生に恋を死に愛を   作:まえがみ

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過去

会議は一時間ほどで終わり、時刻も午後23時と夜も更けていた。

 

「今日もお疲れ様。

 

 皆しっかりと休息をとってくれ」

 

「ねぇねぇ、鏡夜にぃ。

 

 鏡華ねぇ借りてもいい?」

 

「だめですか…?」

 

会議も終わり、今日のスケジュールをすべて消化していた莉緒莉奈が物欲しそうな表情で鏡夜の目の前に鏡華を引っ張ってきた。

 

「俺は良いぞ」

 

「わたくしも大丈夫ですわ。

 

 それにわたくしも皆さんと少しお話がしたいです」

 

「わかった。

 

 私は少し外に出てくるよ」

 

「は~い。

 

 後で鏡華ねぇを送り届けるねぇ~」

 

いたずらっぽく言う莉緒に鏡華は少し顔を赤らめる様子であった。

 

 

 

鏡夜が退出した後。

 

「じゃあ、鏡華ねぇいこーーー」

 

「いこっ」

 

「は、はい!」

 

あまりにもぐいぐいと引っ張るので慌てて歩速に合わせて進み、

 

「皆さんもお疲れさまでした!!

 

 お先にお暇します!」

 

賢史が苦笑し、

 

「おう。

 

 お疲れ様、莉緒莉奈もほどほどにな」

 

「「はーーい」」

 

そんな軽い返事に賢史は肩をすくめる。

 

 

 

残りは賢史、冴姫、白夜、冬真、朔となった。

 

すると、賢史が何やら神妙な面持ちで言葉を発する。

 

「それにしても計画の前倒しが過ぎるな」

 

「ええ、鏡夜さんにしては珍しいですわ。

 

 何かあったのかしら?」

 

2人とも鏡夜の様子のおかしさに違和感を抱いており、

 

その理由を考えていた。

 

そんな中、冬真が一言、

 

「それならわかるで、何しろタイミングがめっちゃええねん」

 

「それはどういう意味だ?」

 

「さっき鏡夜はんがゴミを持って来たやろ?

 

 それから情報が出てきたんや」

 

「それにはなんて書いてあったのです?」

 

冬真の言う通り暗殺者の情報は既に鏡夜に届いていた。

 

「それはやな。

 

 依頼を出したのが、御前『砂上さじょう 六郎ろくろう』やねん」

 

その瞬間、冬真以外のメンバーの纏う空気がぴりつく。

 

御前とは日本の政財界を裏で操る重鎮である。

 

「なんですって?

 

 それに間違いないんでしょうね??」

 

「間違いないで。

 

 わいの機械に狂いはないで」

 

それを静かに聞いていた白夜が口を開く。

 

「なぁ。おれぇ、ぶちぎれそうなんだがぁ。

 

 いまからそいつころしてきたらだめかぁ」

 

白夜も怒りをあらわにし、闘気すらも少し滲んでいる。

 

だが、そんな白夜を賢史が抑える。

 

「だめに決まっているだろ!

 

 今は抑えろ。

 

 俺たちも抑えてんだ。

 

 それよりも今はいかに苦痛を与えてじわじわ追い込めるか考えようぜ」

 

朔も賢史に乗っかりえげつないことを言う。

 

「そうだよ!

 

 地獄という言葉の意味を魂の奥深くまで味わわせてあげよう!」

 

さわやかな笑顔で言うがまったく目が笑っておらず

 

どす黒い憎悪で満たされていた。

 

この賢史と朔の提案を皆が受け入れた。

 

「それにしても、ここに莉緒莉奈がいなくてよかったな」

 

「そうね。あの二人が居たら手がつけられないでしょうからね」

 

「ああ、俺たちでさえ。

 

 怒りが抑えるのがきついからな」

 

そして、話しは御前をどう痛めつけるかの役割分担を決める方向に動く。

 

「僕は御前の生後、いや生前から関わりのある存在全てを調べるよ!」

 

「あら、それはいいですわね。

 

 その情報がすべて私に教えてくださる?

