表現』で自分の行動での感情を伝えやすくなった!」
「うん。莉緒私は『歌唱』歌で感情を伝えやすくなるんだって」
「「それと『千変万化』だって!!これでリアルでもこの姿なれる!!!!」」
実のところ元々は、VRアバターを作成したのは鏡夜である。
そのため、莉緒莉奈は並々ならる愛着を抱いていた。
「私たちにぴったりだね!早速ゲリラ配信しにいこ!!」
「うん」
「あっ、鏡華ねぇ。また、後で!」
「はい。また後で」
そう手を振りながら、配信部屋へ移動した。
「妾は『俯瞰』ですか。また、面白い。これはまた見直す必要が…」
冴姫は思考の海に完全に使ってしまったようで、そのまま参謀室へ帰ってしまった。
「皆自分の新たな可能性に胸を躍らしてるな」
鏡夜は自身がさらなる才能の成長に力を貸せたことに強い感動を持っていた。
「嬉しそうだな」
「そら嬉しいさ。
才能を思う存分発揮させてあげられる環境を提供できていること感動しているよ」
「そうか。じゃあ、俺も今後の動きを他の末端にも伝えてくるよ」
「ああ、頼む。これから私は鏡華にこの家について教えて回るよ」
「了解。何かあったら(念話で伝える)」
「なんだかんだいいつつ賢史も使いこなしてるじゃないか」
「ははっ、そうだな。行ってくるよ」
「あ、そうだ賢史。
今から2時間後の10時にもう一回皆を集めるように指示を出しておいて欲しい。
今度は参謀室で」
「おう!わかったぜ」
そうして、居間には鏡夜と鏡華のみとなった。
「それじゃあ、まずは私の組の構造から教えるよ」
「そうですか。楽しみです」
そう微笑みながら返していた。
皆それぞれ開花した才能、能力を試したくて颯爽と居間から去って行き、
鏡夜と鏡華の二人きりになっていた。
「どうだった?私の家族は」
「とても優しい人たちですね。
いきなり、訪れた私にも隔たり無く接してくださって」
「そうだな。私の家族は皆境遇が似ているってことがあるのかもな。
それに私の組方針が「くるもの拒まず、去る者追わず」だからな」
「そうなのですか?皆様はどのような境遇だったのですか?」
「そうだなぁ。軽く話すと皆個性を疎まれた者たちだよ。数年で大企業の社長となったが周りの嫉妬で失脚させられた者、ホワイトハッカーでも能力が高すぎて国家から追われた者、忍びの一族に生まれたばかりに憧れを奪われた者、自衛隊内で強すぎるため隊で殺されかけた者、研究所では危険だと排斥された者、政府から鬼才だと恐れられ追い出された者、などなど皆何かに負われた者たちでそんな者たちに私は声をかけて居場所を提供しただけだよ。これ以上は詳しくはまた本人から聞いてくれ。だが、皆が本当に魅力的な才能の持ち主で目を離すと少し危ないがな。クハハッ」
そんな風に軽く言う鏡夜に対して鏡華は
(鏡夜さんが思ってるほど皆さんの鏡夜さんに対しての思いは軽くないと思いますよ。今日だって皆さん優しかったのですが、誰一人として油断しては居なかった。それも、いつでも鏡夜さんを守れるように意識なさっていた。これは、また皆さんに鏡夜さんのことを聞くのが楽しみです。ふふっ)
そんな風に考えていた。
「どうしたんだ?鏡華」
「えっ?」
「いきなり、笑顔になったから気になって」
「なるほど。何でもありませんわ。ただ早く皆様ともっとお話ししたいと思いまして」
(顔に出ていましたか。こんな事、あの世界ではありませんでしたね)
「そうか。じゃあこの施設を案内するよ。」
そうして、二人も居間を後にするのであった。
ご拝読くださりありがとうございます