 

 そうすれば、妾は御前の策という策をすべて踏み躙り、

 

 自尊心を粉微塵にして差し上げますわ」

 

「おぉ、じゃあおれは冴姫につきあうぜぇ。

 

 すきにつかぇ」

 

(それが一番御前を苦しめられそうだからな)

 

「いいのですか?

 

 それはたのし、いえ、頼もしいですね」

 

「ええなぁ。

 

 わいは何でも用意するからいつで言うてなぁ」

 

「ええ、そうさせてもらうわね」

 

朔は情報収集を先行し、冴姫・白夜・冬真はセットで行動をするようだ。

 

「俺は、いつも通りに報連相の中継を担うから安心して行動しろ。

 

 ただ、報告は忘れるなよ。

 

 報告さえしてくれたら、後は俺がつなげる」

 

「わかったわ。

 

 いつも大変な役なのにありがとね」

 

「いいってことよ。

 

 それにどうもこれが一番才能俺の才能が輝くみたいだしな。

 

 嫌いじゃないんだ」

 

そうして、一旦区切りのため平静を保とうと皆が目配らせをすると声を合わせて一言。

 

《鏡夜の敵には地獄を》

 

いつもはこのフレーズで決起するが今回は違う。

 

《鏡夜の大事な存在を二度・・も奪った御前には地獄すらも生ぬるい制裁を》

 

そうして、五人も解散した。

 

こんなにも幹部たちが躍起になるのには理由があり、鏡夜自身は今まで己の感情を押し殺し、自制してきた。それは家族を思ってのことであり、家族を殺人の理由にしたくないためであり、報復を是としなかった。だが、今回は完全に奴がこの組を狙っての行動であることから大義はこちらにあり、鏡夜の代わりに幹部たちが断罪を行おうと考えたのである。そして、今回の決起が《鏡夜の大事な存在を二度も奪った御前には地獄すらも生ぬるい制裁を》と言い換えたことには鏡夜の過去が深く関係している。

 

 

 

それは、鏡夜が当時中学生の頃に政治家である父親を御前が殺したことから始まる。

 

鏡夜の父親は現日本の仕組みを根本から変えようと奮闘し、政治家の待遇の違和感から日本の制度にメスを入れ、日本を新しい姿に導くために行動した唯一の人物であった。だがその分、御前を筆頭に老害狸爺どもは快く思わず煙たがっていた。そんな偉大な父に鏡夜も憧れを持ち、強い尊敬の念を抱いており誇りに思い幸せな日々を過ごしていたがそんな鏡夜を悲劇が襲う。

 

 

 

それは、鏡夜の15の誕生日である八月十五日、終戦記念日であった。

 

その日はくしくも日本に平和が訪れた日の出来事だった。

 

 

 

当日も父は新たな政策の考案や行動に負われ、仕事であったが夜には帰れるとのことなので楽しみにその時を母と姉、妹と一緒に偉大な父の帰りを待っていた。そして、玄関で音が鳴り父に帰りだと鏡夜が出迎えに行き、玄関を開くがそこには父の姿はなく代わりに一つの大きな箱が置かれていた。当然、鏡夜はその箱に違和感を抱きその場で開いた。すると、帰りを待っていたはずの父の眼球・・と目が合った。そう、原型がないほどにぐちゃぐちゃにされ、まるでスクランブルエッグのような肉片へと変わり果てた姿で収めていた。当時も暑く腐敗も進み匂いも苛烈を極めた。目撃した鏡夜は自身の視覚から得る情報の多さから呆然とし、そのショックで気を失った。そして、目を覚ますまで1週間がかかるほど心に深刻な傷を負い、この期間内に葬儀から何から何まですべてが終わっていた。幸いなことに、鏡夜が気を失った当初、最初に気付いたのが気の強い母であったため、姉や妹までこの光景を見ることは無く鏡夜ほどの傷を負うことは無かったが、父を亡くしたことに皆強いショックを受けているのは当然であった。父の死後、警察に通報するも強大な権力で当然のことながらもみ消され、世間では捏造された情報が出回り逆に父が犯罪者扱いされ連日に渡り、守銭奴なマスゴミが家に来訪し家族の心を削った。

 

 

 

しかし、これだけでは済まなかった。

 

父の死後から3か月が経った頃に家族を襲う。

 

 

 

妹は身体能力が高く、他とは類を見ないほどの才能を持っており、世界大会で活躍する多くの選手を輩出した日本の最高峰の陸上競技チームに所属していたが、何物かが更衣室に侵入をし、そこで盗撮された写真が出回り、何も信じられなくなり家から出られなくなった。

 

姉は既に社会人となり起業し、経営も順調に軌道に乗せていたのだがいきなり取引先から切られ、弱った隙に会社を買収されることとなり無職なった。

 

 

 

そして、その失意から最悪の結末を迎えてしまう。

 

それは、姉が精神を持ち直すことが叶わず自殺をしてしまったのだ。

 

 

 

母は気丈であったがここまでの不幸には堪えられなかったようで心を壊してしまった。

 

 

 

これにより、父の死からものの3か月で朧家は枯れ木につく葉のように家族がバラバラに散ってしまったなった。鏡夜はこの時に類まれなる才能が一瞬で踏みにじられ未来がなくなる絶望を味わった。これが一度目の不幸。

 

 

 

そんな状況でも鏡夜は折れずに一年半あがき何とか立て直した。

 

 

 

一年で鏡夜は父の残した繋がりを利用して金融機関を新たに立ち上げ、半年で利益が上がるまでに成長させた。

 

 

 

その頃には、妹にも少し笑顔が戻り、母も心が動き出した。

 

 

 

しかし、ここでまた事件が起こる。

 

 

 

 

 

それは、ある昼下がりに母と妹が近所のスーパーに買い物へ行っている時に起こる。

 

一人の知的障害者が「おれのたいせつなものをうばうな!!」といきなり奇声をあげ、二人を背後から襲い、母をナイフでめった刺しにされ、妹はレイプされ行為中に指を一本ずつ切り落とされたのちに体を開かれて殺害された。

 

 

 

この時鏡夜は、一人の債務者の対応をしていた。

 

なんでも突然「全額返したい」と連絡をよこしたことで面会している所であった。

 

そして、面会後にその惨劇を聞いた鏡夜は気が狂うほどの気持ちであり、実行犯に対する憎悪から殺害しようとしたが、生前の父が高潔な人間であり、私刑ではなく法による裁判で結果を待つことにした。が、知的障害者には犯罪の意識はなく罪の意識もないため、無罪とされてしまい鏡夜の中で何かが壊れる音がした。さらに、この債務者は御前の指示であることが分かった時、鏡夜の中で何かが瓦解するのを感じた。それが18の時であり、裏社会に入ったきっかけであり、二度と鏡夜が自分と同じ境遇の者を生み出さないと心に決めた。表ではすぐに気付かれることを理解していたので裏からの救済をする道を選んだのであった。

 

 

 

この時、鏡夜はこの日本の制度、法、全てに対する信頼は消え去り、

 

才能の無い者、無能であり、持たざる者を毛嫌いするようになった。

 

 

 

 

 

「そんなことがあったのですか…」

 

鏡華が鏡夜のあまりの凄惨な人生に驚愕した。

 

 

 

2人の部屋に行った後、鏡華は鏡夜がこの組をつくるきっかけについて聞いたことでこの出来事を知ることとなった。

 

鏡華は知らなかった。

 

鏡夜が毎日神社を訪れるようになってからは日常会話や鏡夜の夢、現在の世界情勢など様々なことを教えてもらっていた。そして、そのどれもが楽しくかつ人間離れした思考に興味を抱き、惹かれることとなったため、鏡華自身この関係が変わり、神社に訪れることがなくなることに恐怖し、鏡夜の深い部分を聞けずにいたためだ。

 

「そうだよ。

 

 鏡夜にぃはそこからあたしたちみたいな存在の保護をしてくれたんだ。

 

 だからね、もし御前と会ったらあたしたち幹部が、

 

 地獄を超えた苦痛を与えるってきめてるんだよ」

 

「鏡夜兄様は他者よりも優れすぎ恐れられる者たちのの希望、なのです…」

 

2人の鏡夜に対する気持ちは信仰に及ぶほどの強い気持ちであった。




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